目指すは忍ぶ忍者   作:pナッツ

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23:それぞれの戦い・思惑を越えて

 ……数日前

 

 

「これが()()か……」

 

 黒髪の青年・うちはサスケはその瞳を朱く光らせ目の前で八本足の牛のような存在へと変貌した存在を鋭く睨む。

 

「俺たちの……()()()()()の前では、何人たりとも敵わないと知れ」

 

 サスケの眼光が捉える巨大な図体のそれは高らかに叫び腕を振り上げる。

 

「ウィイイイイイイイッ!!! 八尾でちびれおチビ共ォ♪」

 

 その存在の強大さはサスケの後ろでそれぞれ構えている水月、香燐、重吾にも肌で感じるものであり、尾獣という存在のイレギュラーさ加減を体感させられる。

 

「さっきまでのおっさんの姿でも十分強かったのに、まだこんなんになるなんてあり?! ……マジでやばそう」

 

 水月のその弱気の呟きに、ふとサスケが無表情で振り向くと再度前方の八尾へと目を向け呟く。

 

「……ここからは俺一人でやる。 お前らはバックアップ……いや周囲に雲の忍びが居ないか監視を頼む」

 

「本気で言ってんのかサスケ!? うちたちのサポートもなしあんな化け物──」

 

「行けるのか?」

 

 無謀にも思えるサスケのその提案に戸惑う香燐だが、彼女の言葉を遮り重吾が短く問う。 目の前の敵は、重吾を持ってしても勝てる見込みが感じられないモノであった。 尚更、うちはイタチとの戦いを経て未だ間もないサスケの心配をするというもの……しかし

 

「フッ問題ない……さあ、ここからが俺の……うちはの本領だ……っ!」

 

 軽く笑いサスケはその朱き瞳を、更なる段階へと変化させた……

 

 

 

──万華鏡写輪眼っ!

 

 

 

~~~~~~

 

 

 

 そして現在、木ノ葉近辺のペイン・天道とナルトとの激闘の跡地にて小南と黙雷悟はその天道の身体の前で会話をしていた。

 

「先生とナルトを追って貴方は戻らなくてもいいのかしら……? それとも私たちをひっそりと殺すつもり?」

 

「今更そんなこと、する訳ないでしょ……小南先輩。 一応安全にここから離れられるように警戒してあげてるだけです」

 

 天道の身体を己の紙を操る術で回収作業している小南は背後に立つ悟に向け苦い表情を浮かべていた。

 

「……この後はどうするつもりなんですか?」

 

 ふと呟くようにそう聞く悟に小南は

 

「……雨隠れに戻るわ。 紛いなりにも、長門と私はあそこのトップだから……慕う者たちを裏切ることは出来ない」

 

 そう自身の心積もりを話す。

 

「律儀ですねぇ~……暁に居た時も思ってましたけど、お二方は他の忍びと違って一応義理堅いですよね。 まあ、それはそれとして……さっきのようにマダラに命を狙われる可能性は考えないんですか?」

 

「そうなったら、そうなったときよ。 長門が輪廻眼を失った以上その時は私が命を賭して戦うしかない」

 

「……」

 

「なに? 私が負けるとでも思っているのかしら?」

 

「さぁ? 私には何とも……まあ、輪廻眼がない以上マダラも無理には命を狙ってはこないでしょうしね」

 

 悟のその返事に、小南はふと悟の身体へと目線を向ける。

 

「……そういえば貴方に言っておきたいことがあったのよ」

 

 そして会話の内容を遮るように小南は悟に顔をずいっと近づける。 小南の整った顔がいきなり近づいてきたため悟が顔を赤らめながら体を引くと、小南はふと鼻で笑って

 

「……貴方が男で、本当に残念」

 

 そう言って悟の纏う衣服がボロボロになり素肌が露わになっている胸元に手をそっと触れる。 挙動不審気味になりながらも悟は小南へと問い返す。

 

「っと……言うと?」

 

「私暁に女性のメンバーが他に居ないこと、気にしてたのよ。 だから貴方が来た時内心では少し嬉しかったのだけれど……見事に裏切られたわ」

 

「あ~~……すみません」

 

 頭の後ろに手を回して気まずそうにする悟に小南は小さくため息をついて悟の口元を指で指し示す。

 

「あと気づいてなさそうだから教えるけど……今貴方、喋り方が女性になっているわよ」

 

「っ! マジか……」

 

 その小南の指摘に悟が自身の口を押さえる動きをする。

 

「フフフ、あまり本当の自分をぞんざいにしないことね」

 

 その様子を微笑ましく見ていた小南は不意に、自身が纏う暁の衣を脱ぎそれを悟へと羽織らせる。

 

「っちょっと……!?」

 

「良いから羽織っておきなさい…………私たちは弥彦の立ち上げた志を一度亡くした。 けれど、貴方はそれを理解し今も胸に秘めている……貴方こそ本当の暁のメンバーの1人よ。 この衣は貴方にこそふさわしい」

 

 そう言った小南は割とセクシーな装いの状態で、紙の翼でその場から弥彦の身体を包んだ紙の棺桶ごと舞い上がる。

 

 自身の顔にかかる風に手をかざしながら、その小南を見上げた悟は別れの言葉を口にする。

 

「それじゃあ、お元気で! また会えたらその時は──」

 

「お化粧の話でもしましょう、平和に……ね?」

 

 戦いのことではなく、ただ一人の人間として。 小南はそんなありふれた会話を出来る世の中を願いその場から飛び去っていった。

 

 1人瓦礫の山の上に立つ悟は渡された暁の衣に袖を通して、気を引き締める。

 

「よし……行くか、皆の所にっ!」

 

 そうして悟は木ノ葉に向けて歩みを向けるのであった。

 

 

 

 

 

 

 

「この外套……何かいい匂いがして落ち着かない…………」

 

 

 

 

 

~~~~~~

 

 

 里近くの岩場の避難所に悟が向かうとそこは歓声で包まれていた。

 

 その様子を遠巻きで眺める悟は目に映る光景に目を細める。

 

 英雄と呼ばれ胴上げされるナルト、仲間だけでなくその他の人からも受け入れられたその様子に悟は自然と頬を緩めていた。

 

 木々の間にいる悟にふと近づく者が居た。 悟もその存在には気がついており、もはや隠れる気もないとその人物に目を向ける。

 

「ネジか……さっきは庇ってくれてどうも」

 

「容易い事だ……お前もあそこに行かなくていいのか?」

 

 わざわざ白眼を使ってまで自身を探しに来たネジに悟は口調が女性にならないように気をつけながら言葉を選ぶ。

 

「あ~俺は目立つの好きじゃないからなぁ……」

 

「だろうな、だが今のお前なら白眼で容易に見つけられる」

 

「む? 本気になればいくらでも隠れられるぞ?!」

 

「……妙なところで張り合うな、ガキかお前は」

 

「まだ16そこらのガキだよ…………あっ割とそうでもなかったな

 

「ん?」

 

「いやなんでもない……取りあえず俺には()()()は場違いだ。 俺は裏切り者の面も持ち合わせているからな、しばらくは身体を休めるさ」

 

「面……か。 お前はいい加減、面を被ることにこだわるのもやめ──」

 

 ふとネジが悟の様子に気を向けると、悟はしゃがんだ状態で木の幹に体を預け寝息を立てていた。

 

「……流石の『翠色(すいしょく)の雷光』殿もお疲れか……しょうがない、運んでやるとするか」

 

 かつて死闘を繰り広げた友、その心底疲れた様子に元来世話焼きなネジは小さくため息をつきながらその背に悟を乗せるのであった。

 

 

~~~~~~

 

 

 そしてそれから2つの夜を越えた日。 ふと黙雷悟はテントの中で目を覚ました。

 

 あまりにも長い睡眠を取っていた自覚もあり、何か予期せぬことでも起きていないかと慌てて周囲を見渡す悟。

 

 広めのテントの中にはボロボロになってはいるが機能に問題の無いタンスなどの家具が持ち運ばれており、ちょっとした大部屋の様になっていた。

 

 テントの外では多くの人の駆ける気配があり、自身の装いが一般人とそん色ないものになっていることに気がついた悟はふと背後に立つ気配に目を向けることなく小声で語りかける。

 

「……今、どうなってますか?」

 

「──」

 

 その背後の忍びは悟に軽く耳打ちをするとその場からフッといなくなり直ぐに気配が探れなくなる。

 

 忍びから情報を聞いた悟は腕を回したりして自身の身体の調子を確認する。

 

(……どれだけ寝てたかはわからないけど、随分と体力が回復しているな……ナルトの螺旋手裏剣を受けた毒みたいなダメージも回復し切ってるいるし何より()()()も雨隠れでの戦いで捨て去ったから、自然治癒も早い……そして)

 

 悟がテントの暖簾のような出入り口に目を向けると桃色の髪をした女性が手荷物を持ってテントの中に入ってくる。

 

 その人物は起きている様子の悟に目を向けると驚きの声をあげそうになりながらも、何とか声を抑え悟に近づく。

 

「アンタ、やっと起きたわね……心配したわよ」

 

「ああ、妙に怪我の治りが早いと思ったらサクラが治療してくれてたのか……納得」

 

 呆れた様子の春野サクラに悟は緊張感を感じさせない笑顔でそう語りかける。

 

「納得って……アンタの自然治癒力がナルト以上に凄いから私はあまり手を出してないわよ……ホントナルトと言いアンタたちは医療忍者いらずねぇ」

 

「そうでもないさ、掌仙術をかけてくれるだけで色々段違いって奴で……って」

 

 ふと悟はサクラの瞳に涙が溜まっていることに気づきワタワタと慌てふためく。

 

「ど、どうした? 何かあったのか?」

 

「……いや……こうして悟と何気なく話をしていると何となく昔を思い出して……サスケ君ともこうなったらって思ったらつい……」

 

 涙を拭うサクラに悟が気まずそうな表情で顔を逸らすと

 

「……痛いっ!?!?!」

 

 その頭頂に拳骨が炸裂した。

 

 混乱しながら頭を押さえる悟にサクラは拳骨をした手でそのまま掌仙術をかける。

 

「色々私たちを騙してた分のお返しよっ! 全く……」

 

「っ……ゴメンナサイ」

 

 涙目になった悟は反省するかのように布団の上で座った態勢で大人しくサクラからの診察を受けるのであった。

 

 

~~~~~

 

 

 サクラがテントを出ていく様子を見ながら悟は今後の方針に頭を悩ませる。

 

「それじゃあ、他の皆の前にも顔出しなさいよ!」

 

 そう言って忙しそうにテントから出ていったサクラから教えられた情報と、忍びから提供された情報を整理すると……

 

・五代目火影・綱手が行動不能になっていることと、その代理又は次の火影はまだ決まっていないこと

 

・うちはサスケが八尾の人柱力、キラー・ビーを襲撃した件での使者はまだ木ノ葉に来ていないこと

 

・天音小鳥=黙雷悟であることは伏せられているが、その噂は次第に広がりを見せていること

 

 が分かっている。

 

 そして自分が黙雷悟であることは隠されてここのテントで治療を受けていたこと。 

 

 それらの事実を元に悟は身体を起こして置かれている忍び用のサンダルを履き、テントの外へと繰り出した。

 

 太陽はそれなりに高く、正午前だと思われる。

 

 そんな空を一瞥した悟は一般人の気配に潜り溶け込みながら移動をし始めた。

 

 

 

 まず悟は何げなく周囲の一般人から情勢を聞き出す。

 

 曰く、今回の里の襲撃は大国としての罪を受けたことだと理解している人物は少なからずいること。

 

 カツユが長門の話をそのまま、里の人間に伝えていたことで暁・長門らにも正義があったことが認識されている。

 

 そして黙雷悟は、英雄でもあり……裏切者でもあった。

 

 人々を逃がすために神羅天征に立ち向かったこと、伝説の三忍自来也を救ったこと、そして暁としての行動。

 

 それらが人により知っていたり知らなかったりで人々からの評価は定まりを見せてはいなかった。

 

 そして悟が木ノ葉の里の大門まで足を運ぶとそこはまさに復興作業でせわしなくごった返していた。

 

「……うへぇ」

 

 人ごみをあまり好まない悟がその様子に、ある種の申し訳なさを感じているとふとそこでへたり込んでいる1人の忍びの存在に気がつく。

 

 整った大量の木材の前でへたり込んでいたのは新第七班隊長のヤマトであった。

 

 そんなヤマトに悟は何げなく声をかける。

 

「あの~大丈夫ですか?」

 

「……お構いなく」

 

 悟の言葉に顔を挙げる余裕もないヤマトは明らかに弱った様子で地面を涙で濡らしていた。

 

(こういう状況で木遁使いだから……相当酷使されてるんだろう……南無)

 

 ヤマトの背後には木材置き場が広がっており、そこから大工の人々が木材を運び出している様子が確認出来る。

 

 ただその木材置き場として切り開かれた場所の規模は相当大きく、そして木材もみるみるうちに消費されていく。

 

 そのペースに流石の悟も、その木材を生成しているヤマトを気の毒に思い

 

「ちょっと失礼」

 

 そう言ってヤマトを指の動作だけで堕とす軽い幻術に掛けて林の中に隠れさせると、悟は誰にも見られていないことを確認してヤマトへと変化する。

 

(……軽い幻術にかかるほど疲労困憊とは……あまり直接話したことはないけど手伝ってあげよう)

 

 ヤマトに変化した悟に1人の大工が声をかける。

 

「木の忍びさん、木材足りなさそうだけど……まだ大丈夫?」

 

「ああ、大丈夫だよ……って」

 

「……? 何、俺の顔に何かついてる?」

 

「いや、何でもない。 それじゃあじゃんじゃんやっていこうか、イナリ」

 

「あれ……アンタ、そんなテンションだったっけ……あと俺の名前教えたっけ?」

 

「細かいことは気にしない!」

 

 そうして悟は自身が扱える木遁で、木材置き場に果てしない量の木材を積み上げていった。

 

 明らかにペースが尋常ではないそのヤマトの活躍っぷりに大工の人々も歓声をあげて喜ぶ。

 

「良いぞ兄ちゃん!!」

 

「すげぇーぜっ! これなら木ノ葉の復興もあっというまだなっ!!」

 

 そうして木材の置き場がなくなるほどの状況になると悟は休憩する振りをしてその場から姿を消した。

 

 

 

~~~~~~

 

 

 里の中に入ってみればそこの光景はまるで悟がサトリとして作った集落を思わせるほど簡素な家々が並んでいた。

 

 神羅天征で抉れた地面は土遁で戻されたのか平地にはなっていたが、里の外壁の内側には未だに多くの瓦礫が積みあがっており里として元に戻るまでにはまだまだ時間が要することは必然であった。

 

 そんな光景に悟が目を奪われていると、ふと背後から肩を組まれる。

 

「テンテンか」

 

「ちょっと……本気で気配消してたのに気づかないでよぉ」

 

「まだまだだね。 何、暇なの?」

 

「酷くない? 幼馴染が目を覚ましたってサクラから聞いたからこうして見に来てあげたのにぃっ!」

 

「なら、もう少し普通に顔を出してくれよ……」

 

 呆れるジェスチャーをする悟に、肩を組んでいたテンテンは彼の横にたち互いに前へと足を進める。

 

 何気なく並んで歩く二人は復興真っ只中の木ノ葉の中を歩く。

 

「マリエさん達は里の中にいるのか?」

 

 ふと悟がそう聞くとテンテンは

 

「そうね、孤児院に居た子たちと一緒にあの……ヤマト隊長って人が木遁で家を建てて場所を提供したみたいでそこにいるわよ」

 

 と素直に答えて会話が進む。

 

「顔出しに行かないとな……」

 

「何めんどくさそうに言ってんのよっ! 案内してあげるからサッサと行くわよ」

 

「……どの面下げていくか……」

 

 気まずそうにする悟にテンテンは彼の手を引き歩みを速める。

 

「あと言っておくけど、任務で里外に出てた白も帰ってきてるから」

 

「…………やっぱやめ──」

 

「問答無用っ!」

 

 テンテンは八門遁甲を発揮して悟の手を引き彼の身体が浮かび上がるほどの速さでその場から駆けて行った。

 

 情けない悟の悲鳴が小さく木霊した。

 

 

~~~~~~

 

 

 施設「蒼い鳥」のあった区画にはまとまった家屋が立っておりその付近に来た悟はお腹を刺激するような匂いに気がつく。

 

「……炊き出しやってるのか」

 

「まあ、こんな状況だしね。 食材とか管理するにはそれが良いだろうって」

 

 悟の言葉にテンテンが答えると悟はその炊き出しの現場に目を向ける。

 

 そこには……

 

「オラぁ! そこ列を乱すなっ!!! 食材は全員分ある、落ち着いて並べェっ!!」

 

「大丈夫ですよ、皆さんの分はありますので落ち着いて下さい」

 

 簡易的な小屋の前で長蛇の列に弁当を配っている再不斬と白の姿があった。

 

 思わず隠遁で気配を消す悟にテンテンが顔を引きつらせる。

 

「気配消すのウマ……ってそんなに会いたくないの?」

 

「……湯の国でアイツが強いのは確認してるからな……何をされるか、何を言われるのか心底怖い」

 

 顔を青ざめたままススーッと横スライドしながら家屋の影に入り込もうとする悟をテンテンは腕をひっぱり引き戻す。

 

「ほら、少なくとも2日はアンタ食事してないでしょ? 一緒に並びましょう♪」

 

「……ああ~~~~」

 

 目立つために派手な抵抗が出来ないと、悟は嘆きの声を上げながらテンテンに引きずられる態勢でその長蛇の列に並ぶこととなった。

 

 ふと堪忍したように顔を引きつらせた悟とテンテンに声をかける人物が現れる。

 

「随分と楽しそうだな、悟」

 

「……そう見えるなら、お前の眼は濁り切ってるよ……」

 

「あらネジ、アンタも並びに来たの?」

 

 少し面白い物でも見るような表情で話しかけてきたネジに悟は恨めしそうな顔で返事をする。

 

「いや、俺は日向の集まりがある……ヒアシ様と父様が里に戻って来たそうだから顔を出そうと思ってな」

 

 そうテンテンの言葉に返事をしたネジは袋に入った物体を悟に見せつけるように取り出す。

 

「……」

 

「まさかこんな日が来るとはな……悟、お前には何と感謝を述べればいいのか……」

 

 そんなネジの言葉に悟は手で払いのけるような仕草をした。

 

「あのネジに、改まった態度取られるのは君が悪いな……()()が必要だったから取りに行っただけだし、本当ならもっと早く戻ってたもんだ。 俺に感謝とかはいらないからサッサと行け」

 

「……フン、ならそうさせてもらおうか。 じゃあな……それとテンテン、ガイも里外から戻っている。 あとで一度集まるぞ」

 

「はいはーい」

 

 その場から離れていくネジに悟は手を振りながらその背を見送った。

 

 そして

 

「次の方どうぞー」

 

 そのまましばらく列を並び、白の綺麗な声が悟とテンテンへとかけられる。

 

 白がテンテンに気がつくとその整った美形の顔に笑顔が浮かぶ。

 

「テンテンっ! 良かった、こうしてアナタの顔が見れて安心しました」

 

「白雪は里外に居たから、戻って来て困惑してるでしょ? 落ち着いたら色々話してあげるわ」

 

「一応、大まかなことは鬼さんに聞いたんですけど……それじゃあ後で」

 

 列が並んでいることもあり手早く会話を済ませ白から弁当を受け取ったテンテンはその隣の再不斬がよそった味噌汁を受け取りその場から離れる。

 

 テンテンと会話をして嬉しそうに笑顔を浮かべていた白の前に、悟が立つ。

 

(大丈夫だ、バレるわけない……天音小鳥として活動してた時に俺の顔を見られてはいないし、白もまだ事情をあまり把握して無さそうだからバレるわけ)

 

 悟が極めて普通な一般人を装い白の前に立つと白はその笑顔のまま悟に弁当を手渡す。

 

「はい、どうぞ!」

 

「ありがとうございます」

 

 そんなやり取りをして悟は隣の再不斬からお椀を受け取る。

 

(良かった……バレてない……)

 

 いたって普通のやり取りに悟が内心安堵してその場から離れようとしたとき

 

 

 

 

 

「逃げないでくださいね」

 

 

 

 

 ボソッと背後からそう声が聞こえた。

 

 背後へ振り向くことが出来ない悟はそくささとその場から離れてテンテンが座っている瓦礫の傍まで来ると

 

「っ~~~~~!」

 

 弁当とみそ汁を水平に持ったまま顔だけを項垂れるようにして頭を垂らし声にならない声をだす。

 

 その様子にケラケラと笑い転げるテンテンに悟は睨みつけながら炊き出しを平らげるのであった。

 

 

 

~~~~~

 

 

 食事を終えた悟とテンテン。

 

「じゃあ、私リーと合流してガイ先生の所に行くから……じゃあぁねぇ♪」

 

 ニタニタとした笑顔を浮かべたテンテンが、ねっとりとしたイントネーションで別れを告げると悟は1人その場に項垂れる。

 

「…………マジでか」

 

 酷く現実を受け止められない悟は遠巻きに炊き出しの様子を見るために立ち上がり家屋の壁の影に立つ。

 

 炊き出しも終わりに近づいているのか、先ほどまで並んでいた長蛇の列も終息の様子を見せていた。

 

 そんな中、白の表情に目を向ければ

 

「うわぁ……めっちゃ作り笑顔……」

 

 悟はそんな小言を呟く。

 

 ……明らかに目が笑っていない。

 

 自身の今後を憂う悟が炊き出しの列の最後の人が再不斬からみそ汁を受け取ったのを確認すると、その場から逃げ出そうと足を一歩踏みだす。

 

 瞬間

 

──パシッ

 

 悟の眼前に千本が迫り悟はそれを手で掴み受け止める。

 

 目にも留まらない動きで白が炊き出しの撤収作業をしながら投擲したそれは悟から逃げ出す気を奪うのには充分であった。

 

「……はぁ」

 

 小さくため息をついた悟は周囲から人の気配が少なくなるのを待ってから白の元へと行くことにした。

 

 

 

~~~~~~

 

 

 

 孤児院にいた人間が仮に住まうその家屋の並びで、炊き出しを終えた再不斬と白、そしてその手伝いをしていた孤児たちは共に歩いていた、

 

 自身らの遅めの昼食を取るためにそれぞれが弁当片手に散らばっていき、残された白と再不斬。

 

「もういいぞ」

 

 そういう再不斬の声に反応するように、悟がひょこっと顔を出す。

 

 呆れたような表情を浮かべる再不斬がふと隣の白の顔に目を向けると

 

「……」

 

 再不斬でも戦慄するほどの覇気を内に秘めた笑顔の表情で白は悟へと目線を向ける。

 

 そして悟に目を向ければ明らかに怯えた様子になっており少し不憫に思う。

 

 しかし

 

(まあ、自業自得だしな)

 

 そう思った再不斬は

 

「それじゃあ俺は先行くぜ」

 

 そくささとその場から姿を消した。

 

 距離を離して向かい合う白と悟。 白は

 

「……」

 

 無言のまま笑顔の表情を張り付けた顔の動きだけでついてくるように促すと、瞬身の術でその場から姿を消した。

 

「……っ」

 

 そんな白に逆らうことも出来ない悟は涙目になりながらも同じくその場から離れるのであった。

 

 

 

 

 そして瓦礫に囲われ人目がない場所まで移動した白と悟。

 

 背を向ける白に、着地した悟が小声で声をかける。

 

「あの~え~と~その~……何といいます………………怒ってる?」

 

 おずおずとした悟の問いかけに白が振り返る満面の笑みで

 

「ハイ♪」

 

 と答えた。

 

「ですよねぇ……ハハハ」

 

「逆に、貴方は自分がしでかしたことを振り返り僕が怒らないとでも思いましたか? 思い……ましたか?」

 

 笑顔のまま尋問するように語る白の威勢に、悟は自然とその場に正座になり

 

「思いません……本当に申し訳ないです……はい」

 

 そう呟くことしかできなかった。

 

 そしてついに笑顔が崩れ呆れた表情になった白は一際大きなため息をつく。 そんな白の様子に悟がビクついていると

 

「全く……っ本当に……っ! 貴方という人は……っ!!」

 

 語気の強まる白に一発重いのが来ると思った悟が覚悟を決め目を瞑る。

 

 そして

 

 

 柔らかな抱擁が悟を包んだ。

 

 

「へっ……?!」

 

 

 マヌケな声をあげる悟。 そしてそんな彼を抱擁する白は優しい口調で

 

「本当に……お疲れ様です、大変だったでしょう?」

 

 そう悟へと語りかける。

 

「えっと……その……」

 

 しどろもどろになっている悟に白は更に声をかける。

 

「……貴方が何を思って里を離れていたかは存じませんが……それが皆を思っての事だってことぐらい僕にはわかります。 湯の国での戦いも、天音小鳥が貴方……君であったなら納得のいくことばかりだ……」

 

「……」

 

「きっと君は、いや絶対にマリエさんやハナビの前で弱音を吐かない。 誰の前でもそうでしょう、だから……」

 

「……」

 

「少しだけ……ほんの少しだけでいいので、ここで足を止めてください」

 

「……っ」

 

 静かに、抱擁した悟の背をさする白。

 

 そんな白の腕の中で悟は……

 

 

 

 小さな水滴を地面へと一粒落とした。

 

 

 

~~~~~~~

 

 

 しばらくして家屋の並ぶ区画に戻った悟と白。

 

「しかし、そんなに僕たちが信用できなかったんですか? 色々と情報を残す手段はあったのでしょうに」

 

「いや、皆を信用してたからこそ何も残さないことにしたんだ。 敵を欺くにはまずっ……て奴だな」

 

 何気なく会話をする2人は一つの家屋の前で足を止める。

 

「ここです。 ここにマリエさんが居ます、ちゃんと話をしてあげてくださいね」

 

 そう言って白はその場から歩いて離れようとする。

 

 そんな離れ行く白の背中に

 

「白雪っ! 結婚おめでとう」

 

 悟はそう声をかけて手を振る。

 

「……ありがとうございます」

 

 照れたような表情を浮かべた白は、指輪を着けている手で手を振り返すとその場から立ち去っていった。

 

「さてと……」

 

 ひと段落ついたと悟は正面の玄関に目を向ける。

 

 場所も、建物も、風景も違う。

 

 しかし

 

「ただいま」

 

 悟はそういってその玄関の戸を引くのであった。

 

 

 

 

 

~~~~~~

 

 

 

 

 

 どこかの洞窟を利用したアジトの中。

 

 簡素なベッドに身を預けるうちはサスケはふと部屋の隅に目を向ける。

 

「何のようだ」

 

 簡潔なその言葉に、何もない空間にいつの間にか立っていた仮面の男・トビがサスケに声をかける。

 

「尾獣狩りの件だ、しくじったなサスケ」

 

「……何のことだ」

 

 トビの言葉に疑問符を浮かべたサスケにトビはやれやれと仕草をして話を始める。

 

「……アレは変わり身だった……お前らは八尾に一杯食わされたのさ、正直……がっかりしたぞ」

 

「……」

 

「まあ、そのことはまあいい。 どちらにせよ、今後の動きはまだこちらの指示に従ってもらうぞ。 暁に入った以上裏切りは許さない……分かっているな?」

 

「いいだろう……どうなろうと俺は……

 

 

 

──木ノ葉に復讐さえできればそれで問題がないからな」

 

「その木ノ葉だが、ペイン六道の手によって壊滅した」

 

「……何?」

 

 トビのもたらした情報にサスケは身体を起こして反応を示す。

 

「まあ、里自体が吹き飛んだが人は未だに健在だ。 お前の復讐がからぶることもないだろう」

 

「里が吹き飛んだのに、死人が出ていないとでも言うのか?」

 

「……天音小鳥を知っているか?」

 

「ああ、一度会ったことがある。 小うるさい奴だ」

 

「奴が裏切った……そしてペインをうずまきナルトと共に妨害し……そのペインすら暁を裏切った」

 

「フン……随分と面白い事だな、お前も余裕がなくなって来たか?」

 

「……別に俺の計画に支障はない。 裏切者たちにはその内手を下すつもりだが、それは今じゃあない。 近いうちに八尾を失ったと気づき思いこむ雲が動きを見せるだろう……そうなった時サスケ。 お前にはある役割を担ってもらう」

 

「……いいだろう……話はそれだけか?」

 

 サスケの了承を得るとトビはそのまま空間を歪ませその場から消え去る。

 

 一人残されたサスケは再度ベッドに仰向けになり目を瞑る。

 

(……復讐か……俺の成そうとすることに必ず奴らは立ちはだかるだろう……大きな障害になるのは……1人はナルト……そして……)

 

 小さく息を吐いたサスケは態勢を横にする。

 

「……」

 

『おまえは……もう俺を……許さなくても、良い……だがお前がこの先どうなろう……と、俺はお前をずっと……愛している』

 

「兄さん……」

 

 兄の言葉を想起してサスケは一筋の涙を頬を伝わらせ、意識を閉じた。

 

 

~~~~~~

 

 

 夜、木ノ葉の里の顔岩がそびえる崖の上に黙雷悟は立つ。

 

 月に照らされながら誰かを待つように立っていた悟はふと現れた気配に目線を向ける。

 

「おお、やっと来たか」

 

 そういう悟にその人物・日向ハナビは少し乱れた息を整えつつ近づく。

 

「どうしてこんな場所に呼び出したんですか、悟さん」

 

「ほら、俺が何をしていたか話す約束だっただろ? それをちゃんと話しておこうかと思ってな」

 

「そうですか……」

 

 そういってハナビは悟に向かって突然柔拳を構えた。

 

「……どうした、ハナビ?」

 

 少し困惑した表情を浮かべる悟にハナビは白眼を使い睨む。

 

「……貴方は誰ですか?」

 

 そのハナビの問いかけに黙雷悟は、笑みを浮かべる。

 

「俺は黙雷悟だ、良く知ってるだろ?」

 

 そういって手を広げるジェスチャーをする悟にハナビは警戒して構えを解かない。

 

「……」

 

「なるほど……」

 

 納得の言ったというふうに、広げた手を戻した悟は不敵な笑みを浮かべ口を開く。

 

「フフフ、それじゃあ……どこから話そうか?」

 

 

 

 

 

──2人を照らす月は雲に隠れ、その姿を影に落として曖昧にした

 

 

 

 

 

 

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