マリポタシリーズ   作:椎名@大体pixivにいる

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 ドラコ・マルフォイは、人生まるごとかけて拗らせたかつての憧れ、ハリー・ポッター一味の一人として旅に参加したことを、今、はっきりと後悔した。

 

 

「いくらなんでも──命がいくつあっても足りないぞ、英雄の親友は!」

 

 

 暴れる盲目のドラゴンの背にしがみつきながら、かなり情けない形相で後悔していた。

 

 

 

 そろそろ、行動へ移そうと思う。切り出したのはハリーだ。それを聞くのは、お馴染みの親友二人と、マリアいわくのオマケ、ドラコ・マルフォイ。そして、こたびのミッションの重要案内役を務める気難しいゴブリン──グリップフック。四人を見渡せるようベッドに腰掛けたグリップフックは、憎き魔法族に利用される事実にそれは不快感たっぷりにふんぞり返っていた。つまりは──ハリー・ポッター一行はとうとう魔法界屈指の不落城、グリンゴッツを破ろうと立ち上がったのである。

 不謹慎にも、ドラコは次なる冒険の予告にワクワクしていた。ついにこの時がきたか──グリンゴッツ破りの伝説は、そう遠くない未来で酒の席の定番のつまみとなるのだ。主な語り部は、口も気も態度も大きいロン・ウィーズリーだ。彼の誇張癖もあって、グリンゴッツ破りの伝説は尾ひれはびれ胸びれを盛大に盛り付けて拡散された。まさに子供憧れの英雄譚なのである。その実態が、今、ここに生の経験としてドラコへともたらされようというのだ。件の伝説の登場人物の一人として舞台に立てる──ドラコ・マルフォイにだって少年の心くらいは存在する。

 

 

「もう猶予はない。ためらっていられない。世界を救うだとかそんな大それた志しはないし、せいぜいが必要に迫られて、てやつだけど──こんな息苦しい世界を、次を生きる子供たちに残すわけにはいかない」

 

 

 ハリーの指す子供が何であるか、それを四人は知っている。数日前に訪れた吉報──リーマス・ルーピンとニンファドーラ・トンクスの第一子、テッド・リーマス・ルーピンのことだ。ハリーはこたびも小さな命の後見人に選ばれたのだ。

 

 歓喜と共に貝殻の家へ報せを運んだルーピンは、まず一番にマリアの姿を探した。しかしマリアはとうに貝殻の家を発っていて、その行き先を知るのはドラコ・マルフォイ──そして、彼女の元こそが己の帰るべき場所であると悟るハリーだけだった。マリア・ポッターはホグワーツで旅の結末を待っている。

 マリアに出会えなかったルーピンは、ほんのり寂しげに自嘲してから迷いなくハリーを名指しした。我が子の後見人になってくれと懇願した。ルーピンにとって、ハリー以外の後見人はありえなかった。ルーピンは少しだけ──ほんのちょっとだけ、とある二人がたどった未来を知っているのだから。

 

 新たな命の存在──新たな世代が手の届く場所に生まれている事実は、ハリーに覚悟を決めさせた。

 

 夜明けの出発。ベラトリックス・レストレンジ扮するハーマイオニーが心底嫌そうにベラトリックスの杖を握る。まずはじめにロンの容姿を変貌させていく。次にドラコだ。ハリーとグリップフックは透明マントに隠れてついていく算段だ。

 漏れ鍋を抜けて死んだような暗さのダイアゴン横丁を闊歩する。かつて新入生やその家族でにぎわっていた通りは今や浮浪者ばかりが目立ち、ノクターン横丁よりもずっとひどい有り様だとハリーには思えた。むしろノクターン横丁こそがこの鬱々とした世界の中で最も活気づいている場所かもしれない。

 女帝ベラトリックスをはさむようにして男たちがまごまごと歩く。否、居心地悪そうにまごついているのは見る影もない元ロンの男だけだ。ハーマイオニー・ベラトリックスは緊張から肩肘を張り、ドラコだった男はどうどうと高飛車にしていた。

 

 

「マダム・レストレンジ!」

 

 

 一様に足を止める。ドラコがささやく。トラバースだ──死喰い人だ。かなり古い記憶をしぼり出さねばならなかったが、おそらく間違っていない。あの顔は覚えている。

 

 

「あなたがここにいるとは思わなかった。その──あなたは──とんでもない失敗をして──」

 

「無礼者が!」

 

 

 突如、腹から男へと怒声を張り上げたドラコに、ロンはともかくベラトリックスであるハーマイオニーまでもが仰天顔で飛び上がってしまう。ドラコがふんぞり返りながら一歩を進める。トラバースはすっかり呆気に取られている。

 

 

「恐れ多くもレストレンジ様に向かってなんたる口のきき方か。レストレンジ様は失敗などしておられない!」

 

「し、しかしだ──噂によれば──」

 

「噂よりも目の前の事実だ。それともなにか、貴様は『あの方』が一番に信用されているレストレンジ様に疑念があると? それはすなわち──『我が君』への疑問と取るが、よろしいか」

 

 

 絶対的支配者の存在をちらつかされ、ブルブルとトラバースが震え上がった。それにドラコことベラトリックスの腰巾着をつとめる男は満足げに鼻を鳴らす。それはそれは完璧な、虎の威を借る小物の姿だった。

 

 

「フン、わかったのならば下がれ。レストレンジ様は大切なご用でこちらにいらっしゃるのだ。邪魔をすればお前こそがご主人様よりお仕置きを受けることになるぞ」

 

「くっ……お前──お前、その顔、おぼえたぞ」

 

「光栄だ」

 

 

 二度とこの顔には会えんがな────すっかり死喰い人をやり込めてしまったドラコにロンもハーマイオニーも唖然としている。しかしすぐに正気を取り戻すと、ドラコの目配せにしたがって歩き出した。ロンが呟く。君、役者とか向いてるよ。

 

 

「……昔取った杵柄とかいうやつだよ」

 

 

 ここにいないハシバミの瞳の少女の無遠慮な笑い声が、小憎たらしくドラコの脳内を駆け回っていた。

 

 

 

 ***

 

 

 

「──クシュンッ」

 

「風邪は引きはじめが肝心ですよ、マリアお嬢様」

 

「ううん、ちょっと無理しすぎたかな……風邪ではないと思うんだけど。そしてお嬢様はやめてくれってば」

 

「お嬢様はお嬢様でございます」

 

「頑固者め」

 

「主人に似たようで」

 

 

 なんだかお約束になってきたやり取りを老しもべ妖精と交わしながらうなる。例の扉を前に僕の悩みはいまだ尽きない。僕のロンとハーマイオニーと共に作り上げた創作魔法が思い通りの形にならないのだ。目覚めてすぐにホグワーツへ戻ったというのに、なんとかルーンも付け焼き刃で覚えてハーマイオニーの指示通りに刻んでいるはずなのに、どうしてか成功してくれない。なにかが足りない。いったいなにが。

 しかし、あせる僕とは裏腹に魔法の実験・特訓に割ける時間は少なくなるばかり。──というのも、ネビルを主体にしたレジスタンス勢が必要の部屋での生活を始めたからだ。避難ともいえるだろう。生徒たちの闘いはピークを迎えていた。

 

 

「そろそろ皆さまがアバーフォース様の元から戻られる時間かと」

 

「今日はここまでか。忍びの地図を見せて。──よし、廊下には誰もいない。今のうちに部屋をいつもの隠れ家に変更しておこう」

 

 

 後ろ髪を引かれながらも慎重にガラクタ部屋から出る。壁に再び現れた形の違う扉を開けば、そこはガラクタの山ではなく人が十分に暮らしていける内装へと変わっている。奥へ進んで、みんなに絶対に触れないよう厳守させている封印箱へと触れる。──はやく、君に会いたい。

 

 

「──マリア、ただいま!」

 

「おかえり、ネビル。アバーフォースの様子にかわりはなかった?」

 

「ああ。けれど聞いて。ビッグニュースだ! 最高にイカす土産話だよ。──ハリーがグリンゴッツへ忍び込んだだなんていうんだ!」

 

 

 ああ──パブへと続くトンネルの向こうから現れた満面の笑みのネビルに、安堵から笑い返す。やっと、ここまできた。

 

 

「僕も、動かなくちゃ」

 

「マリアお嬢様?」

 

 

 側にいたクリーチャーを抱き締めた。ずっとずっと、一心に僕たちを信じて寄り添ってくれたひとでなしのともだち。もう、うしないたくない。

 

 

「クリーチャー、ここまでありがとう。きっと、あと数日もないうちに最後の戦いが始まる。ホグワーツは戦場と化す。どうか、このまま──」

 

「ええ、もちろん──最期までお供いたします」

「クリーチャー……」

 

「ドビーは我々、屋敷しもべ妖精にとっての英雄です。ならば、クリーチャーはその心を継ぎます」

 

 

 何度でも胸の寂しい部分を突き刺すともだちの名前を出されて、ハッと息を呑んだ。クリーチャーは決して慈愛の表情を浮かべるでもなく──どこまでも厳しく、僕を見ていた。

 

 

「若造だって嫌ってたくせに」

 

「今でも嫌いですとも」

 

 

 ……ふふ。笑い声をこぼす。やがて声は大きくなる。次々にトンネルから戻ってきたレジスタンスのメンバーが不思議そうに首をかしげている。うちの、女の子のメンバー──ラベンダーへと僕はゆっくりと目を合わせた。

 

 

「ラベンダー、頼みがある」

 

 

 

 ***

 

 

 

 ハリーが許されざる呪文(インペリオ)を使った。その事実にドラコは頭が痛いような気持ちでいた。もっとも、それは非難の意味合いではない。たとえばこのメンバーの中でならドラコこそが最も闇の魔術に近い存在であろうし、許されざる呪文にだってそれほどのためらいはない。ただ、英雄だってお綺麗なままでいられたわけではない現実に、身勝手に幻想が崩されたというだけの話だ。なんだかんだハリー・ポッターの一番のファンはドラコ・マルフォイなのかもしれない。

 

 トロッコが動き出す。盗人落としの滝によって三人の姿が暴かれる。次はドラゴンだ。己を繋ぐ鎖を引きずり回しながら傷だらけの巨体が暴れている。とんだトロッコ旅にもはや笑うしかない。

 あわれなドラゴンを『鳴子』でおさえて、ついに本命のレストレンジ家の金庫へと忍び込む。

 

 

「カップだ! 金色のカップ──穴熊のマークが掘られていて、取っ手が二つついてる! 探して!」

 

 

 双子の呪文と燃焼の呪いによって阿鼻叫喚と化した金庫内に、ハリーの辛々の声が響く。どうにか奥にそれらしいものを発見するが、届かない。アクシオも効かない。リーチの長いもの──グリフィンドールの剣を使うしかない。

 さて、火傷覚悟でカップを手に入れても、問題は金庫内と同じくらい山積み(・・・)だった。一つに、グリップフックの裏切り──ハリーからかすめ取ったグリフィンドールの剣を手に、グリップフックはここに泥棒がいると叫んだ。なだれ込んできた小鬼たちに囲まれる。逃げ場はない。逃げ場は────上にしかない。

 

 

「ドラゴンに乗って!」

 

 

 小鬼たちの攻撃を受けたり避けたりしながら四人が盲目のドラゴンへとよじ登る。巨体を地へと繋いでいた鎖をロンが破壊する。天井をハーマイオニーが穿つ。そして、ハリーがドラゴンに闘志を思い出させた。

 

 

「待て、翔ぶのか? ほんとうに? これで? そんな無茶──」

 

「みんな、ちゃんと捕まっていて──振り下ろされたら命はないぞ!」

 

「うそだろう!?」

 

 

 ドラコの絶叫もなあなあにドラゴンが天井を力業で突き破った。飛び上がる。上へ──上へ──小さな小鬼が粒になってもまだ上へ。下を見るのもおそろしくて、しかし上を見るというのも気が遠くなりそうで、ドラコはボロボロの有り様で三人の正気をうたがった。

 ────英雄なんて生き物は、心底とんでもない。

 

 空の旅は優雅さとは無縁に四人を導いた。そも、舵取りが不可能なのだ。自由の身となったドラゴンは背中に余分な荷物が四つもくっついているだなんて思いもしない。気づかれた瞬間に振り落とされるか、あるいは餌にされるか、だ。

 ドラゴンが湖の側へと着陸しようとするのに、タイミングを見計らって水面へと飛び降りる。ようやく空の旅ともお別れだ。やはり飛行は箒に限る、とハーマイオニー以外の男たちは水の冷たさを感じながら切に思った。

 

 

「死ぬかと思った」

 

「ハリーに付き合ってるといつもこんなもんだぜ。そっちも似たようなものだろ? お転婆姫のナイトさん」

 

 

 湖に仰向けに浮かびながらげっそりとやつれた様子のドラコをロンが雑になぐさめる。ドラゴンから遠ざかるようにして反対側の岸へと上がる。服を申し訳程度にしぼってから、魔法で乾かし護りの障壁もほどこす。

 

 

「まさに良い報せと悪い報せの二つができたってわけだ」

 

「──分霊箱は手にいれた。そして壊す手段をうしなった」

 

 

 そのことだが──ドラコがふと思い出した幸運を悩む三人へと切り出す前に、事態は加速した。ハリーの傷がヴォルデモートへと繋がり、レストレンジ家の金庫から分霊箱が盗み出された事実に、奴が気付いたことを知ったのだ。

 ヴォルデモートがホグワーツへとやってくる。一分一秒も時間を無駄にはできなかった。

 

 

「ホグズミードだ。ホグズミードからどうにか城の中へ入る方法を見つけ出すんだ」

 

「無茶よ」

 

「その無茶をくり返して、僕たちはここまできた」

 

 

 ハーマイオニーの眼前にハッフルパフのカップが突き出される。『無茶』の象徴である金色が不気味にハーマイオニーの顔を映す。

 

 

「……わかったわ。ここで立ち止まって死ぬか、進んで生きるか死ぬかですものね」

 

 

 休む間もなく一行はホグズミード近くへと姿眩ましした。無論、罠はある。死喰い人と吸魂鬼が熱烈に四人を迎える。そしてあわや乱戦となりかけた場からハリーたちを救い出したのは、なつかしいブルーアイの老人──アバーフォース・ダンブルドアだった。

 

 

「どこで、その鏡を?」

 

 

 知らずハリーたちの状況が老人へと筒抜けだった事実に愕然としながら、八つもの瞳が両面鏡の欠片を見つめる。

 

 

「マリアだ。あの小娘、なんでも知ってる顔をして協力しろとこれを押し付けていきやがった。気に食わねえ子供だ。兄そっくりの目をしてやがる」

 

 

 マリアの導きがあった──それに、ハリーは心から喜ぶのは難しい気がした。あの子はなにを識っていて、そしてどうして独りで戦おうとするのだろう。どうして──共にいてはくれないのだろう。

 疲労困憊の四人へとパブらしくバタービールと軽い食事が提供される。このときばかりはドラコもマナーなんてかなぐり捨てて食へとかぶりついた。張りつめていた神経がようやく休息を得た。

 無我夢中で皿を空にする青少年たちに、アバーフォースはぶっきらぼうながらも絶えず品を追加し続けた。

 

 

「──さて、腹いっぱいになったなら寝てしまえ。どうせ明け方までは動けん。夜はさっきのような目に遭う」

 

「僕たち、ホグワーツに行きたいんです。今すぐにでも」

 

「寝言は寝てからだ」

 

「本気です。どうか、なにか手立てはないでしょうか」

 

 

 グラスを磨く手を止めて、アバーフォースがジッとハリーを見る。それが、激情するハリーをたしなめるときのダンブルドアの瞳にそっくりなものだから、ハリーは途端に居心地が悪くなってしまった。それでも──そらしてはいけない。目をそらした瞬間に、彼はこちらの言葉に耳をかたむけてはくれなくなるだろう。

 

 

「なぜホグワーツへ行く」

 

「ダンブルドアから託された仕事がある」

 

「君のような半人前の魔法使いにか。それはもちろん、半人前が四人いてできるような仕事なんだろうな。え?」

 

「それは──いえ、けれど、僕にしか──僕でなくてはいけないんです。ダンブルドアが──あなたのお兄さんは、最期まで希望を残して──」

 

「ずいぶんと兄を信頼しているらしい。さて、ポッター。これまでの旅で兄は君に正直であったかな? 兄の『君でなくてはならない』という言葉は、はたして真実か。信じられるのか。疑ったことはないのか? 一度も?」

 

「それは……」

 

 

 ハリーだけでなく、困惑を浮かべた四人全員が最終的に沈黙した。特にドラコは、マリアを思い出していた。マリア──否、マリアとなる前の、この世界では自身のみが知るハリー・ポッターのことを。

 君は──君のダンブルドアへの愛は、こんなにも痛み混じりだったのか。過ぎた薬を呑むようなものだ。用量を誤った薬は総じて毒になる。君は──彼の毒すらも呑み込み愛したのか。息子の名に刻むほどに。

 

 

「俺は兄を知ってるぞ。兄の残酷さも、兄が兄の思う善を成してどれほどの人間が傷付いたかも、兄の失敗も、兄の間違いも」

 

「…………」

 

 

 ハリーの目がアルバス・ダンブルドアとアバーフォース・ダンブルドアの妹、アリアナと思わしき肖像画へと移動する。ブルーアイが緑の視線の先を追う。それだけで、アバーフォースはハリーの言わんとするところを理解したらしかった。

 

 

「兄が気にかけた人間は、大抵においてよっぽど放っておかれたほうがマシだと思われる状態になった」

 

 

 とんでもなく酷い言い草だ。けれども、誰もそれを否定することはできなかった。

 アバーフォースは続ける。ダンブルドアの妹への仕打ちと最大の過ちが、血の繋がった弟によって明かされていく。

 

 

「それでも、アルバスを信じるか」

 

 

 そう締めくくったアバーフォースは、どこか祈るようにハリーの目を見つめた。その瞳には、アリアナの死を語る際に見せた涙がまだ残っていた。

 アバーフォースから見るダンブルドアの像は間違いなく悪だ。無慈悲で冷酷だ。ハリーや皆が理想としてきたダンブルドアとはまるでちがう。別人の話をされているようだ。──けれども、確かにダンブルドアだ。

 ダンブルドアの幼さを彼だけが知っていた。そして、ダンブルドア自身、アバーフォースと同じくらい自分を悪となじっているだろうことも読み取れた。

 

 ハリーは揺れている。誰が見てもわかる。完璧であったダンブルドアのもろい部分を突きつけられて、彼が当たり前に失敗するただの人間であることを改めさせられて、ハリーの中の絶対が揺らいでいる。

 だから、ハリーは。

 

 

「信じます。────マリアが、あのひとを信じているから」

 

 

 ダンブルドアと同じ瞳が驚愕に開く。

 

 

「マリアは知っていた。ダンブルドアの性格も、過去も、彼の思想も、心も。その上で、あの子はダンブルドアを信頼していたんだ。ダンブルドアの暗い部分すらも共に見ていた。だから──僕はダンブルドアを信じているマリアを信じる」

 

 

 無情な、間。誰も口を開かない拷問めいた間だった。

 

 

「────は、」

 

 

 それを、嘲笑じみた息が破った。

 

 

「ハ、ハ──ハハハ、ハッハハハ! なるほど、そうか、アルバスではなく──君の信ずるものの先に、アルバスがいるのか。アルバスはオマケか。はは──いや、いいざまじゃないか!」

 

 

 カッカと上がる快活な笑い声に、四人はそろって顔を見合わせた。気難しい老人の印象がガラリと変わった。やがてアバーフォースは、呼吸によって発作を静めると気難しい顔に戻ってうなずいた。

 

 

「アルバスに盲目的な人間たちよりも、よっぽど安心できる」

 

 

 立ち上がり、アリアナの元へ。優しい声で妹へと「わかっているね」とささやき掛ければ、肖像画の少女も応えてうなずく。絵画の奥へと歩先を進める。そこにはトンネルがあった。トンネルの向こうから、アリアナは信じられない人を連れて戻ってきた。

 

 

「「「──ネビル!」」」

 

「信じてたよ──僕は君が来ると信じてた! ハリー!」

 

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