森羅万象の公式PV『無意識レクイエム』からイメージした夜廻と東方のクロスです。PVを見ているとより楽しめるかと。
東方サイドは原作から大きく外れていますが、それでも良ければ是非ご覧ください。
感想、言うまでもなく辛い。ロゼや嘘つき姫と~は救われてるとして、ホタルノニッキは何なの?スタッフはどういう心理状況ならこんなストーリー考えられるの?もう俺の中で『ミオンちゃんをいかにしてサーヴァントにして救うか』と言う思考が巡ってます──MW的に、fateにすがるスタンスは安直と言わざるを得ない。
そんな話はさておき、ちょっと着想を得て夜廻×東方の単発を書きました。あのPVは夜廻の世界観にピッタリ。これだから東方も好きなんですよ。
だれかのメモ9
しっている?
09024109676
そこにでんわすると
ねがいをかなえてくれるの
でも
ねがいをかなえると
そのひとは──
~~~~~~~~~~
今夜もまた、私は夜の町を廻る。
懐中電灯を片手に、お姉ちゃんに買ってもらったウサギのポシェットを提げて、いつものようにただ宛のないまま──ではなく、今日はある目的があった。
それは、学校で聞いたよまわりさんとは異なる噂話。
──聞いた?■■ちゃんがメリーさんに、ムカつく■■を■してもらったんだって
同級生の子が、友達にしていた話。子供が使うのはいけないと先生に言われるような言葉を用いた、物騒なお喋りを偶然聞いて、どうしても気になってしまった。
"メリーさん"と言えば、私は一度出会っている。落ちていた携帯電話に出たら現れて、花子さんから遊んであげたお礼にもらった藁人形でやり過ごした。それと同じメリーさんなら、私の時と違うのは一体何なのか。
そこで私は今夜、噂を調べるために夜を廻っていた。
事前に調べて分かった事は、まずその『メリーさん』は電話すると願いを叶えてくれる。さっきの同級生の子の話と同じ事でも──それこそその逆、誰かを生き返らせる事も。
「ポロ……」
つい口に出てしまう。失ってしまった、大切なもの。
噂が本当ならば、取り戻せるかもしれない。あの夜に奪われたポロの命を。私とお姉ちゃんの、大事な家族を。
でも、私はそれをするつもりで来たのではない。と言うのも話によると願いを叶えた後──その電話をした人は死んでしまうからだ。
その事に後ろ髪を引かれながら、お姉ちゃんの顔を思い出す。あの夜、左目を捧げられた私を見たお姉ちゃんの苦しく悲しい顔。それに私は、お姉ちゃんの手を離さない事を誓った。お姉ちゃんもまた私の手をしっかり握ってきて、私に優しく微笑んだ。
何もかも奪われた中で、唯一残った私達の約束。それを破って、今度は自分の命をも捧げるなんて真似はできない。私はどんな時も一生懸命生きていくと決めたのだから。
だからこそ、私はこの噂を調べる。誰かが私のようにならないために。誰かが後悔しないよう、私は今日も夜の町に繰り出す──
──トゥルルルルルッ
「……?」
と。暫く歩いたところで、道端の公衆電話がいきなりベルの音を発した。
前にもこんな事があったけれど、あの時の神社がある商店街とは違う場所の電話であり、何となくその無機質な音は心臓を嫌に高鳴らせてきた。まさか、噂の……?
恐る恐る受話器を取り、耳を当てる。
《──こんばんは……ねぇ……知ってる?》
ぶつッ、ツーツー。
それだけ言って通話が切れる。
どういう事か、と受話器を置いたその時──それに気付いた。
ずっと後ろにある十字路、そこを照らす街路灯の下にぼんやりと、一つの人影があった。
ほの暗い道の真ん中、いるのかいないのかはっきりしないような影。ユラユラと揺れ動くそれは、間違いなく私の方を見ていた。
──ねぇ……私……メリー……
声がする。遠くからじゃなく、まるで耳の傍で囁かれているように。
その瞬間に、私は影に背中を向けて走った。近付いてはいけない。
逃げて、逃げて、逃げて──
どんなに逃げても、どこまでも影は追ってきた。
揺れ動き、歩いてるようにしか見えなくても離れず追ってくる。それどころか、少しずつ距離が縮まってきてるのか輪郭が明らかになってきた。
女の子だろうか。大きな帽子に、コードみたいなものが体に絡み付いている。ユラユラと左右するその手には、キラリと光る包丁が握られていた。
ふと街灯の光に顔が半分見える。その口は、裂けたみたいに嗤っていた。
「──!」
ゾッとした。まるで手が伸びてきて、包み込むように捕らわれる感じ。すぐに前へと向き直り、一目散に駆け出す。
──こんばんは、あなたは雨ですか?
また傍から聞こえる声。意味不明な問い掛けに、私は答える事なく走る。
──私のこと、気付いてくれた?
心臓が鷲掴みされた気分。そして確信する。"これ"は、町のお化けとはまた異なる『ナニか』だ。恨みや怒りで生きている人を追い掛けるお化けとは違う。"これ"はただ、機械的に人を殺すんだ。
私も死ぬ……?──その答えが示されるように、道の行き止まりに差し掛かった。
──わたし メリー 今 あなたの後ろにいるの
振り返ると、虚ろに開いた穴でこちらを見る、女の子がいた。裂けた口で笑み、人形のものに似た手に持った包丁が向けられる。
逃げ場は無い。隠れる場所も無い。あるのはただ唯一、"訳も分からず死ぬ"と言う事実だけ。
死ぬ──
怖い──
お姉ちゃん、ごめんなさい──
追い詰められて浮かぶ言葉。恐怖と謝罪。死が勢い良く私に迫る。
意識が遠のく。
~~~~~~~~~~
目が覚めると、そこは家の中。私とお姉ちゃんの部屋だった。
どうやら寝てたみたいだ。見ると、すぐ傍にお姉ちゃんの姿がある。私を待ってる内に寝てしまったのだろう。
無事に帰れて良かった。あれはもう二度とは──
「……"あれ"って、何だっけ……?」
思い出せない。
確かに怖い思いをしたのは間違いないのだが、何だったのか分からなくなっている。まるで、さっき見た夢を忘れたみたいに。何も記憶に無かった。
代わりに、気付くと私の懐には一つの人形が抱かされている。顔が割れて目玉の飛び出た、ボロボロの人形──その特徴ある見た目にふと何か思い出しかけたけど、急に襲ってきた眠気が勝り、それは消えて無くなった。
二段ベッドから掛け布団を取り出し、お姉ちゃんにも掛けてから、人形を棚に置いて横になる。なんであれ今晩は疲れていた。もう寝てしまおう、お姉ちゃんと一緒に。
私はお姉ちゃんの寝顔を見て安心感に包まれながら、深い眠りに就いた──
──わたし、メリー……今、
あ
な
た
の
こわれたにんぎょう を ひろった
こわれたにんぎょう
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ボロボロのこわいにんぎょう。
なにかでさされたようなキズがある。
いつのまにかもってたけど
なんなんだろう。
いかかでしたか?夜廻の雰囲気、曲やPVのイメージに合ってれば幸いです。
深秘録及び憑依華のこいしの怪ラストワードは、かつてないほど怖い。昔の東方二次の頃はフランに引っ張られてヤンデレ味が強かったけど、今になって公式がそれを味付けしてくるとはなぁ。まぁ、今はキャラの設定からヤンデレよりパラノイアキャラが強まっただけだけど。
因みにこの作品でこともちゃんを追い掛けるこいしはオカルト『メリーさんの電話』による分身、最後に現れたもう一人のが本物のこいしと言う設定。どうでも良いけど冒頭の番号、本当に『メリーさんの電話』として登録されてる番号なんですよね。気になるけど掛けるの怖い……
良ければコメントをくださると、他の作品の励みになります。また良いアイデアがあれば、こう言う単発ちょいちょい上げてみたい。