目指すは忍ぶ忍者   作:pナッツ

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文章を保存できることに気が付いたぞ!


10:過程と結果

大人二人の騒ぎに、病院の看護師さんが駆けつけてきた。当然のごとく二人を叱る看護師さんは、俺が目を覚ましている様子を確認すると急いで医師を呼びにいった。

 

医師を待っている間二人組は、椅子に座りながら「ガイ君のせいで怒られたじゃない・・・」「マリエさん、もう少し落ち着いたらどうです?」と互いに文句を言いながら肘で小突きあっている。・・・大人げない。

 

医師の男性が病室につくと直ぐに俺の診察が始まった。一通りの診察を済ませ、再びベッドに戻ると大人二人と俺は結果を聞かされた。どうでもいいことだがガイさんが保護者みたいな扱いを受けているのが失礼だが面白い。

 

要約すると俺は一週間眠っていた。クナイによる胸部への刺突と付属の毒でかなり死にかけだったが早めに病院に運ばれたので命に別状はなかったようだ。連れてきた男性は急ぎで、すぐに姿を消したそうだが間違いなく日向ヒアシだろう。あの夜から一週間経っているのか、日向がどうなっているか気になるな。

 

何となく分かってきていたことだが、傷の治りが早いことに多少の言及があった。体質なのかわからないが、少なくとも一般の医師には原因がわからなかったようだ。残念だ。

 

その他一通りの説明をして医師は退室していった。

 

退室する医師に大人二人は軽く礼をして見送ると俺に視線を送る。マリエさんは俺の頭をなでながら「・・・本当に心配したわ」と言い安堵の表情を浮かべた。ガイさんも腕組みをしながら、少し息を吐いていた。かなりの心配をかけたようだ。

 

するとマリエさんは「それにしても、貴方が夜に出歩くことは知っていたけど通り魔に出くわすなんて怖いわ~。しばらく夜に外出するのは禁止ですからね!」と少し叱る口調で俺に話しかける。

 

続いてガイさんが「ソウだゾ!前々から君が深夜に、探検と評して出カケルのはマリエさんから聞いていたが、里内とはいえ危機感がない!気を付けるんだゾ!」とかなり棒読みで叱ってきた。

 

マリエさんはともかく、ガイさんの棒読みで二人の意図をつかんだ俺はその意図に従うように声をだす。

 

「ごめんなさい・・・ごめんなさい・・・。怖かったよ~散歩してたらいきなり刺されて痛かったよ~」と3歳児を演じる。あまりガイさんの棒読みをバカにできないのが悔しい。

 

俺が泣きじゃくる演技をするとマリエさんが俺を抱き寄せ、頭を撫でてくれる。・・・役得だ。じゃなくて!演技を続けながら、周囲に注意を向けると窓の外に気配を薄く感じる。しばらく泣く演技を続け、マリエさんに頭を撫でられ、ガイさんに背中をさすられていると外の気配を感じられなくなった。

 

「ふう」と俺が息をつくと二人も椅子に座りなおしてこちらに向きなおす。普通に恥ずかしかった。

 

マリエさんは「これで体裁を保てたわね。ガイ君の演技ひどすぎるわよ?」と言うとガイさんは「自分はこういうのは不得意ですからな・・・」と言葉を受け少し照れている。

 

「悟ちゃんが演技に気づいてくれて良かったわ~。最悪無理やり抱き寄せて喋らせないようにしようと思ったけど。」と言いながら軽く一息をつくマリエさん。

 

「やっぱり俺があそこにいたのは『偶然』ってことにして、かつ関わっていないという言い訳が必要だったってことですよね。内容が棒読み臭くても良いぐらい稚拙でも・・・。」と少し照れて言う俺。ガイさんも唸りながら照れている。

 

「悟ちゃんがどういう過程を踏んで、事件に関わったのか私にはわからないけど、あなたが意図して関わっていないことを稚拙でも示す必要があるの。わかってくれて私嬉しいわ~」とマリエさんは安堵している。

 

つまりは責任の問題なのだろう。雲の忍びは死んではいないはずだが、日向家は理不尽な責任を受けさせられたのだろうか・・・。

 

一連の流れに納得している俺は気になっていたことを聞く。「日向の人たちはどうなりましたか?」

 

この言葉に二人は苦々しい顔をする。「・・・あまり気持ちのいい結果にはならなかったな。」とガイさんが唸る。

 

二人はあまり説明したがらずに黙っている。こればっかりは結果の確認は自分でするべきかもしれない・・・。

 

窓からさす日の光は微かになって、日が沈むのを告げている。マリエさんは施設での仕事があるので、明日また来るわといって病室から退出していった。

 

・・・そういえばガイさんはなぜ俺のそばで寝ていたのか。俺はベッド横の寝袋を回収しているガイさんに「どうしてここで寝てたんですか?」と聞いた。すると「いやなに。君の怪我の症状の一部が、ある術の反動に近いものだと聞いてな。それを少し調べるために泊りがけで様子を見ていたのだ。」

 

「ある術?」俺の?マークにガイさんは答えてくれた。

 

「八門遁甲・・・言わば人間としてのリミッターを外す術だ。君はあの夜、どうやらその始まり、第一・開門を無意識で開けていたようだ。」

 

その言葉に俺は驚く。八門遁甲はガイさんが使うことで印象深い術だ。それを俺が・・・この術は間違いなく俺の切り札になるだろう。ぜひ習得したい!

 

「その八門遁甲という術はどうやってやるんですか?修行方法はどんn」と言いかけたとき「俺は君に八門遁甲を教えるつもりはない」ときっぱりと断られた。・・・まじか。

 

「なぜですか?」と少し不満そうに聞くと「危険すぎるからだ。将来君がたくましく成長するならば、そのしかるときに教えるかもしれない。しかし君は無茶をする人間だと、この短期間で俺でもわかる。現に俺がリミッターを外す術だと教えたのにかかわらず、君はすぐに食いついた。君は必要と感じれば、必ず俺がかける制限を無視し八門遁甲を使う。」

 

「・・・」ぐうの音もでない。自分が正義の味方になっているつもりは一切ないが、俺ができることなら自己犠牲は仕方ないと思っている。それが身近な相手にもなれば、躊躇はあまり起きないとも思っている。多分、転生前のトラックとの衝突とそれによる死の体験は俺の『なにか』のリミッターを壊している。

 

だから・・・「どうしてもだめですか?」と真剣な表情で再度聞く。俺には八門遁甲は、今後確実に必要になってくる術だと感じる。このとっかかりは逃せない・・・!

 

ガイさんは眉間に皺をよせ悩んでいる。「俺個人は教えたくはない・・・!だが教えずとも君はすでに開門の域までに到達してしまった。今後偶発的に次の段階に進み、身を亡ぼすことを考えると、ある程度の制御は教えなければならないだろう・・・。」

 

なるほど俺が八門遁甲に足を踏み入れているから、制御の方法を教えないといけないが教えれば自滅の道に走るかもしれない。前門の九尾、後門の一尾とでも言うか、ガイさんは苦渋の選択をしなければいけないようだ。・・・偶然とはいえ、ガイさんに心労をかけて申し訳なく思うなぁ・・・。

 

「少なくとも君が完全に回復して、退院するまではどうにもならないだろう。」とガイさんは言って病室から出ていった。確かにそうだ、少なくとも俺はまだ万全ではない。日向の件も気になるし、退院するまでは大人しくしておこう・・・。

 

そしてその日は、夕食の病院食を食べて適当にチャクラを練る動作を確認するなどの簡単な動作を確認して終わりを告げた。

 

病院食は思っている以上に味が薄かった。マリエさんのご飯が恋しいな・・・。

 

~~~~~~~~~~~~~~~~

 

次の日以降まばらにだが見舞いの客が病室に訪れることがあった。

 

テンテンちゃんは俺が遊び場に来ないことを心配して、施設に来訪しマリエさんと接触。俺が寝ている間に一度マリエさんと来ていたらしく、俺が起きてから来たときは一人で来てくれた。人のこと言えないが行動力のある4歳だなあ。

 

「ちゃんとわたしの話聞いてる!?さとる君は無茶なことばかりして、私怒ってるんだからね!」とお叱りを受けた。「ごめんね~、お腹が空いて話聞いてなかった~」と適当になごまそうとすると「さっきおひる食べたばかりじゃない!」と突っ込みを入れられてしまった。おじいちゃんになった気分だ。

 

しっかりと謝罪をテンテンちゃんに行うと少し機嫌を直してくれたようで、お土産の中華まんを渡してくれた。入院中の自分が貰うべきものかは微妙だが、手作りらしく少し恥ずかしそうにしているテンテンちゃんを見て、即受け取ってかぶりついた。

 

ぬるい。

 

けどとても美味しかったです。

 

また別日にはナルトがお見舞いに来てくれた。こちらはどういう経緯で俺が入院しているのか知ったのかわからないなあ。なんて思い「よく俺が入院してるてわかったね?」と素直に聞いてみた。

 

「ヒナタが教えてくれたってばよ!たく怪我するなんてだっせぇぜ!気をつけろよ!」といってケラケラ笑っている。・・・元気そうでなによりだよ。

 

「ん!とりあえずお土産だってばよ」と封のされたおしるこを手渡された。・・・何故におしるこ?

とりあえずお礼を言い受け取った。

 

「サトルがいないと退屈だからなあ。ヒナタもお前がいないと、もじもじしてて言いたいこと良く分からねえし・・・」普段ナルトに照れてうまくしゃべれないヒナタの仲介役を俺がしていたから俺がいないと上手く会話が進まないのだろう。

 

「別にヒナタはナルトが嫌いだからもじもじしてるわけじゃないし。ゆっくり付き合ってあげなよ」とフォローを入れると「別にヒナタが悪いとは言ってねーてばよ。なんかこう・・・遠慮する?」とナルトは自分の不明な気持ちに言葉を探る。

 

ほほえましい限りで良かった。その後退院したら一緒に一楽のラーメンに行く約束をしてナルトは帰っていった。

 

その後しばらくしてから、周囲に注意しつつ影分身の術で分身を出した。その分身を転生前の俺に変化させて、外出させた。いい加減外の様子が気になるし分身に情報収集に出てもらいながら俺はくつろぐ。体が本調子でなくとも術はある程度使える。本体が病院抜け出すのはさすがにまずいしなあ・・・。

 

分身が病室から出ようとドアに手をかけようとすると、先にドアが開く。空いたドアの先には日向ヒアシがいた。

 

分身の俺はそそくさと会釈しながら、その場から逃げていく。それとすれ違いながら入ってくる日向ヒアシに俺は緊張している。まあ、病院まで運んでくれたのだから来てもおかしくないのだが、俺は彼を直接見てはいないし面識もない。こういう場合どう反応すればいいんだろうか・・・。

 

とりあえず目を合わせないように布団に潜ってやり過ごそうとしたら、「体調はいいようで良かった」と存外に優しい感じで語りかけてきた。

 

「・・・初めまして?」と俺は警戒感を出して答える。「そのような芝居はせずともよい。今日は君に礼を言いに来た。娘と共にな」と言われ布団から顔を出して日向ヒアシの後ろに目を向けるとヒナタちゃんがいた。

 

反応に困るな~。とりあえず笑顔で手を振るとヒナタちゃんも振り返してくれた。かわいい。

 

「ヒナタよ、悪いが売店で飲み物を買って来てはくれぬか?」とヒアシさんが言うと「わかりました」とヒナタちゃんは病室からでる。

 

「君がどこまで知っていて、なぜあの夜あの場で時間稼ぎをできたのか、聞きたいことが山ほどあるが・・・」と言われ俺に緊張が走る。「先ほども言ったように、ただ礼を言いに来ただけだ。深い詮索はしない。恩人にそこまでの無礼をするほど日向の者は落ちぶれてはおらぬ。」

 

良かったと思いながらもヒアシさんの厳格なオーラに少し気圧される。「俺は・・・何か役に立てましたか?」と聞く。「そうだな、君が足止めをしてくれおかげで危険な手段を取らずに済んだ。結果・・・問題は起きたが最悪な事態は避けられただろう。」ヒアシさんは少し辛そうな顔をする。その問題が気になる。俺がたどった過程は、どのような結果につながったのかを。

 

「問題は・・・どのような・・・」と恐る恐る聞く。ヒアシさんは説明を始めた。

 

「雲隠れが娘を誘拐し、それを俺が阻止した。その時相手方の忍びを失明させたことが尾を引いてしまったのだ。平和条約が結ばれたその日に自里の忍びが害されたと雷影が難癖をつけてきたのだ。条約の撤廃を盾に木の葉にある要求を呑むように強いてきたのだ。」

 

「その要求とは・・・?」

 

「雲の忍びに傷をつけた忍びに同様の報復を。つまりこの俺に雲の連中の前で、目を抉りそれを寄こせと要求をしてきたのだ。」

 

・・・・ああ、本当に胸糞が悪い。

 

「けどおじさん・・・」わかっている。

 

「ああ、だが俺は目を失っていない」

 

「・・・俺には双子の弟がいる」

 

 

結果はベストにはならずベターとなった。けれど結果を知らないものからすればその差なんてないのかもしれない。俺は辛そうなヒアシさんの表情を見ながらそう思う。・・・結局は俺の自己満足なのかもしれない。けれど

 

 

 

「弟が俺の影武者となり、目を抉られたのだ。俺は最後まで反対した。だが・・・」

 

「大丈夫ですよ、ヒアシさんは悪くないです。」

 

俺の不意な言葉にヒアシさんは少し驚いた表情を見せる。

 

「そもそも雲隠れが悪いんですよ!それなのにクソみたいないちゃもん着けてきて・・・。そのせいでヒナタちゃんのお父さんが辛い思いするなんて間違っています!」と俺は声を大にする。

 

「そうだな・・・ハハハっ」とヒアシさんは乾いた笑いを出す。

 

「そろそろヒナタが返ってくるだろう湿っぽい話はやめにしよう。」

 

「はい」

 

「だが最後に一つだけ、君が体を張ってくれなければ恐らく弟は・・・死んでいた。最悪な未来を回避できたのは君のおかげだ。」

 

ふいな礼には少し驚いたが、確かに俺の成した過程がベターな結果へと繋がったことを確信させてくれた。

 

俺はその礼に笑顔で答える。

 

その時ちょうどヒナタちゃんが戻ってきたので俺たちは雰囲気を日常へと戻す。

 

「そういえばヒナタとも良く遊んでくれているそうだな。」「そうですね、お世話になっております。」

 

みたいな小芝居をうち、ヒナタちゃんが照れている様子をみて少し談笑を行った。

 

帰り際、ヒナタちゃんが選んだ見舞いの品を受け取り、手を振り合いながら分かれた。ヒアシさんは小さく頭を下げて病室から出ていった。

 

俺は少し満足しながらも悔しさを噛みしめていた。やっぱり悲劇を完全に回避するのは難しい。けれど抗うことが、俺が干渉することで緩和できることは確認できた。

 

・・・この先よりベターな結末を迎えるにはやはり八門遁甲が。

 

なんて思いながらも俺は物騒な思想を振り払う。今は自分を褒めよう。

 

とりあえずヒナタちゃんが選んでくれた見舞いの品でも確認しながら横になろう。

 

 

 

 

 

 

 

ぜんざい?ナルトのおしること言い、怪我人には小豆を贈る習慣でもあるのかこの世界・・・・。


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