女子小学生に大人気の官能小説家!?   作:暮影司

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眠れぬ夜はお姉ちゃんに甘えよう

 俺はエロが好きだ。

 エロはいい。わかりやすい。

 なんせ人の三大欲求。

 性欲の話だもの。

 ラーメンはうまい。脱ぎかけの女はエロい。

 そういうことですからね。

 

「お兄ちゃん?」

「なに」

「や、なんでもないけど……難しい顔してるから」

「ちょっとな」

「ふーん。じゃ、おやすみ」

「ああ、おやすみ」

 

 俺は妹が好きだ。

 妹はいい。わかりやすい。

 なんせ血の繋がった家族。

 性欲の対象ではないもの。

 猫は可愛い。妹も可愛い。

 そういうことですからね。

 

「ん、メッセージか……」

 

 ももきゅーちゃんからの他愛もない挨拶だった。

 渋谷百九。俺の彼女。

 彼女はわかりやすい。

 存在がはっきりしている。

 ……そういうことなんだよ。

 つまり、俺は、わかりやすいものが好きなんだ。

 ……言い訳だな。

 わかりにくいものが嫌い。

 いや……これも言い訳だ。

 本当のところは、こうだろう。

 わかりにくいものから目をそらして、わかりやすいものにすがりついてばかり。それが俺ってやつなんだ。

 

「はぁ……」

 

 なんとなく、枕元の本を手に取る。

 俺は小説が好きだ。

 小説はいい。わかりやすい。

 なんせ誰かの考えた物語。

 結末が決まっているもの。

 面白い。楽しい。好き。

 そういうことでいいですからね。

 

「ふぅ……」

 

 夜更けにとりとめもなくこんなことをずっと考えているのは、わかりにくいからだ。

 コミュニケーション。人付き合い。

 現実の女の子の心。

 まったくわからない。

 男女の気持ち。どきどきしてわくわくする、未知の体験。それはとても魅力的なことだが、俺にとってそれはエンターテイメントの話だった。

 お姫様が休日にデートをする映画だったり。

 冴えない浪人生が未亡人を好きになる漫画だったり。

 召喚した女剣士と共に戦うゲームだったり。

 そういう魅力的な女の子が登場するエンタメは好きだ。

 しかし、現実は……難しい。

 

「小江野さんは……」

 

 小江野さんは魅力的だ。しかし存在がわかりにくい。

 妹じゃないし、編集でもないし、ファンでもないし、彼女でも愛人でもない。

 だから気になるのだろうか……?

 いや、これも言い訳なんだ。

 本当は、目を背けているだけなんだ。

 実際は真奈子ちゃんも、あげはちゃんも、沙織ちゃんも、ももきゅーちゃんも、柑樹も。富美ケ丘さんもだ。

 全員に対して、特別な感情を持たないようにしている。

 好きかと問われれば、即答できる。

 だがそれは、ラーメンと同じ。寿司も焼き肉も天ぷらも、好きかと聞かれれば、好きだと答える。大好きとも言える。

 俺はももきゅーちゃんをカノジョにしたが、おそらく誰に誘われても断ることは無かっただろう。

 一番好きだから彼女にしたとか、そういうことは一切ないんだ。そもそも誰が一番かということを考えることすらしていない。

 

「うーん……」

 

 なぜこんなことを考えてしまうかというと、やはり編集者のせいだろう。

 俺が書く小説は、イチャイチャする。それはもう男女がイチャイチャする描写はたっぷりある。

 なんせ官能小説だと思って書いてるくらいだ。

 心理描写もちゃんとある。主人公のメイは、恥ずかしいとか、恥ずかしいけど頑張ろうとか、恥ずかしいけど嬉しいとか。まぁとにかく恥ずかしがる。その方がエロいからね。

 しかし乙女心が描写されてないと。ご主人さまを好きなのかわからないと。そういう指摘をされたのです。

 もちろん抵抗した。

 好きかどうかわからないのがいいんじゃないかと。

 だが、駄目でした。

 ご主人さまがどう思ってるのかわからないのはいいが、メイがここまでいろいろやってるのに好きかどうかわからなくていいわけないだろって叱られました。

 読者が共感できるようなエピソードを入れて、読者がメイの恋心に寄り添えるような描写をしろってさ。

 

「ぐぬぬ……」

 

 書けるわけがない。

 そもそも自分自身ですら、そういう感情から逃げてきたのに。

 ましてや女の子の気持ちなんてわかるわけがないだろ!

 誰だよ、好きとか嫌いとかそうでもないとか最初に言い出したのは。エロいかエロくないかでいいだろ!

 くそう、眠れない!

 

「くそっ、こうなったら」

 

 責任をとってもらう。それしかないね。

 俺は、携帯電話を持って誰もいないリビングへ。

 

「はい、もしもし? どうしました?」

「あ、お姉ちゃん、俺だよ~、さかひさ~」

「ああ、うんうん。どうしたのこんな夜中に」

 

 編集の富美ケ丘さんではなく、文乃お姉ちゃんに電話だ。

 俺は弟になるという契約を結んでいる。

 電話番号は同じなのだが、俺がお姉ちゃんと呼んだらお姉ちゃんになる。そういうルール。富美ケ丘さんと呼んだ場合は編集者として対応となります。

 

「ちょっと仕事がうまくいかなくてさぁ~」

「そ、そーなんだ~」

「そこでお姉ちゃんに話を聞いてみたいなーと思って。だめかな~?」

「あら、甘えてくれるのねえ~。かわい」

 

 弟になる。これはわかりやすい。

 そういうロールプレイであれば、俺は上手にできるタイプ。あざとすぎる弟なんて余裕だぜ。

 

「お姉ちゃんって、初恋のときどんな感じだったの」

 

 男性経験は全然無いらしいが、片思いくらいはしてるだろう。

 

「あー。初恋かー」

「教えてよ~」

「そうねー。うん。あれは……中学生の時」

「ほうほう」

「相手は高校生だったの」

「おお~」

 

 思っていたより有益な話が聞けそうじゃないか。

 

「その人はね~、空手部の主将だったの」

「ほう!?」

 

 武闘派男子ですか、これは意外ですね。男性に慣れていないというから、初恋相手も中性的な感じなのかと思っていました。

 

「体は大きくて、無口で、背中で語るタイプ」

「ほほう!?」

 

 ますます男らしい感じ。

 

「でも、優しくて、後輩の頭をがしがし撫でる」

「ほぉ~」

 

 もうあれじゃん、後輩にウザい先輩じゃん。

 

「髪も長くって」

「ほ?」

 

 一気にイメージが違うな。

 まぁ、武闘家は長髪の人もいるか。

 

「スレンダーで」

「スレンダー」

 

 違和感しかない言葉。せめて細身とかでは。

 

「なのにおっぱいは大きい」

「女子だった」

 

 女子だったわ。よく考えてみたらそんなに意外でもないわ。そういう人なんだわ。

 

「笑顔が素敵なんですよー」

「いいですね」

 

 聞いてる情報からすると俺も好きですね。その人。

 

「あんなに可愛いのに、言われて慣れてないから、可愛いって言うと顔真っ赤にしてテレルんですよね」

「超いいですね」

 

 こうなってくると好きになるの当然という気がしてきたね。でもそれじゃ意味ないのよね。

 

「魅力的なのはわかったけど、どうして恋にオチたのぉ~?」

 

 弟感出そうとしすぎて、体は子供で頭脳は大人の名探偵みたいな口調になってしまった。あれれ~?

 

「お姉と付き合ってたんだけどね」

「そうきたか」

 

 お姉……そんな素敵な女の人にまで手を出していたとは……。

 

「お姉の前だと甘えまくってるのが可愛くて……」

「そうきたかー」

 

 聞いてるだけで俺も恋に落ちそうですね?

 

「わたしが見てると、恥ずかしがるんだけど、それでもお姉に甘えたいから、恥ずかしそうに、顔をまっかっかにして、涙目でお姉の膝に……」

「ふむう……」

「長いロングのポニーテールで、おっぱいが大きくて、切れ長の鋭い目つきで、でも優しい笑顔で……」

「うむう……」

 

 うん、それが可愛いのはわかるのよ。

 なんで自分の姉に甘えてるのを見て恋をするのでしょうか。

 

「舐めるのが上手なところが最高だったな」

「は?」

「やっぱり気持ちよくしてくれる人が好き」

「はい終了~」

 

 終了です。

 なんだこの人。

 俺に偉そうなことを言ってたくせに、俺とおなじ穴のムジナだよ!

 

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