「えっ? 今のエロゲーってこんなことになってんの?」
「そうなんですよ~」
温泉旅館での収録が始まって、俺は驚きの連続だった。
美少女ゲーム好きのためのラジオ「HEY! MEN! ガールズ!」の企画の動画サイト版で、メインパーソナリティの小江野さんとのトークだが。
彼女がプレゼンターで、俺がゲームをプレイしながら、ということに。
ラジオでは、あまり詳しくない小江野さんのフォローをするのが俺の仕事だった。
ところが今回は「四十八先生が知らないエロゲーの世界」と銘打って、俺が知らないタイトルの話をすることになったのだ。
俺が知らないタイトルというのは、新しいエロゲーだ。
「全画面表示でこんなにキレイなわけ~?」
「そうですよ」
「ちょっ、なにこのコンフィグ、どんだけ細かく設定できんのよ」
「そう、そうなんです」
なぜかオカマっぽく喋っちゃう、どうも俺です。
しかしビックリしてるのはマジですよ。もともと俺はエロゲーについては、新しいものはわからないのだ。
むしろ若いのだから、新しいのしかわからないのではないか。と思われるかもしれないがそんなことはない。
発売日からある程度経ってるエロゲーは価格が安くなるが、新作のエロゲーは結構な金額だ。俺は金持ちじゃないので、新しい作品は基本的に買えないわけ。
しかも俺の場合は官能小説が大好きだということからもわかるとおり、グラフィックやアニメーション、ゲーム性とかではなくシナリオ重視。
このエロゲーをやってないようなやつは、人生の半分を損している。
そんな評価をされている名作エロゲがいくらあると思っているんだと。
なので、そういうのをやるだけで精一杯だったわけで、今やってるのは大変新鮮な印象です。
うっかり夢中でプレイしないように、なんか喋らないとな。
「え、フルボイスなんだ」
「そうですよ」
「小江野さんもやってるの?」
「やってないです!」
「残念だなあ」
「残念なんだ……」
映像がある分、ラジオよりは無言に耐えられるが、基本的には喋ってないといけませんね。
ラジオのメインスポンサーは、エロゲーのダウンロード販売サイトだったのです。よって販売中であれば過去の名作の話をしてもオッケーだった。
今回の動画サイトのスポンサーは、製作販売をしているレーベルです。
現在絶賛販売中となっているゲームと、今度発売される新作タイトル。その紹介をするのがメインとなっている。
そのため今は去年発売されたタイトルをプレイしているというわけ。小江野さんは事前にプレイ済みで、俺は知らなくて驚く役目、彼女が知ってて解説するというラジオのときとは逆の立場になった。
ところが、小江野さんはまったく進行なんてしてくれないので、俺がゲームをプレイしながら喋って、相槌をしているだけという状況です。
「しかし、イラストが美しすぎる」
「そうですよね~」
「結構動くよね」
「そうなんですよ」
……ぽんこつか?
マジで相槌をしているだけなのよ。これは解説でもなんでもないし、先にプレイしていた意味もないぞ。
これ、コンテンツとして成り立ってます?
俺はディレクターの方を見やる。
なにそのジェスチャー……俺を指差して、両手を合わせてペコペコ……なんとかしろってことらしい。おいおい、ディレクションしてくれよ。
しかし美人ディレクターにお願いされちゃったら、任されるしかないな。大人の美人がペコペコしてるのなんか可愛いし……うむ……。
ふーむ。
「小江野さんは、どのキャラが好きなんですか?」
相槌以外のことを話させるには、質問をすればよかろう。
登場人物がある程度出てきたので、誰を攻略するか決めておいた方がいいし。
「そうですねえ、四十八先生が気になってるキャラは誰ですか?」
出た―!
質問に質問で返すやつー!
視聴者は小江野さんの好きなキャラが知りたいのであり、俺の好きなキャラなんて興味ないだろ、常識的に考えてー!
ただ不毛なやり取りをしてもしょうがない。
「この子ですかね」
「あ、やっぱり。先生はロリコンですもんね」
「……えっ」
俺がロリコンだと?
とんでもないことを言われたな。
「いやあの、このゲームに登場する人物はすべて18歳以上なんですけど?」
「そうでした」
まったく。
俺のことはなんて言われてもいいけど、エロゲーがヤバいものだと思われたらどうすんの?
誰がどう見たって、大人の女性だろうが。
「ランドセルをしょってたので間違えてしまいました」
「小江野さんはおっちょこちょいですね!」
まったく。確かにランドセルは似合ってるけど、大人なんですよ。
意外とランドセルが似合う大人の女性は多いんですよね。ええ。
「背は低いですけどね」
「まー、大人でも150センチない人はいっぱいいますからね」
「胸も小さいですけどね」
「まー、大人にしては小さめですけど、ランドセル背負ってると大きく見えますよ」
「ツインテールですしね」
「まー、大人はあんまりしないですけど、個人的にはもっとみんなツインテールにしてもいいと思いますね」
「ぱんつも可愛いですしね」
「まー、大人はあんまり履かないでしょうけど、猫ちゃんのプリントされたぱんつ可愛いですよね」
「このロリコン!」
「ええ!?」
どうしてしまったんだ小江野さんは。
何度も言うけど、これは18歳以上のキャラなんですよ。
「いやいや違いますって。こう見えても子供じゃなくて――」
「四十八先生の彼女は小学生ですもんね」
「ふあっ!?」
何を言い出すんだこの人は。
確かに俺の彼女は渋谷百九、小学六年生だ。それを隠すこともしないが、何もここで言うことないでしょうよ。
「ま、まあまあまあ。俺のことはやめましょ。ゲームのね、ゲームの話をしましょう」
「そうでした」
ふーっ。あぶねーっ。
小江野さんも一応プロだからね。仕事はちゃんとしてくれるはずです。
「じゃあ、このロリ――じゃなくて、
「今ロリって言いましたよね」
「言い間違えちゃった、てへ」
「……」
てへ、とか言ったあと無言はやめてくれますかね……。恥ずかしいんですよ。
せめて相槌を打つのがあなたの仕事では。
まあ、進めるか……。
『おにいちゃ~ん! うりゃ~!』
キンキンに甘ったるい声とともに、画面が揺れた。
これは飛びかかられたことの演出なのだろう、すごいね。
「これはいいな」
「やっぱりロリコン」
「はあ!?」
なんか随分つっかかってくるんですけど、この人。
男がエロゲーやってるときに隣にいる女の人って、普通はもっと優しいものでは?
がんばれがんばれって応援くらいしたらどうなんだ。
『おにいちゃん、この格好どう?』
ゲームの中では、裕佳梨ちゃんがスク水姿となっていた。
「いいね最高だよ、っと」
「ロリコン」
「いや、もう一つの選択肢の方がヤバいだろ。めちゃくちゃにしてやりたい、だぞ」
「変態」
「うーん。じゃあそっちの方がよかったか」
変態と言われるのはやぶさかじゃないからな。ロリコンは心外なんだよ。俺は多少年下もイケるだけで、年上もイケるのだから。
『このロリコン!』
ええー?
「ほら、この娘も言ってますよ」
「この娘は、あれか、同い年のキャラだな」
ちなみに裕佳梨ちゃんの年齢は今のところ不明。年上の可能性もある。ランドセルをしている300歳とかザラにいるかんね。
「
この言い方。
明らかにこの娘を推してるとしか思えない。
「さっき好きなキャラ聞いたとき言わなかったよね」
「普通は選ぶと言ってるんですよ」
機嫌悪くね?
なんか知らんけど、機嫌悪くね?
これ動画コンテンツなんですけど?
基本的に小江野さんの笑顔が見たくてみんな視聴するんだろうに。
「プレイスタイルは人それぞれだろ……俺はですね、最後まで楽しくプレイするために、本命のキャラは後回しにすることが多いです」
「えっ!?」
「ほら、好きな順番でクリアしちゃうと段々テンション下がっちゃうじゃないですか。どうせ全員クリアするんだから、楽しみはとっておいた方が」
「ほ、本命はとっておくタイプ……?」
「そうなんですよね~」
好みのタイプというよりは、正ヒロインっぽい娘とかはとっておくことが多い。
基本的には何も考えずにプレイするけども、なるべく脇役というかメインどころじゃなさそうなキャラから攻略するかな。
早めに初回プレイを終わらせた方が、おまけモードが解禁されて嬉しいという理由もある。
そもそもこの手のものは攻略し終わった段階で、第一印象からどれだけ好きになったかというのが大事だと思うから、プレイ前に好みを決めない方が良いんだよな。
そういうことを加味したうえで、この裕佳梨というキャラは最初にプレイするのに向いてると思いますね。明らかに好き嫌いが分かれるタイプ。
「じゃ、じゃあ、え?」
小江野さんは、なぜかおどろきにとまどっている。収録中だって言ってるでしょ!?
「おっ」
「あっ」
音楽が変わり、そういうシーンに突入した。
ここで選択肢が。
「ランドセルをつけたままか、おろすかの二択か……おろすわけないだろ」
「ロリコン!」
『ロリコン!』
小江野さんはおろか、裕佳梨本人にも言われてしまった。
いや、その、だって、ねえ?
ちなみに、自分を好きな男にロリコンって言うとか……そういうキャラは大好きです。