火ッコいいおじさんが燃える世界にいる話   作:毎日健康黒酢生活

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火種

『世界大炎上』

 

突然変異で誕生した炎を操る新人類(バーニッシュ)の出現をきっかけに起こった世界の半分が焼失することになった未曾有の大災害である。

その被害の大きさから既存の人類は新人類(バーニッシュ)を排斥し、差別し、自らの安全を守った。多勢に無勢、いくら身体から炎を燃やす新人類(バーニッシュ)でも、蟻のように地上に蔓延る既存の人類相手には勝てず、その多くが捕らえられ、孤島の監獄へと幽閉されることになった。

 

それから20年。事態の収束とともに攻撃的な一部のバーニッシュは【マッドバーニッシュ】を名乗り、既存の人類への反抗と自分たちの理想郷(ユートピア)を求めて暴走するようになった。

 

そして……。

 

今、その団結の旗印となっていた男の命の炎が燃え尽きようとしていた。

 

 

 

△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△

 

 

 

「団長!死んじゃダメだ!あなたが死んだら誰が僕たちの希望になるんだよ!!!」

 

蛍色の髪を持つまだ10代にも届いていない少年が、傷だらけで横たわっている巨漢の男性へと泣きつく。

周囲はそれを止めようとせず、男性の今際のひと時を少年との語らいの時間にさせる。

団長と呼ばれた男性は重たい動きでその大きな掌を少年の上に置く。

 

「ははっ、リオの泣き虫は最後まで治らなかったな〜。漢って言うのは簡単に泣いちゃダメなんだぜ?」

 

「でっでも、団長が!お願い!死なないでよ!」

 

泣きじゃくる少年の顔を自身へと向けさせて、団長と呼ばれた男性は真剣な眼差しで少年と目を合わせる。

 

「いいか、リオ。()()()()()は生きてる限り、必ず死ぬ。俺の場合、ちょっとばかし順番が早かっただけだ。」

 

「……うん。」

 

少年も男性の最後の一言を聞き逃さないように鼻をすすりながら答える。

男性は不器用に乱暴ながら優しくその頭を撫でる。

 

「だからな、こうやって人に、家族に、友人に、仲間に、……そして、兄弟に「自分がここにいたんだぞ」って命の炎を少しずつ渡して生きていくんだ。」

 

「命の炎を……渡す?」

 

「あぁ、そうやって少しずつ炎が大きくなってくるんだ。自分だけで燃えるよりも沢山の人から炎を貰ったらその炎は大きくなるんだ。だから、俺は色んな人から炎を託されて【マッドバーニッシュ】の団長になった。」

 

「グスッ、……。逮捕されたみんなも凍らせられながら後は頼んだって言ってた。」

 

「俺にはお前が俺よりも大きな炎になる未来が見える。だからよ。」

 

そう言って男性は撫でていた掌に炎を輝かせてその命の炎を少年に託す。

その炎はゆっくりと少年に吸い取るように託される。

 

「リオ、泣いてもいい。だけど、前に進むんだ。」

 

男性は「人を殺す」という点で最後までソリが合うことはなかったが、信頼を寄せていた頼れる仲間の存在を少年に明かす。つかみどころのない男だったが、優秀で、自身の最後の願いということなら、ちゃんと少年の面倒を見てくれるだろう。

 

「『葛西善二郎』。そいつを頼れ。」

 

「……かさい、ぜんじろう。」

 

「あぁ、優秀な男だ。野心もある。お前はそいつから学べるものは全部学んで、盗める技術は全て盗んでこい。」

 

「うん!団長の最後の命令、ちゃんと守るよ!」

 

団長と呼ばれた男性の下半身は燃え尽きるように灰へと、変わっていく。

残された時間はもうほとんどないだろう。

 

「……リオ。……最後によ。」

 

「っうん!なに?」

 

「お前の笑顔を見せてくれよ。団長じゃなくて、兄としてのお願いだ。」

 

その言葉に少年は泣きじゃくった顔を腕で無理やり拭き、赤く充血した、腫れぼったくなった瞳を覗かせる。

 

その花が咲いたような笑顔を男性は満足そうに微笑み最後の一撫でをする。

 

「あぁ、(リオ)。……()()()()()。」

 

そう言って、(リオ)に自分の炎を全て託して男は全身を灰へと変える。その灰の山をリオはゆっくりと抱きしめ、腕から全ての灰が零れ落ちると、ゆっくりと立ち上がる。

 

 

 

「みんな!よく聞け!!!」

 

 

 

「今から僕が【マッドバーニッシュ】のリーダーだ!!!」

 

 

 

△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△

 

 

 

数年後。

 

自治共和国プロメポリスの小さな駅前のパチンコ屋。

 

キャップ帽を目深にかぶり革ジャンを羽織った中年が煙草の煙を周囲に漂わせながら、パチンコの台に向かって乱暴に蹴り上げる。

 

()()()!なんで今ので確変入らねぇーんだよ!クッソ!あともう少し!わりぃ、兄ちゃんちょっと借りるわ。」

 

そう言って、隣の当たりを引いている青年の出玉を一掴み奪う。

 

「ちょっ!あぁ、もう!次やったら店員呼ぶからな!」

 

荒い口調ながらも青年は中年がやった事を許す。

中年は戯けながら、貰った出玉を機械に入れ青年に感謝を伝える。

 

「若いのに良い心がけだ。もしかしたらアンタ今日は良い()になるかもなぁ。」

 

「おっさんが当たったら飯おごれよ!」

 

そう、賭場特有の絆ある温かい?やり取りを交わしていると、爆音とともにパチンコ屋の入り口が吹き飛ばされ、黒い様相をしたライダー風の格好をしたバイク乗りがバイクに炎を灯しながら店内に押し入ってくる。

 

瞬間、店内は混乱に包まれる。

 

「「「マッドバーニッシュだぁ!!!」」」

 

「逃げろ!」

「レスキューを呼べ!」

「それよりも、警察呼べ!」

 

店内にいた人々は口々に叫びを上げる。

 

()()()、ほぅら、兄ちゃん、良い()になったろう?」

 

青年の前には炎の壁が出来ていた。

店内に勢いよく飛んできた入り口の破片が青年に当たる直前、中年が炎の壁を青年の前に作り庇ったのだ。

青年はおずおずと炎を操る中年に訪ねる。

 

「……アンタもバーニッシュか?」

 

「いやぁ?俺はただの人間さ。人間が体から炎出すとかアホくせぇ。それよりも、これで飯の話はチャラな。」

 

「ふふっ、偉く高く返してもらったもんだ。アンタも気をつけて逃げるんだぞ!次、会ったら俺が飯奢ってやるよ!」

 

そう言い、青年は這々の体でその場から逃げ出す。

しかし、中年は逃げ出すことなく、ポケットからタバコの箱を取り出し、ジッポライターで火を付ける。紫煙がゆっくりと店内の黒い有毒そうな危険な匂いのする煙に溶けていく。

 

中年の背後に4.5人のライダースーツ風の服装をした集団が取り囲む。

その集団から、蛍色の髪を持った10代前半くらいの少年が中年に向けて歩み寄る。

 

 

 

「やっと見つけた。お前を見つけるまで4年もかかったぞ。」

 

 

 

「お前が『葛西善二郎』だな。」

 

 

 

「僕はフォーティアの弟だ。兄が死ぬ直前、アンタから盗めるものは盗んでこいと託された。着いて来い。」

 

 

 

()()()。こりぁ、懐かしい名前が聞けたもんだ。」

 

 

 




最後まで読んでいただきありがとうございます。

映画のネタバレ無しの話で原作前を中心に描いて行ければなと思います。
原作突入したら……、
()()()。おっさんにはあんな激しい運動着いていけねぇよ。」……だそうです
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