DB勢 in ワンパンマン 作:ハゲたオッサン、かめはめ波
95歳にして亀仙流(独学)をマスターした俺は山を下った。
体の身体機能……というか、健康状態は何故か今の方が良い。
武を極めるという事はメリットしかないな、と我ながら思う。
山を降りて向かった先はバングとボンブに任せた道場だ。
てか、あの二人生きてんのかな?
「あ、あれ─────ぇ?」
道場がなくなっていた。
そうだよな、あれから相当な年月が経ってるもんな。
俺は少し寂しい気持ちを抑え、立ち去ろうとすると……。
「そこのお前さん」
「ん?」
一人の老人が話しかけて来た。
多分俺の方が年上だけど。
「最近、ワシの門下生たちが皆辞めてしまったんじゃ。
流水岩砕拳知っとる? と、最後に付け加えて老人は構えを取る。
その老人の構え……見覚えがある。
一番手をかけてやった二人の弟子の片割れ、『バング』と一緒なのだ。
「こんな老人に『武』を教えるつもりか? それに門下生にボイコットされるなんて、師範失格だな」
「ムッ? 老人と言ったかい? そこのお前さん……どう見ても歳は30から40代くら───」
老人が喋っている途中で、俺は腰を中段に落とし、右手を腰に左手を軽く曲げ、自身の顔より少し離れた位置に構える。
最後に「久しぶりだな、バング……師匠の顔も忘れたか?」と、付け加え。
「───ッ!?」
バングは目を見開いた。
(そんな、あの方は行方を眩ました筈……本物か? いや、それにしては若すぎる)
「イイから掛かってきんしゃい。見せてみなさいよ、俺に流水岩砕拳って奴を」
バングは目の前の男に気が付けば飛び掛かっていた。
流水岩砕拳とは相手の攻撃をまるで流水の如く翻弄し、繰り出される技の威力は岩をも砕く。それ程強力な『武』である。
そんな流水岩砕拳を一般人に繰り出せば間違いなく死ぬ。
だが、バングは自分から飛び掛かったのだ。目の前の男に。
高く飛び上がったバングは男に対して空中から落下の速度を活かして手刀を繰り出す。
しかし、その手刀が男に触れる、僅か数ミリで違和感を感じた。
相手は動いてもいない。なのに何故か
まるで高密度の見えない壁を叩いたかのような感触。そして反発する力……。
「バング……いつも言っていただろ? 武とは自分から仕掛けるモノでは無く、相手の攻撃をいなす技だと」
男は言葉を続ける。
「しかし良い手刀だった! 当時の俺なら肩が粉砕してたなぁ……過去の自分よりも成長が実感できて嬉しかったぜ?」
そんなあっけらかんした言葉は何故かバングの心に深く刻まれる。
その過去の自分よりも成長が実感できて嬉しかったぜ? と言う言葉。
かつてのバング師がよく口にしていた言葉。
人と比べるな。比べるなら自分自身を過去の自分と比較しろ。
それが人を『武』を育てるのだ。
大して年の変わらぬ師匠であったが、何故か年季の入った言葉を口にし、かと思えば年相応のヤンチャさや、子供らしさも見せる。
そんな師匠の姿が目の前の男と被った。
いや、彼こそが、本人だと、何故か思ってしまう。
「ただいまだ。バング」
男は笑って言った。
「随分老けたなバング? てか、バングだよな? 間違ってたら俺死ぬレベルで恥ずいんだけど?」
思わずバングは笑ってしまった。
そして、両手のひらを合わせてバングは深くお辞儀をする。
「お帰りなさいませ。お師匠様」
「おう」
そう言ってバングの師は両手のひらを合わせた。
◇
「そっかー、道場は怪人って奴に昔壊されたのかぁー」
「ええ、あの時はワシも兄ちゃんもそりゃ憤慨してめちゃんこ怪人を嬲りました」
「あはは……その怪人かわいそーに」
積もる話をしながら、俺はバングの道場へと向かっていた。
当分は住まいを提供してくれるらしい。
「時代は変わるもんだなー、お前もオッサンぽい口調になってんし、ヒーローなんて職業もあってマジでアニメの世界だな」
「師匠が変わらな過ぎるだけじゃとワシは思うが……所で『気』って奴は会得出来たのか?」
「そりゃもーばっちしよ! さっき見せたろ? バーンって弾く奴……他にも色々出来ちゃうぜ?」
「ほー、そりゃ凄い。で、具体的にはどんな事が出来るんじゃ?」
「やってみなくちゃ分かんねーけど、月くらいなら簡単に壊せると思うぞ?」
「……は?」
この後メチャクチャ質問責めにあった。
◇
「おい、じーさん遅ーぞ」
「先生を待たせるとは、下らん理由ならタダではすまんぞジジイ」
長い階段を登り、バングの道場に着いたら中になんかいた。
白の空手着を着ているオレンジの髪をした青年は門下生だって分かるんだけど、このハゲたマント君とどう見ても人間じゃないサイボーグは誰だ。
「おおう、すまんすまん。ちと、感動的な再会があってな?」
バングがそう言うと、視線を俺に向け、少し自慢気に言った。
「こちら紹介する。これ、ワシの師匠」
少しの沈黙そして、
「えっ!? あの伝説の武闘家のッ!? バング師匠の唯一尊敬するあのッ!?」
「いや、誰だよ」
「フン、俺の先生の方が上だな」
一人はメチャクチャ驚いてるけど、もう二人は反応薄いな。
てか、伝説って何?
「貴様らッ! あのS級ヒーローシルバーファングの師匠であるこのお方の伝説を知らんのかッ?」
「知らねーよ。ジェノス知ってるか?」
「いえ、俺も知りません。ですが、シルバーファングはS級三位の実力者……その師匠となれば、かなり腕の立つ人物かと」
だから伝説って何?
「知らないなら俺が教えてやる。この方は武術を始め、1日で当時の師範と肩を並べ、半年後には師範になり、数多の武術家を育て、道場破りに来た千人ものゴロツキ共を返り討ちにし、更生させ、その実力は武術界の『神』と言われる程。そして
何それ初耳なんだけどッッ!!
武天神師ってなに? 武天老師じゃなくて?
まあいいや。
「どうも、武天神師って呼ばれてるバングの師匠です。あ、亀仙人って呼んでくれてもいいよ?」
「へぇー、強いんだなアンタ」
「先生の方が凄いです。武術など、所詮は護身術……俺が求めるのは先生のような圧倒的な強さです」
「貴様ァッ! 流水岩砕拳とその開祖たる武天神師を愚弄するか! 流水岩砕拳一番弟子チャランコ参るッ!」
チャランコと名乗った青年はサイボーグ男に飛び掛かったが、あっさり首を掴まれ、降参してしまった。
全く、バングは何を教えてきたのか。
「オイ、貴様の門下生は凄腕揃いだ、とぉっ!?」
チャランコを締め上げていたジェノスは気付けば視界がグルグルと回っていた。
何が起きた? 理解不能? まさかこの門下生が?
受け身をとり、直ぐに体勢を立て直すジェノス。
「バング? お前、この子に何を教えたんだ? 技量や肉体以前に心構えがなってない。先に手を出す所を見ると、お前の悪い癖を真似ているようにも見えるんだが?」
「いやー、そう言われると痛いの。チャランコはまだまだ修行中でな? 腕の立つ門下生達はさっき話した通り辞めちまったんじゃよ」
「ガロウって奴の責任にするな。バング、お前の責任だ。道場を任せ、信頼した俺の立場にもなれよ。俺が言いたいのは───」
その時、武天神師の頬を拳が掠める。
「危ないな、サイボーグ君。避けなかったら大変な事になっていたぞ?」
「貴様、今何をした?」
鋭い目つきでジェノスは武天神師を見据える。
そんなジェノスに武天老師は怪訝な顔を浮かべ、言った。
「君の腕を掴んで、吹き飛ばない程度で空中で振り回しただけだよ? 受け身が丁度取れるように回したから怪我なかったでしょ? 大体、人の顔目掛けてグーパンて、危ないだろ? って言ってんだよ?」
「貴様ならアレくらい避けれると思ったから殴った。それにさっきの俺は油断していた。毎回学習しない俺も悪いが、先生の前で無様な姿を晒すわけにはいかない」
何故か臨戦態勢に入っているジェノスに対してサイタマは呟くように、いつもボロボロになってるけどな、と呟いている。
「じゃあこうしよう、君と俺が握手をする。その手を離さず、地面に膝を付けた方の勝ち。もちろん握手している手を離しても負けだ。それ以外なら何をしてもいい。殴ろうが、蹴ろうが、ね」
「いいだろう」
そう言って武天神師とジェノスは握手をした。
すると、武天神師は悪戯な笑みを浮かべ。
「はい、王手だぜ? ロボットちゃん♡」
刹那、ジェノスの全身に凄まじい重力が掛かった。
否、掛かったような気がした。
なんだ、これは……。
ジェノスは全身の力が入らず、そのまま地面に押し付けられる。
「ぐぉっ、つッ!?」
「サイボーグ君や、お前が言ってた護身術ってのはどんな力がある奴でも押さえこめるんだぜ? 舐めちゃあかんよ───まっ、力も俺ちゃんの方が上だけどね?」
そんな武天神師を見てバングは思う。
コイツ七十年経っても何にも変わってねーな、それに人と比べてんじゃん、と。
どうしてこうなった。
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