マイネリーベのマリーンに転生したけども詰んだかもしんない 作:むぎすけどん
「ああ、マリーン様、ミンナ様。
オーガスタ様をお待ちですか?」
ミンナと一緒に乗馬部の
オーガスタを迎えに行くのに馬場には良く立ち寄るので馬の世話係であるシュテファンと私たちは顔見知りだ。
しかし、…この匂い…。
懐かしいよなぁ。
私が北海道の釧路にいたころ、友達の家が酪農やってて、よく牛舎に遊びに行ったっけ。
ケモノ臭いというかク○臭いというか…。
子牛の誕生に立ち会ったときは感動したな。
牛を追いやるための電線に感電したのも、牛に蹴られそうになったのも、今となってはいい思い出だ。
「…それなんだけど、シュテファン。
ちょっとここらへんでいい
私はかくかくしかじかと事情を話す。
「ええ!?
オーガスタ様がエドヴァルド様を!
よ、よろしいでしょう。
私が案内します。」
シュテファンを先導に馬場周辺を見渡すことができ、かつ隠れてる事がわかりにくい
「…ここならまぁ、大丈夫だと思います。
私は残りの仕事を片付けなければならないのでこれで失礼いたします。」
うん、ちょっと離れてるけれどもここならギリギリ会話も聞き取れるんじゃないだろうか。
ミンナも満足そうにコクコクと
シュテファンは頬を赤くして、ウッと何やらうなっていたが、ごまかすように首を振ってその場を走り去っていった。
ミンナの魅力はシュテファンにはちょっと刺激が強すぎたかな。
オーガスタ達の帰りがいつもより少しかかっているようだ。
おそらく、今日は障害飛越練習ではなくクロスカントリー(耐久)のコースをまわってたのかもしれない。
30分くらいして、少し足がしびれてきたかな、と思ったときにオーガスタとエドヴァルドが馬上で
ミンナは私の腕をギュっとつかむ。
私もミンナのほうを振り向き、コクリとうなづく。
ふふ
私と一心同体って感じね。
エドヴァルド・マルクグラーフ・フォン・ゼクト・ブラウンシュヴァイク。
子爵家の跡継ぎでオレンジ色の髪に浅黒い肌をした美少年である。
ゼクト領はマリーンの家の所領にも近いので、何度か顔を合わせたことがあるが、『オーガスタがやけに
特筆すべきは、この人のお父さんであろう。
その名も、オットー・フォン・ブラウンシュヴァイク子爵。
ウッヒョー! 銀英マニアの私、歓喜。
あの悪役と同姓同名とは…。
…かと言って、彼は
むしろ性格は
あちこちに
...うーん、リップシュタット戦役でいうと私はやっぱりオフレッサー将軍が好きかな。
最後に忠誠心を見せて一矢報いるアンスバッハもいいと思うけど、キルヒアイスがなぁ…。
..しっかし、このゲームを製作したコ○ミスタッフさん、相当な銀英好きと私は見たね。
公式ホームページにも自家用機の名前は『ブリュンヒルト』と書いてあったらしいし…
…おっと、いけない。注意がそれてしまった。
「…それでよぉ、俺のアルテアがよー。」
エドヴァルドが馬上でオーガスタに笑いかける。
オーガスタがそれを聞いておほほ、と受け答える。
その目はすでに『恋する乙女』だ。
おおっ、話してる内容はここからじゃよくわかんないけど、なんか二人ともいい感じじゃん。
同じ乗馬部だからね。話に共通項も多いのかもしれない。
馬場に着き、馬を降りた二人はシュテファンに後を託す。
今日は彼が2人の馬をつないでくれるようだ。
不意にオーガスタの表情が思いつめたものに変わる。
..おっ、来るぞ。
私たちはこれから起こるラブロマンスを聞き逃してなるものかと前のめりになって耳をそばだてる。
「あ、あの、エドヴァルド様、こ、今度のヴァレンタイン、もし良かったら…」
「そこにいるのはマリーンか!
テメエ、一体、何をたくらんでいやがる。」
急にエドヴァルドが声を張り上げ、私達のいる
隣のミンナの肩がビクッと跳ね上がる。
...あっちゃー、見つかったか。
コイツ、二階から飛び降りて平気でいられるぐらい身体能力高い奴だった。
何メートル先の
私の名前まで当てたのは驚きだったけど…。
うちの密偵たちには今まで私のためにずいぶん無理をさせてしまっていたのかもね。...反省、反省。
オーガスタは呆れたように私たちの方向を見る。
「どういうことよ」といった目をしている。
「ゴメンゴメン」と私もまた彼女にアイコンタクトを送りながら、
ミンナと二人で罰が悪そうに茂みから姿を現す。
「いや、私たちに構わず、あとは若いおふたりでごゆっくり。
オホホホホ...」
私とミンナは何事も無かったかのようにその場をそそくさと立ち去ろうとする。
「おい、こら、ちょっと待てや、マリーン。
オルフェレウスに何を吹きこんだ!
ルーイが何をしたっていうんだ。
ナオジが日本へ帰ったのだってお前のせいだって話じゃねぇか!
お前、俺たちを使って何を
「...
彼は現在、学園内の科学研究部室を
「な、なんだと...。」
こうなったら全部ぶちまけよう。
エドヴァルドは少々頭が足りないところがあるが、その分曲がったことが嫌いなので、真正面から向き合えばなんとかなるかもしれない。
「不思議に思わないのですか?
科学研究部室内で今何が行われてるのか。
今年、ルードヴィッヒによって特別に立ち上げられたはいいけれども、その内部で科学らしい実験や研究がなされている様子にはとても見えない。
ドアは外部の人間が入ることのできないように完全にシャットアウトされ、
「そりゃー、アイツはちょっと妙ちくりんなところがあるが...。」
「それでは、シュトラールの立場を利用して軍事工場の重役と密会を重ねているわけは?
クーヘン国内の軍部貴族と
ナチスの高官とこの秋、打ち合わせをしたことは?
先月、科学研究部内に機関短銃のサンプルが密かに持ち込まれたとしても?
…オルフェレウスからは何も聞かされていないのですか?」
やれやれ、オルフェレウスは何も調べていないのか。
これだけ裏で派手に動き回っても何も気づかないとは..,。
しかも同じシュトラール委員会のメンバーがである。
仮にルードヴィッヒが科学研究室内でドンパチ軍事訓練をしていたとしても、コイツらにとっては「ルーイが何かやってるなぁ。」と思う程度の平和な学園風景なのに違いない。
「な、なんだと...、そんなことが...。
すると、ルーイは本気で国を裏切るつもりで...。」
エドヴァルドは絶句する。
単純なコイツにはこのような事実の積み重ねが一番良く効く。
あとは科学研究部のガサ入れが正常に行われれば、ルードヴィッヒは
「ようやく、わかったようですね。
それでは、私が彼の企みを阻止しようと...」
と私が言いかけた時だった。
「コイツの言ってることは全部ウソよ!」
見ると乗馬服を着たヒロインちゃんがエドヴァルドに向かって飛びついてくる。
エドヴァルドが受け止めきれずよろめく。
ヒロインちゃん、乗馬部に入ってたのか...。
「...エリカか。
しかしな...。」
「だって、こいつ転生者だもん。
きっと、ゲーム知識を使って、シュトラールのみんなをタラし込んで、逆ハーを狙ってるに違いないわ!
ナオジだってコイツに抱きついてたのよっ!
私の前世の相手だったのにっ...」
「前世...ゲーム...転生?
何のことを言ってるんだ?」
エドヴァルドは戸惑った顔をしている。
私も、混乱している。
うん?
今の発言から考えると、ヒロインちゃんはおそらく私と同じ『このゲームをやったことのある転生者』だったのだろう。
だったら、前世はこのゲームの発売日の『2001年4月以降の人』であって、前世の直司との
私みたいに前世と今世の人格がうまい具合に融合してしまったのだろうか?
彼女の前世と前前前世とかが入り混じってしまったとか...ラドなんちゃらが言うように...。
…いかん。思考が完全に変な方向にズレてしまっている。
冷静になろう、私。
クールになれ、マリーン!
...ってこれはまた違うゲームか。
「...あなたねっ!
私のルートをことごとく邪魔して、
自分ばっかりいい思いしてさ!
爆弾処理しようにも電話替えられちゃうし!
厚化粧ババァには知らん顔されるし!
オーガスタ親衛隊には
ナオジ様は私を置いて日本に帰っちゃうし!
オルフェ様は私のことを構ってくれないし!
カミユ様は私のこと心の醜い人間だって
ルーイ様は私の前に全然姿を見せないし!
エド様は、結局のところ、私のお兄ちゃんだしっ!」
「えっ、そうなのか...?」
エドヴァルドがビックリしたようにヒロインの顔を
…あーあ、ゲームの終盤で明らかになることがここにきて、ヒロイン自身の口からネタバレされちゃったわけね。
そう。
ブラウンシュヴァイク子爵がほうぼうに愛を振りまいた結果、さる貴族の愛人に娘が生まれる。
同様にキャラバンの愛人に産ませた子がエドヴァルドで、3歳の頃、二人ともブラウンシュヴァイクの家に引き取られることになる。
しかし、それが正妻の反発を招くことになり、1年後、娘は母親の家に返され、女子しかいなかった子爵家で唯一の男子であったエドヴァルドはそのまま跡継ぎとして子爵家に残ることになる。
娘の母親は醜聞のためその後、修道院に出家。残された娘はクラウス男爵家に引き取られることとなった。
この娘こそ、エドヴァルドの生き別れの妹である、エリカ・クラウス、つまりヒロインちゃんなのである。
…ていうか、1年も一緒にいたんだから、エドヴァルドも妹の名前ぐらいちゃんと覚えてろよなぁ…。
妹のために
しかも、上に正妻の娘が3人もいるんだから、継承的にはふつうそっちが先じゃない?
「全部、あなたのせいなんだから、このー!」
ヒロインは腰に刺してあった剣に手をかける。
えっ!?
やば。
乗馬服に溶け込んでいて、完全に目に入ってなかった。
っていうか、アレって、『宝剣ドゥレンダール』じゃん!
オルフェレウスが国王から
何でヒロインが持ってるの?
…ま、まさかっ!
ヒロインは宝剣を振りかざし私に向かって斬りつける。
ミンナは恐怖で動けないでいる。
エドヴァルドが呆然とそれを見守る中、オーガスタが走り出し、身を呈して私を守ろうとするが、この距離ではとても間に合いそうにない。
その時だった。
私が抱えているラビィちゃんの目がキラーンと光ったのだった。