マリポタシリーズ   作:椎名@大体pixivにいる

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4ー2

 

「……ハ、リィ……?」

 

「マリア、マリア、無事だったんだね。よかった、ほんとうに……」

 

「ハリー! 君、どこでなにしてたんだよ!」

 

「僕、寝坊しちゃって。そうしたらチームのみんなが談話室に戻ってくるし、僕のことを本物かどうか確かめたりしてくるし……次にはこの放送で、マリアもロンもいなくて、もう、なにがなんだか」

 

 

 まだジニーとハーマイオニーのことを知らないハリーへとロンが詰め入るのを止めて、シェーマスやディーンやネビルなどのハリーの同室者たちに断って寝室を貸し切らせてもらう。マフリアートを唱えてから、ハリー、と騒ぐ心臓を押さえつけて声を絞り出す。

 

 

「まず、今回の被害者は二人。ジニーとハーマイオニーだ」

 

「そんな……」

 

「そして、ハーマイオニーがこれを握っていた」

 

 

 ロンからハーマイオニーの命懸けの手がかりがハリーへと渡る。

 

 

「バジリスク……だから、雄鶏が殺されて、だから、マートルが……だから、だから──つまり、これって!」

 

「化物の正体はバジリスクだ」

 

 

 ハリーの顔が輝く。そして次には、ここ数ヶ月に渡って見せていた怯え顔へと戻ってしまった。

 

 

「……マリア。──僕、話すよ」

 

「……うん、わかった。ロン、席を外してくれる?」

 

「どうしてさ。今回の被害者は、親友と、僕の妹だぞ? 僕だけ除け者にされるいわれはない」

 

「まったくその通りだ。後で説明する。誓うよ。だから今はお願い」

 

「ロン」

 

 

 僕とハリーとを見比べたロンは、小さく、絶対だぞ、と口にすると渋々部屋を出てくれた。

 ありがとう、ロン。ちゃんと話すから。──すべて終わった後に。

 

 

「ハリー」

 

 

 ハリーのベッドへ腰かけて、蒼い顔で睫毛を震わせているハリーの手を取る。冷たい手だ。どれほど緊張しているだろう。

 

 

「ちゃんと、信じるから。それで、抱きしめるよ」

 

「……ありがとう、マリア」

 

 

 ハリーはポツリポツリと語った。

 ロックハートの元で罰則を受けた日から妙な声が聞こえること。それが聞こえると被害者が出ること。他には誰も聞こえていないこと。被害者がことごとく自分の知り合いであること──

 

 

「ロンが言ったんだ。誰にも聞こえない声が聞こえるのは、狂気の始まりだって──僕、僕、自分が狂ったんじゃないかと思って」

 

「ハリー……」

 

「殺してやる、殺してやる──て。恐ろしい声が僕だけに聞こえるんだ。そのうち、僕がみんなを──僕が、やったような気がして」

 

「ハリー、それはちがうよ」

 

 

 恐怖に顔を歪めるハリーを、正面から見つめる。

 

 

「ハリー、もうわかったはずだ。君が聞いた声はバジリスクだ。君は声に操られてたんじゃない。パイプで移動するバジリスクの声を聞いていただけなんだ」

 

「…………どうして?」

 

 

 目をこぼれ落とさんばかりに開いたハリーから、戸惑いはなくならない。

 

 

「どうして、僕にバジリスクの言葉がわかるの?」

 

「どうしてって……」

 

 

 それは、君がパーセルタングだから…………ああ!

 

 そこでようやく僕は自身の失態に気付いた。

 ──ハリー、自分がパーセルタングだって知らないんだ!

 

 そうだ。ハグリッドが現れるまで、ダーズリー家に魔法を欠片も気取らせなかった僕たちは、ダドリーの誕生日だっておとなしく留守番をさせてもらえた。二人で家を自由に使えることは楽しくて、それだけで満足していたから──このハリーは動物園に行ってない! あの愉快なニシキヘビと話してないのだ!

 そして決闘クラブでは僕がパーセルタングを知る機会を防いでしまった──ハリーは自分が蛇と話せることを知らないままだ。

 

 

「ハリー、ハリー、落ち着いて聞いて。そしてどうか信じて」

 

「わかった。信じるよ」

 

 

 あまりにもあっさりとうなずかれて、続ける言葉も忘れて惚けてしまった。

 

 

「……僕、まだなにも言ってないよ? これから信じられないことを言うんだよ?」

 

「うん。『実はお前が闇の帝王だったんだ』って言われても僕は信じるよ。マリアは嘘をつかないもの。……ううん、つくけど、それは僕を傷付けるためのものじゃない。意味のある嘘だ。だから、僕は嘘ごと、マリアの言葉を信じるよ」

 

「────」

 

 

 ハリーのどこまでも澄んだ瞳に、僕は声を喉の奥底へと置いてきてしまっていた。

 無条件の──無防備な信頼がこんなにも心地いいなんて。……くすぐったいや。

 

 

「マリア、こわがらないでいいよ。話して」

 

 

 僕がしたように、今度はハリーに手を包まれる。

 

 ああ──マリアにハリーがいて、ほんとうによかった。

 

 

「ハリー、君は──蛇と話せる」

 

「うん」

 

「それは魔法使いでも滅多にある能力じゃない。今までに確認されているのは、サラザール・スリザリン、その子孫、そして──ヴォルデモート」

 

「ヴォルデモート……」

 

「蛇と話せるとわかったら、まず、サラザール・スリザリンの子孫と思われる。……もしも君が──蛇語を話せる人をパーセルタングというのだけど──パーセルタングだとみんなが知ったなら、君は一番にスリザリンの継承者だと疑われていたよ」

 

「……そう、だね」

 

「ハリー」

 

 

 瞳を伏せてうつむいてしまった弟を抱きしめる。……こんな気持ちだったのだろうか。彼も。

 

 

「今、たくさん考えてるよね。どうして自分がパーセルタングなのか、スリザリンと関係があるのか、……ヴォルデモートと自分はなんなのか。いっぱいいっぱいになってしまうね。……ゆっくりでいいんだ。ゆっくり理解しよう。焦らなくていい、全部受け止めようとしなくていい。君は君のままでいいんだ。──もしも、もしもすべてが嫌になってしまったなら」

 

 

 トン、トン──背を一定のリズムで叩く。

 

 

「その時は、僕がなんとかしてあげる。……禁術でも使ってね」

 

 

 大好きなハリー。たったひとりのハリー。僕の唯一無二の兄弟。

 君のためなら──僕は僕を捨てられる。

 

 

「……あ、はは。やっぱり、マリアって過激だ」

 

 

 くすん、と鼻を鳴らしたハリーは、そして晴れ晴れと笑った。

 

 

「ハリー、秘密の部屋を開くには君の『言葉』が必要だ。──力を貸してくれる?」

 

「──もちろん!」

 

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