マリポタシリーズ   作:椎名@大体pixivにいる

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「──マリア!」

 

 

 出会えた黒髪のくしゃくしゃ頭に、ぐっと想いが込み上げてきた。これは──愛しさだ。

 僕は『僕』が嫌いだ──そして君のことがこんなにも大好きなんだ。

 

 

「マリア──僕──僕は──」

 

 

 普段ならば人目かまわず抱きしめてくる腕が、拳を作ってこらえている。唇をかんで、眼鏡の奥で瞳を強い意志にきらめかせている。ドラコとはちがう輝きだ。──大好きだ。

 

 

「なぁに、ハリー」

 

「僕────マリアが、きらいだ」

 

 

 ハリーについていた親友二人がハッと息を呑んだ。

 

 

「頼ってくれないマリアがきらいだ。だんまりのマリアがきらいだ。心配ばかりかけるマリアがきらいだ。自分勝手のマリアがきらいだ。僕から離れていくマリアが──きらいだ」

 

 

 僕は────笑った。

 

 

「優柔不断なハリーがきらいだ。八つ当たりばかりするハリーがきらいだ。自分だけつらい顔をするハリーがきらいだ。ひとりぼっちなんて言うハリーがきらいだ。マリアを捨てるハリーなんて──きらいだ」

 

「でも」

 

「でも」

 

 

 一歩を踏み出す。合図なんてないのに同時で、二歩目だって同時で、あっという間に愛しい片割れとの距離はなくなった。

 

 

「「──大好きだ」」

 

 

 ぽろっと、緑色の瞳から涙がこぼれ落ちた。きっと、ハシバミ色からもこぼれていった。

 

 

「マリアが抱えているものが、僕にはわからない。だって教えてくれないから。でも、いいよ。それでいいよ。だってマリアだから──マリアが誰だって、なんだって、僕の兄弟のマリアには変わりないから。だから────僕を見て。ちゃんと、見て」

 

 

「────っ」

 

 

 その、言葉は────

 

 

「──うん。うん。君はハリーだ」

 

「君はマリアだ」

 

「君は僕じゃないし」

 

「僕は君じゃないね」

 

「「…………アハハッ」」

 

 

 兄弟を抱き締める。大好きだ。僕はハリーが大好きだ。だって君は──『僕』じゃない! 愛していいんだ────そうだろう? マリア。

 

 こんなに小さな身体だって──兄弟を抱きしめるには十分なんだ。

 

 

 

 

 

 

「──あの二人って、喧嘩しない分、一度すれ違うととことん手に負えないと思わない? ドラコ。ロンみたいに普段からくだらないことで喧嘩しておけばいいのに。発散のしかたが大袈裟なのよ」

 

「まったくだな。どちらも思い込みが激しいせいで対話をなまける────グレンジャー?」

 

 

 ドラコはふと奇妙な言葉を聞いたとばかりに隣の才女を見た。ハーマイオニーはどこまでも涼しい顔をしていた。

 

 

「なによ、ドラコ」

 

「へーえ。お前もそんな顔するんだ。いいもん見ちゃったよ」

 

「…………なんの冗談だ? グレンジャー、ウィーズリー」

 

「「なんのこと? ドラコ」」

 

 

 ハリー・ポッターの親友たちがニンマリと笑む。ハリー・ポッターと決して繋がれやしなかったドラコ・マルフォイに──差し出した手を取られることはなかったドラコ・マルフォイに、まるで対等のように。まるで──仲間のように。

 

 

「……いいや、なんでもないよ。ロン。ハーマイオニー」

 

 

 そっぽを向いたドラコに、ロンとハーマイオニーはますます笑みを深めた。金髪のあいだから覗く耳がすべてをさらしていた。

 

 君たち三人のことをほんとうは羨ましく思っていただなんて────もう二度と言ってやるものか。

 

 

 

 ***

 

 

 

 寮にて仲直りした僕たちを迎えたのはジニーだった。ハリーを見て、「ちゃんと喧嘩してこれたようね?」なんて茶目っ気たっぷりにすごんでいた。あのジニーがだ。その姿はまさしく『僕』の妻の勝ち気なジニーそのものだった。

 

 

「どういうこと?」

 

「……僕の妹は鬼だった、てことさ」

 

 

 ロンのどことなく遠くを見つつのぼやきに首をかしげる。実はね──恥ずかしそうに語り出したのはハリーだ。

 

 時は遡る。マリアが談話室を出てすぐだ。ジニーと入れ違いになったことに、自己喪失に至っていたマリアは気付かなかった。

 

 

「ねえ、今、マリアとすれ違ったんだけど……ひどい顔色だったわ。いったいどうし──ハリー?」

 

 

 ジニーは戸惑った。談話室内はたった三人だけだというのに混沌状態にあった。

 

 

「ぼく──ぼく、なんてことを──マリアに──なんてこと──」

 

「落ち着けって! ハリー!」

 

「あんなこと言うつもりじゃなかった。僕、おかしかったんだ! あやまらなくちゃ──マリアがっ」

 

「ああもう、いっそ気絶させてしまおうかしら!」

 

 

 ハーマイオニーが暴れるハリーに杖を振り上げる──前に。

 

 パァン。

 

 時でも停まったかのように三人は停止した。──平手を打ち下ろしたジニーを除いて。

 

 

「──どう? ハリー・ポッター。目は覚めた?」

 

 

 ひっぱたかれた頬に手をやって、ハリーはパチパチと無垢な目をジニーへと向けた。その目には分霊箱によって奪われた理性が戻っていた。

 

 

「これが手っ取り早いかと思って。どういう状況か、説明できる人はいないの? ハリーとマリアが喧嘩をしたってこと? それで──マリアがひとりぼっちに?」

 

 

 ハッとハーマイオニーが口をおおう。ハリーを放して立ち上がる。

 

 

「そうだわ──だめよ──マリア、ひとりぼっちなんだわ! あんな状態で!」

 

 

 ロンとジニーをハリーへと押しやって、友人想いの少女は出入口に向かって駆け出した。

 

 

「ハリーはあなたたちに任せるわ。わたし──行かなくちゃ」

 

「えっ──ハーマイオニー!? おぉい……アイツ、行っちゃったよ……」

 

 

 才女の一瞬の判断においてけぼりにされたロンは、呆然とする親友と状況を呑み込めずにいる妹を見て、すべてを放棄したい気分になっていた。──なぜなら。

 

 

「僕──僕も、マリアに会わなきゃ」

 

 

 立ち上がったハリーの腕を取ったのはジニーだった。ジニーの目はおそろしく冷静に据わっていた。ロンはこれまでの兄妹喧嘩から学んでいるのだ。──この状態のジニーには逆らってはならないと。

 

 

「そんな顔で会ってどうするの? なにを言うの?」

 

「謝るんだ」

 

「なにを謝るの?」

 

「ひどいことを言った。マリアを傷付けた」

 

「なにを言ったの?」

 

「──マリアなんて、いらないって言ったんだ」

 

 

 ジニーに掴まれたまま、ハリーは改めて己の言葉を反芻して崩れ落ちた。マリアの目は本気だった。本気で──ハリーを捨ててしまう目をしていた。いつだって猫みたいに勝ち気そうで、けれどハリーを見る時は誰よりも甘くとろけるハシバミ色が冷たく色を落としていた。

 ──自分が、あの目を向けられるだなんて。

 

 

「それだけはだめだ。それだけは言っちゃいけなかったんだ。僕にはマリアがいなきゃ──マリアがいなくちゃ、僕は、なにもできない」

 

「……そう」

 

 

 ジニーはハリーの前へとひざまずいた。そして。

 

 

「それなら──なおさら、マリアの前には出せないわね」

 

「え──」

 

 

 うつむくハリーの顔を持ち上げて、苛烈ににらんでいた。

 

 

「そんな顔で謝られたって、あたしなら出直せって言うわ。……マリアは、許すでしょうけどね。だってマリアはあなたに甘いもの」

 

 

 吐き捨てる。少女はいかる。

 

 

「甘すぎて──あなたを駄目にしちゃうんだわ」

 

 

 最愛の緑を前に、姉と慕う少女を重ねて──どちらにも激しく憤っていた。

 

 

「ハリー・ポッター。あなた、どれだけマリアに背負わせる気なの? 一人で立てもしないの? マリアが支えなくちゃ歩けないの? ──いつまで甘ったれてるの」

 

「────」

 

「マリアはそれでもいいって言うんでしょうね。マリアだもの。あたし、マリアのそういうところ──大嫌いだわ。マリアはマリア自身がハリーを駄目にしてることに気付いてないわ。だってマリアだもの! ──だから、あたしが言うわ」

 

 

 なにもできないなんて嘆く少年に、信じる少女は逃げ道を許さない。

 

 

「いつまでも楽なものにすがるのはやめなさい、ハリー・ポッター。マリアはあなたに安らぎを与える存在よ。そして、あなたから自信を奪っていく存在でもある。あたしは────そんなハリー・ポッターは許せない」

 

 

 だってジニー・ウィーズリーは。

 

 

「あたしが恋したハリー・ポッターは────もっとかっこいい男なんだから!」

 

 

 ハリー・ポッターを愛しているのだから!

 

 

「マリアが許すならあたしが許さないわ。マリアが怒らないならあたしが怒るわ。マリアが投げ捨てるならあたしが拾うわ。マリアに握れない手はあたしが握るわ。──あなたの一番近くで、あなたに恋する女として、あなたを見てきたのはあたしだもの!」

 

 

 たたみかける。わからず屋の鈍感男だ。今だって、ほら、年下の少女の剣幕に負かされて、手を振りほどくことすらできないのだ。──そんなハリー・ポッターが好きだ。

 

 

「きっとマリアがいなくちゃ近付けなかった。マリアがあたしをかわいがってくれるから──妹と呼んでくれるから、あなたの側にいられたの。今だって──こんなにドキドキしてるわ。ずっと──あなたを見てきたの」

 

 

 優しい男だ。でも、子供っぽい男だ。勇敢な人だ。でも、弱虫だ。──そんなハリー・ポッターが好きだ。

 

 

「だからこそ──こんなにも情けないハリー・ポッターは許せない」

 

 

 ジニーの言葉はひどく自分勝手で、希望にあふれていた。

 

 

「あたし、マリアの味方をしてるわけじゃないのよ。だってマリアはひどいもの。あなたはちゃんとできるのに──ちゃんと乗り越えられるのに、マリアは許しちゃうんだもの。つらいって弱音を吐くあなたを肯定しちゃうんだもの。それって──あなたの強さを信じてないってことだわ」

「でも、そんな人がいないと人は潰れちゃう。だから、マリアってひどいけど──大切な人よ。大好きよ。あなたにもあたしにも必要な人。──でも、マリアだけじゃだめ」

 

 

 ジニーは立ち上がる。ハリーも立つ。地を踏みしめてまっすぐな目で少女を見る。

 

 

「マリアでは足りない部分をあたしがおぎなうわ。あなたに恋する女として──それだけは譲れない。マリアが信じない強さをあたしが信じる。マリアが奪った自信をあたしが与える。あたしだって──あたしの『英雄』を支える」

 

 

 ジニーは叫ぶ。叫ぶ。止まらないように。震えてしまわないように。ジニー・ウィーズリーの矜持がハリー・ポッターを揺さぶるのだ。

 

 

「自分を信じられないならあたしを信じればいい。ハリー・ポッターを信じるあたしを信じなさい! あたしの見る目を信じるのよ。ジニー・ウィーズリーが恋した男は──こんなにも情けなくなんてないんだから! あたしに愛されてることを誇りに思って自信に変えなさい!」

 

 

 談話室内に沈黙が落ちた。ロンは唖然としたまま妹を見ていた。ジニーは肩を震わせて息を吐き出していた。ハリーは──笑っていた。憑き物でも落ちたように、穏やかに笑んでいた。

 

 

「君──それって、すごく傲慢だ」

 

「……そうよ。あなたに見合うために、あたし、傲慢で強い女になろうって決めたの。自分に自信すら持てない女があなたの隣に立てるわけないんだもの。あなたにはそれだけの価値があるのよ」

「あなたが不安になるたび、その横っ面をたたいてあたしに目を向けさせてあげる。そしてあたしを見てよーく自分に言い聞かせるといいんだわ。『ジニー・ウィーズリーに愛されてる僕は世界一カッコイイ男なんだ』って」

 

 

 強気な言葉とは裏腹に、ジニーの瞳は潤んでいた。耳は髪と同じくらい染まっていた。ハリーの腕を掴む手は震えていた。

 

 

「……ねえ、ジニー。顔が真っ赤だ」

 

 

 ハリーが頬へと手を添えた瞬間、堪えていたしずくはほろほろと赤い頬を伝っていった。

 

 

「あ──あ──当たり前じゃない! すごく、すごく恥ずかしいわ! あ、あたし、今、とんでもないこと言ってるんだから! ──なによ、笑うならちゃんと笑いなさいよ!」

 

「ええ!? 僕はなんも言ってないだろ!?」

 

「顔が言ってたもん!」

 

 

 照れ隠しに兄を叩き出した少女に、ハリーは思わず腹を抱えて笑っていた。──ああ、こんなにもかわいい子が僕を好きだなんて!

 

 

「ありがとう、ジニー。……行ってくるよ」

 

 

 笑い涙をぬぐって、震えていた手を包み直す。

 

 

「──ちゃんと、喧嘩するのよ」

 

「ああ! ──君が信じてくれるハリー・ポッターだからね」

 

 

 未熟な英雄の心は、少女の『怒り』によって再び息を吹き返したのだ。

 

 

 ──なんて、ことがね。

 照れ臭そうに締めくくったハリーに、僕はジニーを全身全霊で抱きしめていた。

 

 

「ああ、ジニー! 君──最高だよ!」

 

「マリアったら……その反応は変よ。あたし、マリアの悪口を言ったのよ?」

 

「そんなのただの正論じゃないか。……やっぱり、ジニーはジニーだ」

 

「よくご存知のとおり」

 

 

 クスクスと笑う。ジニーも笑ってくれる。嫉妬心はなかった。きっと、ハリーをハリーとして見られたからだ。──僕の愛しい人たちなんだ。

 

 

「……つまり、喧嘩は終わりってことでいいのかしら?」

 

 

 ハーマイオニーの言葉にハリーと共にうなずく。今ならアンブリッジを前にしても腹から笑い飛ばせてしまいそうだ。

 十五年もの時間を軋みながら回っていた歯車は、今、ようやく正常に噛み合ったのだ。

 

 

 

 ***

 

 

 

 きれいな月だ。見上げる影は二つ。この静けさは嵐の前だからなのか嵐の後なのか──ドラコには判別がつかなかった。

 

 

「僕だってわかってた?」

 

「筆跡がちがうからな。──こんばんは、ハリー」

 

 

 月明かりのような髪を持った少年と闇色の髪の少年は、夜の空気に包まれるままに相対していた。ドラコの手には呼び出しの旨が書かれた『通信紙』があった。──なつかしい字だ。

 

 

「ドラコはマリアを 知ってる(・・・・)よね」

 

 

 ハリーがささやく。無駄話をゆるさない断定の声だ。夜は彼に味方をするようにささやかな声すらも響かせた。

 

 

「ああ」

 

 

 ドラコはうなずいた。無為にごまかせるほど──彼はもう子供じゃない。

 

 

「教えてほしいとは言わないよ。マリアの口から聞きたいから。……一生、話してはくれないかもしれないけど。でも──ひとつだけ聞きたい」

 

 

 緑色の瞳がうつくしいと──ドラコは自身に刻まざるを得なかった。

 

 

「マリアはなにに怯えてるの」

 

 

 ハリー・ポッターは求めた。最愛の兄弟のため、兄弟の痛みを共有したかった。それを──彼女は許してはくれないけど。

 君ばかり僕の痛みで泣くなんて──そんなのずるいじゃないか。

 

 

「……これはマリア・ポッターの物語じゃない。だから、信じるも信じないも君に任せよう。なんたって僕はスリザリンで、僕は僕のために平気で嘘をつくからな。だが、それでも語るとするなら────あいつは遺されてきた」

 

 

 ハリーは沈黙した。

 

 

「想いを遺された。命を遺された。希望を遺された。──ひとつも捨てられずに抱えてきた。こんなところにまで」

 

 

 なんて皮肉だろう。彼を前にして──『彼』を語るだなんて。

 

 

「あいつは死をもって守られることしか知らない。だから繰り返すしかない。それがどれほど苦しいことか理解した上で──その方法しか知らないのだから。共に戦う友はいても──共に逃げてくれる大人はいなかった」

 

 

 なにがなんでも、どんな手を使ってでも──どんなに悪事に染まろうとも、愛するもののため生き抜き共にあろうとする。そんな大人はいなかったのだ。『英雄』の周りには。

 グリフィンドールの勇気はうつくしく残酷だ。

 

 

「……そっか」

 

 

 ハリーは静かにうなずいた。

 

 

「責めるなとは言わない。君があれの都合に合わせてやる必要はない。ただ──理解してやってくれ。それこそが、あいつにとっての救いになる」

 

 

 唯一得られた絶対の家族だ。ハリーにとってマリアがたった一人の家族であるように──マリアにとってもハリーはただ一人の家族なのだ。

 

 ハリーは堪えていた最後の一本がちぎれてしまったように、力なくうずくまった。身を丸めて嗚咽をこらえていた。ドラコはそんなハリーを不思議な目で見ていた。

 慈愛ではない。憐憫でもない。愛玩とも憎しみともちがう──心を閉じ込めた宝石めいた瞳だ。

 

 

「君は弱いな、ハリー。……僕が『知る』より、ずっと」

 

 

 頭を撫でていた。触れたいと願っていた感触だ。やわらかくて気持ちいい。けれども──以前ほど心躍ることはなくなっていた。別の髪の感触を知っているからだ。

 

 

「その弱さが愛しいよ。君の脆さこそが──君のさらけ出された弱さこそが、『彼』が努力してきた証だから」

 

 

 憎しみも、悲しみも、痛みも、怒りも──すべて、置き去りにした『彼』の上に積み上がってきたものだから。

 

 

 

「マリアは──どこへ行き着くんだろう」

 

 

 

 

 ドラコ・マルフォイは罪を犯した。

 

 

 

 

「どこにもいけないよ。彼女はただひとりを──救いたいだけなんだ」

 

 

 

 

 置き去りにした場所で──罪を犯した。

 

 

 

 ***

 

 

 

 

 

 失敗した。

 

 イヤリングを握りしめながらその人を見上げる。

 

 失敗した。

 

 冷たい顔だ。そこに憎しみはなかった。──人形のようだ。

 

 失敗した。

 

 周囲は囲まれていた。どうあっても突破口はなかった。

 

 失敗した。

 

 その手を掴むしか──生き残るすべはなかった。

 

 

 

「共に来ていただこう。──マリア・ポッター」

 

 

 

 

 

 僕は────『マリア』の価値を見誤った。

 

 

 

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