マイネリーベのマリーンに転生したけども詰んだかもしんない 作:むぎすけどん
俺の名はエドヴァルド・マルクグラーフ・フォン・ゼクト・ブラウンシュヴァイク。
気軽にエドって呼んでくれ。
片っ苦しい貴族っぽいことは苦手なんだ。
好きなピアノも人前では弾かねぇようにしている。
だって、らしくねぇだろ?
…しょせん、『貴族のまね事』なんだ。
俺の家は子爵家だけど、俺は本当の貴族じゃないからな。
うちの親父は若い頃、ずいぶん、やんちゃだったらしくて、
ほうぼうに女作って、遊んでたらしい。
俺はもともと、キャラバン出身で、いわゆる『
3歳まで、母親と暮らしてたんだけど、ある日、オットーのやつがやってきたんだ。
…おっと、オットーってのは、うちの親父の名前な。
本人は
子爵家に引き取られることになった俺は、同じく親父の愛人の子に生まれた妹と一緒に、ゼクトにあるブラウンシュヴァイク邸で暮らすことになったんだ。
まぁ、
俺の黒い肌にも原因はあったのかもしれないけどな。
アイツ、今頃どうしてるかな?
…アイツの母さん、あの後、出家したって、聞いたけど、修道院で元気にしてるんだろうか?
そんで、俺は唯一の男子ってことで送り返されることもなく、そのまま子爵家の一員になったってワケ。
上にも姉ちゃんが3人いるんだけど、男尊女卑のクーヘン国では跡継ぎにはなれねぇらしい。
...大人の事情ってやつ?
俺には妹がいるし、
今回、俺の幼なじみで大親友のオルフェがローゼンシュトルツ学園へ進学するってことで、俺も一緒に行くことになった。
シュトラールってやつにも興味はなかったが、選ばれちまったもんはしょうがねぇ。
親父のやつ、感激のあまり、泣いてたけどな。
何やら、うちの子爵家の立場が向上するっつって大喜びしてたけど、
そんな貴族の事情なんざぁ、俺にはわかんねぇな。
オルフェと一緒なら、正直、どうでもいいや。
そんなオルフェが学園主催のクリスマスパーティー以来、熱に浮かされたように何かを考えることが多くなった。
原因は何かわかってる。
マリーン・フロイライン・カーレンベルク。
あの公爵家のブリッ子娘がオルフェに何かよからぬことを吹きこんだに違いねぇ。
そういえば、アイツ、自分の立場がわかってねぇのか、何やらオルフェに失礼なことを言って、剣で切りかかられそうになってたな。
オルフェがそこまでするってぇことは、よっぽど、性悪なことを言ったに違いねぇ。
アイツのことはもともと嫌いだったんだ。
いつも可愛い子ぶって、俺が一番嫌いなタイプだな。
大体、あのウサギのぬいぐるみは何なんだ。
いい加減、そういうの卒業しろよな。
正直、見てて、恥ずかしいぜ。
「オルフェ。」
オルフェのやつ、物思いにふけってて、俺に返事をしようともしねぇ。
「オルフェ!!」
「!?
エドか…。」
「どうしたんだよ。
深刻な顔しちまって。」
「少し考え事をな…。」
オルフェの目は
かわいそうになぁ。
「マリーンのやつになんか言われたんだろ?」
「…..。」
オルフェは押し黙っている。
「…ルーイのことについてか?」
オルフェは、ハッとした顔で俺の方を見る。
当たりか。
「お見通し…か。
さすがだな。エド。」
「ま、なが~いつきあいだからな。」
「…そうだな。」
オルフェも出会ってからの俺との思い出をかみしめているようだ。
以心伝心ってやつ?
「…エド、彼の考え方は
ただ人々を恐怖に陥れるようにしか思えないのだ。
私は…彼の考え方を正したい。」
「なあ、オルフェ。
世の中にゃ
いろんなヤツがいるんだぜ。
善の人間もいりゃ~、
悪の人間もいる。
でもよ、この世の人達全部に
自分の考え方理解しろったって、
そりゃ~無理な話だ。」
「………。」
「だからよ、そういう思想の違うヤツらと、どう接して行くかを
考えたほうがいい…。」
「!?」
「おまえの輝きはさ、
まぶしすぎる光だ。
光には必ず影がついてまわる。
光が強ければ強いほど
暗い影がな。」
「その影とも
上手くやっていかねえと
いつかその影に飲み込まれちまう。」
「…そうなのだろうか・・・。」
「…それとな、マリーンをあまり信用するな。
アイツはな、公爵家でワガママ放題に育った
根っからの
ブリっ子のふりして、俺たちをつけ狙ってるぜ。
ナオジを日本に送り
「…..。」
「ま、そんな堅苦しく物を考えすぎるな。
また、男子寮みんなでパイ投げでもしようぜ。
あれ、楽しかったよな。」
「..そ、そうだな。
エド、ありがとう。
なんだか、迷いから覚めた気分だよ。」
「いいってことよ。
俺たち、友達だろ?」
それから、俺たちは、男子寮で行うパイ投げ大会について話し合った。
オルフェもすっかり気が晴れた顔をしている。
…それにしても、マリーンか。
あの女、ろくなことしねぇ。
はやく、何とかしねぇとな。