マイネリーベのマリーンに転生したけども詰んだかもしんない 作:むぎすけどん
ガシャーン!!!
と、もの凄い勢いでドアが
「マリーンっ!!!
お願いだから、返事して!!!」
見ると、血相を変えたオーガスタが、足を振り上げた状態で立っている。
「…ゲホッ、ゲホッ…。」
「マリーンね!
…あぁ、もう大丈夫よ。
今、助けるから。
そこをどいて!」
「…オーガスタ。」
ドカッドカッ
オーガスタが必死になって、脱出経路を確保しようとしている。
ああ、オーガスタが私のために…。
….でも無理かもしんない。
一酸化中毒というか…もう駄目、
…気が遠く…。
「マリーンっ!! マリーン!!
…うぅ、マリーン!! しっかりして!!」
「う、う~ん…。」
「大丈夫?
…外に出るわよ!」
オーガスタが私を抱き上げる
「オーガスタ…。」
「黙ってて、煙を吸いこむわよ、
口をおさえてるのよ!!」
…ああ、オーガスタが
こんなに頼りになるなんて…。
今まで、サバサバ気取ってて、
いけすかないやつだ、なんて思っててごめんね。
本当はわかってたんだ。
あなたが友達想いのやさしい人だってことは。
私にはもったいないぐらいの得がたい友達だよ。
あなたが私のおさなじみでよかった。
…えっ!! あっ、柱がっ!!
…もう駄目か…。
「グッ!?…うぅっ…ええいっ!!」
「オーガスタっ!!」
「ふぅ、平気よ、これくらい。
いいから黙ってつかまってて。」
燃えさかる柱をなぎ倒しながら、私たちは外に出た。
・・・私たち、助かったのね。
…ああ、オーガスタ、
私のためにあんなに傷ついて…。
..あら、あれは?
見ると、ミンナが必死の形相で、バケツを手にこちらへ走ってきている。
後ろにはヴィルヘルムを先頭にヴォルヴェンビュッテル家の使用人やら、家族のものがバケツを持ってついてきている。
あぁ、私は恵まれてるなぁ。
こんなに私を思ってくれてる人に囲まれて。
たしかにこの先、私に待ち受ける運命は過酷なものかもしれない。
でも、私はこの人たちのためなら頑張れる。
この人たちの笑顔を私は守らなければならない。
こんなところで私は、死ぬわけにはいかないんだ。
….ん、あ、あれ?
頭が重く…
・・・意識が・・・遠く・・・
・・・遠く・・・
私の体が崩れ落ちるのを感じる。
「はっ、ここは?」
気が付くと、ヴォルフェンビュッテル家の寝室に私はいた。
「気が付いたか。」
オーガスタとミンナが心配そうに私を見ている。
どうやら、私は気絶をしてしまったらしい。
あれだけ、頑張るって思ってたのに、情けない。
「無理もないよ。
軽い、呼吸困難に
とオーガスタがやさしく声をかける。
火災現場などの酸素が不十分な状態で、炭素が燃焼すると、
無味無臭の一酸化炭素ガスが発生する。
火災が続けば、一酸化炭素濃度が上がっていき、しだいに呼吸が困難になり、
やがてガスが人体に悪影響を及ぼし、死にいたらしめる。
1982年に起きたホテル・ニュージャパンの火災では33人が犠牲となったが、
そのほとんどが、この一酸化炭素中毒だといわれている。
「…お、オーガスタ。
私を助けてくれて、本当にありがとう。
け、怪我のほうは大丈夫?」
「ああ、気にしないで。私の方はぜんぜん平気よ。
あんなもの
「そ、そんな…」
….
結構、肩にヤケドさせちゃったみたいだけど、あとできちんと治療させなきゃ。
乙女の体にキズを残しちゃいけない。
「そんなことより、あなたに謝らなければならないことがあるの。」
オーガスタが切り出す。
「納屋の火災ね..あれ、アイザックとお兄様がグルだったんだ。」
そう言ったオーガスタはどことなく哀しそうだった。
「え!?」
「うちの納屋にある屋根裏は収納用に空洞になっていてね。
「納屋にあなたをおびき出したお兄様は、
外にいるアイザックに合図をして、ドアを金具で固定。
あなたがその音に気を取られている間に、
お兄様は屋根裏に行き、まんまと脱出。
アイザックが納屋に火をかけ、一緒に逃げているときに、
二人にとっては運の悪いことに…」
「アイザックが逃げ出した、という報告を持ってきた
事情を吐かせた私はすぐに納屋に向かったわ。
あなたをこんなことに巻き込んで、本当にごめんなさい!」
ごめんなさいもなにも、オーガスタは私の命の恩人だ。
たとえ、オーガスタのお兄さんが私を殺そうとしたとしても、
そんなことはオーガスタの罪でもなんでもないだろう。
私は改めて、友人に命を助けてくれたお礼を言い、
オーガスタからの謝罪は必要ない、と強く言った。
「あ、あの…変なこと聞いていい?」
「うん、何? なんでも聞いて。」
「オーガスタの別荘、…うん、キルシュにあるやつ。
あそこにも納屋があったよね?
あの納屋も同じ構造してるの?」
「そうね。確かに、屋根裏スペースがあって、同じように点検口もあるわね。どうして?」
「…う、うん、何でもないんだ。ただ、ちょっと気になっただけ。」
なるほど。
ゲームの中で、ヒロインが納屋に閉じ込められたあの事件。
どうも、不自然な点が多いなぁ、と思っていたのだけれど、
なるべくして起こったということか。
おおかた、
ヒロインに
諜報員としてのプロ意識もないあの男の考えそうなことだ。
第一、人の命を何だと思っているのだろうか?
もし万一のことが起こったとしたら…
マリーンはやりきれない怒りに震えるのだった。