相変わらずいい湯気の上がる温泉のユクモ村。一層の活気と、一層の賑わいが、人々を惹き付ける。まして、白羅達のいるモンスター広場は、更に賑わっていて、研究者達は勿論、一般人からも人気者で、子供たちとも戯れることもしばしば。更にはラザックが領主になっている事で、ユクモ村は勿論他の村も少なからず恩恵を受けているのだった。
そのユクモ村から白羅達ご一行……モンスター達や専属の猫飯屋、果ては村長さんまで……新大陸へと目指すことになっていた。
大事な家族を探すため……また、新しい仲間を……絆を作るため……。それぞれの思いを秘めて巨大な専用の飛行船で出航していたのである。
モンスター達も乗るこの船は実にデカい!!蓬も乗っているほどだ。他にもラルクやキリンさん焔など大小さまざまではあるが、乗り合わせている。ラルク達も飛翔しながら移動……も出来るとは思ったがそれでも距離が半端ない。なので、船で移動できるようにと村長さんもわざわざ国の王様に取り合って、予算を都合して貰ったとか……。無茶振りに驚いた一行だったが、いざ出発してみればそれもまた有り難し♪結局便乗している次第……。
だから村長さんには白羅も頭が上がらない……いや、元からか……。
「ニャ……村は大丈夫ニャかね………。」
「ニャ!?今更ニャか!?」
「そうですわね、でも心配要らないですわ。何せ領主さんも居ることですし……♪」
「そうね、白羅さんが選んだんだもの。彼も、そこは充分に分かってると思うわ。」
「ニャ……そうニャね、ラザックニャら大丈夫ニャ!」
「そ、あたし達の帰る場所は守ってくれるよ♪」
とまあ、そんな心配を他所に当のユクモ村にいるラザックは酒場に来て居た……。緊張の面持ちで、一人椅子に座り誰かを待っているようで向かい側に席がひとつ……。
「ごめんなさい、待たせたかしら?」
現れたのは、チャイナ風のドレスに身を包み、豪華な扇子を胸元に広げた酒場のママさんが微笑みながら立っていた。
「い、いえ!全く!ど、どうぞこちらに……。」
と、ラザックはもう1つの椅子に促して座ってもらうようママさんを誘導する。
「ありがとう♪」
と、レディの扱いに微笑んで椅子に腰掛ける。ラザックはその向かいの席に、緊張した面持ちで座った。体が硬直したようにギクシャクしている。
「ジョッキを2つお願い!」
「了解ですニャ!」
そう返事のあと、ジョッキを2つ両手に持ったアイルーがテーブルに置いて行った。客が多いせいか、ジョッキを置いて直ぐにカウンターへと戻っていく。
「じゃ、乾杯しましょ♪」
2人はジョッキを当ててひと口ふた口酒を口に運ぶ。お互いに見つめあって微笑んだ所で、ラザックが話を切り出した……。
「で、俺にお話しとは……?」
「ええ、実は貴方にお願いがあって……。」
やはり……と、ラザックはため息をついていた。今更だが自分がモテるなどあり得ないとも思っていたのだ。改めて誘われた事で、少しでも期待した自身が恥ずかしかった……。身分相応な訳がないと……。
「ごめんなさい、単刀直入に失礼を承知でお聞きするわ。貴方…彼女とかいらっしゃるの?」
「は、はい!?彼女ですか?」
彼はどういう事か分からなかった。お願いが……と言って仕事の話かと思ったが、何故こんな事を聞くのか理解できない……。突拍子もない事を聞かれたので、逆にラザックの方が動揺を隠せないでいた。
「い、いえ、居ません。居ればもっと人生楽しいんでしょうけどね……。」
それを聞いてママさんが破顔したのだ。
「そう、それなら良かったわ。実はね…貴方に惚れちゃったの♪これから私と人生を一緒に楽しまない?」
あ~~~、ラザックがそれを聞いて玉子以上に大きく目を見開いたまま固まってしまったようで……。
「なっ!!!なんですとぉ~~~~!!!」
半径300m位にその叫びは響き渡るのだった……。
彼女がウットリとラザックを見つめてくる……喉が鳴るほど唾を呑みこみ、顔を真っ赤にしながら汗を流しつつ彼女を見つめ返すラザック……しばし、見つめあった後ラザックが口を開いた。
「あ、あの……告白スッゴク嬉しいですよ♪でも、俺なんかで良いんですか?他にも白羅さんや、強くてカッコいいハンターさんとかいい人沢山居ると思いますが……?」
どこをどうしてそうなったのかラザックには不思議でならなかった……。
「言ったでしょ、私は貴方に惚れたんだって♪信じられないなら……これならどお♪」
「えっ!?……うぐっ!?!?!?」
ママさんの柔らかくてあま~い唇がラザックの唇を塞いでいた。それにも驚いたラザックだったが、彼女が本気なんだと分かると自然と彼女を抱き寄せていたのだった……。
「「「「「うお~~~~!!」」」」」
パチパチパチパチ!!いきなり周りから拍手喝采が…………。
「し、しまった………酒場だった事をすっかり忘れてた………。」(いや、気持ちは良く分かります…。)
「クスクスクス……これだけ証人がいれば、既成事実は間違いないわね♪♪」
「い、いや、既成事実って……確かに………。お、俺なんかで良ければよろしくお願いします。」
「勿論♪♪」
ママさんがラザックの胸に顔を寄せていた………ラザックも優しく抱きしめる………。異種!?カップルの誕生であった………。
…………と、そんな事とはつゆ知らず………やっと見えてきました新大陸………。
「どうやら、無事に着きそうですわね。」
「ニャァ、あれが新大陸ニャ!?」
「そのようね♪」
「珍しい物が一杯ありそうニャ!」
「モンスターもニャ。」
「新天地で結婚式なんてロマンチック!!」
「「「「「そこかっ!!」」」」」(姫沙羅さん以外にも居ましたかこのパターン……。)
仲が良いのか悪いのか………新大陸にご到着です…………。
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そこは深々と森が広がり川や水辺もあり、木々や植物が生い茂る豊かな大地……。しかし、殆どが初めて見る植物が多い。陸では、小動物や小モンスターらしき生き物も往来している……。確かに生き物の生息地として、生態系は良さそうだ。
とりあえず、海辺に降りて見ることに。もう少し奥へと進めば第一拠点となっている“アステラ”に着くとの事だったが、先ずは新天地の台地を踏みしめたいと一度降りることに……。
それでも船は着陸する訳にもいかないので、上空にて待機……錨を2本降ろしそこからいく本のロープで木々や岩に縛って船を固定した。
「よしっ!降りてみようニャ!」
白羅を筆頭に順番に陸に降り立つ。村長さんは船に残り、船から皆を見下ろしていた。
「自然が一杯ニャ!」
「凄い大きな木々ね!」
「ここは水も綺麗ニャ。」
見回すと先程見えた小モンスター達は船が近付いた事により驚いて逃げてしまったようだ。
「初めて見る植物や木々ね。」
見るもの全て未知の物だけに、感動しっぱなしである。しかし、白羅達は周りの風景に気を取られすっかり忘れていたのである……ここにも大型モンスターが居る事を……。
「ニャ!?ニャにか足音がしないニャか?」
「ニャ、ニャんか段々音が大きくニャってるような……。」
「ま、まさかニャ。新大陸に来て直ぐにモンスターに出くわすニャんて、あり得………。」
「「「あり得たニャ~~~~~~!!」」」
奥の茂みから姿を現したのは、二足歩行で、背中から尻尾まで体毛が生えていてディノバルドに似た体躯ではあるが、鼻が少しく大きめなティラノサウルスに近いだろうか……いずれにしても大人しそうな感じでは無いことが分かった……アンジャナフ………後でアンジャナフと言うモンスターだと知る。
「ちょっと、いきなりなの!?」
「せっかく、白羅とデートしたいニャに~~!」
「「「ツッコミどこそこっ!」」」
良い肉!?食料!?と判断したのか、いきなり咆哮を上げ、白羅達に向かってくる!しかし、急に後ろ足で地面に突っ張り立ち止まり、左を向いて見つめていた……白羅達も何が……と思い、アンジャナフが睨む視線の先を見た。
その小柄な岩山に降り立ったモンスターは大きく太い2本の角を持ち、胸や腹、翼の内側以外は尻尾まで全体に大小の棘が生えていた。
“滅尽龍”ネルギガンテ。拠点ではそう呼ばれていた……。そのネルギガンテが、アンジャナフに突進して来たのだ!アンジャナフの目の前で、立ち上がって大きく振りかぶり左前足を振り下ろしていく!アンジャナフが一気に地面に押し付けられる形となった!アンジャナフは振りほどこうと必死にもがく!しかし、首を押さえつけられていて身動きが取れない状態だ。
「イ、イ、今の内ニャ!避難するニャ!」
「こっちだ!!」
「ニャ!?」
声のする方を見ると、大剣を背に鍛えられた細マッチョな青年が、手招きしていた!
白羅達は頷いて、その青年の方へと走り出す!すると真後ろにアンジャナフが吹っ飛んで来た!あの巨体がである!危機一髪!!茂みに入り込んで難を逃れた。
「大丈夫かあんた達?運が悪いな、2頭の大型モンスターに出くわすなんて。」
全員、息を切らしてなかなか返事が出来ない。
「ニャ、ニャァ……こ、これでイビルジョーまで出てきたら終わりだニャァ……。」
(………………呼んだか?)
「ニャヒッ!?」
そっと振り返って暗い茂みの奥を覗くと怪しく光る眼が2つ……。草木を倒しながら、音を立てて現れたのは……。
「ニ”ャァ!!イビルジョーニャァァァァッ!!」
……………………………………………………。
「…………さん!」
「………………。」
「………白羅さん!」
「ニャ!はっ……!?」
「大丈夫なの?凄くうなされてたけど……。」
そこは船の寝室。みんなが心配そうに白羅の事を見ていた。白羅は周りを見渡す……。
「ニャァ……夢ニャか……。」
と深く息をはいて、安堵したのだった……。。
「新大陸に着いたぞぉ!!」
部屋の外に居る船長がタイミングが良いのか、船中に響き渡るような大きな声で到着した事を告げる。
急いで甲板の方へと出てみると、初めての土地、大陸がパノラマのように広がっていた……。
「凄い……。」
「とうとう着きましたわね♪」
「初物だらけニャ!」
「ゆ、夢で見た光景と一緒ニャ………………。」
白羅だけは、自分の見た夢が正夢にならない様に1匹祈るのだった………………。