マイネリーベのマリーンに転生したけども詰んだかもしんない   作:むぎすけどん

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クリスマスパーティー

今日はクリスマス。

学園主催のパーティーの日である。

 

イブ礼拝が終わった後の2日間、ここローゼンシュトルツ学園ではクリスマス休暇となる。

その最初の日のクリスマスには、毎年、学園側で特別会場が用意され、1年の慰労(いろう)を兼ねて、生徒たち、職員ともども参加できるクリスマスパーティーが催される。

日本の会社でたとえると、忘年会みたいなものかしら?

 

私たちは学生だし、お酒を上司から強制されるなんてこともないのでその点はもぅ安心していいのよね。

…いやだわ。 前世の嫌な記憶がよみがえってきてたわ。

切り替え、切り替え!

 

さて、私はお父様から、今夜のためにわざわざドレスを送られてきているのだが、

…これって、本当に大丈夫なんだろうか?

 

「…ネグリジェ…? じゃないわよね?」

ゲームをやっているときはなんとも思わなかったけれども、パーティーでマリーンの着てくるドレスって、いやに扇情(せんじょう)的なのよね。

娼婦(しょうふ)的というか、なんというか…。

 

良く言えばピンクのキャミソールなんだけど、…見ようによっては、…下着?

 

これで、シュトラールの1人でも落として来い、と言ったお父様の迂遠(うえん)なメッセージなのかしら?

…だとしたら、すごく重い。

政略的に仕方ないかもなんだけどさぁ。

 

はぁ。でも、腹くくって着るしかないわよね。

私が着ると、そんなにおかしくないのかな?

 

「お、お嬢様、お似合いですよ、ご立派になられて、うぅぅ…」

メレディスは感激のあまり涙を流している。

 

…うん、きっと大丈夫よね。

早く支度しなくちゃ。

 

 

 

 

 

 

コンコン

 

「はーい。」

 

ミンナとオーガスタが部屋の中に入ってくる。

 

「さ、クリスマスパーティー会場へ行きましょう。」

 

「楽しみよね~」

 

 

「ま、マリーンちゃん、その服は….」

ミンナがぽかーんと口を開けて、私の方を見る。

 

「『お前は注目されるはずだから、公爵家としてこれくらいのものを着ておきなさい』って、お父様が買ってくださったものなのだけれど…やっぱり、変かな?」

 

「..うん、ううん。

とーっても可愛い過ぎて、思わず放心(ほうしん)してしまっただけなの。

マリーンちゃん大好きっ!」

 

ミンナが私に抱き着いてくる。

うへへへ...このドレスもなかなか捨てたもんじゃありませんなぁ。

 

 

「…..車が来たようよ。

さあ、行きましょう。」

オーガスタが、その様子を見て、(あき)れたように私たちを(そく)す。

 

「それじゃ、しゅっぱーつ!!」

と、私が言おうとしたとき、

ふいに、自分が、何かを忘れているような気がして、違和感を感じる。

 

「どうしたの、マリーンちゃん…」

私の様子に気が付いたミンナが心配そうに声をかける。

 

 

「う、ううん、なんでもないの。

それでは行きましょうか。」

 

 

 

 

 

 

 

「て、T型フォード!!!」

 

「そうね、いやよね、こんなオンボロ車。」

 

「い、いやそうじゃなくて、T型フォードだよっ!!

本物の!」

 

その販売年はじつに1908年。20世紀の初めも初めである。

自動車の歴史を語るのに、絶対に外せない最初の量産型自動車だ。

人類史上、自動車の普及に最も貢献した自動車といえば、この車がまず一番手に上がるのではないだろうか。

2人乗り、4人乗りの違いはあれど、およそ30年間にわたって、T型はほとんどモデルチェンジがなされていない。

たしか、3年前にヘンリー・フォードが生産中止を発表したばかりだったはずだ。

….ちくしょう、シボレーのやつめ。

 

そのまま、(ほお)ずりをしそうな勢いの私にミンナとオーガスタの顔が引いている

 

「私、これにずっと乗っていたい。…いや、むしろ運転させて」

 

「ま、マリーン、駄目よ。 ほら会場に着くでしょ。」

 

「マリーンちゃん、車の運転まで、できるんだぁ。」

ミンナは別の意味で感心している。

 

苦笑いする運転手に交渉する私をなだめすかし、オーガスタに引っ張られながら、私は会場へとドナドナされる。

い、いいんだもん、帰る時に絶対、満喫(まんきつ)してやるぞー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

会場の前には門番が立っている。

 

うんうん、やってるな。

...考えてみれば、これがこの人の本職なのよね…。

すっかり、私たちの茶飲み友達が板に付いてたなぁ。

 

 

 

 

 

 

「ま、マリーンさんっ

その恰好(かっこう)は!」

 

ふと気が付くと、門番が『筋肉に魅せられた外井雪之丞』のごとく顔を真っ赤にしながら私たちを凝視(ぎょうし)している。

 

「いけませんっ!

ほかの男に襲われたらどうするのですっ!!

さ、さぁ、今すぐ、わたしのマントを着てください。

絶対にパーティーの間中、これを外さないでくださいね。」

 

そうはいってもなー、暑いよ、絶対。

 

()()にですよ」

 

門番の射殺(いころ)さんばかりの必死の形相に、観念した私はありがたくマントを借りることにする。

私の恰好、そんなに変かなー。

 

 

そんな、私たちの様子にミンナはクスクスと笑っている。

「あらあら、お熱いこと。ヒューヒュー。」

 

「…独占欲の強い男ね..。」

と逆にオーガスタはツンとしている。

 

「そ、そんなんじゃないのよ。

門番さんは、ただ、私がパーティーで変な目で見られるのを心配してくれているだけよ。」

私は必死に門番のために弁護する。

門番も、オーガスタ達に、勘違いされたら、たまったもんじゃないだろう。

 

 

 

「…やれやれ、門番も気の毒ね。」

 

「全くよね。」

 

ミンナとオーガスタが二人で以心伝心したかのように、同時に顔を見合わせ、肩をすくめ合う。

 

 

何、そのシンクロ率?

いつ、習得したの、その技?

なんか、私だけ、取り残されてるんだけど…。

ひっどーーーーい。

私だって、それ覚えたいよっ!

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