マリポタシリーズ   作:椎名@大体pixivにいる

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 ただいまと言うはずだった。この場所で。彼からおかえりをもらうはずだった。

 

 

「ポッター様」

 

 

 小さな手だ。小さな手が四本もあるのだ。それなのに──うちの二本は動かない。

 

 

「ポッター様……ドビーは、」

 

「だまってくれ」

 

「ドビーはあたしたちのために、魔法を使いました。妖精の魔法です。触れたものを一緒に、思った場所に移動させる魔法。魔法使いの姿眩ましよりも、もっと強力な魔法」

 

「ウィンキー、だまって」

 

「ドビーはポッター様を助けました。ドビーはウィンキーを助けました。だからドビーは、」

 

「黙れと言ってるのがわからないのかッ!!」

 

 

 腕の中にあったあたたかい体を突き飛ばす。残るのは熱を喪いゆく亡骸だけだ。──ドビーの体だ。

 わかっていた。どうにもならない。死んでしまったら、体温はよみがえらない。怒ろうが、泣きわめこうが、死神に祈ろうが──結末は変わらない。

 

 

「ポッター様……」

 

 

 ウィンキーを目に入れたくなくて、眠ったようなドビーを見つめた。

 ハリー・ポッターと名を呼んで、ルーナの手で目を閉じられた『君』──友達と呼んでくれた、人でなしの君。

 

 

「僕は、君に命をとして守られるほど──価値のある人間になれていたのか」

 

 

 悔いがにじみ染みついた声だった。情けなくかすれて消えてしまいそうだった。……消えてしまえれば、よかったのに。

 

 

「──マリア! こちらにいたのか。それもそうか、ドビーは貝殻の家を知らな──────そうか」

 

 

 グリモールド・プレイスの館の先でうずくまる僕に、ドラコの手が置かれた。介護同然に屋内へといざなわれる。ドビーの亡骸を僕のベッドへと寝かせる。

 

 

「弔いましょう。勇敢なる隣人を」

 

 

 アステリアの声にぼんやりとうなずく。

 

 

「──海の見える場所がいい。ドビーは、自由を愛していたから」

 

 

 向かう先はハリーたちとの約束でもあった貝殻の家だ。そこからならば広く広く海を見渡せる。ドビーを丁寧に抱え直して、ドラコとアステリアへと片腕を差し出す──と。

 

 

「ウィンキー」

 

 

 アステリアは僕の手を取ることなく、ウィンキーへと人形めいた表情で向き直っていた。

 

 

「ウィンキー、こちらを」

 

 

 強引に何かをウィンキーに握らせる。──黒い、レースの手袋。それは。

 

 

「ダフネ──ダフネ様の、手袋です。お前も屋敷しもべ妖精であるなら、意味はわかりますね?」

 

「あ、ああ……そんな……あんまりです、あんまりです、お嬢様。ウィンキーは受け取らない! ウィンキーは『洋服』を受け取らない!」

 

「ウィンキー──これであなたは自由です」

 

「ああああ……っ」

 

 

 泣き崩れるウィンキーを見るアステリアの目はいっそひややかだった。ドラコによく似た、氷の目だ。──その目は僕へと標的を変える。

 

 

「マリア、あなたには彼女を連れ出した責任があります。──彼女を背負う、責任があります」

 

「……そのとおりだ」

 

 

 ドビーを抱えたまま、ウィンキーの前へとひざまずく。ウィンキーはこの世の終わりとばかりに打ちひしがれている。

 僕は彼女にむごい仕打ちばかりを繰り返してきた。そして、きっと、これからも──ドビー以上に彼女のことを思いやってやることはできない。それでも。

 

 

「ウィンキー。君が望むなら、僕は君をこの家のしもべとして雇いたいと思う。もちろん、嫌なら断ってかまわないし、別の家のしもべになりたいのなら僕にできる協力は惜しまない。いつだって『洋服』を要求していい。……どうか、考えてみてくれ」

 

「ポッター様……」

 

 

 涙でダフネの手袋をびちゃびちゃに濡らしたウィンキーが、泣き続けながらそろりと僕を見上げた。憐れなしもべへ、かろうじて笑みを作って見せた。

 ウィンキーがいる限り、僕はドビーの最期を忘れないだろう。色褪せることすらない。彼女に心を砕くたび──僕は僕の過ちを噛み締め咀嚼し脳へと刻み込むのだ。僕が死ぬ、そのときまで。

 

 

「さっきは八つ当たりしてごめん。いってくるよ。……屋敷を、任せてもかまわないかな」

 

 

 今度こそ、差し出した腕にはドラコとアステリアの手が重なった。向かうは海広がる慎ましい夫婦の一軒家。──友にふさわしい、最上の弔いを。

 

 

「いってらっしゃいませ、マリアお嬢様」

 

 

 姿眩ましの瞬間、聞こえた屋敷しもべ妖精の声は、それまでの悲劇をすべて忘れてしまったかのように歓喜にあふれていた。

 

 呪詛みたいだ。

 

 

 

 ***

 

 

 

 貝殻の家の前で待っていてくれた守人のビルから住所を聞き取り、無事にハリーたちと再会する。三人組は誰もが激戦を潜り抜けてきたと言わんばかりの有り様で、大忙しのフラーとルーナからローテーション式に治療を受けていた。

 

 

「ロンったらすごいのよ! 屋敷の間取りを把握するだけでなく、誰がどこへ動くか、次はどこが脅威になるかをハリーが忍びの地図でも見るみたいに当ててしまったの!」

 

「まあね、ほら──ようはチェスみたいなものじゃないか? 戦略ってやつはさ」

 

「あなた、それって最高の才能だわ! クィデッチでもきっと頼りにされるにちがいないわ! けれど、今に限ってはだまって治療を受けるのが──マリア? ずいぶんと上の空だけど、さっきからなにを抱えて──」

 

 

 治療がロンへ回ったために、痛みの意識そらしか、治まらぬ興奮からか、小声ながらも止まらなかったハーマイオニーのお喋りはそして尻すぼみに消えていった。ロンの怪我に夢中だったフラーやルーナも手を止め、はじめて気付いたとばかりに言葉なくドビーの遺体を凝視した。

 

 

「……ハリー、僕の毛布、持っていてくれてるよね」

 

「もちろん」

 

「魔法は使いたくないんだ。……手伝ってくれる?」

 

「手伝いじゃない。──僕も、そうしたい」

 

 

 優秀な脳みそで瞬時に事態を理解したハーマイオニーの瞳からは、止めどなく涙があふれていた。そんな彼女の肩を、ロンが体を引きずりながら引き寄せた。

 

 

「ああ、あああ、そんな……なんてことなの……ドビー、ドビーでしょう? ドビーなのよ。ドビーがわたしたちを助けてくれたの。あの鬼畜女の人質になりかけたわたしを、ドビーが救ってくれたのよ。わたし、素敵な靴下をいっぱいいっぱい用意して、きっとお礼をしようと思っていたのに……こんなことって」

 

「ドビー、まるで眠ってるみたい」

 

 

 ガーゼを片手に、ルーナがふんわりとドビーの耳を撫でる。その上から、ハリーが己の物と色違いの毛布をかぶせた。

 

 

「……ほんとうにいいの? マリア」

 

「ああ。母さんの形見なら、ハリー、君の一枚があれば十分だ。それに……この毛布に会いに、母さんがドビーの元を訪れてくれるかもしれないから」

 

 

 そうして、家主のビルに断り、応急処置を終えたハリーと共にスコップを持って海の見える庭へと出た。会話も合図もなくもくもくと穴を掘る。しめった土のにおいの中に、風に流された潮のにおいが混ざる。心地好いはずもない。けれども、互いに手を休めることはなかった。そのうちに、スコップの数は三つになり、四つに増えた。ロンとハーマイオニーだった。

 各々、思い思いに服を着せたドビーを、最後にマリアのおくるみで包んで墓穴の前へと運ぶ。ルーナが代表して祈り、全員が見守る中、再び手作業で土を被せていく。墓石の仕上げはハリーだ。ハリー操るドラコの杖で、石に『自由なしもべ妖精 ドビー ここに眠る』と刻む。

 質素な手作り墓が完成する頃には陽もすっかり海との境界へと沈み、庭に出ているのは僕とハリーの二人だけになっていた。夜が運ぶ波の音が眠る妖精への子守唄に聞こえた。

 

 

「どこか頭がすっきりしてるんだ。額の傷はめちゃくちゃに痛むのに」

 

 

 ハリーが遠くを見ながらこぼした。夜空を見ているのか、海を見ているのか。きっとそのあいだだ。──彼の中で選択は定まったのだとわかった。

 

 

「穴を掘ってるとき、色んなことを考えた」

 

「うん」

 

「グリーングラスの屋敷で、ワームテールに会ったんだ。彼、僕に杖を向けられてるっていうのに、笑った。『ジェームズ、やっと僕を殺してくれるのかい』──そう言った。あいつとの魔法使いの絆は、きっと、父さんとも繋がってた」

 

「そうだね。そうかもしれない」

 

 

 足元から冷えがやって来る。現在の僕の格好といえば、泥だらけにした薄っぺらなドレスにドラコの──否、元の持ち主であるハリーのドレスローブのみだ。当たり前に寒い。それでも、この場から動きたい気持ちは微塵も湧かなかった。

 ハリーは星を映したみたいな鏡面めいた瞳で続けた。

 

 

「グリップフックとオリバンダー──僕はどちらと先に話すべきだろう」

 

「それは僕に聞く必要があるのかい? ──答えはとっくに出てるくせに」

 

 

 笑ってみる。笑い声が返ってくる。だって、そうだ。僕にはわかるのだ。いいや、『僕』だからわかるのだ。その緑は──決意の色だから。

 

 

「ダンブルドアは意地悪だ。遠回りさせて、ヒントなんてほんの少しで、わざとややこしくした」

 

「君に考えさせるためにね」

 

「僕は知る必要があった。けれど、求めてはいけないんだね」

 

「君がそう思うなら」

 

 

 ふと、ハリーの瞳の輝きは、世界の境目から再びドビーの墓石へと収まった。そして貝殻の家へと移るのだ。彼は動くことを決めた。

 ドアノブに手をかけ、振り返らずに愛しいひとへと乞う。ハシバミの慈悲を望み、ちょっとだけ恨めしくも思う。

 

 

「マリア、ひとつだけ答えて。なぜなら、今、この世でもっともダンブルドアに近いのは君なんだから──」

 

 

 ハリーは振り返らない。彼女の目を見れば揺れてしまうから。たぶん、ハリーをほんとうに苛んできたのは、愛する片割れの瞳だ。

 

 

「僕は、間違えてる?」

 

 

 マリアはたっぷりの愛情だけを込めて、とろりと瞳も声も愛に溶かして告げた。

 

 

「ああ。────だから、君ならたどり着けるよ。ハリー」

 

 

 

 ***

 

 

 

 ハリーたちがグリップフックとオリバンダーと話し合うあいだに、僕たちは貝殻の家とは比較対象にもならない豪奢な屋敷へと移動していた。『僕たち』とは、(マリア)と、ドラコと、アステリアのことだ。さて、屋敷の中から出迎えてくれたのは、ドラコの母ナルシッサだった。

 これ以上、貝殻の家に負担をかけるわけにはいかないので、アステリアの保護は別の宛てに任せるとドラコがビルたちを説き伏せた結果だった。その宛てこそが、ここ、僕が秘密の守人を務めるマルフォイの別邸なのだ。

 

 

「つまり、ドラコ。あなたはこちらのミスグリーングラスを我が家へお招きしたいと言うのね」

 

 

 やむを得ずフラーから借りた防寒用の上着とネグリジェだけの、いかにも訳ありな姿で立つアステリアをうさんくさげに一瞥したナルシッサは、どうにか冷静に努めて息子へと再度の確認を取った。音信不通だった息子が唐突に訪ねてきたかと思えば、異性の後輩を連れて、かつ、その保護を頼むというのだから、母としてはそれは困惑の極みだろう。至極当然のナルシッサの不審感を隠しきれない反応に、凛然と返したのはドラコではなくアステリアだった。

 

 

「夜分遅くでありますこと、そしてこのようなはしたない格好でお訪ねしましたこと、心よりお詫び申し上げます。マルフォイ夫人。そして、正式に謝罪する名を持たぬ身(・・・・・・・・・・・・・)であること、汗顔の至りと存じます。つきましては、わたくしのことはどうぞアステリア(・・・・・)と──ただのアステリア(・・・・・・・・)とお呼びください」

 

「──!」

 

 

 ピンと──アステリアを運ぶためだけの存在、つまりは、役目を終え蚊帳の外だった僕すらも思わず背筋を伸ばしてしまうほどに、奇妙に空気が張った。アステリアを見定めていたナルシッサの表情がガラリと変わったからだ。

 

 

「──ドラコ。もちろん、彼女を──アステリア(・・・・・)を、マルフォイ家が保護するこの意味を、あなた、わかって言っているのでしょうね」

 

「無論です。母上」

 

 

 蚊帳の外が加速する。僕には理解できないお貴族さまルールが勃発しているらしい親子のやり取りに、すっかり呆けて壁のシミと化そうとしていた僕へとアステリアがクスクス笑った。困ったふうな眉がなんとも愛らしい。

 

 

「やっぱり、マリアは理解していなかったのね。今のわたくしはグリーングラスの姓を名乗れないのです。ダフネ様のお言葉は事実上の絶縁宣言ですから」

 

「えっ……ええ!?」

 

「そして姓を持たない子供を貴族が保護するとは、すなわち養子縁組を指します」

 

「エーッ!?」

 

「うふふ、どうしましょう。このままではわたくし、アステリア・マルフォイと名乗らせていただくことになるやもしれません。とっても素敵」

 

 

 茶目っ気たっぷりにおどけるアステリアは、ほとんど死人同然の姿を見てしまった反動からかそれは精力的で魅力にあふれているが、問題はそこではない。

 

 

「おおい、ドラコ。君……いいのか? このままだとアステリアと結婚できなくなるぜ?」

 

 

 母親と難しい顔を突き付けあっていたドラコへと小声で注意を引けば、よく似た顔が同時に僕を見た。

 

 

「できるぞ」

 

「できるわ」

 

「えっ」

 

「はい、できます。しませんけれど」

 

「えっ」

 

 

 お貴族さま三人から淡々と驚愕の解答をいただき、知らぬうちに体が後ずさっていた。

 

 

「結局のところは一時措置だ。結婚したいと思えば、縁を解消し関係を結び直せばいい。さすがに実妹となると問題があるが、赤の他人ならまあ、稀にある話だ」

 

「ひえっ」

 

 

 同じ魔法界だっていうのに、とんでもないカルチャーショックを受けた。つまりは、つまり────ドラコはどう足掻いてもアステリアを逃がす気はないという話だ。このスリザリンめ。

 

 

「余計な邪魔が入りましたが(「悪かったな!」)話を戻しましょう、母上。あなたは僕に借りがある。僕はあなたの最愛を救った。次は、僕の最愛をあなたに助けていただく番だ」

 

 

 僕の茶々はまたたく間に蛇たちに呑み込まれ、親子のにらみ合いが再開した。しかし、僕もドラコも知っている。ナルシッサは──ナルシッサ・マルフォイという人は──

 

 

「──わかったわ。借りだなんだと持ち出されれば、私に反論の余地はないのだもの」

 

 

 一人息子に極限に甘いのだ。

 

 

「ついていらっしゃい、アステリア。まずはその信じられない格好をどうにかするとしましょう。さて、私のドレスは残っていたかしら」

 

 

 ナルシッサがきびきびときびすを返す。そして立ち止まる。振り返って、ドラコへと青い目をゆるりと細める。

 

 

「……母上?」

 

「ところでドラコ。あなた、とんでもなく致命的でおろかな間違いをしていますよ。────私の最愛は、あの人だけではありません」

 

「…………」

 

 

 硬直するドラコを置いて(アステリアはしきりに振り返りお兄様(・・・)を気にしていたが)女性二人の背中が屋敷の奥へと消える。おいてけぼりにされたドラコは。──ドラコは。

 

 

「ママに愛してるって言ってもらえてよかったね、坊っちゃん」

 

「………………だまれ、ポッター」

 

 

 やっぱりマルフォイはこのくらいがからかいやすくて良い。

 

 

 アステリアと別れ、貝殻の家へと戻れば、面々はすっかり就寝していた。それもそうだ。時刻は深夜へさしかかろうとしているのだから。僕らのために、玄関の鍵をかけずにいてくれたビルの気遣いに感謝しながら(忠誠の術で守られているとはいえ、気持ちの問題だ。)明かりのないリビングでドラコと二人、雑魚寝を気取る。

 

 

「ドラコ」

 

「なんだ」

 

 

 グリモールド・プレイスの夜とはちがう背中の固さに、寝返りを打つ。──綺麗な顔だ。僕の死神は、今日も闇を味方にしてしまったらしい。贅沢な男め。

 

 

「ウィンキー──あんな広い家で、ひとりなんだね」

 

「ああ。そうだな」

 

「疲れたなら損得で考えてしまえ、て──うん、君、いつかで言ってた。いい見本を見せてもらったよ」

 

 

 ドラコから視線を外し、顔を正面へと戻す。真っ直ぐ見上げた天井は暗い。なにも見えやしない。──なにが見たいのかもわからない。

 

 

「つかれた」

 

 

 なにも見えないから────目をふさいだ。

 

 

「ドビーは僕のせいで死んだ」

 

 

 ドラコは答えない。

 

 

「……あの時みたいに、君のせいではない、すべては自己責任だ──て、言わないの? シリウスも、セドリックも、ダンブルドアも──勝手に守って、勝手に死んだんだって」

 

 

 ドラコは答えない。

 

 

「ドビーは勝手に死んだんだ」

 

 

 ドラコは答えない。──ドラコは笑っていた。

 

 

「いいや。ドビーは情け容赦なく、完璧に、君のせいで死んだ。────そう、言ってほしいんだろう?」

 

 

 目を閉じていたはずだった。目をふさいだはずだった。けれど、この男だけは見えてしまうのだ。天使みたいな死神だけは僕を放してくれないのだ。

 

 

「責めてほしいんだろう? 苦しくてたまらないから、もっとボロボロに、ズタボロに痛め付けてほしいんだ、君は。別の痛みがほしいんだ。真っ直ぐ受け止めるには痛すぎるから。……難儀な生き方だな、英雄気取りのポッター」

 

「ひどいなあ」

 

「ポッターへの嫌がらせならこの世の誰よりも得意でね」

 

 

 クックと笑い合う。こんな暗闇に響く僕たちの笑い声は、もしかするとものすごく不気味に変化してるかもしれない。今ならば、ルーナよりもずっとずっと奇妙な生き物になれる気がした。

 だって、こんなにも──こんなにも────

 

 

「君って、ほんとうに────ひどいや」

 

 

 美しい死神の胸にしがみついて、僕は悔しさに泣いた。

 

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