私を愉しませてくれたまえ   作:メルシー

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3話 本人知らぬうちにボス戦(前編)

 

 

(誰かまではわからんが誰か来る···)

 

私の直感は何者かの訪問をつげていた。

既にバイザー、身に纏っているものまで変わってしまっているが私の直感は確かに告げていた。

 

アーチャーが破られた気配が無い。

(あのアーチャーが巻かれたのか?面白い少し遊んでやろう。) 少し口角が上がる。強者の予感を告げる。

 

 

 

洞窟の一点を見つめる。

 

 

 

目先には洞窟出入り口に異常に居る蝙蝠の群れ

ーーー

 

 

「ほう。どうやら女と見える。その出立ち騎士のそれかね?だが確かに強い気を感じる。」

 

「···」

 

「さっきの男もそうだったが君たちは言葉がわからないのかね?今からやり合う相手に言葉は不要か。こちらは先程の戦いで準備運動は済んでいる。いつでも構わんよ。」

 

(先程の男と雰囲気が似ている。大方強化でも施されているのだろう。明らかに平常でわない。)

 

ジャキ

 

剣身は真っ黒でいて鈍く赤く光る。剣の構える音のみが洞窟内をこだました。

 

面と向かい合い距離は15メートル辺り。障害物の無い空間は力と力の真っ向勝負を意味していた。

 

 

先に動いたは剣士。常人では追えぬ剣速で右から剣を振り下ろす。

 

目で追うには些か早い、が。

対するユリアスは左手の甲で力ずく弾く。

ただ、力ずくと一言で言っても互いに人外。

辺りに爆風が舞う。

 

だが一撃弾かれて引く剣士ではない。

2撃3撃と追撃を振り下ろす。

男も素手では流石に分が悪いのか腕周りに小さな傷受ける。しかし、傷の数に比例して男の口角上がるのが見て取れる。

 

数メートル間合いが少し離れる。

予備動作などない。少なくとも常人には見えない。

剣から放たれた黒い一撃がユリアスを飲み込むが一瞬。

斬撃はユリアスの辺りを抉るが本人は傷1つ負わず。

 

チッ

 

(この程度は傷も負わぬか。

厄介だな。下手をしたらアーチャー以上に。)

 

相手の戦闘力を図り間違えた事に対して舌打ちが漏れる。問題はそれだけではない。何をしたか分からなかった。戦闘においてこれ程怖いことはない。対処、解決方法を模索する必要があるのだから。一撃で終わる積りも無かったが無傷という結果に握る剣の柄が軋む。

 

ならばより強い力で押し通る。

 

 

ーーーー

 

 

(素晴らしい。ノーモーションから繰り出されたとは思えないほどの力。斬撃と呼ぶには少々魔が宿っている様であったが強ければそれでいい。)

 

 

(あの斬撃何度も受けられるものではないか。こちらも素手では少々分が悪い。)

「スペル」

地面に引きずられながら1m以上ある斧がユリアスの手の中に収まる。

「処刑人の斧」

既にいくつもの血を吸ったかのように斧は鈍い光を放つ。

 

 

「今度はこちらから行かせてもらう」

 

「ふんッ」

その斧とユリアスが居た場所は歪む。

加速。ユリアスは確かにより早くなっていた。

動きは突進。真っ直ぐに加速する。

 

移動スピードと振り下ろす力を目一杯に使い斧を振り下ろす。単調な動き···故に防がれるが一撃で終わるはずもない。左右上下から斧を繰り出す。どちらかに綻びが現れるまで。

辺りの地面が砕け散る。足場など今の二人は気にも止めない。一方は止める事さえ許されず。一方は純粋に気にせず。両者の攻防は斧が押していく。

 

剣戟の決着

時間にして十秒前後 何百の攻撃が繰り返される中で一撃を貫く。深くはないが、バイザーの左上に亀裂が入る。

 

(ある程度は着いてくるか。女と少し侮っていたが騎士と言う人種は中々どうして私を愉しませる。)

 

 

 




最初の剣戟で傷受けてるのに黒い一撃無傷なのやばい()

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