うずまきナルトと、ペイン・天道が視線をぶつけ睨み合いの硬直が続く。
頭上から地爆天星の瓦礫が降り注ぐ中、胸元からナルトの肩にかけてもぞもぞと移動する小さな影が一つ。
「ぷはぁッ……死ぬかと思いました~」
「カツユ! そういやぁいたんだったな……大丈夫だったか?」
ナルトはカツユの存在に気がつくと、天道から視線はそらさずにその安否を聞く。
「ええ、なんとか……どうやら里の方では、既に避難が進み皆さま近くの避難用区域まで移動しています。 ペインの本体の位置についても、里の忍びの方たちが既に特定に向けて勤しんでいるようです、ナルト君が正気を取り戻したことも皆さんに報告しておきますね」
「ああ、皆も色々動いてくれてるんだな……俺が暴れたせいで誰も傷つかなかったのは良かったってばよ……さて……」
カツユからの報告を聞いたナルトは、目を瞑り感知能力で里の皆の無事を自分で確認する。
(良かった、ヒナタも無事みたいだってばよ……だけど
そこで目を開けたナルトに天道は語りかける。
「……少しは痛みを理解できたか? まあ、理解したところで分かり合える道理でもないのだがな……」
「そう言う話は……直接、お前自身としてやるってばよ!」
「ほう、本体に気づいたか……だが話は先に終わっている。 答えの無いお前が今更何を語ったところで何も変わりなどしない」
「……やっぱ戦うしかねーみてーだな」
会話を終え互いに少しずつ歩み始める。 その歩みが早くなり、駆けるようになった瞬間2人の距離は零となりその腕がぶつかり合う。
既に仙人モードになっていナルトと天道の接近戦はナルトに分があり、交差する格闘戦でナルトは天道を蹴り飛ばして距離を空ける。
だが、そのナルトの蛙組手も彼の疲労とチャクラの消費、九尾化による体力の消耗が合わさることで有効打には成りえないことがその一度の交戦でわかる。
(奴の仙人モード自体は、決め手であろうあのチャクラの手裏剣を二発ほど撃たせれば切れる……仙術チャクラを消費させれば、奴自身を捕えることなど容易い)
長門の思惑に添うように、ナルトは既に影分身を出して螺旋手裏剣を構えていた。
ナルトの脇の影分身が煙球を用いてその身を隠すと、直ぐに煙の中から螺旋手裏剣が天道目掛け飛来する。
(まずは一発目……だが、奴も同じ目くらましによる手を乱用するとも限らないっ)
天道はナルトの行動を読み、隙を晒す神羅天征を温存するため様子見に万象天引で後方の瓦礫を引き寄せそのまま正面から向かい来る螺旋手裏剣へと放つ。
瓦礫と螺旋手裏剣がぶつかった瞬間、螺旋手裏剣が煙を挙げ一瞬ナルトの姿になり消え去る。 その時点で螺旋手裏剣へ変化した影分身だったのだと天道が把握した瞬間、後方から更に影手裏剣の要領で新たな螺旋手裏剣が迫って来ていた。
「っ……!」
天道が螺旋手裏剣が爆発しその効果範囲を広げる効果があることを思い出し、恐らく本命であろうその術の対処の為に右手を構える。
「神羅天……征!?」
──天道を中心に斥力が働く瞬間、天道の周囲に散らばっていた瓦礫が次々と煙を挙げそこから幾多のナルトが姿を現す。
仙人モードによる多重影分身が地爆天星の瓦礫に変化して既に大量に潜んでいたのだ。
そして神羅天征が螺旋手裏剣を弾き消し飛ばした瞬間に、影分身たちは一気に跳躍しそれぞれがその手に大玉の螺旋丸を携えていた。
決め手であろう螺旋手裏剣を最大限囮に使い、ナルト得意の物量で攻めるその攻撃は完全に神羅天征のインターバルと思われる五秒の隙をつく。
「これで終いだっってばよォ! 仙法・超大玉螺旋多連丸っ!!」
幾多の掛け声が、天道を取り巻き唸りあがる。 しかし周囲を螺旋丸特有の水色の光に覆われた天道は……ゆっくりと両手を挙げていた。
──神羅天征
既に撃ち終えインターバルに入っていたはずの神羅天征を天道は再度放つ。
ナルトの螺旋丸らがその神羅天征の斥力に打ち消され、押し返され始める光景が広がった。
(神羅天征の出力を一度極限まで下げ、撃ち切ったと誤解させ再度出力を上げる……変化の分、負担も大きいがこれで奴の攻撃を受けきりさえすればば……ッ)
天道は……長門は渾身のチャクラを込め神羅天征の規模を拡大させていく。 周囲に更にナルトの影分身が潜んでいるリスクもケアして完全な勝利を手にするために。 その一撃で全てを決するために。
そしてナルトの超大玉螺旋多連丸は撃ち尽くされ神羅天征が周囲を薙ぎ払った。
……瓦礫の崩れる音が静けさに響く中、天道は片膝を突いた態勢からよろよろと立ち上がる。
「これで……っ俺の──
その刹那、天道の顔面は顎からの衝撃を受け大きく歪む。 その衝撃に吹き飛んだ天道が空中で機能停止に陥りかけながらも、なんとか体を翻して地面へと着地する。
「っ!!」
先ほどまで天道自身が居た位置には地面に穴を開けそこから飛び出してアッパーカットを決めていた荒い呼吸をするナルトの姿があった。 ダメージの許容量に限界を迎えつつ天道はふらつきながらも右手を構え語りかける。
「少々驚いたが仙術も切れ、どうやら最後のチャクラを使い果たしたか……諦めろ、この勝負……俺の勝ちだっ!」
天道は輪廻眼を見開き万象天引によってナルトを引き寄せる。
宙に身体が浮き天道に引き寄せられながらもナルトは腰のポーチに手を突っ込んだ。
「……チャクラがなくなってもなァ!!」
そう叫んだナルトは取り出したクナイを天道に向け引き寄せられながらも突きつけた。
しかし天道はその突きをナルトの手首を掴むことで防ぐ。
「今更クナイなどの──」
瞬間、ナルトを制したと思い込んだ天道の眼前に……クナイの尾に紐づいた起爆札がチラつく。
「ナニっ!?」
自爆ともとれる超至近距離での起爆札の爆発。
天道は咄嗟にナルトの手のを離し、距離を取るために跳躍するも起爆札の爆発に巻き込まれ態勢を崩しながら後方に吹き飛ぶ。
尻もちを付くような態勢で爆発の煙に目を向けた天道の視界には
──その爆炎の中、火傷を負いつつも自身へと迫りくるナルトの姿が目に映っていた。
爆発に怯むことなく更に踏み込んできたナルトは
──ガチンッ!!
強く歯を食いしばって
──ギィッ!!!
強く拳を握りしめその腕を振りかぶる。
「今の俺の拳にはっ!! 色んな奴のっ!!! 色んな想いがいっっっっぱいに詰まってっからっ!!!!
──痛ェぞぉッ!!!!!」
鈍く重い、重低音が短く轟き天道の顔面が鼻からゆっくりと潰れる。
どちらの骨の音か、ミシミシと軋む音が鳴り響く。
既に数秒経ったかのように感じられるほど、しかしナルトの拳は未だに天道の顔面を捉えて突き進む。
踏み込んだ地面に亀裂が広がり、その拳は直下に叩きつけられようとその軌道を地面へと向ける。
空気を押しのけ天道の後頭部が地面へと接触しさらにヒビを入れ始めゆっくりと陥没していく。
そして
「だぁらあああああああああっ!!!」
忍術でも、特別な体術でもない、チャクラを用いないその拳は
叫び声と共に大きく地面を割り揺らし、膨大な土煙を巻き上げた。
拳を放ったナルトがその勢いのままにその身を放り出されると、地面を数度跳ねてうつ伏せに倒れこむ。
「っ……へへ、どうだ……っ!」
疲れ果てたナルトの呟くその視線の先には……地面へと埋まり動きを完全に止めた天道がいた。
戦闘の決着はつき、そして──
~~~~~~
木ノ葉の里近くの山の上、そこに生える多数の木々の中1つの根元に仙人モードになったうずまきナルトは立つ。
ふいにその木に手を差し込めばその表皮は紙で出来ており、容易く裂かれ入り口が出来る。
中に踏み込んだナルトの視界には、暁の小南と……口から血を垂れ流し今にも死にそうなやせ細った赤髪の人物が映った。
小南がその人物・長門を庇う様に前に立つが
「……小南、下がれ」
「長門……っ」
長門が手出しをさせないように指示を出し、力のない視線をナルトへ向ける。
「平和が……ノコノコとやってきたな」
「アンタがペインの本体だな……」
長門の皮肉にナルトはその人物がペインの本体であることを確信する。
仙人モードによる感知によってこの場所を突き止めたナルト。 一度拘束された際に流れ込んできていたチャクラの元がどこから来ていたのか探り当てたナルトは目の前に立つ人物を認識すると、その眼つきを鋭くする。
そんなナルトの様子に長門が口を開く。
「俺が憎いか? 師の仇を目の前にし……復讐を成し遂げたいだろう?」
その言葉に合わせるように小南も口を開いた。
「長門を今ここで殺し復讐をしたところで忍界の世は何も変わらない……それはお前の自己満足で終わるだけだ」
「……」
そんな2人からの言葉に、ナルトは目に涙を浮かべ睨みつける。
「答えを持たないお前に出来ることなどない……お前の役目は──」
長門の言葉を遮るように、身の毛もよだつようなチャクラがその空間を埋める。
「っ……!?」
小南がその現象に驚きナルトに目を向けるとその眼は仙人モード特有の一の字に、九尾化による眼の変化が合わさり
十字となり小南と長門の動きを睨みだけで縛りつけた。
九尾の存在感を後ろに感じた二人が黙り込むとナルトはゆっくりと口を開く。
「お前とは……話をするつもりでここに来た。 途中で里の皆とも会ったけど、無理言って引き返してもらったのは……確かめたいことがあったからだ」
「確かめたい……ことだと?」
「自分の本当の気持ちを確かめたかった……師匠の仇を目の前にしたら、俺が……自分がどうなるのか知りたかった……」
「…………それで、どうだ?」
長門の問いにナルトは
「許せねぇ……!! 今にも殺したくて……震えが止まらねぇっ!!
──だけどエロ仙人は本当の意味で理解し合える時代が来るって……信じてるって言ったんだ」
感情を露わにしながらもその場を踏みしめ、言葉を続ける。
「その話をしてくれた時、俺は適当にしか聞いてなくて……俺にそのやり方を託すって言ってくれたのが……ただ弟子として認められたみたいで嬉しかっただけだった」
ナルトは歯ぎしりをして視線を落とす。
「……今になってやっと言ってた意味を理解してそんな簡単なことじゃねって分かった……っ」
「だが、俺を許せないことに変わりはないはずだ……キレイ事を並べたところで心の内が変わるほど人の愛は軽く、安くなどはない」
「ああ……確かにその通りだってばよ」
自来也という存在が大きければ大きいほど、ナルトはその言葉に背を押され同時にその仇に向ける感情も大きくなる。
「自来也先生の言っていたことは時代遅れの理想主義だ。 それには決して現実を変える力などない……お前は先ほど、俺を倒しこの世界を平和にすると言っていたはずだ。 それが自己満足の復讐であったとしてもそれが自身にとっての正義であるならそれでいいだろう……人は皆、その連鎖の中にいるのだからな」
長門の語りにナルトは仙人モードを解き耳を傾けていた。
「……そんな現実を正に痛感しているお前は……今更一体何を成すつもりだ?」
長門のその問いにナルトは
「アンタがエロ仙人の弟子だったとして……どうしてこうなっちまったのか……俺が戦ってきた今までの奴の中でも、アンタらがただ殺戮を楽しんでる訳じゃないの分かった。 だから、そうなっちまった理由の話を聞いて……それから俺の……俺なりの答えを出したい」
自身の要望を素直に伝え、真っ直ぐと長門の目を見つめた。
少し思案した長門は口を開く。
「いいだろう……俺たちの痛みを教えてやる」
「長門……っ!?」
「小南、俺はコイツの出す答えを知りたい。 話をさせてくれ」
制止する小南をなだめた長門は振り返るように話をし始めた。
──まず、かつて大国の戦場となった雨隠れの里で両親を失ったこと。 木ノ葉の忍びに殺された両親、その時感じた痛みは忘れることなく長門の中で響き続けていた。
そしてその後の出会い……両親を亡くし飢えた彼を助けた2人の人物、小南と弥彦。
戦争孤児の2人は日々を必死に生き抜いておりその最中、長門に手を差し伸べる優しさも持ち合わせていた。
だがキレイ事で生きていける程雨隠れは豊かではなく、恵みを分け与えれるのを待てば飢えが待っているのは必然であり彼ら3人は盗みを行った。
乱れた小国に、木ノ葉のような孤児院などの施設は皆無であり身寄りのない彼らの生きる手段は限られていた。
そんな中、弥彦は希望を持ち続けた。
『世界の天辺を取れば、世界を征服すればなにもが思いのまま』
……自身らを追いこむこの戦いを無くすことさえも。 神様になって世界を変える、弥彦の夢が長門の夢ともなった。
そして彼らは出会う。
かつての伝説の三忍と呼ばれる以前の……自来也に。
木ノ葉の忍びである自来也に師事し、力を得る。
そんな目的の最中、長門は自来也に木ノ葉の忍びというだけの枠に収まらない何かを感じていた。
そして3人が自来也の下で修行を始めた中で長門はとある恐怖を抱えていた。
自信に巣食う憎しみが己を暴走させる、そのことに。 しかし
『友達を守った……お前は正しい事をしたはずだ。 それが憎しみによるものでも……誰もお前を責められはしないのォ……』
自来也のその言葉が長門を救い、いつしか長門は自来也を認めていた。
“傷つけられれば憎しみを覚える”“人を傷つければ恨まれ罪悪感にも苛まれる”
そんな痛みを知るからこそ、人は他者に優しくなれ……成長することが出来る。
成長とは、痛みを知り、考え、どうするのか答えを導き出すこと──自来也もそのことを自身に言い聞かせ答えを探っていた。
その答えは、長門の輪廻眼に託されていると自来也は口を開いた。
『遥か昔の戦乱の中、始めてチャクラを真理を解き明かし世界を平和へと導こうとした僧侶が居た。 忍宗という教えを説き、この世の救世主とも呼ばれたその僧は六道仙人と呼ばれ長門、お前と同じ輪廻眼を持っていた』
“我、安寧秩序を成すもの” 六道仙人のその言葉と共に自来也は長門がそれを成すものだと信じ託し、彼らの前から去っていった。
そして弥彦をリーダーとして、3人は“暁”を立ち上げた。
極力武力に頼らない平和を構築しようとする3人の考えに賛同する者も多く、暁は勢力を増し……そして
──彼らに災いが迫り寄った。
岩・木ノ葉・砂……三大国の戦争を止めるために暁が平和交渉を持ちかけようと動き始めた時、雨隠れの長・半蔵が力を貸すと言い近寄ってきた。
そして弥彦が命を落とす。
力を増す暁に主権を取られることを恐れた半蔵は暁をハメて壊滅へと追いやったのだ。
そして
長門は自身が出した答えに絶望した。 ……世界はクソ以下であり、平和など……夢幻であると。
弥彦が死んだことで……長門が暁のリーダーとなった。
そして……
「平和ボケしたお前達火の国の民は……戦争に加担している事実に目を背け偽善の平和を口にする。 人は生きているだけで気づかぬうちに他人を傷つける。 人が存在することは憎しみと隣り合わせであり、この呪われた世界に本当の平和など存在しない、自来也先生の言っていたことは全て虚構でしかない……さあ……俺の話は以上だ、お前の答えを聞こう」
長門はナルトを見つめ問う。
ナルトは……懐から一冊の本を取り出し、見つめる。
「……アンタの言うことは……その通りだと思う。 アンタたちの話を聞いても、やっぱり憎いし許せねぇ気持ちはある」
「ならば──」
「でも、俺は師匠の言葉を……俺を信じてくれたエロ仙人の信じたことを信じてみる……それが俺の答えで……だから俺はお前たちを殺さねぇ」
そのナルトの言葉に長門がひりつく。
「今更自来也の言ったことなど何になる!? 平和などありはしないのだっ!! 俺たちが呪われた世界に生きている限り──」
「なら……俺がその呪いを解いてやる、平和ってのがあるなら俺がそれを掴みとってやる……俺は諦めねぇ」
長門の言葉を遮ったそのナルトの言葉に長門が呆然としその様子に小南が困惑する。
「そうだってばよ、今のは全部
「そんな……まさか」
「そして……この本の主人公の名前……それが
「!」
「俺の名前は師匠からの形見で、兄弟子であるかつてのアンタの信じた夢から貰ったもんだっ!! 俺は火影になる、そんでもって雨隠れだけじゃなくてこの忍界を平和にして見せるっ!! 確かに、この世界は呪われてて辛い事ばかりだっ!! だけど、エロ仙人が俺を信じてくれたように俺もこの世界が変われることを信じるっ!!」
「……っ!」
「そんでもって、諦めねぇっ!! どんだけ痛ェ思いしても……どんだけ辛いことがあっても、諦めねぇど根性で一歩ずつ前に進むっ!! んで、俺一人じゃ出来ないことがあんなら、皆の力を借りれば良いんだってばよっ!! 同じ思いを信じてくれる奴が、他の誰かを信じて……それの繰り返しだっ! 長門、アンタが言ってたみたいに尾獣兵器とか神だとか……力で、1人でどうにかしようとすんのはその連鎖の中の出来事だ、そっから外れるためにはちょっとずつでも世界を変えるしかねぇんだっ!!」
「……」
「
ひとしきり言い終えたナルトは息を整る。 途中から話を聞き入っていた長門は静かに目を伏せ口を開く。
「世界を変えるか……どれだけの時間がかかると思う? お前の考えに賛同する者だけでなく世界には、それを拒むものも居る」
「世界は俺たちの後もずっと続いてくんだ……エロ仙人が俺を信じてくれたように、俺も後の誰かを信じて託していくだけだってばよ。 木ノ葉だけじゃねぇ……色んな国で色んな奴らがそうやって平和になりますようにって託して、託されて、だから今の世界があるはずだ。 皆が認め合って信じあえる世界が理想だとして、それを目指すことが悪い事のはずがねぇんだ」
「……まるで昔の……俺みたいだな。 なるほど、俺は……何も信じられてなどいなかったという訳か」
「長門……」
自嘲気味に笑う長門に小南が寄り添う。
「……戦争を知らないお前らの世代は知らないだろう……意味の無いゴミのような死と永久に続く憎しみと言えない痛み……そんな戦争をナルト、お前は変えられるというのか?」
「俺一人じゃ無理だけど……皆が居てくれる。 火影になった奴が認められるわけじゃねぇんだ、皆を信じられる奴が火影になる……そんなことをイタチに言われてたっけな……今ならその言葉の意味が分かるってばよ」
ナルトの答えを聞いた長門は小さくため息をつき、そして
「理想論にすがっていたのは俺の方だったか……」
そう呟いた。
「出来るはずがないと決めつけ……力で全てが叶うと短絡的に思い込み……なるほど、俺の出した答えは……答えにすらなっていなかったのだな」
「……全部が全部間違ってるわけじゃないはずだってばよ。 アンタだって平和を目指してたんだからな」
「だが、俺は弥彦の死に折れ己を捨てた。 痛みに怯え、道を見失っていたのか……なるほどな。 しかしナルト、お前の言うその答えは困難極まる道だ……それは分かっているな?」
「ああ、だけど俺は簡単な道を1人で歩きたいわけじゃねぇ……困難な道を皆と歩きてぇんだ」
ナルトのその返事に長門は寄り添う小南の頭に手を置き、唇を噛みしめた。
「いいだろう……お前を……信じてみよう、うずまきナルト」
「長門……!」
長門のその返事にナルトが顔をほころばせる。
「……結局は俺はお前に戦いで破れ、この先長くも生きれまい……世界が平和へと向かうのであれば、信じてみるのも一興だろう」
「大丈夫だってばよ、木ノ葉じゃ誰死んでねぇし、俺たちが悪いこともあんのは分かったから無理にお前らに手を出すなんて奴──
「誰も死んでいないわけではないだろうのォ?」
ふとナルトの背後から誰かの声が聞こえた。 ナルトがその声に振り返り、長門と小南も目を向ける。
暗い髪で出来た木の幹の中、後光を背負い立つその人物は更に言葉を連ねる。
「イヤっ! 忘れて貰っては困るなぁっ!! 幾重の死線を潜り、エンマ大王の御前を抜け出し一度死して舞い戻ったこの大仙人、自──
「そう言う戯言は今は良いんで、シャンとしてくださいよ……
「……たくっお前は相変わらずノリが悪いのォ……
その漫才のようなやり取りをする声は、中の3人が聞き馴染んだものであった。
1人は師匠として、もう1人は敵と、暁の味方として。
その姿に驚き、言葉を失う長門と小南。 そしてナルトは震える手を持ち上げ指さす。
「ゆ……ゆうれい……かっ?」
振るえるナルトのその言葉に不服そうに、白髪の男性は悟に肩を貸された状態で顔をしかめる。
「だーれが幽霊じゃっ!! 仙人じゃ、せ・ん・に・んっ!!」
そんなテンションの高い様子に、ナルトの後方の長門と小南は
「馬鹿な……そんなまさか」
「先生……?」
口からそう言葉を漏らす。
「たくのォ!! かつての教え子に殺されかけるとは、ワシも衰えたもんだのォ!! だがこうして弟子たちが互いに意志を語り合い、話しに落ちが着いたのだ。 一度死んだのも儲けもんというもんだァっ!!」
豪快にそう言い切った伝説三忍が一人自来也に、彼を支える黙雷悟が不服そうに小さくそのわき腹を小突く。
「一度も死んでませんよ、貴方はッ!! 誰が必死で治したと思ってるんですかッ!?」
「お、おおすまんのォ……あまり怒るな……」
「俺の苦労も考えてモノ言ってくださいよ? ……たくっ」
しょんぼりした自来也がふと目線を上げると
直ぐ眼前にナルトが迫り、次の瞬間には抱き着いていた。
態勢を崩して尻もちを付く自来也が泣きわめくナルトに押される中、ひっそりと移動した悟が長門と小南の目の前まで移動していた。
「お前の仕業なのか? ……天音小鳥」
長門のその当然の疑問に悟は
「それは偽名ですよ、リーダー……俺の本当の名前は黙雷悟。 まあ、仕業と言えばその通りですけど」
かなり軽い態度で返事をした。
「貴方……でもいくら何でもあれ程の致命傷を負った先生を助ける方法なんて──」
小南のその疑問に悟は声を小さくして答える。
「自来也さんの寿命を前借して治したんですよ……そういう少し特殊な仙術を会得してるんでね。 まあ、相当な傷だったんで……
今の自来也さんの残りの寿命は持って2・3年が限度だと思いますけどね」
「「……っ」」
ナルトに聞こえないようにそう2人に伝えた悟はそのままナルトと自来也の元に行き2人を引きはがす。
「ナルト、自来也さんかなりの重傷だから負担かけんなよ?」
「ううううう……そういや……お前、悟だったんだなぁ……滅茶苦茶女っぽい声してるから分かり辛いってばよぉ……カツユに聞いてなかったr──」
涙を拭くナルトが懐に手を入れると悟は必死の形相でその手を掴み動きを止める。
「カツユ様は出さなくていいぞナルトっ??!! 声も聞こえてるだろうし、無理に出さなくていいぞっ!!」
(こ奴……相変わらずナメクジが苦手なのかのォ……難儀な奴だ)
焦った様子の悟を自来也が可愛そうなものを見る目で見ていると、そんな彼に引き起こされ自来也も長門と小南の前に立つ。
「先生……俺は」「先生……」
「あいや、何も言うな二人共。 お前たちの主張も、先のナルトのいったように間違いだという訳でもない。 ワシもこうして生きておる、全てが全部丸く収まるわけではないが新たな選択肢を取るのだ、あまり辛気臭い顔はするでないのォ」
殺しかけた相手に許されるという罪悪感に苛まれながらも2人はその苦痛に黙って耐える。
そして
「ナルトよ」
「っ……何だってばよエロ仙人」
「よくやった」
「……っ! ……へへ」
そんな短いやり取りに、しかしナルトは心底幸福な気持ちになる。 もうできないと思っていたそのやりとりを噛みしめつつナルトは再度涙を零して声を震わせていた。
その様子に自来也は悟の手を離れ、ふらつきながらもナルトの肩に手を置き慰めるように頭を豪快に撫でる。
悟がその様子を満足そうに、眼を細めて見ていると彼に小南が話しかけた。
「……私たちがいうのも、居所が悪いけど……ありがとう……天音、いや黙雷悟」
「どういたしまして……小南先輩」
「……貴方は私たちを殺す気はないのかしら?」
「俺が信じるナルトがそう決断したならそれに付き合うのも悪くないってことで……まあ、場合によってはそうしてたかもしれないけど。 只お節介なりに2人に忠告しますけど」
そういうと悟は再度声量を押さえて小南と長門に話かける。
「貴方たちの選択は、仮面の男、トビまたはうちはマダラを裏切るものとなるってことで彼にその命を狙われる可能性がある」
「貴様……そこまでの事情を知っていたとはな」
少し呆れた口調になった長門に悟は言葉を続ける。
「こうなった以上、俺のおすすめはその輪廻眼を破棄し──
「いいや、その輪廻眼は返してもらおうか」
悟のその言葉を遮るように聞こえたその言葉と共に風遁が悟と小南、長門を襲い態勢を崩す。
その瞬間、長門の苦悶の声が響いた。
悟や自来也、ナルトがその声に視線を合わせるとその先にはオレンジ色の仮面と暁の外套を羽織った人物が、
咄嗟に小南と悟がその人物にそれぞれ攻撃を繰り出すも紙手裏剣はその体を貫通しすり抜け、悟の消耗した状態の蹴りは普通に躱されその人物は飛びあがる。
「まさかと思って様子を見ていたが……まあいい、この眼さえ返してもらえば貴様らの命などどうでもいい」
その人物はそう告げそのまま空間の歪の中へと姿を消した。
一瞬の出来事の内、先ほどまでとは違い緊張感走った一同。 悟は眼窩から血を流す長門に掌仙術をかけつつ、未来の不安を案じるのであった。