マリポタシリーズ   作:椎名@大体pixivにいる

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秘密の部屋【番外編】

ドラコのおもりの話【ノクターン横丁編】

 

 

 ハリーはすっかり参っていた。ダイアゴン横丁を何度か歩いたことのあるハリーだ。すぐに間違えた(・・・・)と気付いた。

 冷たい石の暖炉から立ち上がり、店らしいそこを見回す。マグルが想像する黒魔術道具がまさに! といった様子で並んでいた。

 邪悪な仮面、呪われた手、触れたものを殺すネックレス──

 薄気味悪く思いつつも、ここを出なくちゃと出入口へ目を向けたところで、ハリーは咄嗟に後ろにあった黒いキャビネットへと隠れていた。ほとんど反射だった。

 

 ──血の冷たそうな男だ。

 蒼白い肌、灰色の瞳、ハリーの知る彼よりも薄いブロンドの髪──

 ハリーはすぐに気付いた。……ドラコのパパだ。

 

 

「ドラコ、店のものには触れぬように」

 

「承知しております、父上」

 

 

 思っていた彼もいた。なんだか嫌な予感がしてならなかった。

 ドラコはこんな、闇の魔術になんて手を出すような人じゃない。マリアをあんなに優しい目で見る人が、非道なものか。

 ドラコはここにいるべきじゃない────そう思うのに、不気味で恐ろしげなものに囲まれたドラコの姿は、どこかしっくりきていた。──似合っていると、そう納得しそうになる自分をハリーは恥じた。

 

 胡散臭い店主が奥から現れて、マルフォイ氏へと懸命にへつらう。会話から察するに、マルフォイ氏は家に置いていては都合が悪いものをここへ売りに来たようだ。

 その間、ドラコはいくつかの品を嫌そうな顔で見ていた。なんだか、こう──もう二度と見たくなかった……そんな顔だ。

 そのもっとも足るのが──なんとハリーの隠れるキャビネットだったのだ。

 

 ドラコが近付いてくる。キャビネットの全体を眺め、ちょっと裏側を覗いたりしている。そして──

 

 

「…………ハリー?」

 

「ハ、ハァイ、ドラコ」

 

 

 あっさり見つかった。片手を挙げた間抜けなハリーの姿にドラコは呆然としていた。そしてなにかに気付いた風に、まさか……と呟いた。

 

 

「……君、どうしてそんなことになってる?」

 

「あの、僕、ダイアゴン横丁に行くはずだったんだけど……煙突飛行、はじめてで……」

 

「失敗したか」

 

「たぶん……」

 

 

 はあ、と眉間を押さえたドラコは、そしてハリーを中から引き出した。

 

 

「僕がつれていこう」

 

「あ、ありがとう。でも、君、パパは?」

 

「……ああ」

 

 

 煤だらけのハリーの顔を袖で拭ってやりながら、ついでにヒビが入っている眼鏡に気付いたドラコは──着地に失敗した際に壊したのだ──それを取ってハリーと共に父の元へと向かった。

 

 

「父上」

 

「ドラコ、見ての通り私は商談中で────彼は?」

 

「ハリー・ポッターです」

 

「…………なぜ、彼はここにいるのかね?」

 

「煙突飛行に失敗したそうです。ポッター君の希望していた場所まで送って差し上げようかと思うのですが、席を外してもかまいませんか」

 

 

 マルフォイ氏の顔は見るからに引きつっていた。親子揃って嫌そうな顔はわかりやすいな、とハリーはのんきに考えていた。

 

 

「アー……そうしてやりたまえ」

 

「はい。それから父上、ポッター君の眼鏡が壊れてしまったようなので、よければ父上の魔法で直してやってはもらえませんか。僕は一応、未成年ですから」

 

「ド、ドラコ、そんな」

 

 

 悪いよ、とハリーが遠慮する前に、眼鏡はマルフォイ氏の杖の一振りで新品同然へと変わっていた。

 

 

「あ、ありがとうございます……ミスターマルフォイ」

 

「……いや。うちのドラコが世話になっているようだからね。これからも……仲良く、してやってほしい」

 

 

 ずいぶん歯切れの悪い様子だったが、気にせずハリーはニッコリと笑った。

 

 

「はい! ドラコ、すっごくいい人ですから」

 

「…………」

 

「行くぞ、ハリー」

 

「あ、うん。失礼します、ミスター。眼鏡、直してくださりありがとうございました」

 

 

 名状しがたい表情のマルフォイ氏を置いて店を後にする。──ボージン・アンド・バークス、というのが店の名前らしかった。

 気味の悪い店だと思っていたが、周りも同じようなものばかりだ。通りそのものが薄気味悪い。

 

 

「一応、説明しておく。ここはノクターン横丁だ」

 

「ノクターン横丁……」

 

「少なくとも、君たちが来るような場所ではない」

 

 

 スイスイと路地らしき道を曲がりくねってドラコが先を行く。手を繋いでもらっていなければ迷子間違いなしのわかりづらさだ。

 

 

「……ドラコは?」

 

「うん?」

 

「──ドラコは、あそこに行くようなことがあるの?」

 

 

 ハリーの静かな問いに、足を止めることなく──そして振り返ることもなく、ドラコは答えた。

 

 

「──必要があれば、な」

 

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