女子小学生に大人気の官能小説家!?   作:暮影司

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女スパイ

 

「こんにちは」

「……はい、こんにちは」

 

 インターホンに出ると、意外な人物だった。

 いまどき、普通は事前に連絡も無しに訪問しない。

 

「お邪魔していいですか」

「いいです、よ」

 

 断る理由もないので、部屋にあげる。

 今日はメイド服ではなく、地味な格好だ。珍しく眼鏡をかけている。

 彼女は瀬久原柑樹(せくはらかんじゅ)。漫画家を志す女子高生だ。俺の小説のメインヒロインであるメイドのメイちゃんにそっくりの容姿で、二重で目の大きい、ちょっと丸顔の美少女です。

 あまりに似ているため、身長は158cm、体重は44kg、ブラジャーはBカップというメイのプロフィールは彼女のデータをもとにしているくらい。

 ただし、表情や雰囲気は妙に大人びているというか、落ち着いている。

 メイは元気で明るくちょっとドジという、典型的な少女漫画の主人公みたいな性格だ。

 柑樹の内面はメイとは正反対と言っていい。基本的にポーカーフェイス。はっきりいって、何を考えているかよくわからない。アンドロイドかもしれないと思うくらい。

 そして今も何を考えているかわからない。なんでうちに突撃してきたの。

 

「……」

 

 とりあえずリビングにお通ししたが、なんの反応も無し。

 

「……」

 

 とりあえずお茶を出したが、なんの反応も無し。

 どうしよう。

 とりあえずお尻でも触っておくか?

 

「ずず……」

 

 いや、我が家でお茶をすすってる女子高生にいきなり痴漢するなんてできないが。あれは誕生日プレゼントだからね。来年までお楽しみに待っておきましょう。

 

「えっと、今日はなんの御用で」

 

 ストレートに聞くことにした。

 

「バイトです」

「バイト?」

 

 そんな募集してたっけ?

 俺に痴漢されるバイト、時給1500円。いいですね。2時間くらい働いていくかい?

 

「スパイのバイトです」

「スパイのバイト!?」

 

 スパイっていうのはバイトでやるようなものではないのでは!?

 そしてスパイっていうのは、スパイだってバレてはいけないのでは?

 そもそも、インターホンを押して入ってくるのはスパイとしてどうなのか?

 ツッコミどころが多すぎる。

 しかし、スパイという言葉の響き。いかにも小説のネタになりそうですね?

 スパイだとバレて、えっちな拷問をされるという流れでしょ?

 そういうのいいよね~。

 

「誰に雇われたんだ!」

 

 言わないと……げへへ。わかってますね?

 

「清井のお嬢様です」

「言っちゃったよ!?」

 

 なんで雇い主をすぐ言っちゃうの!

 そんなスパイいないだろ!

 ちゃんと俺にいろいろされてから吐きなさいよ!

 

「っていうか……なんで真奈子ちゃんが?」

 

 確かにスパイとして人を雇う財力がある知り合いは、清井真奈子ちゃんくらいしかいないが。

 うちにスパイを送り込む理由がわからない。

 

「ひょっとして、詩歌を?」

 

 うちの変な妹の弱みを握ろうというのか!?

 

「いえ、対象はあなたです」

「あ、そうなんだ」

「はい」

 

 だからなんで言っちゃうの。

 真奈子ちゃん、この人スパイに向いてないですよ。素直すぎて。

 しかし俺をスパイしてどうするんだ。

 

「なんで?」

 

 いっそ聞いちゃおう。

 聞かれたら全部答えちゃうわけだから、聞いちゃえばいいじゃない。

 

「それはわかりません」

「わかんないのかよ!」

 

 目的も知らずにバイトしちゃったよ!

 中身を知らずに運び屋とかしそうで、心配だよ!

 

「でも時給4000円です」

「高いよ!?」

 

 そりゃ金に目がくらむよ!

 っていうかそこまで払って一体俺の何をスパイする気なんだ!

 

「しかし、そうか……スパイか」

「はい」

「スパイなら身体検査しないといけないな」

 

 そう。危険な武器を持ってるかもしれないからね。

 

「甘んじて受けます」

 

 無防備に立つ柑樹。スパイなのに素直すぎるんだよなあ……。

 

「眼鏡は外さなくていいからね」

 

 俺は眼鏡と靴下はつけたまま派だからな。

 ただ、今回は靴下は脱いでもらうことになるが。

 

「じゃ、脱いで」

「はい」

 

 ボタンを外していく……。

 脱がす方がエロいと思っていたが、脱いでいるのを見るのもエロいな……。

 ブラウスがソファーにかけられ、水色のブラジャーが目に飛び込んでくる。

 

「ふむ……上は何も持っていないようだな」

 

 なんてね!

 一応それっぽいことを言っておくけど!

 そんなことはどうでもいいね!

 柑樹は肌がキレイだね~。

 

「……」

 

 靴下とジーンズを脱いでいく柑樹。

 のぞき部屋みたいですね。

 むしろのぞき部屋だったら、時給4000円も納得ですよね。

 そう考えると、これは妥当なバイトなのかもしれないですね?

 

「ふむ……下も特に持っていない」

 

 っていうか、ぱんつだね。

 ぱんつっていいよね。なんでこんなにエロいんですかね。学祭のときはピンクのぱんつでしたが、今はブラジャーとおそろいの水色のぱんつです。パステルカラーが好きなのかな? 俺も好きだよ!

 

「下着の中に危ないものを隠しているかもしれないな」

「脱ぎますか?」

「いや、それには及ばない。上から触るだけで十分」

 

 脱いでしまったら、触る口実が無くなっちゃうからね。

 勝手に脱がないあたり、やはり柑樹はよくわかってる。

 

「はい、ばんざーい」

「ばんざーい」

 

 どきどき……痴漢もよかったが、身体検査というのもいいですね……。気持ちの問題ですけれども……。

 

「ふむ……」

「……」

 

 ブラジャー越しに触るというのも、趣がありますね……。

 大事なところは固くてちゃんと揉めないというのがね……それはそれでという感じですね。

 お次は下半身だ。

 

「ふむふむ……」

「……」

 

 ぱんつ越しに揉む。これは最高だな。直接触るより興奮しますよ。

 相変わらずやわらっけー。偏差値78をキープしてるわ。

 初めて会った日も、こうして触らせてもらったよな……。しみじみ。

 お尻の間にもちゃんと指で確認。何も入っていないな。よし。

 

「ぷにぷに」

「……んっ」

 

 前も確認。ちょっと声が漏れましたね。残念ながら何も入っていません。

 

「どうやら何も持っていないようだね」

「はい」

 

 まぁ、別に疑ってないけどね!

 服を着ている様子をガン見しながら待つ。着替えの時に目をそらすなんて失礼だからね。紳士としては、ちゃんと着替えを見守る義務があるよ。紳士として。

 服を着た柑樹がソファーに座るのを見届けてから、俺も着席した。レディーファーストですよ。紳士だねえ~。

 

「そういえば、この前の学祭はどうして? あれもスパイ?」

「コミック学科があるので」

「あー。ひょっとして進学したい感じ?」

「検討中です」

 

 なるほどなー。

 うちの専門学校のコミック科は、ストーリーの作り方とか表現みたいなことももちろんだが、デジタルの漫画ツールの使い方とかをきっちり教えるらしいからね。

 柑樹はパソコンを持っていないし、画材を買うお金にも困っているから表現方法が限られている。

 しかし親の支援無しに専門学校に行くのはなかなか大変だろう。

 そう思うと、このスパイのバイトも役になっているのかもしれない。よし、ずっとスパイしていいよ。その代わり毎回身体検査は受けてもらいますが。

 それにしてもやはりスパイをする理由がよくわからないな。

 

「しかし、なんでわざわざスパイなんて。真奈子ちゃんが自分で来たらいいだろうに」

「お嬢様は引きこもっているそうです」

「ええっ!?」

 

 真奈子ちゃんが引きこもりに!?

 そんなバカな。

 この前一緒にショッピングモールで遊んだばかりですよ?

 一体何があったんだ……。

 

「ところで、彼女が出来たとか?」

「ん? あ、うん……」

 

 この質問、なんでタイミングで? まるで関係ないと言うか、藪から棒だな……。

 

「実は、ももきゅーちゃんと付き合うことになりました」

「ふ~ん」

 

 ふーんて。

 聞いておいてソレはないんじゃないですかね?

 ん? 待てよ?

 

「ま、まさか柑樹も俺のことが好きで、付き合いたかったとか?」

「いえ、別に」

 

 なんだよ!

 じゃあ、なんでそんなこと聞くのよ!

 ちょっと期待しちゃって恥ずかしいじゃん!

 ……じゃあ、アレか。

 アレな意味でのスパイか。

 絶対に負けられない戦いになるのか。

 

「あれですか。小学生と付き合うなんてヤバいとか、そういうことですか?」

 

 そういうこと言う人いそうだなとは思ってるんですよ。

 だけどね、障害がある方が恋愛は盛り上がりますからね!

 俺はももきゅーちゃんが、小学生だから付き合ってるわけじゃない! 彼女がえっちだから付き合ってるんだ! 年齢なんか関係無いんですよ!

 

「いえいえ、滅相もない」

「滅相もない……?」

 

 てっきりロリコンの証拠を見つけて通報するためのスパイかと思っていました。

 そうじゃないのはよかったが、滅相もないってどういうことだ?

 せいぜい「別にそうじゃないです」とかくらいだろ。普通は。

 

「小学生と付き合うのはイイことに決まっています」

「えー!? そうなの!?」

 

 まさか推奨されるとはね。

 柑樹に言われると頼もしいですね。

 でも「女子高生の方がおすすめですよ」とか言って誘惑してきて欲しかった気もしますよ。

 彼女は眼鏡をちゃきっとさせて、俺を見つめる。やだ、テレちゃう……。

 

「でもどうして彼女を選ばれたのでしょう。仲のいい女子小学生がいっぱいいるのに」

 

 なんかインタビューみたいになってきたな。

 これスパイ活動じゃなくてインタビュアーじゃね?

 

「そうですね……」

 

 手を組んで、目を閉じてみる。

 なんとなく勿体ぶっているだけで、別になんにも考えていない。こういうのは雰囲気が大事なんですよ。ふーむ。

 

「選んだ、というのは違うかな」

 

 手を無駄に動かしてみたりして、なんかカッコいい感じを演出。

 

「選んでもらった、ってコト」

 

 脚を組み替えてドヤァ。決まったな。

 

「つまり、彼女から恋人関係を提案されてそれを承諾したということですか」

「……まぁ、そう」

 

 過剰な演出をしているのに、本質を暴くのやめてもらっていいですか?

 

「そのときの状況は?」

「え? そうだな……」

 

 キスされまくって籠絡したとは言えない……。

 

「なんというか、情熱的なアピールをされてね」

「つまり肉体的に迫られたってことですか」

 

 そう言われると俺がエロに目がくらんだけみたいじゃん!? やめてよ!

 

「言葉では伝えきれないくらい、好きだって伝わってきたからだよ」

 

 そう。そういうことなんですよ。

 俺はね。

 ももきゅーちゃんの気持ちを受け取ったんですよ。

 

「恋人になったらもっとエッチなことしてあげるとか言われたんですね?」

「なんでわかったんだよ!」

 

 なんでわかったんだよって言っちゃったよ!

 

「違う、違いますよ?」

 

 これはね、あれだよ。

 俺というよりも、ほら、ももきゅーちゃんの名誉に関わりますよ。

 

「失礼します」

「な、なんだ?」

 

 無防備に俺に近づいてくる。まさか殴られるのか?

 

賢者(さかひさ)様」

「えっ? えっ?」

 

 しなだれかかってくる。

 受け止めようとするが、どこを触れていいのか困り、結局俺の脚の上に座られてしまう。

 

賢者(さかひさ)様」

「はい」

「実は好きです、付き合ってください」

「えっ? えっ?」

 

 困惑のまま、俺は唇を塞がれる。

 舌が……なんか震えてるし……勇気を振り絞ってしてくれているのがわかる……。

 そうか、スパイなんていうのは嘘に違いない。

 俺がももきゅーちゃんと付き合うと知り、俺のことを本当は好きだった柑樹は居ても立っても居られずに会いに来た。

 そして手段を選ばずに俺を恋人にしようと……なんてこった、そんなに俺のことが好きだったなんて。

 

「ほら、こんなにどきどきしています」

 

 そう言って俺の右手を胸に当てる。

 こちらから触るより、触らせられるというのは嬉しい……。

 

「彼女と別れなくてもいいので、どうか……」

 

 二股でもいいから付き合いたいというのか……。

 よし、俺も男だ。覚悟を決めよう。

 

「わかったよ、柑樹。付き合おう」

「はい、よくわかりました。さっきのは嘘です。付き合いません」

「だ、だ、騙したなあー!?」

 

 ひ、ひどい!

 ひどすぎる!

 男子のピュアな気持ちを弄びやがって!

 ついていい嘘とそうじゃない嘘があるだろ!

 

「バイトはこれで十分なので、そろそろ帰ります」

「本当にバイトなのかよ!」

 

 それは嘘でもよかったんだよ!

 

「目的がわからない、というのは嘘です」

「それは教えてくれるのかよ!」

 

 丁寧な種明かしありがとうございますね!

 もうそんなのどうでもいいよ。

 俺のメンタルボロボロですよ。

 そそくさと俺の元を去っていく柑樹。体に残ったぬくもりがせつない。

 

「お邪魔しました」

「……」

 

 なんだこの気持ちは……。

 あ、そうだ。次の話、大して好きでもないのにメイに告白してくる男でも登場させよう。わー、仕事ねっしーん。俺ってえらーい。

 




「ここすき」していただいてる方、ありがとうございます。
結構気にしてまして、そういうのがいいのかって参考になります! よろしくおねがいします!

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