マイネリーベのマリーンに転生したけども詰んだかもしんない   作:むぎすけどん

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恋の指南

あれからサルコウさんからの熱心な勧誘の電話が父の元に来ているらしい。

いはく

『お嬢様の才能は本物だから是非スウェーデンにある私のスポーツクラブで練習をさせたい。』

『できればこちらでの公爵位を残したまま帰化させて、スウェーデンで4年後の札幌大会を目指して、ミッチリと指導したい。』

熱烈なラブコールを受けて、父もやぶさかではない心持ちになってきているらしい。

 

ついでに夏のベルリンオリンピックのチケットを何枚か送ってくれた。

親しい友人でも連れて、一度本場の空気を味わってみてはどうか、とのありがたい申し出だ。

本当は今ドイツで開かれている冬季五輪の方に行ってもらいたかったみたいだが、さすがに会期が間に合わなかったようだ。

 

『棚からぼた餅』とはこのことをいうのだろう。

チケットどうしようかなーって悩んでいた時期だけに、私的には喜びもひとしおだ。

 

...しっかし、4年後の札幌大会か。

あの時はすっかり失念してたけど、日中戦争勃発のため、たしか中止になってしまうのよね。

直司(ナオジ)が上手くやってくれれば、もしかしたら『バタフライ効果』かなんかで盧溝橋(ろこうきょう)事件を防げるのかもしれないけど、そこまで私は楽観視をしていない。

今月、起こる二・二六事件にしたって、直司は四方巡り回って奮闘しているようだが、『歴史の矯正(きょうせい)力』というものには(あらが)えない可能性がある。

そういうSFものってよくあるよね。

色々やっても、結局は『終着点は同じ』だという。

 

そう考えると、私が今やってることも無駄なのかなぁ。

でも、ルードヴィッヒ側が少し動きにくくなってきているようだなぁ、ってところは最近ひしひしと感じるのよね。

密偵から報告が来ていたけれども、カミユとの話し合いでルードヴィッヒはすっかり気落ちしてしまい、この頃は科学研究室に閉じこもりぎみらしい。

ルードヴィッヒの心の()り所であるシュトラールの仲間たちを次々と説得していったのが功を(そう)したのだろう。

 

右腕であった直司を日本に帰してしまったのが一番大きいと私は思う。

彼はああ見えてシュトラールの中では有能なほうだ。

ゲーム本編で、ルードヴィッヒがクーデターを起こすに当たって、彼はかなり重要な役割を果たしていたのではないだろうか?

 

オルフェレウスにしてもエドヴァルドがいなければ、基本は私()りだ。

エドヴァルドさえどうにかすれば、彼も重い腰を上げてくれるのではないだろうか。

 

 

 

さて、エドヴァルド対策のほうだが、私の中ですでに結論は出ている。

 

 

 

 

 

「オーガスタ、あなた、ブラウンシュヴァイク子爵(ししゃく)の息子さんのこと好きでしょ?」

 

昼下がりの中庭。

私たち3人は仲良くランチ中だ。

 

 

 

「...っ、なっ!」

 

唐突な私の質問に

オーガスタは目を白黒させた上に、すぐに顔を()でダコのように真っ赤にさせた。

 

 

 

 

わっかりやすいんだからなぁ、もう。

普段ツンツンしてるだけに、そういった表情、スゴく可愛(かわい)いわよ。

 

 

 

エドヴァルドとオーガスタを恋仲にしてしまったうえに、オーガスタのほうからエドヴァルドに働きかけ、あわよくば、ルードヴィッヒのクーデターを止めるように説得してもらうようにしむける…。

…まぁ、それは楽観的に見た場合の話だが、少なくとも、エドヴァルドを(おさ)えてしまえば、オルフェレウスが動くことが楽になる。

 

ヒロインをくっつけるという方法も考えたが近親相姦みたいで、色々とマズいだろう。

 

それに私個人としても、友人の恋を応援してやりたい。

 

 

 

ミンナは隣でニヤニヤしながら聞いている。

こういう恋バナが好きな子なのだ。

 

 

 

「そっ、そんなことないわよっ!

エドヴァルド様なんて、私っ、興味なんか...!///カアァァ」

 

いやー、普段がアレだけに、凄いギャップだな、こりゃ。

私が男なら、今すぐ抱きしめたいぜ。

かっわうぃーー!

 

「オーガスタ、私と何年の付き合いだと思ってるの?

小さい頃からずっとあなたを見てきたわ。

あなたが熱い視線を向ける先には必ずその誰かさんがいるの。

この間のクリスマスパーティー、あなたは一体どこに行っていたのかしら?

あなたの態度は、はた目から見ればものすごく分かりやすいのよ。

それに...」

 

「ちょっ、ちょっと...」

 

私はオーガスタの制服の(ふところ)をガサガサと探る。

...うん、ここじゃないか。

ではお胸のほうか...

 

「マ、マリーンちゃん、何してるの!?」

ミンナは顔を両手で(おお)いながらも、指の隙間(すきま)から私を凝視(ぎょうし)している。

 

うん、今、私がやってる事って変質者よね。

それは自覚している。

 

...おっ、こんなところに裏ポケットが。

ほうほう、しかし、オーガスタもなかなかこれでボリュームが...

 

...じゃなかった。煩悩(ぼんのう)退散っ!

獲ったどーーー!!

 

 

 

 

 

私はオーガスタの胸の裏ポケットにあった一枚の姿絵(すがたえ)を取り出す。

 

オレンジの髪、浅黒い顔。

言い逃れができないくらいエドヴァルドの特徴を精巧(せいこう)(とら)えている絵である。

...一体、誰に描かせたのやら。

 

(いと)しい人の姿絵(すがたえ)をずっと自分の胸ポケットにしまっているとは…こう見えて彼女はものすごく乙女な子なのだ。

 

まぁ、これはフランシス先生に教えてもらったん情報なんだけどね。

あの先生、人の色恋沙汰(いろこいざた)が三度の飯より好きだって人だから...

 

 

 

 

「...ううぅ、わ…わかったわよ…。

わ、私はエドヴァルド様のことが好き。

...一目見たときから、彼に()かれていたの。

あの人のガサツに見えて、優しいところが好き。

まるで少年のようにキラキラした目をしながら、その実、男らしいところがあって...」

 

うわぁ、おっとめー!

一旦、認めてしまったオーガスタがエドヴァルドについて語る熱量がスゴイ。

顔を赤らめながらも、次々と出てくるわ出てくるわ、エドヴァルドのこと。

..,そ、そんなふうに見えてたのか。

『恋は盲目(もうもく)』というからなぁ。

 

 

 

 

「ねえ、デートとかに誘わないの?」

 

おおっ、ミンナ、いいこというな。

こういったカポーが最初に行くところとして、一番手堅いのは、やっぱ映画館だろうな。

 

今やってる映画といえば...アレだ。

 

 

『ミスターピーン』

中国人のコミックリリーフがカメラを片手にフランス各地で騒動をひき起こしていくコメディ映画。

 

その内容もさることながら関係各所から抗議が来そうな映画のタイトルに私は戦慄(せんりつ)を覚える。

...コ○ミ、いくらなんでもその名前は安直な上に杜撰(ずさん)すぎやしないだろうか?

日産元社長にどことなく雰囲気が似ているあの鼻の大きな英国人に許可をちゃんと取ったんだろうか?

ちなみにPS2の移植版ではローワン・アトキンソン氏から抗議が来たのか、諸般(しょはん)の事情の末なのか、

『ミスターズーン』にそのタイトルが変更されていた。

...大して変わらないがな。

 

しかし、コメディ好きのマリーンとしては、大変、興味を持っている映画だ。

皮肉(エスプリ)の効いた白黒サイレント映画の『黄金狂時代』でさえ大爆笑する女だ。

我ながら笑いの沸点(ふってん)が低いようで情けない...。

まぁ、前世でもお笑い番組を見てる時、彼氏が隣で呆れてたっけなぁ。

自分でも時々、途中から何で笑ってたのかわかんなくなる時もあるし。

 

 

 

 

「き、きっとシュールで、面白そうよ。二人で行ってきたら?」

 

「で、でも...、エドヴァルド様になんて言えばいいか...」

 

「大丈夫よ。

『今度のバレンタインに一緒に映画を観に行きましょう。』

それをあなたがいうだけで、相手はイチコロよ。

オーガスタは綺麗(きれい)なんだから。

クールビューティっていうのかしら。

そういう普段クールを気取ってる女が自分にだけすり寄ってくるっていうのは、そりゃあ、男にとっちゃ、(たま)らないものよ。

あなたに誘われてなびかない男は改めて鏡で自分を見つめ直した上で眼科にでも行ったほうがいいんじゃないかしら。」

 

「...そ、そこまで言う?」

オーガスタは私の物言(ものい)いに少し引いた表情をしている。

 

「マリーンちゃんの言う通りよ。

女は度胸。ファイト!」

ミンナも私に乗っかってきた。

相変わらず可愛いなぁ。

 

 

 

 

「…わ、わかったわよ。...

今日の乗馬部のときに彼に聞いてみる。」

 

うおっしゃあ!

私とミンナは顔を見合わせる。

もちろん、私たちも陰ながら彼女の恋の行方を見守るつもりだ。

ウヒヒヒヒ...楽しみだなぁ。

 

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