氷った夜に灯火を   作:Claire∮

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前に書いた奴の紗夜さん視点です。
紗夜さんは最初から好意を自覚してるので書きやすいですね。
それではどうぞ。



氷った夜に灯火を -紗夜Side-

私の名前は氷川紗夜(ひかわ さよ)

「Roselia」というバンドのギターをやっている大学生で今は20になる。

20にもなると周りは彼氏の一人くらいおり、私もそういう事に興味がない訳では無いのですが…

 

すると見覚えた顔の男の子とすれ違う。

 

「あら、歩きスマホは関心しませんよ?灯中君。」

 

彼は灯中雅火(とうなか みやび)

高校時代から私たちのバンドのマネージャーをして貰ってる。

 

そして、正しく私の興味の対象が彼だ。

整った顔立ちに綺麗な目、そして決して痩せては居ないが細く引き締まったスタイル。

 

外面も好きだが勿論中身も好きだ。

 

まずは真面目で人の話をしっかり聞ける、そしてRoseliaのムードメーカーであり、スタジオの予約、ライブの出演関係等は全て彼がやってくれている責任感の強い人だ。

そして何より

 

彼は他人の幸せの為に自分を犠牲にできるのだ。

それは強さでもあり弱さでもある。

彼は他人の幸せを笑い合って、不幸は泣き合える。

そんな人間だ。

 

だからこそ私は目の前の彼に惚れた。

だが私がこの性格だ、通学やCIRCLEに行く時はいつも一緒だがこれと言って進展はない。

 

「紗夜さん、あーごめんね危ないよな。」

「灯中君は理解が早くて助かります。」

「そりゃどうも」

 

彼も常識人で助かる。

どっかの猫耐性0の人や何をいってるか分からないドラマーにはぜひとも見習って欲しい

実際一番腹を割って話せるのも彼だ。

そんな彼は今日はバイトが急なヘルプで練習には顔を出せないらしい。

きょうは一波乱ありそうだ。

 

 

「灯中君はこの後はバイトですか?」

「ああ、そっちは練習かな?」

「はい。今からCIRCLEに向かう所です。」

「今日は顔出せなくてごめんな! いきなり風邪でぶっ倒れた人がいたみたいでさw」

「いえ、それはしょうがないことなので謝らないで下さい。それではまた明後日。」

「うん。また明後日な。」

 

 

私は練習なので、そのままCIRCLEに向かう。

 

RoseliaのみんながCIRCLEに集まって練習が始まる。

きょうはムードメーカーの灯中君がいないからか、少し雰囲気が重くみんなの口数が少ない

だが、特にこれといって練習に支障はなく、いつも通りに練習が終わる。

 

「紗夜」

 

練習が終わると同時にボーカルの湊さんに呼ばれる。

何かおかしいところでもあったかと思い、恐る恐る応える

 

「なんでしょう」

「片づけが終わったら外のカフェテリアに来て頂戴。 話があるわ。」

「わかりました。」

 

片づけを済ませてカフェテリアへと向かい、適当なものを頼んで席につく。

 

「湊さん、話って何でしょう。」

「紗夜、単刀直入に話すわ。 あなた…雅火のことが好きよね?」

 

ギクリと来た。

図星だ。

だがここはお茶を濁して反応を見る。

 

「そうですね。友達として仲良くしてもらってます。」

「何を言ってるの? あなたは彼に恋愛感情を持っているわよね?」

 

何もいえない。

核心を突かれてしまったからだ。

 

「どうやら図星のようね。」

「そうです。悪いでしょうか。」

 

いっそ開き直ってみる。

湊さんは言いふらすようなタイプではないので知られても支障はないと判断したからだ。

今向かいに座っているのが今井さんでなくて命拾いした。

彼女の場合何をしでかすか分からないし、弱みを握られるとめんどくさい。

 

 

 

「悪いわ。 "私の雅火"に近づかないでくれるかしら。」

 

私はいきを飲んだ。

ただただ目の前の人の爆弾発言に戦慄しているのだ。

 

「何を言っているんですか…?」

 

ただただこれしか言葉が出ない。

 

「雅火は私のモノなの。彼は誰にも渡さない。 私のモノだから。」

「彼は誰のモノでもありません。」

「こないだだってデートしたときに甘えさせてくれた、甘えてくれた。」

 

やめて。

聞きたくない。

 

「みんなが知らない雅火を私は知ってる。」

 

もうヤメテ

彼が他のオンナといるとこなんて想像シタクナイ

 

「あなたはどうなの?いつも一緒に通学したり練習に来たりしているのになんの進展もない。」

 

ヤダ

聞きタクナイ

 

「そんないつまでもウジウジしてる貴方は本当に雅火の隣に相応しいの? そんなんで雅火の隣が務まるの?」

「彼の隣には私こそ相応しい。貴方は最初から選ばれないのよ!」

 

ヤメテ........

 

 

ヤメロ!!!

 

 

「失礼....します…」

 

そう言うと私は走り出してしまった

 

「リサ…これでよかったのよね?」

「うん。友希那…ホントによかったの?」

「ええ…雅火が見てるのは私じゃない。紗夜なのよ…」

「でも雅火は優しいから…」

「全く…強がっちゃってさ… ここまでお膳立てしたんだし後は紗夜達次第だね。」

 

 

 

時計は22:00を過ぎている。

とうに自宅など通り過ぎている。

だが夢中で走る。

 

起伏に乏しい体に堅物なこの性格。

湊さんの言う通りわたしは彼の隣には相応しくない。

 

ワタシハ.... カレガスキ…

 

そんな気持ちはもう蓋をしよう。

でないとワタシが私で居られなくなるから。

 

だが人といううモノはそう簡単に物事を忘れない生き物だ。

 

視界が曇る

 

モウナニモカンガエタクナイ

 

走りつかれた。

息を整えながら歩く。

ここは確か…

 

あぁ… やはり私は…

気がついたら灯中君の家の近くにきていた、もしかしたらなんて考えてるあたり当分は彼を忘れられないだろう。

 

「紗夜さん?」

「ひゃっ!?」

 

だがこういうときに限って悪い予感は当たる。

本来は願ってもないほど嬉しいのだが今の私には最悪の出会いだった。

これを運命のイタズラというのだろうか… この場合の運命は「Destiny」ではなく「Fate」の方だろう。

いつかこのFate《氷着いた宿命》がDestiny《灯火》に変わる日は来るのだろうか。

 

「その…見ました?」

 

私はまだ泣きっぱなしで恥ずかしかった。

 

「大丈夫だ。誰にも言わないよ。」

「でもどうしてこんな所に? 紗夜さんの家はもっとあっちじゃ」

「湊さんと喧嘩したんです…それで無我夢中で走って気がついたらここに…」

「ふむ… 友希那さんとね… わかった。夜道は危ないから送ろう。」

 

貴方のせいですよ。

そう呟きかけたが残念ながら目の前の彼は何も悪くないのだ。

 

ぐぅぅ…

腹の虫が鳴る。

恐らく人生で一番腹が減ったことを憎んだだろう。

 

「俺の家すぐだし、腹減ったんなら飯食ってく? 紗夜さんが良ければだけど。」

 

いつもの私なら跳ね上がっていただろう。

しかし今は乗り気ではない。

だが人間食欲には逆らえないのだ。

 

「男性の家に二人きりとはあまり気が乗りませんがいいでしょう。灯中君なら手を出すことはないですし… その…」

 

ここで私は口を噤む。

口走ってしまいそうになる辺りどうしようもなく目の前の彼が好きなんだなと…

 

「その?」

 

と問い返されるが

 

「いえ、なにも」

 

お茶を濁すしか出来なかった。

 

「どうぞ、上がって」

「お邪魔します」

 

リビングでくつろいでてくれと言われたので、私はお言葉に甘えて待つ事にする。

 

「はいよ、バイト先が弁当多く仕入れちゃったみたいでさ。 こんなんでごめんね。」

「いえ、ありがたく頂きます。」

 

他愛のない会話を交わす

二人揃って手を合わせて缶ビールを空け長い夜の始まりだ。

 

そろそろお酒が回ってくる。

 

「とーなか君」

 

私は酒に弱い。

完全に失念していた。

呂律が回らないがこの時はもう精神的にも参っていたので勢いに任せた。

 

「とーなか君?」

「あの〜紗夜さん酔ってる?酔ってるよね?」

「もう!酔ってないです! みなとしゃんったらとーなか君が居なきゃ何も出来ないくせにあんなこと言って!」

「紗夜さーん? もしもーし」

「ずっと傍にいたのは私なんですからね!」

 

制止を振り切り、普段には考えられない程饒舌に言葉を紡ぐ。

酒にも酔っているが、今は目の前の彼にも酔っている。

そのまま留まることを知らず愚痴のオンパレードを展開する。

 

「とーなか君、貴方もあなたでひゅ! 鈍感にも程がありましゅ!」

「はい?」

 

ここまで来たらどうにもならない。

私を酔わせた彼が悪いのだ、と責任転嫁しつつも酔いに身を委ねる。

 

「わたひは…あなたの事が好きなのに、一番貴方の隣に居たのは私なのに、湊しゃんはとーなか君は私のものだって言ってきたんです!」

「は?」

 

戸惑わせてしまっただろうが関係ない。

素直になれない私はワタシに正直になるチャンスはここしかないと思ったからだ。

 

「私は!とーなか君のことがひゅきなんでしゅ!」

 

言ってしまった。

もう後戻り出来ない。

幻滅されようとそれが彼に対する私の評価なのだ。

 

「うん。これからも友達で居てくれ。」

 

その一言でワタシの心が割れた。

闇に覆われてしまった。

 

「バカ!」

 

私はワタシに正直になったのに。

貴方の隣に相応しい人になろうとしたのに…

 

ワタシは…

 

私は…

 

気がつくと私は飛び出していた。

しかし酔っ払いに急な運動は辛い。

そのまま追いかけて来た彼につかまる。

 

「放ひて下さい!わしゅれて下さい!」

「ごめん!」

 

大声で謝られて私は我に帰る。

貴方の恋人になりたい。その想いは私の勝手。驚かせてしまったのだろうと。

 

その日はもう何も考えられず、彼の家で寝た。

 

そして朝になり、ほぼ同時に目が覚めて気まずい状況となる。

私は覚悟を決める。

 

ワタシとしてではなく、私として彼に想いを伝えたい。

 

そうおもったからだ。

 

「灯中君、いえ、雅火」

 

勇気を出して一言一句。丁寧に言葉を編んでいく。

 

深く息を吸う。

 

これが私の想いだ。

 

 

「【貴方の友達の氷川紗夜】でもなく【バンド仲間の

氷川紗夜】としてでもなく私は、一人の【氷川紗夜という女】として貴方が好きです。 」

 

言ってしまった。

これが本音。

彼に届くかは解らない。

 

「こんな時に言うことじゃないのも分かってます。ですがお酒に任せて言ってしまったので、ちゃんとシラフで伝えたくて… では。」

 

恥ずかしくなりその場を去りたい気持ちと、それを引き止めてくれるんじゃないかと言う淡い期待が混ざって複雑な気持ちになる。

 

ドアの前に立つ。

だが返事も無ければ引き止めもされない。

 

「バカ…」

 

無意識に口が動く。

せき止めていた感情が爆発する。

 

「バカ!バカバカバカバカバカバカバカバカバカ!大バカ!」

「さ…よさん?」

「私がどれだけの勇気を出して… 灯中君の大バカ! 引き止めなさいよ!」

「ごめん…でも俺は君には釣り合わない。俺は最低なことを君にした。」

 

やはり貴方は…と内心呆れつつ、そういう彼に惚れたんだなと、再認識する。

 

「いつもそうです。貴方は他人のことばっか。 もっと自分に正直になってくださいよ!」

 

「もう知りませんっ!」

 

私は部屋を後にしようとするが

\パシッ!

 

「そうか。なら俺は俺に正直に行かせて貰おう。」

 

 次に出てきた言葉に私は息をのむ。

 

「俺も紗夜、君が好きだ。俺で良ければ付き合ってくれ。」

「灯中…君」

 

私の目には涙が浮かぶ。

しかしこれは悲しみではない。

 

 

その逆だ。

 

ようやくお互いに正直になり、隣に立てた喜び。

そして自分の想いが報われた喜び。、

 

「こちらこそ!よろしくお願いします!」

「ああ、よろしくだ」

 

今、氷った夜に一つの灯火が灯る。

これから二人はお互いを照らし合い進んでいくだろう。

 

氷った夜に灯火を -紗夜Side- ~完~




いかがでしたでしょうか。
少々書きすぎた気もしますが気の所為でしょう。

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