目指すは忍ぶ忍者   作:pナッツ

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21:うずまきナルト

「ガマ吉、綱手の婆ちゃんとあの天音っつー奴が離れるのを手伝ってやって欲しいってばよ」

 

「オッス!!」

 

 朱い羽織をひらひらとはためかせるナルトのその言葉に応じるように、撤退しようとする悟と綱手を庇う様にガマ吉が跳び、ナルトの背負う大巻物にフカサクが飛び乗る。

 

 するとナルトの足元から細く可愛らしい声が聞こえる。

 

「あの~ナルト君。 私も連れて行ってください、先ほどまで綱手様が戦っていたペインらの情報をお伝えすることが出来ます」

 

「蛞蝓のカツユちゃんかいのォ……それならナルトちゃんの懐に隠れておきんさい」

 

 這い寄るカツユにフカサクが提案すると、ナルトも頷きカツユを拾い上げ懐に入れる。

 

 そしてナルトは、静かに怒りを滲ませた瞳をペインに向けた。

 

「……許さねぇ」

 

 そんなナルトの言葉にペインは小さく鼻で笑う。

 

「許さないか……裏切り者に邪魔はされたが、この惨状に木ノ葉も少しは痛みを理解したことだろう……絶対的な力の存在により、自身らが築いてきたものが一瞬で無に帰す無情さをな」

 

(天道の力が戻っている以上、不用意に戦闘を長引かせれば小南の足止めに限界が来る……短期決戦と行くか)

 

「口寄せの術」

 

 長門の思惑を遂行するために畜生道は口寄せにより、一気に巨大なサイ、犬、牛のような口寄せ動物を呼び寄せナルトへと地面を抉りながら突進させる。

 

「ブンちゃん!! ケンちゃん!! ヒロちゃん!!」

 

 巨大な口寄せ動物たちに対抗するようにフカサクの掛け声とともに、三匹の大ガマたちがナルトの前へと着地する。

 

「オッシャァ!!」

 

「自分……不器用なもんで……っ」

 

「こ奴らは任せろ」

 

 ガマたちが口寄せ動物たちの突進を受け止めると、それぞれを抱きかかえるようにして里の外に向け小南の爆壁を飛び越えるような大跳躍で姿を消した。

 

 残されたペインたちに向け、既にナルトは駆けだしていた。

 

 そんなナルトに立ちはだかるように餓鬼道が正面へと立つ。

 

「ナルト君、目の前のペインに忍術は利きません!」

 

 肩からそう助言を出すカツユの言葉にナルトは

 

「ちょっと違うけど雪の国で戦ったチャクラの鎧みてぇなもんか……なら蛙組手だ!」

 

 すぐさま理解を示し、拳を握り振り上げる。

 

 そして放たれた拳は残されたペインらの視界の繋がった輪廻眼が捉えており、的確にカウンターを放つ餓鬼道の拳もまたナルトへと迫っていた。

 

 しかし一方で仙人モードとなったナルトもそのカウンターを容易く避け、互いの拳は相手の顔面の横をすり抜ける形となる。

 

 が、ナルトの拳が餓鬼道をすり抜けた瞬間に餓鬼道は顔面を大きくひしゃげさせてきりもみ回転で吹き飛んでゆく。

 

 吹き飛んだ餓鬼道が微動だにしない天道の脇をすり抜けた。

 

 (餓鬼道は確かにかわしたはずがコレか……仙人……先生と同じ力か、驚異的な力と効果範囲といったところか)

 

 その天道の隣で畜生道が新たな口寄せを行うためにと地面に手を着こうとしていた。 その隙を見流さないようにナルトが影分身を自身の両脇に出す。

 

(術を吸収する奴をぶっ飛ばした……今ならっ!)

 

「新術で一気に終わらせてやる!!」

 

 そう意気込み、術を形作り始めたナルトに天道が語りかける。

 

「貴様は自来也先生と同じ術を身に着けたようだな……」

 

「自来也……先生だと?」

 

「……俺も自来也から術を学んだ、自来也は俺のかつての師だ。 お前にとって俺は兄弟子、同じ師を仰いだ者同士理解しあえるはずだが……師は平和を望んでいた」

 

 天道の発したその言葉は的確にナルトの感情を逆なでする。

 

「ふざけんなッ!!!!」

 

 怒りをあらわにしたナルトは螺旋手裏剣を掲げ叫んだ。

 

「これの……これのどこに平和があんだってばよォ!!!?」

 

 ナルトにとって今の壊滅した木ノ葉の里を目前に平和などという言葉が出るはずもなく、しかし天道はたしなめる様にして口を開く。

 

「木を見て森を見ていない。 お前には()()()()()が理解できていないだけだ、大人しく捕まれ……お前の死が平和へと繋がる」

 

 天道のその言葉にナルトは歯ぎしりをしギリっと音を響かせながらも、大きく腕を振りかぶった。

 

「ふざけんなって……

 

言ってんだろーがァ!!!」

 

 その言葉と共に螺旋手裏剣がナルトの手を離れペインら目掛け飛翔。

 

 高回転・高密度の風の性質変化を伴ったチャクラの塊は独特な高音を響かせ、畜生道の眼前に迫る。

 

 しかし接近戦に優れた今のナルト相手に分が悪い人間道がその身を呈して畜生道の小柄な体を放り投げた。

 

 瞬間、螺旋手裏剣が拡大し人間道はその風の刃に胴体を寸断され機能を停止する。

 

 畜生道が地面に着地したとともに口寄せによって呼び寄せた巨大な鳥が、そのくちばしによってナルトを貫こうとするもナルトは大きく跳躍してそれを避けた。

 

「……いくら弟弟子と言えど、九尾の人柱力は話を聞くような奴ではないようだな」

 

 天道はナルトの性格を分析した結果を口にし、話し合いを無駄なものだと切り捨てることにした。

 

 一方でナルトは口寄せされた鳥のくちばしを掴み、そのまま大きく回転させ地面へと叩きつけていた。

 

 その怪力に仙人モードの強さを感じつつも

 

(先ほどよりも力は落ちている様だな、あの投擲する術は消耗が激しいと見える)

 

 隙を感じた天道が駆けだす。

 

 一方でナルトも、解けかけている仙人モードでは対処が難しいと距離を離しながら腰に下げた巻物を取り出す。

 

「ナルトちゃん、ワシがやる!」

 

「オッス、頼んだってばよっ!」

 

 巻物をフカサクに託すと、ナルトはそのまま近づいてきた天道と体術でのぶつかり合いに移行した。

 

 体術での戦闘は、僅かに天道が優位に立っていた。

 

「こうなったら……多重影分身の術っ!!」

 

 ナルトが残りの仙術チャクラを使い数百もの数の分身を作り出す。 仙人の証である隈取りが消えたがそのまま畜生道、地獄道、天道を押しつぶさんと影分身が襲い掛かる。 

 

 しかし

 

 

 

「神羅天征」

 

 

 

 天道を中心に発生した斥力はナルトの影分身らをほぼ全て吹き飛ばし、蹂躙した。 

 

 影分身が解け、煙とボンッという音が鳴り響く中

 

 

 

 

「螺旋手裏剣っ!!」

 

 

 

 天道の神羅天征に巻き込まれないように離れていた地獄道、畜生道が突然発生した螺旋手裏剣の風遁チャクラの爆発に巻き込まれ機能を停止した。

 

「なに!? ……奴の仙術は影分身で解けたはずだが」

 

 驚く天道は消えた影分身の目くらましの奥にいる目の周りに隈取りが出来ているナルトを目にし、視線をその背後のフカサクに向ける。

 

(口寄せの巻物……安全圏で影分身にでも仙術の力を練らせストックでもしていたか、小賢しいことをッ!)

 

 天道が一連の出来事を推測している中

 

「やりましたねナルト君、これで口寄せとペインらを復活させる術を防げます。 あとは残り1人です!」

 

「あんがと、カツユっ! コソコソと色々教えてくれてて助かるってばよ」

 

「いえ、私は先ほど綱手様と悟君が戦って得た情報を教えているだけなのでお礼を言われるほど──」

 

「ハァっ!? 悟がいんのか!?」

 

「ええ、暁の天音小鳥が悟君だったんです」

 

「……ちょっ………………一旦そのことについて考えるのはナシィッ!! 目の前の最後のペインに集中するってばよっ!!」

 

「分かりました。 あのペインの使う吹き飛ばす術は、5秒のインターバルがあるそうですよ。 ナルト君頑張ってください!」

 

 ナルトとカツユが空いた僅かな時間で情報交換を済ませる。

 

 天道と視線をぶつからせたナルトは構える。

 

(影分身のストックは残り一つ。 今の仙人モードで出来る螺旋手裏剣は一発が限界か……)

 

「……あの吹き飛ばす術が厄介だってばよ、蛙の爺ちゃん何とか出来ねぇか?」

 

「母ちゃんがおらんとコンビ幻術は使えんけんのぉ……」

 

 小南が張り巡らせた起爆札の爆発の壁はいまだ健在であり、その影響ででフカサクの妻であるシマが中へと来れないでいた。

 

「……あの幻術にはこりている」

 

 突然天道がそう呟き手を掲げ、その動作に反応したカツユが焦り叫ぶ。

 

「引き込む術が来ますっ! ナルト君踏ん張ってくださいっ!!」

 

「っ!?」

 

 天道の万象天引を察知したカツユの言葉に、ナルトが地面に足をめり込ませるようにして踏ん張りを効かせる。 

 

 が

 

「うオッ!?」

 

 引き込まれたのは僅かにナルトからそれた位置にいたフカサクであった。

 

「爺ちゃんっ!!」

 

 ナルトが叫ぶが既に天道の手には六道の黒い棒が携わっており引き込まれ無防備なフカサクに向けその鋭い切っ先が向けられていた。

 

 フカサクに迫る危険。 しかしそれを察知したかのように突如として天道に大きな影がかかる。

 

「頭ァッ!! 今行くぜっ!!」

 

 口寄せ動物たちを退けたガマブン太、ガマケン、ガマヒロが空から落下しながらそれぞれが持つ武器を天道目掛け突き出す。

 

「……面倒だな」

 

 ボソッとそう言った天道は黒い棒を手放し、掌を開いた。

 

 

 

「神羅……天征っ!!」

 

 

 

 残った天道に集中したチャクラにより放たれた神羅天征は引き寄せられていたフカサク。 天道目掛け攻撃を仕掛けていた三匹のガマたちをまとめて途轍もない力で吹き飛ばした。

 

 小南の爆破の壁を突き破りながら高速で戦場から里外まで吹き飛ばされたガマたち。

 

 それぞれが里の外まで飛ばされた勢いとダメージにより、各自骨折などで戦闘不能に追い込まれる。

 

「ってめぇ!!」

 

 仲間のガマたちを攻撃され怒ったナルトが神羅天征の五秒のインターバルの隙をつこうと駆けだすが

 

「風遁・風残波」

 

 天道が口から風遁の刃を吹き出しナルトに牽制を行う。

 

「っ……効くか!」

 

 仙人モードで感知能力が向上しているナルトが跳躍してそれを躱す。 そのまま近づこうとするナルトだがその視界に映った天道は

 

 明後日の方向を見ていた。

 

(何を……っ?!)

 

 疑問に感じたナルトが地面に足がつく僅かな間に天道の視線の先を見る。

 

「っ!?」

 

 その先には距離が離れているが戦場から出来る限り離れていた、悟、ヒナタ、ハナビ、綱手がいた。

 

 先の神羅天征から5秒にも満たない内に天道は掌から生やした黒い棒を振りかぶり…… 

 

 目線の先の人物らに向け人外の力で投擲をした。

 

 

 

 

 ザクッ──!

 

 ……と肉を貫く音が戦場に響く。

 

 

 

「うぐっ……!」

 

 呻き声を上げ、地面に倒れ伏したのはナルトであった。

 

 ギリギリ寸前のところで地面に足を付けたナルトがそのまま全力で跳躍し天道と悟らの間に割って入り黒い棒を右の掌で受け止めたのだ。

 

 しかしその勢いのまま転がるナルト。

 

 そして

 

 5秒のインターバルが過ぎてしまう。

 

「っ……!」

 

 咄嗟に立ち上がり、ナルトが左手に螺旋丸を自力で作るも

 

 黒い棒から流れ込んでくるチャクラに、自身のチャクラの流れが乱され螺旋丸は儚く消える。 そして

 

「万象天引」

 

「うおっ!?」

 

 息もつかせぬように天道の術がナルトの身体を引き寄せる。

 

 宙に浮き体の制御もままならないナルトだが、反撃の為に引き寄せられる勢いのまま蛙組手による拳打を天道に向け放つ。

 

 しかし天道はその場で垂直に跳躍し、そのナルトを拳を避けそのまま

 

「神羅天征」

 

 強力な斥力により、ナルトを上から地面へと押しつぶした。

 

「がハッ!?」

 

 地面にうつ伏せの状態で叩きつけられたナルトはそのまま周囲の地面が陥没するのに合わせ地面に埋まっていった。

 

 術が終わり天道が着地するとその足元からナルトの呻き声が聞こえる。

 

「……流石九尾の人柱力、これだけやって意識を失うことが無いとはな」

 

 そういうと天道はナルトの身体を地面から持ち上げ、首を片手で絞め挙げる。

 

「うっぐ……っ!」

 

 仙人モードが既に切れているのか隈取が消えたナルトは、天道の腕を殴り僅かな抵抗を試みるがその相手はリアクションもなく首を絞め挙げる力を増す。

 

 しかし

 

「……」

 

 天道はふとその首を絞めていた手を引きながら話ナルトをうつ伏せに再度倒すと、ナルトの右手の下に左手を置かせ黒棒足で地面へ踏みつけ両掌を地面へと固定させる。

 

 痛みに苦悶の表情を浮かべるナルトだが、その瞳は天道を睨みつけたまますぐにでも拘束から抜け出そうと掌を動かそうとする。

 

「これで少しは大人しくなると思ったのだがな、九尾」

 

「っ……てめぇは何なんだ……いったい何だってんだ!! 何でこんなことしやがる!?」

 

 動けないナルトのその叫び。 天道はふと周囲を見渡す。

 

(小南の術の時間も残り僅かだが、天音小鳥も火影も戦闘続行は不可能……脇にいる日向も相手にはなるまい)

 

 戦況が安定したことを察知した天道はナルトの正面に屈み、喚く成ナルトに声をかける。

 

「何で……か、出来事というものはいつも突然だ。 理由があるとしても、理解できるのは大抵が全てが過ぎ去った後のこと……」

 

「何が言いてぇ……っ!」

 

「この状況……いいだろう、少し話をしよう」

 

 そういった天道はゆっくりと諭すような口調で話をし始めた。

 

「お前は俺に“何故”と問うたが、俺の目的は自来也先生も成しえなかった平和を生み出し、正義を成すことだ」

 

「平和……? 正義……だと?」

 

 ナルトは天道の言葉に、心底信じられないといった表情を浮かべ歯ぎしりをする。

 

「俺の師匠を殺して、里もこんなに滅茶苦茶にしてっ!!! そんな偉そうなことほざいてんじゃねぇぞ!!?」

 

 激昂するナルトに天道は一度目を伏せ、目をゆっくりと開けながら口を開いた。

 

「では、お前の目的はなんだ?」

 

「てめぇをぶっ倒して! 俺がこの世界を平和にしてやるっ!」

 

「そうか……それは立派なことだな。 それこそ正義と言えよう、だがな」

 

 天道は立ち上がり、周囲を見渡しながら

 

「俺の家族、仲間、里……それらを先に蹂躙した貴様ら木ノ葉の忍びだけが、平和と正義を口にして許される世の中は間違っていないと言えるか?」

 

「!?……どういう……ことだってばよ!?」

 

「そのままの意味だ。 火の国……木ノ葉の里は国益を守るために他の大国との戦争により利益を得ていた……でなければ里の民が飢えることになるからな。 だがそれらの国同士の戦いの戦場は決まって俺たちの小さな国と里だった。 幾たびの戦争が大国を安定へと導き……我ら小国に多くの痛みを強いてきたのだ」

 

「っ……」

 

「お前も……俺も、目指すものは同じだ。 自来也先生を師事し、その願いを成就させようとしている……お前も俺も何も変わらない、互いの正義のために動く。 俺が木ノ葉にしたことは、お前が俺にしようとしていることと同義。 大切なものを失う痛みに貴賤はない……俺たちは正義と言う名の報復に駆り立てられた只の人間だ。 だが……その正義の報復は、更なる復讐の連鎖へと繋がり決して途切れることはない」

 

 天道の言葉にナルトは言葉を失う。 ナルトには天道の言葉を否定するだけのモノが見つけられていなかったからだ。

 

 天道は空を見上げて話を続ける。

 

「今、忍びの世界は過去も未来も憎しみに支配されている。 その事実は人は決して理解し合うことのできない生き物だと否が応でも悟らせて来る……」

 

 天道の言葉はナルトに、かつての自来也との会話の内容を想起させた。

 

 ──憎しみの蔓延るのこの世界で、いつか人が本当の意味で理解し合える時代が来ることを信じる自来也。

 

 その方法、答えが見つからないときにそれを探求することを託すと言ってくれた師匠のその言葉の意味を……ナルトは深くは理解できていなかった。

 

 そして

 

「お前なら平和をつくるために忍界の憎しみとどう向き合う? ……お前の答えを聞こう」

 

 天道はその答えをナルトに求める。 

 

 その問いにナルトは──

 

 

 

 

 

「分かんねェ……」

 

 

 

 

 力なく、そう呟いた。

 

 天道はその返答に何の感情の揺らぎも感じさせず当然のことのように受け止め再度口を開く。

 

「俺はその憎しみの連鎖を止めるために……“暁”を立ち上げた……俺はそれが出来る、答えを持っている。 全ての尾獣の力を集め、俺のもたらしたこの里の損害を優に超える力を持つ尾獣兵器を作り、そして……本当の痛みを世界へと知らしめるのだ」

 

「!?」

 

「その痛みが恐怖を生み戦いは抑止されるだろう……世界は安定し平和となる」

 

「っ……だからってそんなの!! 噓っぱちじゃねぇかよ!!」

 

「人間とはそんなに賢い生物ではない……こうでもしなければ平和など到底作れなどしない。 だがそれも一時だがな……」

 

 天道の言葉に、僅かな哀愁が混じる。

 

「人は痛みを忘れ抑止力は低下するだろう……そうして尾獣兵器は再度使用されることで世界は痛みを思い出す」

 

「……」

 

「憎しみの連鎖の間の僅かな……一時の平和、この終わりなき連鎖の合間に俺の足掻きとしてそれを実現させること……それが

 

 

 

 

──俺の夢だ」

 

 言い切った天道のその言葉の説得力は確かな経験と価値観によるものであり

 

 ナルトはそれに反論するほどの言葉を己の内に見つけることが出来なかった。

 

 ナルト自身、言いたいことや考えも全くないわけではない……しかし天道の言葉の前に、それを言葉にすることが出来なかったのだ。

 

「俺の平和を噓っぱちだというが、この呪われた忍界に人と人が理解し合うなどと言った平和ほど虚構なものはない」

 

「だけど……それはエロ仙人が言ってた平和とちげぇはずだ……っ!!」

 

「だからこそ、先生も道半ばで散ったのだ。 無い物など追い求めても無駄だ、そして答えを示せないお前も同様にな……お前に出来ることは平和のために犠牲になることだけだ」

 

 話は終わったとばかりに天道は身体から精製した黒棒を構えた…… 

 

 

 

~~~~~~

 

 

  

 ナルトらから少し離れた位置でヒナタはその様子を伺っていた。

 

 背後では老いたように衰弱した綱手と、未だに腹部にチェーンソーで開けられた傷の出血に苦しむ悟。

 

 ハナビも必死に悟の傷を押さえるが、彼自身の回復力が落ちているのか回復の兆しは見えない。

 

 カツユも綱手から与えられたチャクラを殆ど使い切ったことで、治療を行うことが出来ずにただ綱手の傍に寄り添うのみであった。

 

 そんな中ナルトの身体に次々と黒い棒が突き刺さられていく様子を見てヒナタは己の唇を噛みしめる。

 

 さらなら救援は期待できない、そんな思いがヒナタに募り

 

 そして──

 

「っ!」

 

 我慢の限界を迎えたヒナタが駆けだそうとしたとき

 

──グッ

 

 足を引っ張る感覚が彼女に伝わる。

 

 振り返るまでもなく彼女の白眼が、自身のズボンの裾を地面にへばりつきながらも掴む悟をうつしていた。

 

「……悟君っ」

 

「悟さんっ!? 安静にして──」

 

 腹部から垂れ流す血を地面に零しながらも、悟は光の失っていないその緑色の瞳でヒナタを見上げる。

 

「ヒナ……タ」

 

 その弱々しく呼ぶ声に、ヒナタがかかんで顔を近づけると

 

「自分を……信じろ、負けるつもりで行くな……っ!」

 

 悟がそうヒナタに告げる。

 

 その言葉にハッとしたヒナタは静かに瞳を閉じた。

 

(……凄く強くなったナルト君でも敵わない相手に私は、犠牲になってでもって駆けだそうとしていた。 でもそんな心づもりじゃ……いけないよね)

 

「うん……ありがとう、悟君。 ──行ってきます」

 

「頑張れ……っ」

 

 そしてヒナタは悟の言葉を背に駆けだした。

 

「姉様っ! ……っあんな化け物みたいな相手に1人で……っ!」

 

 姉の危機にしかし、ハナビは自分の無力さを知るがゆえに何もできないでいる。 止めることも、励ますことも出来なかった自分を不甲斐なく思い顔をしかめる。

 

 しかし

 

「ハナビ……お願いがある」

 

 悟の言葉がハナビへと届く。

 

「悟さん、お願いって……」

 

「……寿命が縮むかもだけど、僅かに俺に動くだけの力を回復させる方法があるんだ……ハナビのチャクラを殆ど貰うことになるが……それ以外に方法が無い」

 

 苦渋の選択の如く、そう提案した悟の言葉にハナビは──

 

「大丈夫です、私の寿命ぐらい幾らでも……っ! どうすればいいですか?!」

 

 そう迷うことなく悟の傍へと膝を降ろす。 その光景に悟が小さく笑みを零すと

 

「俺の……腹部に両手を当ててくれ……あとはまかせてくれ」

 

 そうハナビへと指示を出した。 ハナビはその言葉に躊躇なく従いそして、そのハナビを掌を包むように悟が両手を被せた。

 

「仙法秘術……己然転成(いぜんてんせい)

 

 濃い緑色のチャクラに包まれる2人の掌。 次第に悟の腹部の傷が塞がっていくがそれと同時に

 

(クッ……チャクラが……っ!!)

 

 ハナビの身体から急速にチャクラが消費され、その喪失感をハナビを襲う。

 

 急激なその変化はハナビにとてつもない疲労感を味合わせていた。

 

 そんな中悟は胸中で思う。

 

(俺自身のチャクラが少ないから仙法の為の仙術チャクラを練れない……だからこそ、ハナビのチャクラを借りるしかないんだが……良かった。 勘違いしてくれて)

 

 悟は必死に汗を掻きながらも傷に集中しているハナビの顔を見つめ、小さく微笑んだ。

 

(この術で寿命が減るのは俺なんだよなぁ……知ってたら協力してくれなさそうだし……まあ、俺にとっては今更って奴だからいいんだけど……ハハハ)

 

 そしてそんな悟の思いを一方的に知ることが出来る人物もまた

 

(……雷、君はホント……ハナビちゃんの事を分かっていないようだね)  

 

 何か思うことがあるのか、肩をすくめながら精神世界からその様子を眺めていた。

 

 

 

 

~~~~~~

 

 

 

──バキッ

 

 何本目かの黒い棒がナルトの身体に突き刺され、手折られる。

 

「ぐっ……」

 

 黒い棒により、ペインのチャクラがナルトを蝕み完全に体の自由が奪われてしまう。

 

「急所は外して浅くしてある。 これでお前は自分の意志では動けまい」

 

 天道がそう告げると

 

「ではそろそろお前を連れていく──」

 

 その言葉と共に

 

 衝撃音が響く。

 

 既に俯いていたナルトがその音に驚き顔を挙げると、天道が掌を明後日の方に向けその方向には

 

 腕をクロスに構え衝撃に耐えた様子の日向ヒナタが居た。

 

「っ!? 何で、何で出てきたんだってばよ!!」

 

 ナルトの驚きの言葉。 しかしヒナタは柔拳の構えを取りその白き眼で天道を睨みつけた。

 

「増援か……俺たちの戦いの様子を知りながらも来るとは無謀な事を」

 

「ナルト君には……もう手を出させない!!!」

 

 新たな戦闘の予感にナルトが叫ぶ。

 

「早く逃げろ!! お前じゃそいつは──」

 

「違うよ、ナルト君」

 

 その叫びは、ヒナタの芯のこもった言葉が遮った。

 

「最初から諦めたりするのは……違うの……それじゃあナルト君らしくない」

 

「何言ってんだ……そんな──」

 

「私は……自分の意志でここに居る。 間違えても、苦悩しても……今までのナルト君はそれでも足を前に出し続けていた! そしてそんなナルト君を追いかけ、一緒に並び立ちたくて私も歩んできたっ! ……例え今は勝てない相手でも、絶対に諦めずに……っ私は……負けないっ!!」

 

 ヒナタは叫び、駆ける。 天道に対して繰り出される柔拳は、容易く手でいなされるが同時に

 

「こちらの体術も捌くか……防御に長けている様だが……」

 

 天道の拳もヒナタは寸前で逸らすことで戦況が拮抗したかのように見えたが

 

 

「神羅天征」

 

 

 その一言で、ヒナタの身体が激しく吹き飛び地面へと叩きつけられる。

 

 

「ヒナタぁ!!!」

 

 ナルトの叫びに呼応するように、ヒナタは頭から血を流しながらも震える足で立ち上がる。

 

「やめろ、もう立つなっ!! 諦め──

 

「ナルト君っ!!!!!」

 

  

 

 

 

 

「っ私は……ハァ……ナルト君が大好き……だけど、それは今のナルト君じゃないっ!! そんなふうに俯いてるのは貴方じゃないっ!! そんな諦めろなんて言葉を口にしたりなんかしないっ!! ……貴方の様に私は真っすぐ自分の言葉は曲げないっ!! それが──」

 

 

 

──柔歩双獅拳

 

 

「私の忍道だからっ!!!!!」

 

 叫び走る彼女に対応するように天道は再度掌を構える。

 

「神羅天征」

 

 しかし

 

「八卦掌・獣空天っ!!」

 

 跳躍したヒナタが体を回転させることでその斥力の暴力を受け流し、最小限のダメージに抑え殆ど吹き飛ばされることなく地面へと降り立つ。

 

「なに……?」

 

 まさかの結果に天道が顔をしかめると、すぐ目の前にヒナタが迫りくる。

 

 その両手に纏う獣を模ったチャクラの塊は、空間を削ぐように天道へと迫った。

 

「っ……」

 

 ヒナタのその柔拳を捌いた天道の腕の動きが、次第に鈍り始める。

 

(相手のチャクラを削る術か……生身であれば経絡系への深刻なダメージになるろうが、ペインにもここまで効果があるとはな)

 

 腕の麻痺を見つめて確認した天道がたまらず距離を大きく離した隙にヒナタが腰を落としてその場で構える。

 

「八卦・獣崩撃っ!!」

 

 突き出された両手から、二体の獣のチャクラの塊が解き放たれ天道へと迫る。

 

(時間差攻撃、俺の神羅天征を警戒し同時ではなく一体ずつ着弾するように術を放ったか……しかし)

 

「神羅天征」 

 

 斥力が一方的に獣を無へと還すが、その隙をついて二体目の獣がそのキバを向く。

 

 天道はその攻撃を…… 

 

 己の右腕を犠牲にして強引に後方へと逸らした。

 

 獣に腕を噛まれたかのように体を仰け反らせつつも右腕を脱力したようにぶら下げるようになった天道に、ヒナタが駆け寄る。

 

(柔歩双獅拳は繊細な術……すぐにもう一度使うことは出来ない……でもっ!!)

 

 天道は駆け寄るヒナタに対して左腕を突き出し構える。

 

「動きが制限されようとも、小娘一人御するのには何の影響もない……」

 

 柔拳を捌くことに関して天道は余裕を持っていた。 何より経絡系へのダメージに特化した柔拳は

 

(ペインの身体は、全身の受信機によって俺のチャクラを受信させ操作している。 経絡系そのものが無い以上、一時的にチャクラが弾かれ動きが鈍るのみで決定的なダメージには成りえない)

 

 天道への有効打になりえないことが、長門にその余裕をもたらしていた。

 

 神羅天征を放ってから五秒経つ前にヒナタが天道の正面へと来る。

 

(あと二秒……) 

 

 ヒナタが大きく腕を引く。

 

(あと一秒……一撃では俺に勝てない)

 

 その攻撃を捌くまでもないと、天道が勝ちを確信した瞬間。

 

 

 

──ガチンッ!!

 

 

 

 強く歯を食いしばって

 

 

 

──ギィッ!!!

 

 

 強く拳を握りしめる音が届く。

 

 

 日向ヒナタはその全力の拳を天道の顔面目掛け解き放つ。

 

(柔拳ではないだとっ!?)

 

 咄嗟に天道が左手を使いヒナタの拳を逸らそうとする──が

 

 その左手は大きな力が働いたかのようにバチンと音を響かせ弾かれた。

 

「っ!?」

 

 そして……その拳が天道の顔面を射抜く。

 

 

「螺旋拳っ!!!!」

 

 

 ヒナタの拳に纏われていたチャクラの渦は、薄く高速で回転し柔拳では実現できない破壊力を持って天道を吹き飛ばした。

 

 チャクラの渦が天道の手を弾き、そしてその体に物理的なダメージ残したのだ。

 

 そして天道が土煙を巻いて地面を転がっている隙にヒナタはナルトの元へと駆け寄る。

 

 頭からの出血でフラフラになりながらも、ナルトを拘束している黒い棒を抜こうとするヒナタ。

 

「ナルト君、今助けるからっ!」

 

「……ヒナタっ!」

 

 一本……二本とその拘束が解かれ、そして

 

 

 

 ヒナタの口から血があふれる。

 

 

 

「……なっ!?」

 

 その事象にナルトが、声にならない声を挙げる。 ヒナタはそのまま虚ろな目となり地面へと横たわってしまう。

 

 

「……ここまでやるとはな……予想外ではあったがしかし」

 

 

 土煙の中から、左手を突き出した天道が姿を現す。

 

 

「焦ったな、止めを確認せずとは随分と甘いものだ」

 

 ナルトの顔の直ぐそばに、倒れたヒナタの顔が来る。 口から血を流している彼女の腹部にはナルトと同じ黒い棒が突き刺さっていた。

 

「あ……っ……あっ……」

 

 ナルトのその様子に、天道が語りかける。

 

「愛情があるからこそ犠牲が生まれ……憎しみが生まれる……そして」

 

 

「うォアアア゛ア゛ア゛!!!」

 

 

「──痛みを知ることが出来る」

 

 憎しみが力を呼び覚まさせる。 ナルトの周囲は赤黒く染まり、その体からあふれるエネルギーが地形を高熱で溶かし始めていた。

 

(九尾の力か、怒りで奴と呼応するようだな……ん?)

 

 天道の視界の端に僅かにチラつく影、ふと目線を向ければ

 

 ヒナタを抱えた悟が居た。 

 

 ナルトの九尾化の余波からヒナタをギリギリ助け出した悟は、そのナルトから放たれている衝撃波に手をかざす。

 

(こうなったか……っ!! 今はヒナタを治療するのが先決か……)

 

 その場から離れようとする悟を見逃すように天道はナルトへと目を向ける。

 

 一気に六本の尾を顕現させたナルトの体格に添うように獣の骨のような物が形成され始めていた。

 

 そんな正気を無くしたナルトに天道は語りかけた。

 

「俺が憎いか? これでも人は本当の意味で理解し合えると言えるか?」

 

「グオオオオオォォォッ!!!」

 

 明らかに敵意を向きだしたナルトの咆哮に、天道は

 

「それでいい、だがな……俺の痛みはお前以上だ」

 

 その輪廻眼の鋭い視線を向けた。

 

 

~~~~~~

 

 

──何でだ!? 何でこうなっちまう!?

 

 何もわからねぇ……アイツが言っていた憎しみとの向き合い方も……その答えも……っ!!

 

 苦しい……嫌だっ……もう…… 

 

「ナルト……」

 

 分からねぇ!! 俺ってばどうすりゃいい!? もう何も分かんねぇよ、誰か助けてくれっ!! 答えを教えてくれっ!!!──

 

「ならばその答え、教えてやろう」

 

「……!」

 

「そしてそのための力をお前にやろう。 苦しむもの、全てを灰塵へと帰す力をなぁ……なぁナルト?」

 

 ナルトの精神世界。 鉄格子の奥の闇の中から轟く低い声。

 

「お前の心を全てワシに預けろ、そうすれば苦しみからお前を救ってやる……」

 

 瞬間、ナルトの衣服の前面が弾け腹部の封印術の印が露わになる。 そしてそのまま封印術の印から、ナルトの憎しみをこぼすかのように黒い感情が目に見える形であふれだす。

 

「……」

 

 その瞬間正気を失ったかのようにナルトは檻へと向け覚束ない足取りで進む。

 

「力そのものに善悪などない……がそれが及ぼす結果に愛憎は必ず付きまとう。 憎しみで力を振るえば憎しみが増す……さてナルトよ」

 

 檻の合間に張られた封と刻まれた封印の札に手を掛けるナルト。

 

「お前も……所詮は憎しみに支配され力だけを欲する人間だったという訳だな……」

 

 何かがっかりするような調子の九喇嘛の声が発せられた瞬間

 

 

 ナルトの腕を何者かが掴みその動きを止める。

 

 

「っお前は……っ!!」

 

 驚く九喇嘛。 そして

 

「四代目……火影……?」

 

 虚ろになりながらもナルトがそう呟く。

 

 突如として現れた金髪碧眼、その火影の羽織を纏いし男性はナルトの身体を封印の札から引きはがし口を開く。

 

「八本目の尾まで封印が解放されると俺がそれ以上の事態を防ぐために封印式に細工をしておいたのさ。 なるべくはそうなってほしくはなかったが……あまりお前に会うのも気まずいからね九喇嘛」

 

 少し苦笑するその人物は言葉を続ける。

 

「でも……成長した息子に会えるんだ、イーブンと思ってもいいかな」

 

「四代目火影……貴様っ!!」

 

「少しうるさくなりそうだから、場所を移そう」

 

 九喇嘛に四代目火影と明言されたその人物が指を鳴らすと、ナルトの精神世界が一瞬で光に包まれナルトとその人物だけの空間になる。

 

「さて……ナルト」

 

「ナルト……って俺の名前をどうして……?」

 

 話を切り出そうとした四代目火影はナルトの疑問に当然のことのように答える。

 

「ん……どうしても何も、だって俺がその名を選んだんだから、せがれだしね」

 

「せがれって……じゃあ俺ってば」

 

「さっきもいったろ、俺の息子だよ」

 

 その四代目の言葉に、ナルトは何かを噛みしめるようにして涙を浮かべ小さく笑う。

 

 そんな様子のナルトに四代目は

 

「三代目、ヒルゼン様は九尾に関わる情報をなるべく伏せておきたかったんだろうね。 息子と分かればお前に色々と危険が降りかかるから……すまなかったナルト」

 

 申し訳なさそうに謝罪をする。 ナルトはその言葉に涙を腕で拭きながら

 

「父ちゃん……」

 

 そう呟き

 

 四代目の腹部を殴りつけ叫ぶ。

 

「何で息子の俺に九喇嘛を封印したんだってばよ……っ!! おかげで色々すっげー大変だったし……うれしいんだか腹立つんだかごちゃごちゃでもう分けわかんねーってばよ!!」

 

 その泣きながら自身の苦悩を吐露するようなナルトに、四代目は自身の腹をさすりながらも優しく語りかける。

 

「ナルト……何歳になった?」

 

「うぅ……うっ……16歳……グスッ」

 

「そうだな、もう16歳だ……色々大変だったよなナルト、すまなかった。 息子のお前に辛い思いばかりさせてしまった俺が父親面するのも違うかもだけど……」

 

「……いいよ……もう……四代目の息子なんだから……我慢する」

 

 震える声で、しかし涙を抑えたナルトの気丈に振舞う姿に四代目は申し訳なさそうな表情をして口を開く。

 

「お前に九尾の……九喇嘛のチャクラを半分残して封印したのはこの力を使いこなすと信じていたからだ……俺の息子ならとね」

 

 そして

 

「何故そんなことをしたかについては理由があってね……」

 

 四代目火影・波風ミナトは昔を振り返るように語る。

 

「今から16年もの前に九喇嘛が里を襲った時に分かったことがある」

 

「……?」

 

「あの時九喇嘛を操り里を襲わせた黒幕がいること……それはお前も既に会っている暁のメンバー」

 

「……ペインじゃないのかってばよ?」

 

「面をしている男、俺の全ての動きを見切るほどの実力者だ。 そいつと戦って俺は九喇嘛の力が必要になると確信したんだ」

 

 ミナトの言う暁の面の男、それはナルトが以前サスケを捜索していた時に会い妨害にあった忍びの事であった。 その男の存在を思いつつもナルトは自身の思いを口にする。

 

「でもペインは木ノ葉に恨みがあって、昔も自分たちの里もやられたって言ってた……」

 

「その復讐心を仮面の男に利用されたんだろう」

 

「利用って……何でこんなに木ノ葉は狙われちまうんだ!?」

 

「……この世に忍びのシステムそのものがある限り、平和な秩序はないのかもしれない。 お前の中から聞いていたが、ペインがお前に問うた答えは……見つけるのはとてもじゃないが容易じゃない。 大切なモノを守る戦いで憎しみが生まれる……愛が憎しみを生み、その憎しみに忍びが利用され留まることを知らない。 ペインはその時代が生み出した産物であり、自来也先生は時代に殺されたと同然なのだろうね……」

 

「だからって……俺はペインを許せねぇってばよ……っ!」

 

 時代に、大きな流れに沿った出来事だとしてもナルトは自来也の命を奪ったと思われるペインに対しての怒りの感情を覚えずにはいられなかった。 そんな様子のナルトにミナトは一つの考え方を提示することにした。

 

「先生がお前に、その憎しみを終わらせる答えを託した……それは──」

 

「四代目なら……父ちゃんならその答えがわかるのか……?」

 

 ナルトの懇願するのその言葉にミナトは

 

「……答えは自分で見つけるしかない……俺にも絶対的な答えというものはわからない」

 

 厳しく、そして優しくそう告げる。

 

「ッエロ仙人や四代目すらわかんなかったことが俺に出来るわけねーだろっ!! 皆勝手すぎるんだってばよっ!!」

 

 苛立ちを露わにしたナルトは言葉を続ける。

 

「俺ってば頭わりーし、そんなにすげー忍者でもねーしっ!! それに……皆から覚悟が足りないとか、力が何なのかわかってないってめっちゃ言われるしっ!! 俺は──」

 

 

 

 

「俺はお前を信じているよ」

 

 

 

 

 喚くナルトを落ち着かせるように、ミナトはナルトの頭に手を置きそう語り始める。

 

「確かにお前はまだまだ未熟だ。 先を行く者も少なくないだろうし、出来ることも多くはないかもしれない。 だけどそれでも俺は信じている、お前なら答えを見つけることが出来るってね」

 

「何で……そんなに……」

 

「息子だからってのも確かにあるけど、今までのお前を見ていて心底そう思うんだ。 大丈夫だ、ナルト心配することはないよ……既にお前自身の中に答えはあるはずだからね」

 

「俺の……中に……?」

 

 ナルトは腹部の解放された状態の封印式に目を落とす。 その様子にミナトは苦笑いを浮かべた。

 

「中ってのそういうのじゃなくてね……人生の経験の中にってことさ。 まあ、あまり教えすぎるのも良くないけど、俺から一言いうなら…」

 

「言うなら?」

 

「お前は()()()()()()()だってことだ」

 

 そのミナトの言葉にナルトは疑問符を浮かべた。 しかし次の瞬間

 

『あいつは…あいつはこのオレが認めた優秀な生徒だ』

 

『……努力家で一途で……誰からも認めてもらえなくて……そのくせ不器用で……あいつはもう人の心の苦しみを知っている……』

 

『今はもうバケ狐じゃない、あいつは木ノ葉隠れの里の……()()()()()()()だ』

 

 ふとそんな声が精神世界に響く。

 

 その状況にミナトは安心したように笑顔を浮かべた。

 

「そう、()()()()()()だよナルト……さてと俺もそろそろチャクラが薄れて消えそうだ。 最後に封印を組み──」

 

「父ちゃん」

 

 ふとナルトに呼び止められたミナトは口を止め、その息子の言葉を聞く姿勢になる。

 

「……母ちゃんってどんな人だった?」

 

「ん……明るくて、時々厳しいけど笑顔の素敵な人だったよ」

 

「……母ちゃんは俺のことどう思ってたかな?」

 

「……もちろん愛していたさ、とびきりね」

 

「へへ……ありがとうってばよ……そんだけ確認できたら十分だ」

 

 そういうとナルトはミナトに抱き着いた。

 

「っ! ……良いのかい、封印を組み直さなくて」

 

「ああ、俺に考えがある」

 

「そうか……それじゃあ俺は息子を信じるだけだ。 大丈夫、木ノ葉はまだやり直せる……頼んだよナルト」

 

 優しく、けれど甘やかさない厳しさを含んだその言葉には信頼が込められておりミナトはナルトの背を叩き、薄すれその場から消え去った。

 

 そして

 

 ナルトの目には確かな光が宿っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「戻ってきたか……ナルトよ」

 

 精神世界の檻の目の前に立つナルト。 その姿を捕らえた九喇嘛がその名を呼ぶとナルトは顔を挙げる。

 

「その眼……お前、何を考えている?」

 

 不信がる九喇嘛にナルトは無言で見つめ返し……そして

 

 大きく跳躍し

 

 

 

──封印の札を引っぺがした。

 

 

 

「っ!?!?」

 

 一瞬あっけに取られたが封印が開けられたことで、檻が開き九喇嘛の咆哮が轟く。

 

 咆哮が水面を荒立たさせ、着地したナルトをその風圧が襲う。

 

「四代目と何を話したがは知らんが貴様、ワシを解放したな? いいだろう、力を──」

 

「要らねぇ」

 

 意気揚々よ話す九喇嘛に、ナルトは一言簡潔に述べた。

 

「……ハァ?」

 

「……俺に力を貸さなくても良いんだって言ってんだ」

 

 そしてナルトのその言葉に九喇嘛が声を大にして疑問を口にする。

 

「ならなぜ封印を解放した?! 貴様は何がしたい、ワシに何を求める?」

 

 九喇嘛のその疑問にナルトはゆっくりと自身の右腕を挙げ

 

 親指で自分を指示した。

 

 

「俺を見ていてくれ」

 

 

 シンプルなその言葉に、しかし九喇嘛は意図が読めずに困惑する。

 

「……俺ってば馬鹿だから、直ぐに自分が言ってたことも忘れちまう……だから俺が二度と自分の言葉を曲げねぇように……九喇嘛、お前に見ていて欲しいんだ」

 

「……貴様」

 

 九喇嘛はナルトが持つ考えを察して口を閉じた、

 

「答えって奴は……悔しいけどすぐには出ねぇ。 でも大切なことに気づくことは出来た……俺はうずまきナルトだ! 確かに俺はまだまだなひよっこで、世界の憎しみをどうにかできる程の忍者でもねぇ……でも、俺には沢山の繋がりが……俺を、うずまきナルトを信頼してくれている人たちがいたって気づけた! カカシ先生もサクラちゃんも、サイもヤマト隊長も、綱手の婆ちゃんも里の皆も、エロ仙人に多分悟と……サスケも……そして俺をちゃんと、ずっと見てくれていた奴がいてくれることにも気がついて……皆が俺のことを信じくれている、うずまきナルトを見てその先を期待してくれてるんだってな」

 

 自信を取り戻したナルトに九喇嘛が問う。

 

「ナルト、力とはなんだ?」

 

「力ッつーのは、影分身でも、螺旋丸でも、仙術のことでも……ましてや九喇嘛の貸してくれてたチャクラの事でもねぇ!! 

 

 

 

──俺自身の心だっ!!」 

 

 

 

「……ほう?」

 

「俺はそれが中途半端になっちまってた……何でも出来て強い悟が直ぐそばに居て、あの時サスケに負けて……そんで俺に力が足りないからダメなんだって心のどこかで勘違いしちまった。 我愛羅が風影になったって聞いた時も焦って……でも、そういうので自分を見失ってたのがダメなんだ。 そんな状態でも、前に進み続けることが大事で……今を認めて先を諦めないことが大切なんだ」

 

 檻を挟まずに、ナルトと九喇嘛は互いの正面で語り合う。

 

「ペインの言ってたことを俺が全部解決できるかわかんねぇけど……俺なりの言葉は用意できた。 後はそれを、本当のアイツと正面に立って伝えてぇ!! んで、その様子を九喇嘛!! お前に見ていて欲しいんだ!」

 

「……それで封印を解放したのはどういう了見だ?」

 

「もし、俺の言葉や行動に不満があったら遠慮なく俺の体から出て行っても構わねぇつーことだ」

 

「その言葉の意味分かって言ってんのか? ワシが今すぐにでも木の葉の忍びを襲うかもしれんのだぞ?」

 

「……九喇嘛、お前はそんなことしねぇーよ」

 

「……」

 

「小さい頃から、お前を見てきたからな。 俺は本当は知ってんだ、お前はただイタズラに暴れるだけの化け狐なんかじゃねぇってな……何時も誰かの所為で暴れちまってただけだ。 仮面の忍びって奴のせいと……それと俺の憎しみや怒りの感情が暴走してただけで、お前自身が本当は誰かを傷つけることを望んでねぇってのは……わかるってばよ」

 

 ナルトは頭を下げる。

 

「本当にごめん!! 産まれてから一緒にいたお前を、俺は都合の良い道具のように扱っちまってた!! 昔にそうするなってお前に言ってたのに、ダッセーよな……だけど九喇嘛、俺は」

 

 その瞬間、九喇嘛の前足がナルトを踏み潰さんと襲いかかる。

 

 そして精神世界に振動が響いた。

 

 水飛沫が上がり揺れる世界で、九喇嘛の前足の指の間で怯むことなく真っ直ぐとした目をしたナルトに九喇嘛が話しかける。

 

「(今更この程度では怯まんか)ぜってーあきらめねぇ……だろ? 昔にナルト、お前が言っていた言葉だ」

 

「っ!……ああ、俺に悪いところがあったのは謝るし直す! んで、お前にも……誰よりも俺を知ってくれているお前にも俺のこの先を見ていて欲しいんだ!」

 

 真剣で迷いのないナルトの目を見つめる九喇嘛。

 

 身を細めた彼は、遥か遠くを見るような表情を浮かべ……そして鼻で笑う。

 

「フンッ……良いだろうナルトォ! お前のその願い、聞いてやろう。 つまり今回の戦いにワシは手を一切貸さん! 貴様だけの実力であのペインとか言う輪廻眼の野郎をとっちめてこい、そうしたらお前の今後を見極めると言う話にも乗ってやろう」

 

「っ……! ありがとうだってばよ、九喇嘛! 大丈夫だ、俺はぜってーに負けるつもりもねぇし、お前を兵器か何かにもさせやしねぇ!」

 

 意気揚々とはしゃぐように喜ぶナルトは、手を振りながら精神世界から消えていった。

 

 

 

 

 

 独りになった九喇嘛がため息を吐き、体勢を整え前脚を組んで座り込むとふとその顔の横で声が聞こえた。

 

「これが俺の息子の選択か、九喇嘛……君はどう思った?」

 

「四代目貴様……まだ残ってやがったかっ」

 

 明らかに不機嫌そうな九喇嘛の態度にミナトは自身の頬をポリポリと掻く。

 

「僕もナルトの中から君の様子を見ていたからね。 君が伝承に聞くような奴じゃないとは直ぐに気がつけたけど……僕はまだ君とは信頼関係がないから万が一を想定して残っていたんだ。 だけどやっぱり……その必要はなかったみたいだ」

 

 そう言うミナトの体はすでに透け始めていた。 それは彼の話が嘘ではないことを示している。

 

「……てめぇを殺した相手に随分と甘い態度だな」

 

「それを言うなら、君をただの力として扱いナルトに封印した僕に対して君も甘いと思うよ」

 

「フン……ほざけ」

 

「ハハハ……それじゃあ九喇嘛、息子を……ナルトを頼んだよ」

 

 その言葉を残して四代目火影・波風ミナトの残留チャクラはその形を失い、完全にナルトの精神世界から消え去って行った。

 

「親子そろって……つくづく甘い奴らだな……フンッ」

 

 せいせいしたと九喇嘛は足を組みなおし外の様子を伺う。 彼なりにナルトを見極めるつもりのその瞳には、かつてのやり取りがまばらに思い出されていた。

 

「……フンッ!」

 

 

────

 

 

(……なんだ九尾つっても賢くねーんだな、俺とおんなじだってばよ)

 

(あぁ?! 貴様と一緒にするなぁ!! ……どれ問題とやらを見せてm………………ワシは寝るっ!)

 

 

 

  

(無駄だ、そんなことしてもチャクラの無駄にしかならん)

 

(うっせー! 俺は諦めねぇ……諦めねーぞお!!)

 

(……ふんっ)

 

 

 

 

「俺ってばお前のつごーの良い道具じゃねーんだってばよォ!!」 

 

「……なら交換条件だナルトぉ。ワシのチャクラを少し分けてやる。その分は口寄せだのなんだの好きに使え。その見返りにお前は悟に挑め、そして無様な姿をさらさせろ! これでどうだ……?」

 

「……別に俺は悟のこと嫌いじゃねーしな」

 

 

 

 

 

 

(ナルトも貴様も、慣れ慣れしいィ! どうしてワシのことを恐れんのだ……)

 

 

 

────

 

 

 

 現実世界、少し時間が戻りナルトが暴走し天道と里を離れた時。

 

 上空で空爆を続けていた小南は九尾化したナルトと天道が既に爆破の防壁を軽く越え、里の外で戦闘を開始したことを察して空を羽ばたき移動していた。

 

「既に長門の体力は限界が近いハズ……木ノ葉の連中も周囲の捜索を始めたようだし、私は長門の元に戻る方が良さそうね……」

 

 小南がそうして撤退したことで、木ノ葉の爆撃が止みその中のクレーターにいる悟たちに忍び達が駆け寄っていた。

 

 そんな中、悟はいの一番で春野サクラを呼ぶ。

 

「サクラっ!!! 力を貸してくれっ!!」

 

 そんな大声に釣られれば、悟が腹部から出血しているヒナタに掌仙術をかけている様子が目に入りサクラが急いで駆け寄る。

 

「ちょっ……! ヒナタ大丈夫!? 一体どうなってんのよっ!」

 

 声を荒げながらも、医療忍術の専門家であるサクラは悟よりも遥かに高い技術によりそのヒナタの傷の治療を迅速に行い始めた。

 

 脇で泣いていたハナビに、治療の手を変わってもらった悟が近づき頭を撫でて落ち着かせようとすると焦ったような声が聞こえた。

 

「綱手様っ!!」

 

 シズネがチャクラを消費し老化した見た目の綱手を様子を見ているのだろう、取りあえず命を落とす心配がある者が居ないことに安堵した悟だがその周囲を木ノ葉の忍び達が囲う。

 

 明らかに敵意のあるその様子に悟が両手を挙げて危険性が無いことを示そうとするがその瞬間

 

 

「悪いがこいつに手は出させない」

 

 

 そんな声が聞こえた瞬間、悟の目の前に長髪の男性が庇う様に姿を現した。

 

「ネジ……!?」

 

「本当に……本当に随分とややこしいことをしでかしてきたな悟。 だが話を聞くのは後だ」

 

 名を呼ぶ悟に、ネジは周囲の忍びに向け声を張り上げる。

 

「こいつが暁に所属していたのは綱手様の指示だっ! 思う所がある者も多いだろうが実際こいつは綱手様と共に暁相手に先ほどまで戦っていたっ!! 今はこいつのことよりも状況の修復に努めろっ!!」

 

 ネジの要点を絞ったのその言葉に感情的になっていた忍び達は顔を見合わせ散開していく。

 

 危機が去ったことに安心し悟が一息つくと、ネジが振り返り軽く悟の頭を小突いた。

 

「いてッ……何すんだよ?」

 

「言いたいこと、聞きたいことが山ほどあるがそれは後でだ……お前にはまだやろうとしていることがあるんだろう? ここは任せてサッサと行け」

 

「……よくわかったな」

 

「感情が表情に出るのは相変わらずだからな、お前は。 なのに女装程度でお前だと気づけなかったのは一生の不覚だな……っ」

 

「……ハハハッバレないように色々工夫したからな、それじゃあ頼んだネジ」

 

 そう言って悟はネジに手を振るとゆっくりとだが浮かび上がり、里の外に向け飛び去って行った。

 

 呆れたようにその背を見ていたネジだが、直ぐに近くのハナビに向き直る。

 

「ハナビ様、ご無事で何よりです」

 

「……悟さんっ」

 

 ああ、自分は眼中にないんだと察したネジは後から来たテンテンやリーらと協力し、綱手とヒナタとハナビを里の外に避難させるのであった。

 

 

 そして

 

 

 

 

 空に巨大な球体が浮かぶ。

 

 それは小さな月の如く、重力に反して天体のように宙に佇みしかし大きな振動と衝撃を伴って中から崩れ去ろうとしていた。

 

 球体から顔を出す皮膚を剝がしたような肉がむき出しの巨大な獣の咆哮が轟く中、その八本の尾が球体から突き出していた。

 

 そんな光景をボロボロになった天道が見上げていると

 

 

 瞬間的にその悍ましい姿の獣は姿を消しさり、球体にその分の穴を開ける。

 

(地爆天星が破られたか……それに)

 

「九尾が消えた……?」

 

 獣が消えた球体の跡地に天道は人影を見つける。

 

 目の周りに仙人の隈取りをつけ、その少年は地上にいる天道を真っすぐな目で見つめていた。

 

(迷いが消えたか……何があった? それとも既に九尾を制することが出来るとでもいうのか……)

 

 一連の出来事に、疑問を感じつつも天道は崩れ始めた地爆天星から瓦礫を伝って地上へと着地したその少年に目を向ける。

 

 

……ナルトと長門の戦いの最終決戦が始まろうとしていた。

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