マイネリーベのマリーンに転生したけども詰んだかもしんない   作:むぎすけどん

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媚薬事件

「ねぇ、マリーンちゃん、いいでしょー?」

 

「…うーん、そうはいってもですねー」

 

「うっふ~ん、お願~い♡」

 

…お、おっふっ。

せ、セクシーすぎる。

さすがの私も、それ以上は、ちょっと…。

 

 

 

 

整理しよう。

今、私は、放課後の部室にいる。

そして、『エロの権化(ごんげ)』ともいうべきフランシス先生に熱烈に(せま)られている。

 

その距離は、キスもされんばかりのゼロ間隔(かんかく)

先生のセクシーさにあてられて、もはや、理性を保っているもやっとの状況だ。

 

 

 

 

…といっても、残念ながら、私にモテ期が来たわけではない。

クリスマス前にどうしても彼氏をゲットしたいフランシス先生が、私に媚薬(びやく)をねだってきているというだけである。

 

神秘研究部ともなると、バレンタインなどの乙女のイベント前には、

必ず、女子生徒からの媚薬(びやく)作成の依頼が殺到(さっとう)して、日々を忙殺(ぼうさつ)されることになる。

そのため、先輩たちからは、くれぐれも覚悟しておくように、言い含められている。

 

 

…しっかしなー。

本当、気が進まないのよねー。

 

 

 

 

「先生。

媚薬って、何でできているか、ご存知ですか?」

 

「え、なになに、秘密のレシピを教えてくれるの?

愛液とかかしら?」

 

あ、愛液って!

キャー(/ω\)

センセイったら、不潔(ふけつ)よっ!

 

 

 

「…え、えっと、残念ながら、違います。

今からソレをお見せします。」

 

私は、神秘研究部のある一画の引き(だな)をガラっと開ける。

 

「ヒッ、ヒエッ! なにこれ!?」

(のぞ)きこんで、まともに見てしまったフランシス先生が()頓狂(とんきょう)な声を上げる。

ビビリモード全開である。

 

 

「イヤイヤイヤイヤ! 私虫とか見るの本っ当に苦手なのよ!!

それ生きてるの? い、今、動いた。 イヤーーーー!!!」

 

…いや、さすがに死んでるし。

 

今わたしが持っている棚には(おびただ)しい数の虫がこれでもかというぐらいに()()められて入っている。

腹には黄色と黒色の(まだ)ら模様があり、虫に耐性のない人はその場で失神しそうなぐらい、グロテスクなしろものである。

 

これはマメバンミョウだ。

『カンタリデス』という、その起源は中世まで(さかのぼ)るといわれるオーソドックスな媚薬を作るのに必要不可欠な材料である。

 

ちなみに日本にもバンミョウという名の、山道で古くから『ミチシルベ』として重宝されて続けてきたカラフルな虫が存在するが、中国から名前が間違って伝えられてしまったもので種類は違うものである。

 

この虫に含まれるカンタリジンという成分が人体に作用すると、膀胱(ぼうこう)や生殖器を強く刺激し、利尿、催淫(さいいん)知覚麻痺(ちかくまひ)の効果が得られる。

その作用を利用し、古来から、媚薬として多く用いられてきた。

今でいうバイ○グラに近いものと考えたらしっくりくる人もいるかもしれない。

神秘研究部で媚薬といったら伝統的にこの『カンタリデス』のことを指す。

 

 

 

 

「…ねぇ、ほかにないのぉ?

私、嫌よ。こんなの飲むの。」

 

…別にあなたが飲む必要はないんだけどね。

 

でも、そうね、私もこれはオススメできない。

微量(びりょう)のカンタリジンにはたしかに媚薬に近い効力を発揮するかもしれない。

しかし、容量を間違えれば、これは劇薬(げきやく)に変わる。

よく「毒と薬は紙一重」なんて言われ方するけれども、

これはガチもんの毒といっていい。

その致死量(ちしりょう)、わずか30ミリグラム。

カンタリジンは昔から媚薬としても多く使われていたが同時に暗殺用の毒としても有名である。

 

また、媚薬としても欠陥が多く、副作用が強い。

この『カンタリデス』を好んで使用していた著名な人物に18世紀の狂人貴族、マルキ・ド・サド伯爵がいるが、彼の乱交パーティーに居合わせた娼婦はその後、膀胱炎(ぼうこうえん)となり、排尿困難(はいにょうこんなん)の後遺症が残ったという。

 

 

 

 

…それに、ぶっちゃけ、私も嫌なのよねー。

これ、さわるの。

 

キモいとかそういうんじゃないんだけど、よほど、細心の注意を持って触れないと、皮膚に水泡というか、水ぶくれができたりして、危険だし、やっぱり毒だから、誤って目に飛び散ると失明の可能性もある。

なるべくなら避けたいところだ。

 

バレンタイン前とかだったら毎日でも触れないわけにはいけないんだけどね。

…うぅ、今から憂鬱(ゆううつ)だ。

 

中世から伝わる秘伝の薬なので、その効果も(あや)しげだ。

たとえ、効果があったとしても、性欲が出たり、勃起不全が治ったりする類のものなので、乙女が期待するような擬似的な恋愛感情が芽生えるようなものではないだろう。

 

 

やはり、お世話になっているフランシス先生だから、ちょっとでも可能性のありそうなものを提供したい。

 

 

 

 

 

 

「それなら、これを試してみてください」

 

私はクリスタル製の瓶に入った、青い液体をフランシス先生に手渡す。

 

「え? それは何?」

 

 

「これは『ガルキマセラ』といって、私が特別に調合(ちょうごう)したものです。」

 

ちなみに「ガルキマセラ」というのは私が命名した。

 

『出会ったら、もうおしまい』といわれる某RPGの凶悪モンスターにあやかっただけなんだけどね。

…正直、あれはトラウマもんだったわ…。

 

「…えっ、と、これは虫とかは使われていないのよね?」

フランシス先生が念を押す。

 

うん、虫は使われてません。

ちょっと、ファンタジックな材料は使われてますけどね。

 

 

 

 

 

「マリーン、おぬしなら、これをうまく使ってくれるはずじゃ。」

 

って、うちの実家に居候(いそうろう)しているエドワードじいさんから無理やり押しつけられたんだよなぁ。

土から引っこ抜くと「ギャー!!」ってうるさいやつ。

 

はい、ハリー・○ッターなんかに出てくるアレです。

伝説のマンドレイク。

 

マンドレイクって、よく知られているのは地中海沿岸に生えている綺麗な紫色の花を咲かす植物なんだけど、

私がエドワードじいさんから分けてもらったのは古代から生息する純粋種のようで、見た目は人参っぽいんだけど、土から出したとたん、ものすごい悲鳴で泣き叫ぶので、超強力な耳当てが必須になってくる。

 

昔の人は犬を一匹犠牲にして引っこ抜く、なんて考えたみたいだけど、犬好きの私には絶対に無理な話だわ。

うぅ、アニスにゃん…。

 

 

超レア種だから、育てるのにものすごい手間がかかってるし、魔力とかも必要になってくる。

私は幸い潤沢(じゅんたく)にあるみたいで、私の魔力を養分にすくすくと育っていった。

 

でも本当世話するの大変だから、数を増やそうにも、まだほんのちょっとしか培養(ばいよう)できていないのよねぇ。

 

この伝説のマンドレイクを使った媚薬は昔から効能が高いことで有名で、聖書の中で女達のいさかいが生じるほど。

 

 

理論上は可能なのよね、理論上は。

問題はあまりにも、もったいなさすぎて、今まで一度も試してなかっただけで。

 

でも、フランシス先生には、とってもお世話になってるし、一番可能性のありそうなものって、もうこれしかないのよね。

…正直、どうなるかわからないのだけれども。

まぁ、悪い結果にはならないでしょう。

 

『ガルキマセラ』を受け取ったフランシス先生はホクホク顔で部室を去って行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その夜。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ドンドンドン!

という音で私は目覚めた。

 

…うん? あっれー? おかしいなぁ。

メレディスはもう下がった時間だし、一体誰だろう?

…ま、まさか、ヒロイン?

 

警戒しながら、ドアを開く。

 

 

 

 

 

 

 

そこには、門番が顔を真っ赤にしながら、立っていた。

 

「ま、マリーンさんっ! 夜分(やぶん)に大変申し訳ない。

す、少し、休ませてもらえないだろうか…。」

 

男を女の一人部屋に入れるのは..と一瞬迷ったが、大変切羽詰(せっぱつ)まった様子の門番に、思わずうなづいてしまった。

 

 

 

 

 

 

「お茶をどうぞ」

 

「え、ええ、すみません…」

門番は腕に(つめ)をつきたてながら、ブルブル震えている。

 

...あれ、どうしたんだろう? 

風邪とかじゃなければいいんだけど…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

結局、このままの状態で、帰すわけにはいかないと判断した私は門番をベッドに寝かせて、代わりにわたしはそのままソファで寝た。

 

朝、起こしに来たメレディスが死ぬほど驚いて、ベッドに寝ていた門番を、太ももに常備(じょうび)しているクナイで一気に刺し殺そうとしたときは必死で止めた。

 

 

 

 

門番の具合はすっかり良くなっていて、私に平身低頭(へいしんていとう)、謝ってきた。

 

「…ほ、本当に申し訳ありませんでしたっ!!

昨晩、自分はどうかしてたんです。

たしか、フランツィスカのやつと一緒に飲んでたんですけど、途中でなぜか動悸(どうき)が激しくなってきて、

...そして、どういうわけか急にマリーンさんの顔が見たくなって、

自分で(おさ)えよう(おさ)えようと何度も思ったんですけど、もう、本当にどうしようもなくなって…」

 

見ると門番が慟哭(どうこく)しながら顔を手で覆っている。

 

 

 

 

 

 

…うん?フランシス先生と飲んでて? 気分が高揚した…ってこと?

…なんかソレって、すごい身に覚えがあるような…。

 

 

 

 

 

私が渡した『ガルキマセラ』か!

 

 

先生がどうしても落としたい彼氏さんって、門番さんのことだったのかぁ。

それで、昨日、一緒に飲みに行ったときに門番さんの飲み物に一服(いっぷく)()ったという訳ね。

 

 

 

 

 

 

 

 

…でも、それなら、なんで、目の前のセクシー先生じゃなくて、私の部屋にわざわざ来るんだろう?

 

 

 

…解せぬ。

 

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