マイネリーベのマリーンに転生したけども詰んだかもしんない 作:むぎすけどん
私の名前はオーガスタ・フロイライン・マルクグレーフィン・ヴォルフェンビュッテル。
わがヴォルフェンビュッテル家は、クーヘン北西部に位置するファイゲに代々、領地を有している由緒正しき子爵家。
ファイゲは漁港に面している土地で、昔から、クーヘンの漁業を支えていることで有名だ。
また、最近では風光明媚な山岳部も有効活用され、風車などが設置され、クーヘン全体に電力を供給している重要な土地にもなっている。
私の兄、ティルクは元シュトラール候補生で、現在、使長候補として、現シュトラール・クラウディオ様の補佐として実務を担当している。
同学年では唯一のシュトラールであり、容姿端麗、成績優秀者。
私にとって、頼りがいのある、自慢のお兄様。
一方、下の弟、ヴィルヘルムは、引っ込み思案で、少々内気なところがあり、姉としては心配だな、と思う。
逆に、私は男勝りの性格をしているので、父上からは「姉弟の性格が逆だったら」なんてよく言われている。
サバサバした私の性格が受けるのか、バレンタインなんか、女の子なんかに、「お姉さま…」なんて言われて、たくさんのチョコレートを毎年、もらう。
そのせいか、父上には、入学前に、「ローゼンシュトルツで女らしさを学んで来い!」なんて、言われる始末…。
本当っ、いらないお世話だ。
女らしさなんて…嫌いだ。
反吐が出る。
私はタッパがあるほうだから、十代になってから、女らしい凹凸が体に色々出るようになってきて、それがすごく醜くて、嫌で嫌でしょうがなかった。
なんどもそれを押しこめようと、サラシを巻いていた時もあったけど、出るものは、結局出て来るし、私はあきらめることにした。
あの女…マリーン、とは領地が近いこともあって、小さい頃から、交流があったんだけど、あのブリっ子キャラが、どうも、好きになれなかった。
いつも可愛い子ぶっちゃって、本当にウザったらしいったらありゃしない。
私の一番嫌いな『女の子してる』、女の子のタイプだ。
それでも相手は、公爵家、それも、建国王・初代リヒャルト王に繋がる正統なる家系。
そもそも最初から、うちが対等に関係を断ったり、付き合えたりできる相手ではない。
彼女の空気の読めなさや、ブリっ子ぶりに、呆れ半分、我慢しながら、今まで、付き合ってきた。
全く、あの子は、私がいなければ、仕方ないんだから。
そんなマリーンがローゼンシュトルツに来てから、どこか、少し、おかしい。
ブリッ子風な喋り方はすっかり、なりをひそめ、それどころか、新しく友達になったミンナに対し、心から気づかい、クラウス嬢に対しても、寛容な態度を見せたりして、大人らしく振る舞おうとしている。
そんな彼女の様子に、私は一抹の不安を覚える。
私は今まで、この子を見下してきた。
どこか、彼女のことを、無意識に、アラ探しをして、彼女のブリッコぶりやワガママな様子に呆れたふりををして、自分は違うんだ、サバサバしてるんだ、と優越感にひたり、自分の価値を守って安心していたのではないだろうか?
女子が唯一の跡継ぎということで、カーレベルク家の地位は低迷したと聞いている。
当然、周りの貴族たちの彼女に対する当たりは強いものだったのではないかと思う。
もし、あのブリッ子の仮面が、周りの心無い彼女に対する悪意から、守るための彼女なりの防衛手段だったとしたら?
自分は今までこの子の何を見てきたんだろうか?
…ったく、本当に、あの子って、ほっとけないんだからっ。
そんなことを考えている時、片方の足を包帯で巻き、スリッパを履いたマリーンが教室に入ってきた。
周りのクラスメイトが「どうしたの?」と口々に心配する中、マリーンは困ったように「大丈夫、大したことないから」とみんなに微笑みながら、言う。
え、何そのケガ? とても、大丈夫そうには見えないんだけど..。
ふと、なぜか、教室のある方向から来る視線が気になった。
あの方向は、確か….
そして、私は見たのだ。
エリカ・クラウス男爵令嬢がニヤリと笑いながらこちらをうかがっているのに。