ファンレター!
それは小説家にとって、いや、クリエイターにとって最も嬉しいもののひとつ!
今回我が家に届いたファンレターは最多。生きていてよかった!
見るからにファンシーな女の子からのものが多いが、渋い茶封筒もある。ひとつずつ、大切に読ませてもらおう。
どれどれ、最初は小学生らしき文字で書かれたコレから。開封する前からほっこりするよ。
「わたしは小学四年生です。メイちゃんもマイちゃんも好きです。でもやっぱりご主人さまが大好きです」
はいはい。一番多いタイプの感想です。
はっきりいって、作者としてはご主人さまに対して思い入れはありません。
むしろなんでこんなセクハラくそ野郎が人気なのか不思議です。いくらイラストがイケメンだからといっても、エロ漫画に出てくるキモいおじさんと中身は一緒ですよ?
いや、そりゃ一応ご主人さまではあるから、それなりに常識や気品はあるが……。
「ご主人さまが、よく頭を撫でたり、よしよししてるのが優しくてステキだと思います」
うん、セクハラなんすよ。ただの。
頭も撫でるが、その後尻も撫でてるし。よしよししながら尻も触ってるし。ダイレクトに尻とは書いてないが……まぁ小四じゃわからないか。本当は尻の穴にまで指が届いている事も把握しているあげはちゃんが特殊なんだ。
もしご主人さまのようなことを先生がしてきたら即通報するんだよ……。
「ご主人さまは本当にメイとマイが大好きなんだなーと思います」
まあね。それはそうです。
ただ、あまりキラキラした目で言われたら俺は目をそむけます。
「でも、本当はギフのことが好きですよね」
へ?
ギフ?
誰?
「ギフがマイを預けにきたとき、このカップリングしかないと思いました」
マイを預けに……?
って、あれか。メイとマイの父親のことか。名前も忘れてたわ。
なんでカップリングされてんの?
「マイを預かるとき、顔を赤くしてギフになにか言おうとして言わなかったところ、完全に恋です。ごちそうさまです」
怒ってんだよ!
普通はテレてる仕草を怒ってると勘違いすんだよ。逆のパターンあんまないのよ。
借金返すために自分の娘を売りに来てるおっさんをなんで好きにならんといかんのだ……小四女子はわからん……腐るの早すぎるだろ……。
「ギフもご主人さまの前では笑ってましたし、好きなんだと思います」
いや、そんないい意味で笑ってないよ。
ほらメイだけじゃなく妹も連れてきてやったぜ、ゲヘヘ。金さえもらえりゃこんなやつら好きにしてくれよ。ヒヒヒ。そんな感じよ? クズだよクズ。
ご主人さまなんて、好きなわけないっす。好きなものはギャンブルっす。目を覚ましてくれ、小四女子のファンよ……。
「わたしも大人になったらギフのような男になって、ご主人さまみたいな男と一緒になりたいです」
男の子だった!? 最近はBLが好きな男の子もいるらしいですけども!
正直、男の子からファンレターは滅多にもらえないから嬉しいのだが! だがしかし!
ううむ……ギフの出番を用意するか……この子の将来には責任を持てませんが。恋愛は自由ですからね。
よし、次。
「娘がいつも楽しみに読んでおります」
ほー。親御さんだ。大人だ。これもありがたいですね。
「しかし今となってはわたしの方が夢中になってしまいました」
おー。いや、うん。そりゃ嬉しいですね。
でもあれでしょ、またご主人さまがステキとかでしょ。人気なんだよな、お姉さま方に……。
「特にこのご主人さまが最高です」
やっぱりか……なんでこいつこんな人気なんだろう。お母さま、こいつみたいな男を好きになってはいけません。
「メイへのセクハラの数々、同じ男として興奮します」
お父さんだった!
セクハラだってわかってくれてるぞ!
そしてご主人さまを主人公として気持ちを共有しているタイプだった!
「メイちゃんはカワイイし、お仕置きに興奮してるところ、たまりません」
コレだよ。
本当に欲しかった感想、コレです。
お父さん、本当は娘さんのためじゃなくて、あなたのために書いているんです。
「しかし、メイちゃんはまだしも、うちの娘と同じ年頃のマイちゃんにあそこまでするとは」
OH……。
これはマズイですね……。
自分の娘と同じ年頃の女の子にエロいことをする男。こりゃさすがに許せないということか……お怒りの感想だったか……。
「ご主人さま最高すぎ! わたしも娘の友だちにそういうことをしたいと常々思っていたのです」
そっちかよ!?
お父さん……。ヤバいっすよお父さん……。
「しかし、もちろん我慢しているわけです。その気持ちを、その衝動を。ご主人さまが、この本が救ってくれている。そう思っています。これからもお体に気をつけて頑張ってください」
わかりましたっ!
あれですね、痴漢したくてムラムラしてるおじさんが痴漢モノAVで溜飲を下げてるようなことなんですね!?
お父さんのためにも俺が頑張って小説を書きましょうね。俺の小説は犯罪を予防する効果があるかもしれないんですね。娘さんのお友だちを守れるんですね。モチベーション上がるな~。書くしかねえ!
さて、次はどんなファンレターかな。
「四十八神、崇拝しております」
出だしからとんでもないな。これは嬉しいというより、怖いんですよね。もはや。
「何もかも、素晴らしすぎる小説。いや、小説という言葉ではもはや表せないですよね。
小説だよ。
なんでオラクルってルビ振った? ファンレターにそういうのいらないよ?
「いや、ホント、何もかも最高」
いやー。こういうのむしろ本当に好きなのかって思っちゃうよね。読んでなくても書けるじゃない。どこが最高なのか教えて欲しいんだよな。
「特に好きなところは」
ああ、あるんですね。それは嬉しいなあ。
「文章が美しいところでしょうか」
うーん。そう?
嬉しいっちゃ嬉しいが……別に美しくしてるというわけでもないしな。小学生にもストーリーが伝わりやすいようにしているつもりだ。
「そういう本当の魅力をわからずにご主人さまが好きとか、そういう浅はかな連中には反吐が出ます」
うわー。ご主人さまが好きとかのファンの方が全然いいよー。なんだこいつー。
ちなみに本当の魅力をわかってるのはさっきのお父さんの方です。
「我々はこれからも、この神の如き作品の真の魅力を多くの人々に伝えようと思います。偉大なる同士、清井真奈子さまとともに」
うおーい!
真奈子ちゃんに布教された人だったわ!
うーん、この人はなんか被害者なのかもしれない……。真奈子ちゃんにファンレターを送る強要行為などがなかったか聞かなければ。
最悪洗脳してる可能性まである。催眠術が使える真奈子ちゃんならやりかねないからな。偉大なる同士って書き方も怖すぎるし。もうヤバい団体みたいじゃん。
やれやれ……普通のファンレターが読みたいな。見た目普通のものを選ぶか。
「拙者は、
普通じゃなかった……一行でわかるくらい普通じゃなかった。だからファンレターにルビはいらんて。
「将来はライトノベル作家になりたいと思い、普段は主に異世界バトル物を読んでおる」
ほー。そういうことなら一行目も納得だが。そういう人に読んでもらえるのも嬉しいですね。
「だけどメイドが大好きなもんで、ついつい手に取ってしまいましたっ」
三行目にしてもう将軍っぽさが皆無に。異世界バトル物より日常系を書きそうな文体ですが。メイドが好きだから読んでくれたなんて、いいじゃないですか。ありがたいよ。
「しかしメイはいけません。こういうメイドはいけませんよ」
アンチだったか……。普通のファンレターが読みたかったのに。
「こんなカワイすぎるメイドはいけません! もうメイちゃんの虜ですぅ~」
絶賛だったわ。こういうファンレター欲しかったんですよ。これこれ、こういうのですよ。コーヒーが美味しいよ。
「マイちゃんもぐうかわ。ぐうかわですよ。マイちゃんしか勝たん」
嬉しいけど、本当に異世界バトル物を書きたい人なのかが気になります。私、気になります。
「文章も読みやすくて、ストーリーがすっと入ってくる感じで、とてもいいと思います」
お、おう。いきなりどうした。作家志望っぽいっちゃぽいけど。さすが、美しすぎる文章だの
「今後も楽しみにしています。ちなみにお恥ずかしいのですが、今は官能小説を書いていて、越井野覚三と名前です。それでは」
ちょ、え? マジ? 嘘だろ?
え、これから異世界バトル物書くの? しかも
いや、そんなことはどうでもいい。俺が大好きな官能小説家のひとりで、特にメイドものは最高だ。二十年はこの世界にいる尊敬する大先輩である。そんな人からファンレターがもらえるとは。ひょ、ひょえーっ!
「お、お兄ちゃん、なんで変な踊りを?」
そりゃ混乱もするだろ。くねくねくねくね。
しばらく踊って、興奮が収まってから寝た。