目指すは忍ぶ忍者   作:pナッツ

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20:信頼と感情とトラウマ

「まさかここまで……とはなっ」

 

 細くやせ細り、アバラの浮き出た体で手に力を籠める長門は1人そう苦しそうに呟く。

 

 木ノ葉の里から少し離れた場所で、ペイン六道を操る本体である彼は輪廻眼の能力で天道の視界に映る光景に苦虫を嚙み潰したような表情を浮かべていた。

 

 全てのチャクラを天道に集中して放った神羅天征はあろうことか、二体の岩の巨人に押しとどめられてしまっている。 そんな状況は長門にとっては想定外のモノであった。

 

(九尾の人柱力、うずまきナルトの情報を得るために仕掛けた此度の襲撃は先読みされていたかの如く木ノ葉の里の忍びどもに躱され、あろうことか一掃するための俺の術すらも裏切り者に止められている……っ。 ここで押し切れたとしても、少しの間ペインを動かすことは叶わないだろう……最悪撤退も視野にいれるべきか?)

 

 先の見えない、神羅天征と岩状鎧武との押し合い。 長門が一度引くことも視野に入れ始めた時、天道の視界にある光景が映った。

 

 それは片方の鎧武の肩にのる天音小鳥が口から血を流し始め、そしてその黒髪が根元から段々と白く変色し始めている光景であった。

 

 途端に、神羅天征に反発する力が弱まるのを感じ長門はそれを好機ととらえより一層の力を籠める。

 

「知れ……っ! 絶対的な力による抑止力を……っ痛みによる世界の救済を……っ!」

 

 

~~~~~~

 

 

「ぐふッ……!」

 

 天音小鳥……もとい黙雷悟は、口から血を吐き態勢をよろめかせる。 鎧武を操る彼のチャクラが乱れていることは、隣の鎧武の肩に乗る蒼鳥マリエにはすぐにわかることで

 

「悟ちゃんっ! 大丈夫!?」

 

 直ぐに彼を心配する声が聞こえた。 その言葉に返事をするように悟はマリエに目線を向け、ニコッと笑顔を見せた。

 

「……あと少しです、俺の感知範囲に捉えられる生体反応は残り僅か……綱手さんと、カツユさんが避難を優先してくれてる……あとホンの1、2分耐えれば良いんです!」

 

 希望を失ってはいないと、震える鎧武の姿勢を固定させるようにチャクラを送り込む悟。 実際彼は八門遁甲、第七驚門まで開けその莫大なチャクラを使って鎧武を作成している。

 

 その頑強さは、マリエのと比べても数倍のものでありそんな出鱈目な出力を持ってしないとせき止められない神羅天征はとてつもない威力を誇っていることが良く分かる。

 

 マリエも自身の力添えが、僅かなものでしかないと理解していた。 しかし、それが無かればとっくにこの押し合いが終わってしまっていたというシビアな状況をも同じく理解し己の全力を持って術を行使している。

 

 そんなマリエは、自身も全力による術の行使の苦しさに耐えながらも笑顔を見せ、口を開いた。

 

「悟ちゃん……随分と可愛らしい声になったわね……昔も中性的だったけど、今はより女の子みたいよ……っ」

 

 そんな場違いにも思えるマリエの言葉に悟は顔を紅くして答える。

 

「……数年間、ずっと女性の話し方とか声のトーンを意識してたせいで、ちょっとやそっとじゃ治らないんですよ……っ!」

 

 恥ずかしそうにしながらそう答えつつも、その鎧武の力は更に増していた。

 

「髪も……黒く染めたの? 今も段々と昔みたいに白く変わっていっているけど、その……頭皮にダメージとかいってない? 大丈夫?」

 

「もしかして禿げるとか心配してます!?!? 大丈夫ですよ!!! ……多分。 髪色が変わるのは、色々事情があってそうなってるだけですっ!!」

 

 場に似つかわしくないような、そんな気楽さを感じさせる会話の内容。 しかしそれでも、その何気ない会話が2人に更なる力を振り絞らせる。

 

「……俺の声が意識して治らないのとか、まるで前の……1人に戻ったばかりで口調が乱れていた頃のマリエさんみたいですよね。 ……今なら当時のマリエさんの気持ちがよく分かりますよっ! ていうか、いつの間にか忍術使えるようになってたんですね!」

 

「施設の地下に、空間を作ってそこで鍛え直してたのよ……! 鬼さんや白ちゃんとか、たまにカカシ君も手伝ってくれたわ……っ! これでも全盛期の私には遠く及ばないんだけどね!」

 

 会話を続ける2人は、気力を絞り出し何とか神羅天征を押さえ続け……二体の鎧武が威力の増した神羅天征に押され両方ともが片膝を着いた瞬間、悟は何かに気がつきその瞳を僅かに輝かせた。

 

「……っ! 里の内部から、人の気配が消えた……避難が終わったんだっ……マリエさんっ!!」

 

「なあにっ?!」

 

 悟の歓喜の声とその呼びかけに、マリエは耳を傾ける。

 

「里の皆の避難が完了したようです!! もう、この術を押さえる必要はありません!! 俺に構わず先に避難してください!!」

 

 必死にそう叫ぶ悟。 しかしマリエにはその要求は飲めるものでなかった。

 

「……駄目よ! 私が今この場を離れたら、貴方がもろにこの術を喰らってしまうわ!」

 

 悟を残して逃げるという選択肢などないマリエは、更に踏ん張ろうと力を籠める。

 

 そんなマリエを見て、悟は彼女のその意思が容易く折れることはないと直ぐに理解してしまった……それは悟がそれだけマリエの事を理解していることの証明でもあるのだが。

 

(いくら俺に直撃喰らっても死なない算段があると伝えても、マリエさんは少しでも俺への負担を減らそうと最後まで残り続けるはずだ……っ! ……こうなったら……!!!)

 

 マリエの避難が遅れれば、遅れる程彼女へかかる負担はより大きくなる。 もし限界が来て鎧武が崩れた時に彼女が神羅天征の直撃を喰らえば、ひとたまりもないと悟は考えとある行動を起こすことを決めたのであった。

 

 

~~~~~~

 

 

 木ノ葉の里の外周では、前代未聞の襲撃とのぶつかり合いを固唾を呑んで見守る人達で溢れていた。

 

 そんな中、里の出入り口である大門付近で言い争いの光景があった。

 

「どうして奴を通した!」

 

 1人の中忍がテンテンの胸倉を掴み上げ、必死の形相で怒鳴り散らしていた。

 

 そんな相手にテンテンも、相手の腕を抑えるようにして自分の考えを伝えようとしている。

 

「天音小鳥は……黙雷悟なのよっ! 私たちの味方なのっ!」

 

「そんなこと、分からないじゃないかっ!? 暁に加担してアスマさんを殺した奴が今更帰って来て何をするってんだっ!!」

 

 そんな風に言い合う中忍とテンテン。 2人を囲む忍びらも、互いに意見が食い違い言い合いになっていた。

 

 かつての黙雷悟を知る者。 暁として風影誘拐や、猿飛アスマ殺害の容疑がかかっていることを知る者。

 

 様々な側面をそれぞれ知る者同士が、己の胸中をさらけ出していた。

 

 そんな中

 

「っ! 何をしているこんな時に、仲間同士で争うなっ」

 

 日向ネジが言い争う二人の間に割って入り、仲裁を図る。 周囲での争いも、リーが仲裁に努めていた。

 

「ネジっ!」

 

 テンテンはネジの存在を確認すると、駆け寄り手に持ったその筒を手渡す。

 

「っ……これはっ!?」

 

 ネジの手に渡されたその筒には……2つの眼球が収められていた。

 

「天音小鳥が持っていた、父上の白眼か……っ! 何故これをテンテンが……」

 

「悟だったのよ……っ! 今も里の中心で必死に戦ってくれている!」

 

「……なに?」

 

 テンテンの必死に語る姿。 そしてネジ自身が己の白眼で、里の中心で抗う二体の岩状鎧武を確認する。

 

「……っ」

 

 何か思うところがあるのか、ネジが歯を食いしばるとネジの目の前の中忍が叫ぶ。

 

「悟だか何だが知らないが、暁のせいで里がこんなことになってるんだぞ!? 俺はアイツを……許せないっ!!」

 

 中忍のその言葉に、テンテンが苛まれ顔を曇らせる。 天音小鳥が黙雷悟であったなら、少なくない犯罪行為を働いていたことは事実であるからだ。

 

 悟への不信感が積もり、その勢いが増していく。 そんなとき

 

 

 

 

「黙雷悟は……暁へ送った木ノ葉からのスパイだ……火影である私の命令でな」

 

 

 

 

 確かな足音を響かせ、五代目火影綱手が姿を現す。 その様子は、額に汗を滲ませあまり余裕の見られない姿であったが火影としての毅然とした態度は周囲の者の不安を一瞬で打ち消す。

 

 綱手の言葉に、ネジが問いかける。

 

「その言葉……本当なんですか?」

 

「ああ、隠していてすまなかったな……木ノ葉からの抜け忍であるうちはイタチの監視の為に私が命じたことだ」

 

 綱手はシッカリとネジの目を見てそう答えた。

 

 綱手に付き添って来ていたシズネは(まあ、噓なんですけどね……綱手様も天音小鳥が悟君であったということは先ほど気がついたばかりのことなので……)とその綱手が自信満々についている噓にひやひやしながらも、周囲にいる怪我人を素早く見て回っていた。

 

 綱手はそのまま言葉を続ける。

 

「……あの規模の術のぶつかり合いだ。 決着がどうであれ木ノ葉の殆どが壊滅すると見て良い……だからこそ、ここから立ち上がるために仲間を信じるんだっ!!」

 

 綱手の呼びかけにバラバラになっていた里の者たちの心が一つへと纏まっていく。

 

「綱手様……っ!」

 

 その確固たる姿に、綱手に憧れるテンテンが尊敬の眼差しを向けるとその瞬間

 

 

 

 

「テンテン助けてくれぇっ!!!!!!!!」

 

 

 

 

 里の中心から、先ほど綱手が発した避難勧告と同等の声量で助けを求める声が響いてきた。

 

 若干の情けなさも含まれたその言葉が、誰が、どこで発したかなどは一目瞭然というものでありすぐさまにテンテンが大門から、遠くに見える鎧武の背へと目線を向ける。

 

「悟……っ!」

 

 テンテンがその名を口にすると、綱手はテンテンの背を叩き

 

「行ってやれ……」

 

 そう言って背を押した。 綱手の言葉に

 

「はいっ!」

 

 テンテンは勢いよく答え、大門の間に立つのであった。

 

 そしてそんなテンテンの脇に、班員であるネジとリーも並び立つ。

 

「行くとは言うが……あの岩の巨人の背に位置する場所以外は衝撃波で建物も殆ど吹き飛ばされているぞ……容易に近づけるものではない」

 

 ネジが危険な行為をしようとしているテンテンを心配するように声をかける。 同じくリーも

 

「ええ、かなり離れているこの位置でも伝わってくる凄まじい振動と衝撃……僕ですら、真っ直ぐとあそこに近づくのは無理でしょう……どうするつもりですか、テンテン」

 

 その行動の危険さを考えテンテンに確認を取る。

 

 2人からの心配に、テンテンは恐怖で震える両手に持った2つのクナイを見つめ握りしめる。 覚悟を持ちその恐怖を勇気へと変え…… 

 

「飛雷神の術で……あの岩の巨人の背に移動すれば、衝撃波は直接ぶつからずに済むはずよ……」

 

 自身の作戦を伝えた。 しかしその言葉に、ネジは難色を示す。

 

「お前の飛雷神の術はまだ遠距離の転送が上手くできない未完成であることは俺も知っている……っ! 時空間忍術の類で失敗すれば、下手をすればそのまま無駄死にになるぞ。 俺はお前にそんな無茶をさせたくはない……それにあそこに飛ぶためのマーキングもないだろう?」

 

 そう諭すかのように語りかけるネジだが…… 

 

 

 テンテンの目に宿る光は、一歩も引くことを感じさせないものであった。

 

 

「あいつが……悟が、私の名前を呼んで助けを求めたってことは……それだけ私を信じてくれてるってことなんだ……意味もなく……勝算もなくそんな事はしないっ! あいつは私が()()()()()を信じてくれている、なら私もそれに答えないと……ねっ!」

 

 その声の震えは、武者震いと恐怖が混じり合ったものなのだろう。 それでもテンテンは覚悟を決め、クナイをそれぞれネジとリーに一本ずつ手渡す。

 

「リー、アンタならこの距離でもあの巨人の背に向けてクナイを投げ飛ばせるでしょ?」

 

「なるほど……ええ、分かりましたよテンテン。 悟君がテンテンを信じ、そのテンテンが僕を信じてくれるなら絶対にやりきってみせます!」

 

 テンテンから託されたクナイをしっかりと握りしめたリーは腰を低く構え、息を小さく、長く吐き始める。

 

 そんな様子にまだ納得の行っていないネジだったが、テンテンが彼に手渡したクナイを持つ手を両手で包み静かに話しかけた。

 

「テンテン……」

 

「ネジ、心配してくれてありがとね……昔のアンタだったらそんな事してくれなかったんだろうけど、今のアンタはホントに良い奴よ。 私もアンタとこれからも一緒に居たい、だから絶対に戻ってくるわ……信じて待っててよ」

 

 テンテンの振り絞るかのような笑顔。 それを見たネジは

 

「……絶対に戻ってこい」

 

 そう一言言って、テンテンを抱きしめた。

 

 ネジの強くしっかりとした手の力が、テンテンに伝わりテンテンは小さく声を挙げた。

 

 そして

 

「行け、テンテン」

 

「……うん」

 

 

 

 

 

「八門遁甲・第六景門開っ!!! 届けてみせます、この一投、全力でっ!!!! うおおおおおおっ!!!」

 

 リーが大門の塀の上に立ち、自身の限界まで八門を解放し大きく振りかぶり、

 

 1つのクナイを空気の壁を貫くような勢いで爆発音と聞き違うような音を轟かせながら投擲した。

 

 

 そのクナイは音を裂き、衝撃波をかき分け真っ直ぐ悟の鎧武の背に目掛け直進する。

 

 

 白眼でクナイの行く末を見届けるネジ。

 

 そのネジの腕の中で、静かに瞳を閉じて集中しているテンテン。

 

(飛雷神の術……昔、悟に渡された巻物に書かれていた禁術。 会得難度はS級で到底私なんかが使えるような術じゃない、だけど悟は私に出来ると思ってそれを託してくれたんだとわかってた。 綱手様やサクラのような繊細なチャクラコントロールが出来ないと本来使用すらできない術だけど、忍具の知識と封入・開封術に関する時空間忍術の練度は私は誰にも負けない自信があるっ! そして……)

 

 その飛雷神の術においてもっとも重要な「飛ぶ場所へのイメージ」。 本来であれば視認できる場所に()()だけならば、イメージの必要すらない。 しかし目の届かない場所のマーキングとなればその難易度は途端に跳ね上がってしまう。 けれど今回、テンテンにおいてはその()()場所のイメージに事欠かないであろう、なぜなら。

 

 

 自分を信じる世話の焼ける幼馴染と、しっかりしているようで目の離せない大好きな相手が待ってくれているのだから。

 

 

「……届いたっ」

 

 ネジのその言葉を、テンテンは受け止めそして

 

 その抱擁の中から、一瞬にして姿を消した。

 

 残されたネジは手に持つクナイを強く、強く握りしめる。

 

 

 

~~~~~~~

 

 

 

 一瞬、ほんの一瞬の間もなくテンテンを衝撃波が発する爆音が襲いその知覚の世界を埋める。

 

 何が起きたのか、どうなっているのか、思考を刹那で吹き飛ばすほどの衝撃に宙に浮いたテンテンの身体が落下し始めようとしたその瞬間。

 

 

 誰かがしっかりとその手を握り、掴まえた。

 

 

 テンテンが上を見上げれば、そこには

 

 

 『テンテンちゃん!』

 

 

──テンテン、ありがとう

 

 

 かつて見たのと変わらない、その笑顔を浮かべ自身の名を呼ぶ幼馴染がいた。

 

 

 『さとる君!』

 

 

「ホントに……世話が焼けるんだから、悟」

 

 

 互いに心の底から信頼のおける存在との本当の再会に、思わず目には涙が浮かんでいた。

 

 しかし、悟は衝撃に身を揺らし一刻の猶予もないことを思い出すとそのテンテンの手を引き鎧武の肩へと引きあげるそして。

 

「テンテン、時間が無い。 マリエさんを連れてここから避難して欲しい」

 

 簡潔にテンテンへその要求を伝える。

 

 その真剣な眼差しに、テンテンが隣の鎧武の肩にのるマリエに視線を向けると

 

「……親子そろって……ホンっっっトに、まあ……マリエさんが只者ではないとは思ってたけどまさか、こんな……ねぇ……?」

 

 心底呆れるようにそう呟く。 悟もテンテンの内心をくみ取れるのか微妙そうな顔を浮かべていた。 けれど

 

「頼んだ」

 

 悟はテンテンへとそう伝え、鎧武に最後の力を振り絞り神羅天征を抑え込ませに行く。

 

 有無も言わせない悟の要求にテンテンは意を決してマリエの元へと飛び乗る。 直ぐにマリエもテンテンに気がつくがその顔に余裕などかけらも残ってはおらず、テンテンが姿を現したことに対してリアクションを取る暇もなかった。

 

(マリエさんのことだから、悟のために意地になって残ろうとしてるってことかな……実際、マリエさんを逃がしたら悟がどうなるかなんて想像も容易いし……何かしらの手段があるにせよ無傷じゃ済ませられないだろうしね。 でも、悟はマリエさんに傷ついて欲しくないから私を呼んだ……なら)

 

 テンテンはマリエに近寄りその体を抱きしめる。

 

「テンテンちゃん……っ!?」

 

「すみません、マリエさん。 ……跳びますよっ!」

 

 謝罪をしながらテンテンは、跳ぶべき自身のマーキングを施したクナイの位置を探る。 距離も離れ、場所も見えない()()。 だが

 

 僅かに感じられたのは、暑苦しいまでのチャクラと静かだが熱のこもったチャクラ。

 

 ……テンテンにとって跳ぶべき場所はもはや明確であった。

 

 

 

 

 瞬間、長く続いたその拮抗が崩れ去る。

 

 二体の岩の巨人は瓦礫と化し、斥力の暴力が木ノ葉の里を覆いつくさんと瞬時に広がり

 

 建物を、その土地をえぐる。

 

 まるで巨大な隕石の衝突を思わせるその衝撃波の音は避難を終えた全ての人間の耳に届き、同時に里の壊滅を悟らせるには十分すぎるものであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「──」

 

 暗い視界を知覚し、テンテンは遠くの方から聞こえる音に意識をゆっくりと覚醒させる。

 

「──っ!」

 

 遠くから聞こえていたと思ったその声は、段々と近づいているように感じその声は耳元で発せられていることに気がつく。

 

「テンテンっ!」

 

 ハッとして体を起き上がらせたテンテンは、眼を開け辺りを見回す。

 

 大門の外側で、ネジに抱きかかえられた状態であることを認識し大門から里の内部に目を向けると

 

 そこから里の中を見ることは叶わず、ただ押し寄せられた瓦礫の山が大門の入り口を埋めていた。

 

「っ……」

 

 呆然としているテンテンに、ネジが肩を掴み目を見て呼びかける。

 

「テンテン、無事かっ!?」

 

 普段の彼からは想像もつかないようなその焦った様子の表情に、テンテンは自身の身体に何か以上でもあるのかと焦り、立ち上がって自分の体を見渡す。

 

「えっと……えっと……っ!? ……無事みたいです、ハイ」

 

 体に異常が無いことを確認したテンテンが間の抜けた声を出すとネジが大きなため息をついた。 安堵と、呆れからそのため息。 そして次の瞬間にはネジがテンテンを抱き寄せていた。

 

 冷静さを取り戻してきていたテンテンが、顔を紅くしながらも手をワタワタと振りネジへと問いかける。

 

「ええええと、ネジ?! 里はどうなったの~とか、マリエさんは無事なのかな~なんて///」

 

「……っ」

 

 無言で強く抱きしめてくるネジ。 テンテンはその抱擁が解けるものではないと悟り、その状態のまま周囲を見渡した。

 

 里を覆う外壁は健在だが、その上に立つ里の忍びらは中に踏み入ってはおらず中の様子を見て顔を青ざめさせていた。

 

 近くの木にはマリエが意識を亡くした状態でよりかかっており、リーが近くでようすを看ていることが確認できる。

 

 ふとテンテンが悟の無事を心配した瞬間

 

 

 急に爆発音が轟き始めた。

 

 

 何事かと、ネジやリー、テンテンが里へと目線を向けると空から里の外壁内を覆うように紙が巨大なドーム状に広がりそれが爆発している様子が見て取れる。

 

「次から次へと……っ!」

 

 ネジのその言葉を聞き、テンテンが立ち上がろうとした瞬間、普段以上の集中力とチャクラを使用したことの反動からか身体から力が抜けたテンテンはその意識を手放してしまうのであった。

 

 

~~~~~~

 

 

 里の内部、巨大なクレーターが里のあった場所にとって代わって出現しその周囲には押し寄せられた建物の瓦礫などが散乱していた。

 

 そんなクレーターの一点、地面がひび割れそこから黙雷悟が這い出てくる。

 

「っはぁ……はぁ……」

 

 満身創痍といったところか、余裕を感じさせずに息をする悟は全身が這い出ると仰向けになり天を仰ぐように体を大の字にする。

 

(咄嗟に木遁で全身を覆ってみたけど……全然衝撃を緩和しきれなかった……っ生きてるだけでも儲けものってやつだけど……)

 

 揺れる視界と、幾つもの箇所の骨折。 押し寄せる痛覚と、チャクラ切れによる疲労感が悟の身体を地面へと縫い付けていた。

 

 そんな時、爆撃音が悟の耳に入る。

 

 ふと周囲を見渡せば、神羅天征により出来たクレーターの外周を覆うように起爆札による爆撃が連続で起きていることが確認できた。

 

 その爆撃がクレーターの内部に他の忍びを入れさせないためのものであることを察知して、視界に映っていた太陽を遮るように現れた翼をはためかせる存在に苦笑いを浮かべる。

 

「……へへっ……そんな睨み付けるような表情、綺麗な顔が台無しですよ小南先輩?」

 

「減らず口を……っ! 長門の神羅天征を防ぎ、まさか里の住民を全て逃がすとは驚いたわ……アナタは生かしておいてはこの先大きな障害となるでしょう……今ここで止めを刺すっ!!」

 

 悟に止めを刺す邪魔をさせないため、クレーターの中心にいる術の反動で動けないペイン天道を守るため、小南は巨大な規模で起爆札を爆発させ続けていたのだ。

 

 悟の頭上の空で身体の一部が紙のように剥がれ、折りたたまれ幾つもの紙手裏剣を形成する。

 

「近づきはしない……もしもがあるから……さあ、死になさいっ!」

 

 計画を邪魔する障害に対して向けられた怒りの感情を乗せ紙手裏剣が、悟めがけ回転し飛来する。

 

(……ッ術を使うチャクラもない……っ! 紙手裏剣での追いうちに死なずに耐えられるかっ……?)

 

 もはやその攻撃を防ぐ手立てがない悟は、攻撃を耐えきりチャクラの回復を待つしか手段が残されていなかった。

 

 悟へ迫る紙手裏剣がその胸を穿つその瞬間

 

 

 

 ──空気を裂くような音が聞こえた。

 

 

 

 痛みに耐えるように目を閉じていた悟の視界に、小さな背中が映る。

 

「……まさか、こんな子供が此処まで来るとは……っ!」

 

 小南の信じられないといった様子の声。 悟を穿つ寸前であった紙手裏剣が、その傍らに真っ二つに裂け落ちていた。

 

「ずっともしもを思い描いていました」

 

 その小さな背中は語る。

 

「貴方はどこかで健在で、誰かの笑顔のためにずっと戦い続けているんじゃないかって」

 

 その姿は長い髪を一つにまとめ、かつての悟を思い起こさせるような腰布を身に着けていた。

 

「……そしてそんな貴方が助けを必要としたときに、私はその力になりたいと……なるんだと思い今日まで修行を続けていました」

 

「……っ」

 

 小南が追加で放った紙手裏剣が幾つも飛来するが、その白き眼が全てを捕え、その手に携えた八卦・鉄鋸輪虞(てっきょりんぐ)が全てを切り裂く。

 

「大切なモノを……貴方を守る……それが私の忍道っ!!」

 

 日向ハナビのその叫びが轟く。

 

「──おかえりなさい、悟さん」

 

「……ただいまハナビ」

 

 心底疲れた様子の悟に、ハナビはとびきりの笑顔を見せていた。

 

 その隙に何度も紙手裏剣が飛来するも全てをハナビが切り裂き、撃墜する。

 

(あの目……日向の……? 周囲の起爆札の生成に力の大半を割いている以上、私にこれ以上の攻撃手段はない……っ)

 

 小南が姿を現したハナビに驚愕していると、ハナビが回天の要領で身体を回しその勢いで鉄鋸輪虞を小南へと投擲する。

 

「っ……!」

 

 小南はハナビの防御を崩す手段が今はないことを悟るとその鉄鋸輪虞の投擲が届かない位置まで飛び去っていった。

 

 一先ずの脅威を退けたハナビが再度悟に顔を向ける。

 

「……本当に……帰って来たんですね」

 

 噛みしめるようなハナビのその言葉に、悟が気まずそうな表情を浮かべる。

 

「まあね……帰ってきましたとも」

 

 悟の返事を聞き、ハナビは泣きつくように仰向けに倒れる悟に抱きついた。

 

「うぐっ!?」

 

「ずっと……ずっと心配してたんですよ!?  私だけじゃなくてマリエさんも姉様もテンテンさんも、白さんも!!! 勝手に出てって……心配かけて……っ!!」

 

「ハハハ……ホントごめん……」

 

「許さないっ!! こんな……っうぅ……ひっぐ……許さないですよ……っ」

 

 泣きじゃくるハナビに、悟は辛うじて腕を動かしその体を包み込んでその背をポンポンと優しく叩く。 ふとその時悟の視界に顔が入り込んだ。

 

「ハナビが急に飛び出したから追いかけて見たら……本当に悟君?」

 

 その人物は困ったかのような表情を浮かべたヒナタであった。

 

「ああ、ヒナタ……こんな声してるけど黙雷悟です、ハイ」

 

 女性のような声を気にしている悟に、ヒナタは少し笑顔を見せながらも

 

「……生きてるって知ってても、無事かどうかはわからないから不安だった……皆に心配かけたんだから悟君。 ……怒られる覚悟はしっかりしてね?」

 

 怒っているのだろう、笑顔の裏に混じる真剣な瞳が悟を貫く。

 

「……重々承知しております」

 

 悟は心底反省しているかのような声で謝罪をするのであった。

 

 泣きじゃくるハナビをあやす悟の様子を眺めたヒナタは目を細める。

 

(岩の巨人をマリエさんが術で出せるってハナビは知ってて……それが2体現れたから片方が悟君だとハナビは瞬時に結び付けた。 だからこそ、衝撃波が止んだ瞬間に誰よりも早く駆けだして起爆札の雨をすり抜けられたのはいいんだけど……)

 

 ヒナタはその白眼で、クレーターの中心に居る人影に注意を払う。

 

「悟君……あの人があの衝撃波を出した張本人なんだよね?」

 

 ヒナタの確認に悟は答える。

 

「そうだ……だけど、向こうも術の反動で暫くは動けないはず……あと少し……俺の力が戻れば、幾らでも対抗できるっ!」

 

「……じゃあ今……私が、攻め込めば……っ!」

 

「っ駄目だヒナタ!」

 

 悟が駆けだそうとするヒナタに制止の声をかけたその瞬間。

 

 天道と悟の間に、人影が幾つか降り立つ。

 

 天道の近くには、残りのペイン六道が。 悟の近くには

 

 

「全く、とんだガキだよお前は……まあでも安心しなここからは」

 

 

 パシンと掌と拳を合わせた音が響く。

 

「火影の役目だっ!」

 

 起爆札の壁を強引に通り抜けてきた再生力の持ち主、綱手が声高々にそう宣言した。

 

「火影か……だが、既に消耗しているようだな」

 

 ペインの内小柄な畜生道がそう呟くとそれを聞いた綱手もまた

 

「そちらも随分と規模の大きな術で消耗している様だが……影を舐めるなよ?」

 

 そう言い返して、悟に目線を向ける。

 

 そして

 

「私が時間を稼ぐ、その間に体力を回復させろ」

 

 綱手はそう小さなか声で悟に語りかけ、駆けだした。

 

「綱手さんっ!」

 

「綱手様っ!」

 

 悟とヒナタの呼び声を背に、綱手はペイン六道らに向かって攻撃を仕掛けるのであった。

 

 そして残された悟たちの後方から声がかかる。

 

「あの~」

 

 その可愛らしく、か細い声に……

 

 悟の顔は一瞬で青ざめた。

 

 嬉しくて泣きついていた悟のその変化にハナビが気がつき、不思議に思いその声の主に目線を向ける。

 

「綱手様からの指示で体力の回復をしたいんですけど~前に急に近づかないでとは言われているので……あの~近づいて触れても大丈夫ですか、悟さん?」

 

 声の主のその言葉に悟は、仰向けのまま呼吸を荒くし、脂汗を流す。

 

 明らかに尋常ではない様子に流石に心配になったハナビは

 

「大丈夫悟さん? 綱手様の口寄せ動物の()()()()ですよ?」

 

 そう確認するように問いかけた。

 

 そして

 

 

 

 

「だ、だ、だだ大丈夫……じゃ、ない……かも」

 

 

 

 

 悟は明らかに動揺した口調でそう答える。 そう、黙雷悟は蛞蝓がピンポイントで大の苦手であるのだ。 前世でのトラウマが原因で蛞蝓を苦手とする悟の背後には今、そんな前世でお目に掛かれないほど巨大なナメクジが意志を持って悟に触れようとしていた。

 

「ちょっ、ちょっと一旦待ってマジでっ!! しんこ、深呼吸……スー―……ハーー……イヤ駄目だ待ってっ!! 待ってカツユ様ァ!!!」

 

 まるで注射や歯医者を嫌がり駄々をこねる子どもの様に豹変した悟の様子に、ハナビもヒナタもその理由に嫌でも察しがついてしまった。

 

 既にボロボロと涙を流して首を横に振り続ける悟にハナビが優しい口調で語りかける。

 

「敵を倒すためには、悟さんが回復しないとダメなんですよね? カツユ様の治療を受けないと……」

 

「い、嫌だ!! 無理だっ!! 無理無理無理っ!!! ああああああああああっ嫌だ~~~っ!!」

 

「さ、悟君……っ」

 

 その豹変ぶりに、2人と一匹はなんとも言えない雰囲気となる。

 

「悟さん、流石にそんなに嫌ったらカツユ様が可哀想ですよっ?!」

 

「わかっ……ううううう、分かってるけどォ……グスッ……ごめ゛ん゛っ無理だっあああ!!」

 

 先ほどまで泣きついていたハナビと立場が逆転し、そのハナビに抱き着き泣きじゃくる悟。

 

 かっこよく体力を回復しろと伝えた綱手の不憫さが際立ち始め、埒が明かないとハナビは意を決してカツユに声をかける。

 

「カツユ様! 悟さんは今動けないので、問答無用で治療してもらって構いません!」

 

「バナ゛ビィぃい!?!?!?!」

 

 親に見捨てられたかのような悲惨な表情を浮かべる悟。

 

「大丈夫です悟さん、私がついています!」

 

 そんな悟の両手を握り、子をあやすかのように元気づけるハナビ。 そして

 

「い、良いんですね? 行きますよぉ?」

 

 カツユがその軟体な体を座る体勢になっている悟の背に押し付けた。

 

「~~~~~~~~~~っ!?!?!?!?!?!?」

 

 悟の声にならない悲鳴が響く。 その悟の様子に、何とも言えない表情を浮かべたヒナタは白眼で上空の小南とペインらと綱手の戦いに注視することにして気を反らす……身近に感じていた頼りになる人間のある意味痛々しい光景に流石の白眼でも目を逸らしていたのだ。

 

「すごい……鳥肌が……」

 

 カツユはその自身の身体を、悟の殆ど破けて意味を成していない衣服の上から滑り込ませ次第に包み込んでいく。 だからこそ、直接素肌に触れそこからくる拒否反応の凄まじさも分かってしまい思わずそう呟いていた。

 

 上半身を殆どカツユに覆われ、顔を青ざめガクガクとバイブレーション機能のように震える悟の手を握りハナビは声をかける。

 

「……大丈夫です、大丈夫ですよ悟さん。 私がついています」

 

「ううう……ハナビぃ……っ!」

 

 優しく我が子を心配する母の様にそう語りかけるハナビ。 何度も何度もハナビが悟を安心させるように語りかけているとふと違和感にヒナタが気がつく。

 

「大丈夫……ええ、私がいますから安心してください……大丈夫……フフフ」

 

(…………は、ハナビ?)

 

 

 何だかハナビの……妹の声に愉悦の感情が混じり始めてるような……何てヒナタは思い始めた。 

 

 

「悟さん、今辛いですよね? 苦しいですよね? ……私もずっと同じ気持ちだったんですよ?」

 

「ごめん……ごめ゛ん゛ぅ~……っ!」

 

「良いんですよ……許してあげますから……そういえば、昔マリサって女性に会ったんですけど、あれって本当は悟さんだったんですよね?」

 

 ハナビのその問いかけに悟は、大きく頷き肯定の意を示す。

 

「アハッ……やっぱりそうだったんだ……あれですよねその偽名、マリエさんの名前と悟さんの頭文字を組み合わせたんですよね?」

 

 余裕のない悟は再度頷く。 ……酷い尋問を見ているかのようにカツユとヒナタは感じ始めていた。 好きな人が心の底から自分に助けを求めている状況がハナビを狂わしているんだとヒナタは怪しい雰囲気を醸し出すハナビの様子に辺りを付けた。

 

「……何度も悟さんの気配を感じました。 マリサさんとして商店街で会った時も……湯の国で天音小鳥として貴方が助けてくれた時も……フフフ」

 

「ううゴメンナサイ、ゴメンナサイ……」

 

 痛々しく謝り続ける悟。 ふとハナビが言葉を続けた。

 

「そう……天音小鳥という名前は……

 

 

 

 

 

 

 

──悟さんの想い人、もう会えないと言っていた方のお名前ですよね?」

 

 

 

 

 

 

 

「──ヒュゴっ!?!?!?!?!」

 

 突然の斜め上方向からのハナビの問いかけに悟が変に喉を鳴らし息を止める。

 

(あ、抵抗が弱くなりました。 今のうちに治療を進めなくちゃ、えいっ)

 

 悟の意識が逸れたことでカツユの治療が円滑に進み始める。 一方悟は先ほどまで感じていた恐怖とは別のモノを感じながらも何とか口を開く。

 

「どどどど……どう、して──」

 

「どうしてわかったのか……ですか? 悟さんって色々センスが残念な所あるじゃないですか……たまにちょっとしたギャグを自分で思いつたり、韻を踏んでいる言葉を聞いてニヤニヤしたりしてたの私は知ってましたよ? そんな悟さんだからこそ、マリサって偽名の由来もすぐにわかって今確認を取ったんです。 そう……貴方が性別を偽るときに名乗る偽名に何かしらの意味を持たせたがるのは容易に想像がつきます。 そして今、ふと気づいたんですよね……天音小鳥という名前だけ、由来に心当たりがないんですから……マリエさんの苗字から一文字取ったにしては要素が少なすぎますし……そこでああ、そうだと思い出しました。 私の告白を断った時におっしゃっていた()()()()がいるって……フフフ。 世間に大体的に知れ渡る偽名に貴方が何も思い入れの無いものを選ぶとは思わないですからね……」

 

「~~っ!?」

 

 斜め上からの理解と、常軌を逸した考察からの断定。 ヒナタは自分の妹が何を言っているのか理解したくないと初めて感じていた。

 

 悟もまた、狂気的なハナビの様子に己の表情に若干の恐怖を滲ませていた。

 

 唯一カツユだけは治療に専念していたので会話の内容にはあまり思考がとらわれずにいた。

 

「……と、言ったところで悟さん。 気はまぎれましたか?」

 

「へ……?」

 

 悟のマヌケな声。 ふとハナビの様子が戻り優しい声色になると、カツユが悟の身体から離れ始める。

 

「怖いこと……苦手なことから気を反らさせてあげようと思ったんですよ、効果があったみたいで良かった」

 

 そんなハナビの様子に悟が一瞬ほっとすると、ハナビが悟の耳元で小さく呟く。

 

 

「ちゃんと、この数年何をしていたか……後で教えてくださいね」

 

 

 先ほどの怪しい雰囲気に一瞬戻ったハナビのその言葉に悟は

 

「は……はい」

 

 ただただ慄き、了承する言葉を漏らすことしかできなかった。

 

 そしてそんな状況を一変させるかのように

 

「悟君、綱手様の様子がっ!!」

 

 ヒナタが叫ぶ。

 

 その言葉に一瞬で思考を切り替えた悟は、動かせるようになった体を跳ね起こさせて駆けだす。

 

「取りあえず、2人はなるべく戦闘から離れて様子を見ていてくれっ!!」

 

 ヒナタとハナビにそう告げた悟は調子を取り戻し、雷光の轍を残してその場から跳び去った。

 

 残されたハナビとヒナタはカツユと共に、移動を始めた。

 

 

「ハナビ……悟君の事──」

 

「姉様、今はこの場を離れるのが先決です」

 

「は、はい……」

 

 

~~~~~~

 

 一方でペイン六道と戦いを繰り広げていた綱手は苦戦を強いられていた。

 

 カツユを口寄せし、里の住民の避難に全力を注いだために既に彼女自身に残されたチャクラの残量は僅かであった。

 

 それでも火影の維持で、複数回はペインらを殴りつけ再起不能のダメージを与えていたが…… 

 

「何度も何度もキリがない……アイツを倒すことが先決か……」

 

 厳つい顔をした地獄道のペインが倒された他のペインを蘇生させ何度も立ちふさがっていた。

 

 そんな時修羅道から放たれたミサイルを撃ち落すように緑色の雷光が戦場を走った。

 

「来たか……随分と治療に時間がかかったようだが……どれぐらい回復した、小僧」

 

 綱手のその待っていたとばかりの言葉に、ミサイルを撃ち落した雷光が直ぐそばに着地した。

 

「酷い目にあって、一割も回復してないですけどそれでも十分ですよ……ナルトが帰ってくるまで凌げばいいはずなので」

 

 姿を現した悟に綱手は

 

「酷い目……? ともより今のカツユの治療では限界があるか……悟よ、踏ん張るぞっ!」

 

 体力は回復したはずの悟のゲッソリとした表情に疑問符を浮かべつつも、最後の気合を入れる。

 

「了解ですっ!」

 

 その綱手の気合に呼応するように悟も雷光を迸らせた。

 

 しかし悟は綱手の額に目を向け心配する。

 

(額のマークは既に消えかけている……ここまできたら原作同様に、この後綱手さんは寝込んでしまうかも……いや、それよりも今は目の前の──)

 

 悟は目の前の事に集中するように瞬時に駆けだした。

 

 ペインらの輪廻眼が悟の動きを捕え、、まるで奇襲の如く繰り出される体術をそれぞれが交わしていく。

 

 しかしそのまま駆けだした悟は本命である天道に向け、鋭い跳び蹴りを放った。

 

「飛雷脚っ!!」

 

 速さを極めたその蹴りは、彼が消耗していようともただ避けることが困難なほど高速であり天道も、輪廻眼で捕えた動きに体の動きが対応できずにそのまま顔面に蹴りが直撃

 

 

 したように見えたが、天道は煙を巻き上げその場から消え去った。

 

「ッ!?」

 

 着地をした悟は、蹴りを躱された事実に驚き後方を向けば畜生道の近くに天道の姿を見ることが出来た。

 

(口寄せで天道を攻撃から守ったか……神羅天征のインターバルがどれだけあるか分からないが……守りの姿勢か、崩すのは容易じゃないなっ!)

 

 天道を中心に展開されたペイン六道のフォーメーションに悟と綱手は苦戦を強いられることになる。

 

 そして…… 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ──神羅天征

 

 

 

 

 

 

 

 

「……ここはどこだってばよ」

 

 巻き上げられた大量の煙の中からそう呟くうずまナルト。

 

 足元のガマ吉も

 

「敵はどこにおるんらや!?」

 

 状況をうまく呑み込めていな様子であった。

 

 しかし、巻き上がる砂埃りと遠くに聞こえる無数の爆発の音。

 

 フカサクが口寄せしたはずの自信の妻であるシマの姿が近くに居ないことに懸念を感じ、事態の予想を付ける。

 

「まさか母ちゃん……遠隔口寄せでワシらを呼び寄せたんか……となると、ナルトちゃんよ。 ここは戦地の待った中……つまり」

 

 煙が晴れ始め、周囲の状況が確認できるようになりナルトの視界に火影の顔岩が映る。 しかし周囲はまっさらなクレーターとなり、複数の人物の姿を捉えられる。

 

 崩壊した木ノ葉の里のクレーター外周は爆撃が続いており、その中心では

 

 

 綱手を庇い、修羅道の生やしたチェーンソーに腹部を貫かれている黙雷悟の姿があった。

 

 

 神羅天征で場を崩され、万象天引の術で引き寄せられた綱手を庇い致命傷を負った悟。

 

 ナルトはその光景に、咄嗟に体を動かし

 

 瞬時に修羅道の上から殴りつけその体をバラバラに砕いて見せた。

 

「……てめぇら暁の仲間じゃなかったのかっ!」

 

 天音小鳥が黙雷悟であることを理解していないナルトはこめかみに青筋を浮かべた表情で天道に問いかける。

 

「そいつは裏切り者だ、どうなろうと知った話ではない……それよりも探す手間が省けたな九尾よ」

 

 そんなナルトの言葉には興味が無いペインらは、修羅道を除いて集まりナルトの前に立ちはだかる。

 

 既に体力の限界が来ている綱手は辛うじて息をしている悟の身体を抱えナルトに声をかけた。

 

「ナルト……頼んだ」

 

 その言葉によって預けられた意志を抱くようにナルトは目を閉じ、胸に手を当てる。

 

 綱手がその場から悟を連れ離れると

 

「さて、邪魔も者もいなくなった……尾獣狩りの時間だ」

 

「木ノ葉を滅茶苦茶にしやがって……決着(ケリ)つけてやる!!!!!」

 

 ついにうずまきナルトとペインとの戦闘が始まった。

 

 

  

 

 

 

 

 

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