マイネリーベのマリーンに転生したけども詰んだかもしんない 作:むぎすけどん
「これは、これは。 マリーン様!
遠路はるばる、よくぞ、おいでくださいました!
さぞ、お疲れのことでしょう、ささっ、こちらへ..」
湖岸からさらに6時間、馬車に揺られ続け、ヴォルヘンビュッテル子爵邸に着いたころにはすでに夕方になっていた。
連絡がすでに届いていたのか、当主のライヒアルト・ヴォルヘンビュッテル子爵自ら、玄関で待ち構え、揉み手をしながら、平身低頭、マリーンに挨拶をする。
子爵と公爵ともなるとその地位の差は歴然だ。
私が来るときは毎回、こんな感じである。
隣のミンナはポカーンとしながら、背では小さいはずの私の袖をギュっと掴んでいる。
ナニソレカワイイ。
「ヴォルヘンビュッテル子爵。 丁重なお出迎え、畏れ入ります。
秋期休暇の間、私どもを受け入れてくださり、ありがとう存じます。」
「いえ、いえ、マリーン様がそのような、お気遣いをなさらずとも…」
ホールに入ったヴォルヘンビュッテル子爵が、あわあわしている。
ん? なんだ、この
この構図、とーっても、見たことあるのよねぇ。
……..あっ、アレか。続編の『誇りと正義と愛』で、子爵がパーティーの途中で容疑をかけられ、手錠をかけられるスチル絵と少し似ているんだ。
そういえば、場所はこのホールね。
確か、レジスタンス側に武器・戦車を無償提供をして、それを実績として、他国にも販売しようとしたのが、没落の原因だったか。
うーん、でも、私、商売って、普通そんなものだと思うんだけどなぁ。
むしろ、レジスタンス側に配慮しすぎているというか…。
しかも、それも、まだ、子爵が未遂のところを、ヒロインが「街で小耳にはさんだよ」って証言だけで、子爵家が没落してしまうという….。
ドイツ軍とクーヘン軍を行ったり来たりしているヒロインちゃんだけには言われたくない話だよなぁ。
まぁ、シュトラールに気に入られれば、この国ではなんでもアリになってしまうんだろうけど、子爵やオーガスタのことを考えれば、何ともやるせない…。
後ろのほうでは、対照的に、『シュトラール候補様』が、不遜な態度でマリーン達を見下ろしている。
公爵令嬢相手に、ヘイコラする父親の子爵と、逆にふんぞり返っている息子のシュトラール。
なんとも悲しく
ローゼンシュトルツを卒業してからは、現使長のクラウディオ・ブライテンバッハのもとで、補佐として働いていて、順調に、出世街道を突き進んでいるようだ。
シュトラールに選出されてからのコイツの態度の豹変ぶりといい、マリーンの時から、気にくわないところがあったが、前世の知識を知ってからは、その直感はあながち間違ってはいなかったな、と思う。
「ずいぶん、見違えたね、マリーン。
…まるで、マリーンじゃないみたいだ。」
ティルクの言葉にギクリとする。
私はたしかにマリーンには違いないが、前世の記憶がよみがえってからは、OL時代の別人格が、元のマリーンの性格と入り混じっている状態にある。
さすがに様子がおかしいことを見抜かれてしまったのだろうか?
「…そ、そんなことは、なくってよ、オホホホホっ!」
困ったときの高飛車お嬢様様である。
今になってみると、ブリッ子演技は色々とハードルが高すぎるのよね。
「ふーーーん。…やっぱり、マリーンか。」
ふふっ、さすが、兄妹。
あっさり
私ったら、ナイス演技!
わたしは…女優!(キラーン)
ふと、横から絶対零度の冷たい視線を感じる。
…オーガスタ、そんな目で私を見ないで、お願いだから…。
本当、おそろしい子っ!
「あれ、ヴィルヘルムはどこ?」
オーガスタが子爵夫人に尋ねる。
「…それがね、あの子、ずいぶん前から、部屋に閉じこもってるの。」
「え!?」
私とオーガスタは思わず顔を見合わせた。