女子小学生に大人気の官能小説家!?   作:暮影司

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胸の大きさに関するフィロソフィー

 真奈子ちゃんをどう思っているか?

 それを酔っ払ったメイド服の柑樹に問われている。正直、答えをどうするかより、今押し付けられているおっぱいに集中したい。

 

「どう思っているんですかぁ~」

「う~ん」

 

 なんだろう、この酔っぱらいに絡まれるというシチュエーション。それがおっさんだったら最悪だが、美少女だと最高だな?

 ぜひともメイとマイにも酔っ払いエピソードを用意したい。女児向け小説で酒を飲ませたら編集に怒られるので、カフェインで酔うとか酔っ払いみたいになるキノコとかそういう設定にしよう!

 

「ね~え~」

「う~ん」

 

 普段ドライな柑樹だが、酔うとずいぶんと馴れ馴れしいというか、べったりしてくる。甘えん坊の彼女みたい。正直、嫌いじゃないね!

 

「ねえってば~」

「うう~ん」

 

 夜の海風を浴びながら、缶ビールを飲みつつ、ゆさゆさされたり、抱きつかれたり、耳元でごちょごちょ言われたり……。いいぞこれ。しばらくこのままでいたい。

 

「……」

 

 やばい。

 真奈子ちゃんが極太フランクフルトを咥えたまま固まってる。

 目も焦点がおらず、ただ俺たちの方を向いているだけ。これは放置してはまずいですね。

 自分のことをどう思っているか。

 そんなやり取りが目の前で行われていて、気にならない人などいないだろう。ごめんね、真奈子ちゃん!

 

「ごほん。えー、真奈子ちゃんのことはね……」

 

 俺がそう口にした途端、真奈子ちゃんの目がキラキラと……なんかすごく期待されている!

 これは野暮なことは言えないぞ……。

 

「おっぱいが大きいと思っています……小学生とは思えないほど……」

 

 うん。やっぱり正直に答えないとね。

 これならめっちゃ褒めてるし、いい答えだろう。

 

 ぱきっ

 

 真奈子ちゃんは、ようやくフランクフルトをかじることが出来たようです。やはり正解だったか。

 

「ばかたれ! すけべ!」

「うごっ」

 

 柑樹から、頬にエルボースマッシュをくらった。なんでエルボーなんだよ! 肘は硬いから女子でも痛いよ!

 

「すけべなのはわかってるからいいけど、ばかたれとはなんだよ!」

 

 頬を擦りながら、怒りを表明。

 

「真奈子さまの気持ちを考えて!」

 

 いや、考えてるし。

 

「いや、だって、嬉しいでしょ」

「どして」

「逆に聞くけど、柑樹は俺におっぱい小さいと思ってるって言われたら嬉しいのかよ」

「超むかつきます!」

「ほら」

「ほらってなんですか!」

「小さいって言われたら嫌だってことは、大きいって言われたら嬉しいってことじゃないか」

「なるかー!」

「うげっ!」

 

 ジャンピングニー!?

 肘より膝のほうが痛えよ!

 ツッコミにしては攻撃力が高すぎるって!

 脇腹を抑えつつ、柑樹を睨む。

 赤ら顔は、なにやら偉そうな態度で人差し指をずばっと立てた。

 

「じゃあ自分の立場で考えてみてください」

「俺?」

 

 どういうことですかね?

 首をひねると、柑樹がドヤ顔を見せる。

 

「真奈子さまが、賢者ちゃんのことをどう思ってるかと聞いて、ちんちんが大きいと思ってるって言われたら?」

「そりゃ嬉しいだろ」

「そうでしょうそうでしょう……あれ?」

「あれじゃないよ。だから小さいって言われたら嫌だけど、大きいって言われたら嬉しいじゃない。おっぱいもそうでしょ」

「……作戦失敗だー。この人を甘く見ていたー……」

 

 がっくりとうなだれる柑樹。どうしたんだろう。

 そもそも柑樹の意見など、どうでもいいのでは?

 

「真奈子ちゃんはどう思った?」

 

 素直に聞いたらいいんですよ。

 俺におっぱいが大きいと言われてどう思ったのかと、女子小学生に聞いています。なにか問題でも?

 

「……小学生とは思えないほど、おっぱいが大きいことは、先生としてはどうなんですか?」

 

 じっと俺の目を見て問う真奈子ちゃん。

 結構難しい質問だ。

 真奈子ちゃんのおっぱいが大きいことは俺にとってどうなのか?

 ……嬉しいことのような気がする。

 しかし、その場合は小さかったら悲しいという意味をはらんでいる。

 真奈子ちゃんが普通の女子小学生と同様の胸のサイズだったとしたら?

 がっかりする?

 いや、そんなことはない。そんなことはないよ!

 しかし、真奈子ちゃんをどう思っているのかと聞かれてそう答えたのは、ちょっと褒めているつもりで言っているわけで……だとするとそれは明らかに小さいより大きいほうが良いと言ってるということで……。

 哲学だ……。

 人類に課せられた、難問だ……!

 

「先生? せんせー?」

「はっ!?」

 

 心配そうに俺を見つめるピュアな瞳。

 

「ごめんごめん、ちょっと真剣に考え込んでしまって」

「そ、そんなに……嬉しい……」

 

 喜んでくれた。

 どうやら女子小学生というのは、自分のおっぱいについて真剣に考えてもらうと嬉しいらしいです。

 

「あの、つまり、聞きたいのは……わたしの大きなおっぱいは嫌いなのか、ってことです」

「そ、そんなわけないよ!」

 

 悩んでいたのは小さくても嫌いじゃないということであり、大きいから嫌いなんてことは絶対にありません!

 

「じゃあ、好きですか?」

 

 これは簡単!

 さっきまで哲学かと思っていたが、これは超簡単な質問!

 

「好きだよ! 自信を持って言います! 好きです!」

「わたしの? おっぱいが? 好き?」

「真奈子ちゃんの! おっぱいが! 好きです!」

「~っ!」

 

 なんだなんだ。

 右手を高々と上げた。何かに勝ったのか。それとも今ここで電車痴漢ごっこがしたいのか。どっちなんだ……!?

 

「か、髪は?」

「えっ? 髪?」

「髪の毛はどう思いますか?」

「あー。長くてきれいだよね」

「つまり?」

「つまり?」

「わたしの髪の毛は好きですか?」

「ああ! うん! 好きだよ」

「~っ、よし!」

 

 目をつぶった。感極まっているのか。それとも今ここで目隠しプレイをしたいのか。どっちなんだ……!?

 

「顔はどうですか」

 

 可愛いに決まっている。

 決まっているが、そう答えたら「つまり?」と問われるわけだ。

 俺もバカじゃないので、わかってきたよ?

 

「顔は可愛いから好きです!」

「性格はっ」

「性格も可愛いから好きです!」

「つ、つまり、わたしのことは」

「真奈子ちゃんのことは、好きです!」

 

 どうやら、真奈子ちゃんは好きだと言って欲しいっぽい。めちゃくちゃ喜んでいるので間違いない。

 しかし、どうしてだろうか。

 なぜ、俺に好きだと言われたいのだろうか……?

 そもそも、突然無人島にやってきたワケとは……?

 結婚をほのめかす発言はどうして……?

 そして、家に引きこもっていたという事実……。

 ここから導き出される答え。

 わかった! ひとつしかない!

 

「真奈子ちゃん」

「はい」

 

 うるんだ瞳。

 俺は彼女の両手を強く握る。

 ごめん、今まで気づいてあげられなくて。

 

「真奈子ちゃん……いじめられてるんだね?」

「……えっ?」

 

 真奈子ちゃんは、学校でいじめられている。

 みんなから嫌われている。

 だから俺からだけでも好きだと言われたい。

 真奈子ちゃんは、美人でおっぱいも大きくて、いい子でしかも金持ちときている。これは同性からはやっかまれるし、異性からはちょっかいを出すつもりでいじめられてしまうのだろう。

 無人島で結婚したいという突拍子もない案は、学校以外の居場所を求めたためだ。

 

「あの、いや、えっと」

「いい。いいんだ。つらかったね。いじめはつらいよね」

「え。いや。え?」

 

 なんでわかったのか。不思議なのだろう。

 俺はそっと抱き寄せる。

 

「言わなくていい。何も言わなくていいんだ」

 

 思い出すだけでも辛いことだろう。

 俺はぎゅっと抱きしめる。

 

「あっ……はい」

「いいんだ、いいんだよ」

 

 頭をゆっくりと撫でてやる。

 妹が「お股から血が出たー!」と泣き叫んだときもこうしてやったもんだ。

 

「俺は、真奈子ちゃんが好き」

「……は、はい」

「真奈子ちゃんは、俺が守る」

「はいぃ……」

「だから、もう何も心配しなくていいんだ」

「ふぁい……」

 

 かわいそうに。

 ようやく安心できたのだろう。

 真奈子ちゃんの顔はだらしなくゆがみ、目は半分イッている。ダブルピースが似合いそうなアヘ顔っぷりだ。

 こんなになるまで放っておいたのか……!

 それにしても、この俺の名推理っぷりは異常。

 ミステリも書けてしまうのでは?

 やはり天才作家だったか……。

 次の巻はメイのぱんつが盗まれる事件で決まりです。まさか自分でかぶっていたとは……。こりゃミステリ界がひっくり返るぞ!

 

「……これはいったい」

 

 頭を抑えながら、ふらふらとしている柑樹。

 抱き合う俺たちを見て、困惑している。ちょっとは酔いが覚めたのか?

 しかし、残念ながらもう遅い。

 

「もう解決したよ」

 

 君は解答編に間に合わなかった残念な登場人物なんだ……。

 

「え? え?」

 

 意味がわからないらしい。

 ひょっとしたら、そもそもいじめられていたことすら気づいてないのかもしれない。

 

「柑樹はわからなくていいよ」

「ええ……? お嬢様?」

「わからなくていいです」

「あ、そうなんですか。はあ。じゃあ、いいですけど」

 

 柑樹は首をすくめると、アワビをかじりながらビールをあおりはじめた。やってらんねーということだろうか。気楽なもんだ。

 

「真奈子ちゃん。無人島で結婚なんて、そんなの必要ないんだ。俺がいつでも真奈子ちゃんを守るから安心して」

「あ、はい。もう愛人でいいです……」

 

 愛人って。

 意味わかってるのかな。

 いや、わかってるわけがなかった。

 なんせ肉欲をお肉が食いたい欲望だと思っているくらいだ。

 愛する人、くらいの認識だろう。

 ……愛ってなんだよ(二度目の哲学)

 愛とはLOVEだろう(トートロジー)

 つまり愛するとは、メイク・ラブということではないか(二度目の名推理)

 つまり真奈子ちゃんとはメイク・ラブする関係ということだね。なーんだ、それって愛人じゃん! あってた!

 

「じゃあ柑樹、ちょっと愛しあってくるね」

「はいはーい」

 

 いってらっしゃ~いとばかりに適当に手を振りながら、伊勢海老をばくばく食っている。高いものばっかり食ってるな……いいけど……。

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