マイネリーベのマリーンに転生したけども詰んだかもしんない   作:むぎすけどん

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白昼の攻防

「お嬢様、危険なの?

ボク、頑張る。」

 

 

そう言ったラビィちゃんは私の元を離れヒロインに向かって駆け出す。

 

 

...あっ、あれは!

『真剣白刃取り』。

 

 

ラビィちゃんがその両手をピクピクさせ、ヒロインの宝剣を捉えている。

実力はほぼ拮抗(きっこう)しているように見える。

 

 

 

 

 

 

 

 

ラビィちゃんはもともと私が森で見つけた妖精だ。

 

エーアトベーレ州ブロッチェン領の私の家の邸の近くにはまだ人の手に触れられていない綺麗な森がある。

カーレンベルク家代々からあそこの森は絶対に手を加えてはならぬという言い伝えがあり、普段から立ち入り禁止になっている場所であった。

 

可愛がっていた子犬のアニスちゃんを失って以来、自暴自棄になっていた私は、その日、邸の人間に何も言わずに家を出て、導かれるままにその森の中に入ってしまっていた。

今考えてみれば、ここで遭難して死んでしまえばいいや、という気持ちだったのだろうと思う。

泣きながらズンズン進んでいく私に、森の妖精が声をかける。

 

「どうしたの?

ボクでよかったら、相談に乗るけど...」

 

それはかつてイギリスのコティングリー村の姉妹が見た妖精とほぼ同じ形状をしていて私をひどく狼狽させた。

 

「あなた達、実在したの?

新聞では妖精なんて嘘っぱちだって...」

 

「もちろんさ。だから、ここにいるんだよ。

本当のボクは心の綺麗な人にしか見えないんだよ。

君のことが気に入ったんだ。

何かボクに役に立てることはないかな?」

 

「じゃあ、私の話し相手になって。

ずっと私の友達でいてくれる?」

 

「お安い御用さ。

むしろボクからお願いしたいぐらいだね。

ずっと友達でいよう。ね、いいよね。

君の名は?」

 

「私、マリーン。

よろしくね。妖精さん。」

 

「ボクはラビィさ。

よろしく、マリーン。」

 

それからというもの、私はその森に入り浸るようになった。

ラビィちゃんは私にできた第二の親友になっていた。

 

そのうち邸の人間に私が森に入ってるところを見られて、お父様から大目玉を食らうことになった。

私が妖精と会ってることを話すと、血相を変えて、

「このことはカーレンベルク家の秘匿事項だから、決して誰にも話してはならん。」と私に言う。

 

「そうかぁ、マリーン、やはりお前だったのか。数代前から言われていたんだ。

興盛を誇るわが家にもそのうち未曾有の危機に襲われる時代が来る。

その時、黄泉の国から蘇りし少女が森の妖精と共にその難局を乗り切るのだという。

しかし、それは数多ある可能性の中でもとりわけ低く、数百分の一の運命のものと決まっているらしい。そのためにもあの妖精の森を必ず残しておけとね。」

 

その後はトントン拍子に話が進んだ。

 

私と妖精のラビィちゃんは専属契約を結ぶことになった。

血と血で取り交わすもので誰にも破れない不可侵のものだという。

 

それから私がラビィちゃん用の触媒を作ることになった。その当時はあまり手芸に慣れてなくてとても苦労した。試作はかなりの数にのぼった。

 

結局、ラビィちゃんが最終的に気に入ったのはピンクの布地で作ったウサギのぬいぐるみだった。

 

母国イギリスで追放処分を受けたことにより、家に一時滞在していたエドワード・アレクサンダー氏によって、埋め込みの儀式が粛々と執り行われた。

その後彼はドイツに渡るものの、ナチスの迫害を受け、我が家に舞い戻ることになる。

 

以来、私とラビィちゃんは切り離せないものとなった。

お父様が言われるには、「いかなる時をもってしてもその妖精を放してはならん。その妖精は必ずお前と我が家を守ってくれるものだからな。」

 

それと私に一対のバラのコサージュを渡してきた。

「これを頭に付けなさい。これは妖精とお前の契約を証明するものでもある。...これが使われることがないことを祈ってるのだが...。」

 

対人用に触媒を作ったのだが、案外ラビィちゃんはウサギのぬいぐるみを気に入ったみたいで、誰もいない時はその姿のまま、私と会話している。

 

学園都市の森に出かけた時はそこに住んでる妖精たちに大層うらやましがられたぐらいなので、なかなかの自信作である。

 

 

 

 

 

 

そのラビィちゃんがヒロインと鍔迫り合いをしている。

片方は剣で、

もう片方はぬいぐるみの両手だ。

 

「な、なんなの。

コイツ、急に動き出して、

気持ち悪い...。」

 

「ボクのお嬢様を害しようとするなんて許せない。お前は消えろ。」

 

「シャ、シャベッタァァァ!!!」

狼狽するヒロイン。

 

うん、その反応、マ○クのCMのあの子より白眼()いてるから。

 

その隙をついて私は宝剣を奪い取る。

オーガスタも私のところに来てヒロインを取り押さえた。

 

 

 

「正直、驚いたわ。

そのぬいぐるみ、完全にあなたの趣味だと思ってたから。」

 

「...これを作ったのは一応私。

護身用です。」

 

「...私あなたを少し誤解していたわ。」

 

まぁ、こんなぬいぐるみを四六時中持ってたら、ちょっと頭のイっちゃった娘だとは思うわな。

だって、ラビィちゃん、これしか気に入らなかったんだもん...

 

 

 

 

ヒロインはその場で憲兵たちによって捕縛された。

シュトラールの国宝級の私物を盗みだし、さらにそれで公爵令嬢を斬りつけた罪は重いらしい。

恐らく投獄は確定だろうが、刑期は裁判であらそわれることになるだろう。

 

即日にエドヴァルドとオルフェレウス主導のもと、科学研究室がアポ無しで調査された。

突然の訪問にルードヴィッヒも対応できず証拠隠滅が図れなかったようだ。

 

ナチス首脳部との対話記録、武器商業者とのやり取り、また実際、クーヘンを占拠する場合のシミュレーションの模式図などあらゆる反逆の証拠となるものが見つかった。

さらに機関短銃のMP-38が数点見つかった時はオルフェレウスも頭をおさえていた。

 

また部員の多くは隠密に場所を移して、軍事訓練を強制されていたらしい。

科学っぽいものといったら、優秀な遺伝子を追及する研究というのが一応行われていた。

見てみると、カロッサ博士のやっている研究にほとんど近いものだということがわかった。

...自分のやってた研究とかぶってたから気に入らなかったとか?

結局、彼は民衆を犠牲にした上で何をやり遂げたかったのか、マリーンには今をもってわからない。

 

とき○モの紐緒さんみたいに真面目に科学してくれれば良かったんだけどなぁ...。

あぁ、そういやあの子も高性能ロボットで世界征服を考えてたんだっけ?

..まぁ、それぐらいのほうが愛嬌(あいきょう)あっていいやね。

 

...えっと、これで、没落フラグも全て叩き潰したことだし、一件落着ってことなのよね?

 

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