マリポタシリーズ   作:椎名@大体pixivにいる

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 ──レビコーパス!!

 叫んだ。ハリーだ。スネイプの身体が螺旋階段の手すりへと叩き付けられる。続けて武装解除によりスネイプの杖とダンブルドアのニワトコの杖がハリーの手へと渡る。ハリーは己の杖を血管がちぎれんばかりに握りしめて絶叫した。

 

 

「信じてたのに──先生はあなたを信じていたのに!!」

 

「……その呪文……やはりそうか。今年に入って異様に魔法薬の腕が達者になったと言われたのも……フン、とんだ笑い種だな」

 

「何が言いたい!」

 

 

 ハリーとスネイプの一騎討ちと化した舞台に息を呑む。だめだ。スネイプは丸腰だ。ハリーは周りが見えていない。このままでは取り返しのつかない過ちを犯してしまう。──だって彼は『(ハリー)』だ!

 息を殺したままハリーが捨て置いたと見られる透明マントへと近付く。はおって身を隠す。もう少し──タイミングをはかれ──あせるな──あと少し──

 

 

「半純血のプリンスの教科書を使っていたな? ポッター。──その呪文を編み出したのは我輩だ。我輩の母の名は純血の魔女アイリーン・プリンス。我輩こそが半純血のプリンスなのだ」

 

 

 スネイプの告白にハリーが瞠目した。そして────緑の憎しみをさらに燃え上がらせた。

 

 

「つまりあなたは────お前は、ダンブルドアだけでなくマリアすら騙していたのか」

 

「……なに?」

 

「マリアはプリンスの呪文を知っていた。マリアはマフリアートを使っていた──お前が創作した呪文をマリアが知っていたんだ! いつからマリアを利用していた!?」

 

 

 スネイプに動揺が走る。当然だ。スネイプはそんなことは知らない。マリアが自分の創作呪文を当たり前のように使っていたなんて知らないのだ。

 なんて失態だ。また、僕が────この人を追いつめるのか。

 

 

「ハリー、違う! スネイプは関係ない!」

 

「マリア!?」

 

 

 透明マントを投げると同時にハリーへ飛びかかる。彼が握っていたスネイプの杖とダンブルドアの杖とを叩き落とす。蹴って二本をスネイプの元へと滑らせる。スネイプが無駄なく拾ったことを確認して、もがくハリーを全身を使って押さえる。

 

 

「マリア、邪魔しないでくれ! あいつは君を騙してたんだ、僕はこの目で見た。あいつがダンブルドアを殺した!!」

 

「そうじゃない、僕は──」

 

 

「へえ。お前がダンブルドアを殺ったのかい。そいつはお手柄じゃないか──ええ? セブルス?」

 

 

 ねっとりと舐めるような女の声────ベラトリックス・レストレンジ。

 うねる黒髪の向こうで獣じみた目がハリーを捉えては舌舐めずりしていた。嗜虐的にうっそりと狂気を見せていた。──死喰い人たちが天文台へと追い付いた。

 

 

「……魔法省が来る前に引き上げるぞ。ベラトリックス」

 

「ベイビーちゃんたちはいいのかい? ごらんよ。この状況でピーチクパーチク喧嘩してる」

 

「それらは帝王の獲物だ。目的のダンブルドアは死んだのだ。勝手に手出しして、またお叱りを受けたいのか?」

 

「チッ……お前が大きな顔してられるのも今のうちだよ」

 

「──ッ待て!!」

 

 

 撤退の姿勢を見せた死喰い人たちにハリーが噛み付く。僕を突き飛ばしてスネイプへと杖を向ける。壁ごとくずれた向かいからルーピン先生とハーマイオニーの駆け上がる姿が見えた。ハーマイオニーが僕とハリーと、おそらくスネイプを目にして顔を明るくした。ハリーが唱えた。

 

 

「セクタムセンプラ──!!」

 

 

 

 ──ああ、なるほど。……これはいたいや。

 

 

 

「──ッマリア!!」

 

 

 誰かに抱き留められた。ルーピン先生だろうか。いたい。身体中から血が噴き上がってる気がする。飛沫が顔をぶつ。いたい。ハーマイオニーの声だ。ハーマイオニーが泣きながらエピスキーをかけてくれてる。いたい。たくさんの声が頭の中で飽和する。ベラトリックスの笑い声が聞こえる。いたい。いたい。

 ごめん、マルフォイ。……これ、すっごく痛いよ。

 

 

「マリア──そんな──」

 

 

 ハリーが膝をついた。ハリーのズボンが僕の血を吸っていく。ハリーの手から杖が転がる。どうにか蒼白のあの子に手を伸ばそうとして────彼が嗤った。

 

 

「ハ、ハ──ハハハ──愚か者が! 大馬鹿者が! 我輩にお前の妹が操られてるとも知らずに! その手でお前は愛するものを殺そうとしたのだ。あやうく家族を手にかけそびれた!」

 

「セブルス──? これは……ハリー、君は──」

 

「スネイプ先生……?」

 

 

 ゾッとした。戸惑う二人を置いて足に力を入れる。服ごと裂かれた胸を押さえる。点滅する視界にスネイプを見る。僕の中で炎が燃え上がっていた。

 彼はとんでもないことを言おうとしている。彼は最悪を騙ろうとしている──!

 

 

「マリア・ポッターは我輩の服従の呪文にかかっていたのだ」

 

 

「「──セブルス・スネイプゥゥゥッ!!」」

 

 

 吼えた。最低だ。なんて庇い方だ。あなたはどこまで僕を馬鹿にすれば気がすむんだ──!!

 

 

「ゆるさない──ゆるさないぞ、ぜったいに! 僕はお前をゆるさない!」

 

「マリア、だめよ! しゃべらないで……死んじゃうわ!」

 

「離せ、ハーマイオニー! あいつだけは────ゴフッ」

 

「マリア!」

 

 

 口からも鼻からも血溜まりを吐き捨てて、逃げるスネイプを意地だけで睨み続ける。追うハリーの背がある。死喰い人の攻撃をルーピン先生が防いでいる。フェンリール・グレイバックが雄叫びを上げる。──その先をスネイプが罪を背負って走る。

 

 

「ゆるさない──最低だ──あの大嘘つきめ! ぜったいにゆるさないッ!」

 

「マリア……」

 

 

 もはや自身が痛みで喘いでいるのか怒りで喘いでいるのかわからなかった。無我夢中だった。そうだ。はっきり言って、正直言って、率直に言って────僕は自暴自棄なのだ!

 セドリックもシリウスもダンブルドアも誰一人繋ぎ留められなくてムカついているのだ。自分自身にムカついている──無力を憎んでいる!

 

 八つ当たりしてやる────八つ当たりであんたを絶対に生かしてる!

 

 

「逃がすもんか! 許すもんか! あんたに安らかな死なんて────与えてやるものか!」

 

「ハリー」

 

「僕はポッターだからあんたに恨まれるのなんか痛くもかゆくもないんだ、だから優しくなんてしないんだ」

 

「ハリー」

 

「僕は……ッ、どうして、」

 

「ハリー」

 

「ゥ──ああああああああああああああッ」

 

 

 叫んだ。怒りに任せて叫び続けた。唯一(マリア)をハリーと呼べる男の胸に抱かれながら。慟哭した。

 

 

 ハリーでもマリアでもあなたの救いにはなれないだなんて────そんな現実は許さない。

 

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