マイネリーベのマリーンに転生したけども詰んだかもしんない   作:むぎすけどん

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シュトラール

悲鳴の発生どころは隣のミンナだった.

「わっ何事!?」とヒロイン。

それ、口に出さなかったけど、私も思った。

気が合うな、アニスにゃん。

 

「シュトラールよ!」

「えっ?」

見ると、シュトラールの連中が5人全員揃って校道を闊歩していた。

なんか、朝も同じ光景、見たな、彼らの中でF5ゴッコでも流行ってるんだろうか。

そして、周囲で、なにやらキラキラと光っている。

 

マジであれ何なんだ?

...オーラというか、気というか。

私が科学研究部にいたら、真っ先に研究対象にするな。

 

左から、エドヴァルド、ナオジ、ルードヴィッヒ、カミユ、そしてオルフェウスか。

本日も、麗しく結構なことだ。

 

「あの方達が、シュトラール….」

とミンナの瞳はすっかりハートマークだ。

美少女がそれをすると、効果は絶大だ。

ほんと、この子、可愛いわぁ。

『チョロイン』というか、今まで、美麗な貴族に対して免疫がなかったのだろう。

 

「いや~ん、

さすがシュトラールに選ばれる方々ね、

ステキー!早くお近づきになりたいわ~。」

その揺れ動く瞳は真ん中を歩く、紫の髪の長身の男に向けられていた。

 

ちっ、やはり、ルードヴィッヒか。私のミンナちゃんは渡さないぜ。

 

…しかし、待てよ。

ミンナとルードヴィッヒがくっつけば、没落フラグの一つはつぶせるのではないだろうか?

 

 

 

 

 

ルードヴィッヒ・ヘアツォーク・フォン・モーン・ナーエ・リヒテンシュタイン。

通称:魔王

 

長身の眉目秀麗、長身の紫髪の男である。

 

この国で最も有力な貴族である、リヒテンシュタイン公爵の3人いる兄弟のうちの長子にあたる。

現国王を輩出した家柄で、彼の母方も王族から降嫁されている。

家格は残念ながら我がカーレンベルク公爵家より上だ。

このことが実は国内に密かな混乱を招いているのだが、その事情については今は省略し、後述することにする。

このゲームの続編である「マイネリーベ II(ツヴァイ) ~誇りと正義と愛~」で、卒業式において、彼は、密かに国内に引き入れたナチスドイツ軍を率い、校舎を占領し、クーヘン国内を内戦と多大なる混乱に巻き込むことになる。

彼はいずれ、ドイツ国内でヒトラーをおしのけ、総統にまで上り詰めることになるのだが、この戦争で数えきれないくらいのたくさんの犠牲者が出る、という事実を忘れてはならないだろう。

どう言いつくろうと、彼は「外患誘致・売国」の張本人であることは確かなのである。

 

ゲーム上で彼が意気揚々と「革命」として演説する場面があるが、頭脳明晰で知られている彼が、「革命」と「クーデター」の区別すらわかっていないことが如実にわかるシーンだ。

 

これはクーヘン国に対する立派な反逆行為なのだ。

そして、これが原因でクーヘン国内は戦乱に巻き込まれ、最悪、荒廃に帰する。

 

私やミンナ、オーガスタの一族はこの戦争で、レジスタンス側に情報を売ったり、革命軍側に武器を横流ししたりして、食いつないでいた。

しかし、この陰謀を街頭で聞きつけた『善良な』II(ツヴァイ)のヒロインによって、密告され、財産を没収され、没落の一途をたどることになる。

 

つまりは彼がしでかす2年後の卒業式の「『革命ごっこ』を起こさせない」ことが私たちの『没落フラグ』をつぶす一手であるのだ。

 

むろん、彼のクーデターにも、彼が考えるところの『崇高な』目的があった。

現在、隣国、ドイツは史実通りに労働者党が政権与党を占め、ヒトラー総統により独裁政権がしかれているが、その支配には暗雲の兆しが見え始めているはずだ。

 

信じられない話だろうが、ジークリード・カロッサという若き天才遺伝学者によって、ルードヴィッヒのクローンが5人生成され、その者たちが、ナチス政権を内側から食いつぶそうと目論んでいるのだ。 そして2年後にはそれは成功していて、ヒトラーはすでに傀儡とされている。

 

そして、『ヤクト・ヒルシュケーファ』と呼ばれる人類最終兵器(私は便宜上、『ララァ・スンのエルメス』と呼んでいる)を開発し、人体実験を繰り返すことになる。

 

この陰謀を調査していたルードヴィッヒは、この(はかりごと)を世間に明るみに出すために、『戦争』の道を選ぶのである。

 

『戦争を起こさないため』なら、まだわかるが、陰謀の究明のために『戦争』という最終手段を使う本末転倒のやり方に、マリーンは、改めて虫唾を走らせる。

公爵家の端くれとして、彼のやり方は決して許されるものではない。

 

彼の本来の目的は、マイネリーベ説明書のキャラクター紹介にあるように、『世界を自分の意のままにする野望を達成する』ことにあったのだろう。

そうでなければ、「人民の生活」を無視した、あの非情な手段はとれない。

 

話は戻る。

希望的観測ではあるが、もし、ミンナが婚約者として、ルードヴィッヒの馬鹿げた『革命ゴッコ』を止めることができれば、この没落フラグは前提から覆ることになる。

 

私が今、しなければならないのは、ルードヴィッヒの野郎と、ミンナの『恋のキューピッド役』として立ち回らなければいけないのかもしれない。

 

友達としてあの売国野郎は、あまりオススメはできないけどね。

 

 

 

 

 

さて、私はお父様から、入学に先立ってこのシュトラールの5人の中から誰かを婚約者として射止めよ、とのわりとキツめの厳命を受けている。

 

貴族令嬢としての務め、というのもあるが、

そうでないと、私達が政略的に潰される危険性があるからなのだそうなのだ。

 

もともと私達カーレンベルク家は、この国、クーヘン国の創始者の家系であり、国王候補ナンバーワンの血筋として、知られていた。

 

ところが、今の国王のリヒャルトIII世は、隣国、ドイツ帝国の元王家血筋であるホーエンツォレルン家の外戚の血が混じっている。

国王は、もともと、リヒテンシュタイン家出身であり、実は、ルードヴィッヒの父方の祖母こそがプロイセン王家の分家筋になっているのだが、一部の保守的なクーヘン豪族たちからは、国王の即位、およびルードヴィッヒのシュトラール就任にはかなりの反発があった。

 

国王派、およびルードヴィッヒにとって、カーレンベルク公爵領は王族としての正統性があり、反抗の旗頭になり得る、目の上のタンコブであり、彼らはいつ何時でも、取り潰しの機会を狙っているらしい。

 

極端に言えば、どんな、不名誉なことでもデッチ上げられあげかねない、そんな状況とのことである。

 

本来、一人子の私が男子であれば、シュトラール就任は容易であった。

私が、たとえ、容姿に恵まれなくても、カーレンベルクの政治力があれば、信託と任命を与えるドルイド僧を丸めこむことは可能だった。

この国の宗教もその他の地球史上にのこる宗教同様、例外なく、腐敗していて、シュトラール任命のための献金やお布施が横行していた。

 

ただ、私は女子に生まれた。

そして、ただ1人の跡継ぎである。

いくら、カーレンベルクの政治力を使ってもこのことは覆らない。

 

そして、この国の男尊女卑の思想は根が深い。

これがパワーバランスの歪みを招いた。

 

結局、カーレンベルク家に代わり、リヒテンシュタイン家の勃興を招き、現在の国王とシュトラールがこの家から任命されることになる。

 

しかし、いまだにこの処置に対し、不満を持つ豪族も多い。

どうにもならないことではあるのだが、国の意見が割れ、戦火がくすぶっている状態には、ある。

まぁ、全然、内戦にいたるほどではないんだけどね。

 

その歪みを一気に解決するために、

そして、一家を政治的窮地に至らせないために、

「女の武器を使え。」とお父様は言った。

 

シュトラールの1人と婚姻を結べば、少なくとも、国王とシュトラール一派から私達が狙われることがなくなる。身内として考えられるのだ。

ついでに私が女子として生まれてしまったことによって、地位が低迷した我が家の名誉も回復する。

 

原作のマリーンが自作の媚薬まで投入して、執拗にシュトラールを狙ったのはそういう思惑があってのことだったのだろう。

実際、そのことがバレたら不敬どころじゃ済まなくなるのだが、

もし、私もいざ追い詰められたとき、最終手段に訴えなかった、とも言い切れないだろう。

 

まぁ、私は、今は前世の記憶を思い出し、21世紀のOLの思考を持っているので、貴族特有の伝統的な解決法に対しては、忌避感を持っている。

 

結婚相手なんて、自分の好きな相手を選びたいじゃん?

自分勝手で、一癖も二癖もありそうなシュトラールたちなんて論外も論外。

 

なんとか、2年後にルードヴィッヒのやらかす、「革命ゴッコ」を止め、クーヘン国の内戦の息吹を収束させなければならない。

 

そうでなければ、わが家も、ミンナの家も、オーガスタの家も没落へ向かって突き進むだろう。

 

それだけは絶対に避けなければならない。

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