氷った夜に灯火を   作:Claire∮

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とりあえず短編です。
長編もやるかもですね


氷った夜に灯火を

俺は灯中雅火(とうなか みやび) ごく普通の大学2年だ。年齢は20歳そして高校生の時から「Roselia」ってバンドのお手伝いをしてる。

 

今は午後5時を回った辺り。

今日の講義はこれにて終わりだ、この後は6:00からバイトである。

なので40分程暇を持て余していた。

 

「さーて、どーすっかな」

そう呟いては見たもののいい案は浮かばない。

適当にスマホを見ながら校舎を出ようと歩いて居るとー

 

「あら?歩きスマホは関心しませんよ?灯中君?」

 

そう俺に話しかけて来たのはRoseliaのギター、氷川紗夜さん。

しっかり者で高校時代は風紀委員だった、今もこうして僕は声をかけられた。

 

「紗夜さん、あーごめんね危ないよな。」

「灯中君は理解が早くて助かります。」

「そりゃどうも」

 

Roseliaは個性が強い、常識人のリサちゃんと紗夜さんの苦悩は日頃から痛い程見てるし気持ちは分かるので、心の中でご愁傷さまとだけ言っておく。

 

「灯中君はこの後はバイトですか?」

「ああ、そっちは練習かな?」

「はい。今からCIRCLEに向かう所です。」

「今日は顔出せなくてごめんな! いきなり風邪でぶっ倒れた人がいたみたいでさw」

「いえ、それはしょうがないことなので謝らないで下さい。それではまた明後日。」

「うん。また明後日な。」

 

そう言って俺はバイトに行く。

そして時計は22:00をさし、バイトが終わる

 

「いやーごめんな雅火。いきなり入ってもらっちゃって…」

「いいんですよ店長。」

 

すると店長はレジ打ちを始める

「店長休憩ですか?」

 

俺が尋ねると、ほらよという声と共に袋が投げられる

 

「店長?」

「俺の奢りだよ。」

「でも量が多くないですか?」

「日頃の感謝も込めてだよ。」

 

渡された袋には弁当が2つとおにぎりが4つ、缶ビールが2本入っていた。

 

「店長、別の意図がありますね?」

「最近お前さ、女の子とよく歩いてるだろ? だからその子の分だよ。」

「氷川さんはそんなんじゃないですが受け取ります。 お疲れ様です。」

 

そう言って俺はバイトを上がる。

 

 

確かに氷川さんとは家の方向は同じなので一緒に通学したりCIRCLEに行ったりはする。

だが紗夜さんとはあくまでバンドマンとマネージャー、友達同士で、あれ?

 

氷川紗夜という女性はすごくキレイだ。

だがあのルックスだ、男の一人なんて居るだろう、こないだも告白されたと聞いたし。

紗夜さんは友達。自分にそう言い聞かせる。

 

すると帰りの夜道を歩く影に気づく。

気になって近づいてみると、段々とくっきり影の正体が分かるようになってくる。

艶やかな翡翠の髪、透き通った瞳、そして控えめな胸と抜群なスタイル。

見間違うハズもない。

紗夜さんだ。

声をかけてみる。

 

「紗夜さん?」

「ひゃっ!? 灯中…君…? その見ました?」

 

その時紗夜さんは泣いて居た。

友希那さんと喧嘩したかリサちゃんと喧嘩したのが関の山だろう。

 

「大丈夫だ。誰にも言わないよ。」

「でもどうしてこんな所に? 紗夜さんの家はもっとあっちじゃ」

「湊さんと喧嘩したんです…それで無我夢中で走って気がついたらここに…」

「ふむ… 友希那さんとね… わかった。夜道は危ないから送ろう。」

ぐぅぅ…

 

腹の虫が鳴る。

人間食欲には逆らえないのでここで一つ提案をする。

 

「俺の家すぐだし、腹減ったんなら飯食ってく? 紗夜さんが良ければだけど。」

 

こればかりは店長に感謝せねばならないだろう。都合のいい事に飯は二人前ある。

 

「男性の家に二人きりとはあまり気が乗りませんがいいでしょう。灯中君なら手を出すことはないですし… その…」

 

紗夜さんは言葉を飲み込んだ。

 

「その?」

 

俺は問い返すが

 

「いえ、なにも。」

 

はぐらかされた。

 

「どうぞ、上がって。」

「お邪魔します。」

 

しっかり者の紗夜さんだ、きっちり礼儀は弁えている。

銀髪の猫好きとか厨二ドラマーは是非見習って欲しい。

 

「とりあえず用意するから、紗夜さんはくつろいでて。」

用意といっても弁当だけだが。

「はいよ、バイト先が弁当多く仕入れちゃったみたいでさ。 こんなんでごめんね。」

「いえ、ありがたく頂きます。」

 

二人揃って手を合わせると、缶ビールを空け長い夜の始まりだ。

最もこの頃は長い夜にするつもりはなかったんだけどね…

 

「とーなか君」

 

!?!?!?

待てよ…

もしかして…

 

「とーなか君?」

「あの〜紗夜さん酔ってる?酔ってるよね?」

「もう!酔ってないです! みなとしゃんったらとーなか君が居なきゃ何も出来ないくせにあんなこと言って!」

「紗夜さーん? もしもーし」

「ずっと傍にいたのは私なんですからね!」

 

何を言っているんだこの人は…

最初は酔っ払い紗夜さんをはいはいでいなすが愚痴がエスカレートして行く。

そして…

 

「とーなか君、貴方もあなたでひゅ! 鈍感にも程がありましゅ!」

「はい?」

 

俺はあわてて聞き返す。

 

「わたひは…あなたの事が好きなのに、一番貴方の隣に居たのは私なのに、湊しゃんはとーなか君は私のものだって言ってきたんです!」

「は?」

 

思考がフリーズした。

脳が状況を理解することを拒んでいる。

酒のせいじゃない。

ドキドキする。

胸が締め付けられる。

 

「私は!とーなか君のことがひゅきなんでしゅ!」

 

紗夜さんが…俺を?

友達としてだろう。きっとそうだ。

酒の勢いで冗談を言ってるんだ。

そう自分に言い聞かせた。

 

「うん。これからも友達で居てくれ。」

 

 

 

 

「バカ!」

 

 

紗夜さんはそう叫ぶと飛び出してしまう。

 

今の反応… まさか本当に?

 

 

俺は急いで飛び出す。

 

 

体力には自信があるので、疲れた体に鞭打って全速力で走る。

 

 

紗夜さんに追いつきその手を掴む。

 

「放ひて下さい!わしゅれて下さい!」

「ごめん!」

 

俺はとにかく謝って一旦紗夜さんを連れて家に引き返す。

とりあえず水を持ってきて飲ませた。

大分落ち着いたようだ。

 

 

 

時計は24:00を回っている。

紗夜さんはそのまま寝てしまった。

 

俺は考えた。

最近紗夜さんを意識してた事を、初めて会った時から綺麗な人だとは思っていた。

でも、それ以上に、こう特別で…

考え事をしてる内に俺の意識も闇へと落ちた。

 

朝になり目が覚める。

俺が目覚めるとほぼ同時に紗夜さんも目を覚ました。

気まづい空気が流れた。

だがそれを破ったのは紗夜さんだった。

 

「灯中君、いえ、雅火」

 

普段はお堅い名字呼びの紗夜さんが俺を名前で呼んだ。

 

 

 

「【貴方の友達の氷川紗夜】でもなく【バンド仲間の

氷川紗夜】としてでもなく私は、一人の【氷川紗夜という女】として貴方が好きです。 」

 

 

俺は呆気に取られた。

俺はこんなに自分の事を思ってくれて、勇気を出してくれた人に何をした?

俺は最低だ。

 

 

「こんな時に言うことじゃないのも分かってます。ですがお酒に任せて言ってしまったので、ちゃんとシラフで伝えたくて… では。」

 

 

そう言って紗夜さんは部屋を後にしようとする。

それでいいんだ、俺は最低なことをした。

俺なんかが紗夜さんに釣り合う男であるはずがない。

 

 

 

「バカ…」

 

 

 

紗夜さんが呟く。

 

 

「バカ!バカバカバカバカバカバカバカバカバカ!大バカ!」

「さ…よさん?」

「私がどれだけの勇気を出して… 灯中君の大バカ! 引き止めなさいよ!」

「ごめん…でも俺は君には釣り合わない。俺は最低なことを君にした。」

「いつもそうです。貴方は他人のことばっか。 もっと自分に正直になってくださいよ!」

 

 

自分に正直に…?

 

 

そうだよな。

 

 

 

俺は何を迷って居たんだろうか。

 

 

今紗夜さんにしてやれる償いはただ一つ。

 

 

ならばやる事はひとつだ。

 

 

 

「もう知りませんっ!」

 

紗夜さんは部屋を後にしようとするが

\パシッ!

 

「そうか。なら俺は俺に正直に行かせて貰おう。」

 

深く息を吸う。

俺は気づく。

 

 

【氷川紗夜】という一人の女性が好きなんだ。

 

 

ならば

 

「俺も紗夜、君が好きだ。俺で良ければ付き合ってくれ。」

「灯中…君」

 

紗夜の目には涙が浮かぶ。

しかしこれは悲しみではない。

 

 

その逆だ。

 

 

「こちらこそ!よろしくお願いします!」

「ああ、よろしくだ」

 

今、氷った夜に一つの灯火が灯る。

これから二人はお互いを照らし合い進んでいくだろう。

 

氷った夜に灯火を ~完~




いかがでしょうか。
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