目指すは忍ぶ忍者   作:pナッツ

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連続投稿はここまで。

次回更新は遅れる予定です。


27:問4・空駆ける忍びが出会った者たちとは?

 悟は大蛇丸の北アジト周辺に張られた結界忍術の存在に気がつくも、それがあまり警戒網としての意味を成していないことに気がつき結界内へと踏み込む。

 

 大胆な行動をしつつも、装着している鉄輪の効果と類まれなるセンスによる隠遁術が合わさりよほどの実力者でもない限り悟の存在を知覚することが難しい状態のため悟は容易にアジトとなっている岩山の中に建てられた高層の建物の前まで歩みを進めることが出来た。

 

 岩肌に身を潜めアジトの様子を伺う悟は奇妙なことに気がつく。

 

 建物前方の開けた場所に様々な物資がアジトから運び出されて積まれている光景を目にしたのだ。

 

(何でわざわざこんなことを……?)

 

 疑問に思いながらも悟はそれぞれに積まれた物資の隙間に隠れつつ低い姿勢でアジトへと近づく。

 

(やったことないけど、ステルスアクションのゲームってこんな感じなのかな……まあ私は感知能力ずば抜けてるから所謂チートで並の敵の動きなら筒抜けのヌルゲーになってるんだけど)

 

 悟はまばらに感じる人の気配に気を付けながら外に設置されている仮設テントの傍まで来るとその中には気配が1つしかないことを確認して中を確認する。

 

 テントの裏側から地べたすれすれで覗き込むと中では女性が1人着替えを行っている最中だった。

 

(ッ……ああ、私って最低だ……)

 

 自己嫌悪と誰に届くこともない謝罪を念入りにした悟は意を決したようにテントの布地を尾異夢・叉辺流で素早く切りつけ中へと手際よく潜入し、女性を背後から拘束する。

 

「っむぐ──!?!?」

 

 叫ぼうとする下着姿の女性に悟は己の手を口に当てることで黙らせ耳元で囁く。

 

「手荒なことはしないので色々と情報を教えてもらいます、静かにしてください」

 

 と言ってもそんな口だけの保証は何の意味もないため、女性は問答無用で暴れようとする。

 

 その女性は戦闘員ではないのかその力は非力なもので、それがより一層悟の罪悪感を持たさせていた。

 

「はぁ……手段は選んでいられないか……ッ」

 

 小さくため息をついた悟はその女性を無理やり振り向かせると、写輪眼を見せることで幻術に墜としこみ彼女の持っている情報を吐かせる。

 

 曰く、うちはサスケという大蛇丸の器となる存在が彼の手元に来たことで呪印研究の最前線に立っていた北アジトはほぼ完全な放置状態となり、ここで働いていた人材は日々暴れ檻を破ろうとする実験体たちに恐怖しながら過ごしていると言う。

 

 大蛇丸からの命令が届かなくなっているだけで、実験体たちを放置して餓死させるわけにも行かないため万が一檻が破られ反乱がおきた時に備え物資を建物内から持ち出していたそうであった。

 

「そりゃ呪印を使いこなしているサスケの身体が手に入るんだから、ここも用済みなんだろうな……それを想定してきたから私にとっては良い事なんだけど、不憫だなぁ」

 

 1人そう呟いた悟は女性を昏倒させ横にすると手足を縄で拘束すると手近にあった布をかぶせてその体を隠し、変化の術でその女性に化ける。

 

(……ここの研究員か……白衣を借りていこう)

 

 着替えていた最中の女性の上着である白衣を失敬すると、悟は堂々とテントの出入り口から外に出て散策に出る。

 

 途中すれ違う人間もやつれた様子が見られ、軽く笑顔で挨拶する悟に対して生返事しかする気力が残っていない様子の者ばかりであった。

 

(……まあ、研究の必要が無い実験場に必要以上に人員は残さないでしょうから……ここの人たちの苦労も共感できるかもね)

 

 悟は感知能力とここの職員である変化した女性の立場を利用し、外に出ていた人員を全て各個撃破で気絶させていき一か所のテントへと拘束して纏める。

 

 あまりのあっけなさに手をパンパンと払った悟は

 

(写輪眼と感知能力っていうチートがあるからだけど、容易に制圧できてしまった……)

 

 気絶させ並べた職員らに通じるはずもない謝罪の会釈をしてテントから離れ、変化を解く。

 

 そしてついに建物の内部へと踏み込むのであった。

 

 

 

~~~~~~

 

 

「悟さん……」

 

 ここまでの話を聞きハナビは複雑な気持ちを抱く。

 

「下着姿の女性を拘束するなんて何て破廉恥なことを……っ!!」

 

「そこかい? 本当にそこなのかい? 君が憤るところは……」

 

 ハナビの言葉に突っ込みを入れる黙だが、ハナビは

 

「ただ話の通りでは、罪悪感は感じているんですよね? 私も昔は不審者と罵ってしまってましたが変に欲情していなくて一安心ですね」

 

 1人で勝手に安心して胸を撫で下ろしていた。

 

 そんなハナビに対して黙はそう言えばという風に思い出したことを口にする。

 

「……変化した女性は雷の好きな、黒髪ロングの所謂出るとこ出ている女性だったみたいだったから本当の彼の内心は──」

 

「そんなことよりも、何故悟さんはそこを修行場所に選んだんですか?」

 

「……本当は──」

 

「そんなことよりも、何故悟さんはそこを修行場所に選んだんですか?」

 

「ほ──」

 

「そ・ん・な・ことよりも、何故悟さんはそこを修行場所に選んだんですか?」

 

「…………悪かったよ、ちょっとしたおふざけさ。 許してくれ」

 

 一連のやり取りで迫真の表情になっているハナビに黙は参ったと両手を挙げてハナビからの質問に大人しく答える。

 

「当時この身体はまだ、千手柱間の力を使いこなせていなかったんだ。 だからこそ彼は今後の為にうちはだけでなく千手の力も扱えるように成ろうと自然エネルギーを利用している呪印の源と言える人物と戦おうと考えたんだ。 それがそのアジトに居た天秤の重吾と呼ばれた男だ」

 

「千手の力……」

 

「鉄輪によってチャクラを抑えているため、外部から取り込める自然エネルギーに集中するのにも適した状況だったしね。 ただそんな力を抑制した状態で、アレと戦ったのは無茶極まりないとしか言えないんだけど……」

 

 呆れたようにため息をついて黙は、話の続きを話し始めた。

 

 

~~~~~~

 

 

「ここから出せーーーっ!!!」

 

「てめぇ何もんだァ!!??」

 

「女のガキか? 俺が抱いてやってもいいぜェ!! ひゃははははははっ!!!」

 

 悟が建物内に入ると、実験体たちが彼を見つけ思い思いに叫び倒す。

 

(うるさ……)

 

 内心めんどくささを感じつつも悟は仕方ないっといった様子で1つの檻に近づいて実験体たちに声をかけた。

 

「あーどうも、サトリって言うもんなんだけど天秤の重吾が何処にいるか知ってるっ?」

 

 その言葉に檻の中の実験体の1人が中指を立てて悟に唾を吐きつける。

 

「ガキがぁ観光目当てで来てんじゃねぇぞっ……殺されてぇのかっ!!!」

 

 その様子を見ていた他の実験体たちがゲラゲラと笑い、悟はそのまま硬直してその場に佇む。

 

 ビビったのかとか、調子に乗んなとか……小汚い罵倒に晒された悟は小さく

 

「……ふーっ」

 

 とため息をつき

 

──ガンっ!!!!

 

 牢を形成していた柵を蹴り飛ばして外し、中の実験体たちをその柵ごと壁際へと押し付けた。

 

 一瞬かつ余りの音の大きさに建物内に静けさが訪れると悟は土遁でその柵を更に強烈に押し付け実験体たちを押しつぶそうとする。

 

「重吾はどこだ?」

 

 感情の起伏も感じられない二度目の悟の言葉にその光景を見ていた実験体たちが息を呑む。

 

 鉄輪による制限が在れど、既に悟はここに居る実験体たちを余裕でなぎ倒せる実力は持っていたのだ。

 

 ミシミシと壁に何かがめり込む音を響かせ、悟が更に力を込めようとしたその瞬間

 

 

 

「重吾なら最上階だっ!!」

 

 

 

 悟の後方の檻から重吾の場所を伝えれられたことで、土遁は解除され潰されそうになっていた者たちは地面へと這いつくばって安堵する。

 

「……」

 

 無言で圧を振りまく悟は、柵を土遁で無理やり固定し直すと声を発した主が居る檻に向け歩き近づく。

 

「誰だ?」

 

 簡潔なその言葉は、さっきの発言の主に向けられていることに実験体たちが気づきそくささと悟の正面から掃けると1人のボロボロな小柄の男性が姿を現す。

 

「……お前か?」

 

「……ッそうです」

 

 確認を取る悟の言葉にその男性が頷くと

 

「ありがと」

 

 悟は笑顔でそう述べるとその場を後にした。

 

 静かになった実験体たちはその後、何が起きるのか全くの予想が出来ずにただ嵐のように過ぎ去った謎の女性と思われる存在の行く末を探ろうと聞き耳を立て続けたのであった。

 

 

 

~~~~~

 

 

 

「女だ……女なら殺す……コロスっ!!」

 

 とある一室でブツブツそう呟く男性。 オレンジの髪をした大柄なその男性はふと何かに気がつき、その部屋唯一の扉を注視する。

 

 すると誰かが階段を昇る音が聞こえ、表情を飛び切りの笑顔で染めた。

 

「来たな……来たぞ……来た……っ!! 女だっ……女ァ……っ!!!」

 

 興奮気味のその男は我慢の出来ない様子で口から涎をこぼす。

 

 

 

 次の瞬間、扉の隙間に一瞬緑色の閃光が走ると……扉に施されていた施錠が全て切られてその機能を失う。

 

 そのままその重く大きな扉がゆっくりと開き部屋の中に居た重吾は立ち上がり、その全身に呪印を巡らせ状態2へと至る。

 

 そして

 

 

 

「やっぱり男だ……男ならミンチにして──」

 

「うっわ、思ったより見た目怖っ!!」

 

 

 黙雷悟と重吾はお互いの顔を見合わせ……

 

 

 

 

 

 数秒の沈黙が流れた。

 

 

 

 

 

「……どうかしたの?」

 

「……ドッチだ……っ!?!?」

 

「何が? ……ていいやその状態なら戦う気はあるんでしょっ!!」

 

 混乱した様子の重吾に、悟は笑顔を浮かべつつ問答無用で飛びつき術を発動させる。

 

「土遁・超加重岩の術っ!!!」

 

「っヅ!?」

 

 術の効果で体重が何倍にも増加した2人の重さに床が耐えきれずに罅が入り、悟が重吾に組み付きながら床目掛けて尾異夢・叉辺流を構える。

 

「発射っ!!」

 

 風遁チャクラの刀身が伸びることで床をバターの様に裂き、二人は落下を始める。

 

 最上階から、途轍もない重量となった2人は最下層の闘技場まで真っ逆さまに落ちていくのであった……

 

 

 

 

 

 

 

 

──ズシンッ

 

 建物に響く謎の瓦礫音が最後の一際大きな衝撃と共に鳴りやむと、地下の闘技場では天井から落ちて来ていた2つの影が正面を向き合って構えていた。

 

「さて……修行だから写輪眼は当然、術も使わないし性質変化も忍具もなしだ……鉄輪付きで八門も本領発揮をしない……頼れるのは自然エネルギーだけ」

 

 煙を突き抜け、自身を敵とみなしたロケットのような重吾の拳を間一髪で避けた悟は剛拳の構えを取る。

 

「……カマ野郎が、二倍ぶっ殺してやるっ!!!!」

 

「二倍か、良いねお得なのは私も嫌いじゃないさ……さあ、仙術・自然エネルギーを扱う呪印の力とやらを見せて貰おうかっ!!!」

 

 

 

 その後2日間の間、その北アジトに響く地鳴りは止むことが無かった。

 

 

~~~~~~

 

 

 

 そして

 

 

「地鳴りが……止んだ?」

 

 アジト内の実験体たちがその振動と音が止んだことに気がつくと同時に

 

 さらなる異変を感じ取る。

 

「何だっ!? 木がっ!!??」

 

 誰かのその叫びを皮切りに、地下から伸び出た太い木の枝はその施設のありとあらゆる外との繋がりである窓やエントランスを塞ぎ、そして

 

 

 

「木遁・木龍の術」

 

 

 木の根の一部が龍の形を成して、天井へと着き抜け高層の建物の一階から最上階までを繋ぎ空を覗かせた。

 

 あまりの地殻変動のような出来事に、実験体たちが呆気に取られていると地下から伸びた木の枝を伝って人影が姿を現す。

 

 その人影は肩に乗せていた自身の倍ぐらい大きな重吾を床に置くと、首をコキコキ鳴らしながらその姿を晒す。

 

「「「……っ!?!?!?」」」

 

 実験体たちがその姿を見て慄いた。

 

 重吾との戦闘でボロボロになった外套の代わりに拝借していた白衣に身を包み、その顔面には濃緑色の隈取りが浮かび上がらせ口についていた血を拭う……黙雷悟がいた。

 

 

「さてと……」

 

 

 そう呟いた悟は周囲を見回す。 実験体たちが悟に視線を向ける中、悟もまた観察するように実験体たちの顔を見て何かを確かめる。

 

 すると

 

「重吾の場所教えてくれた奴、居る?」

 

 そう大きな声で問う悟に、2日前にその情報を与えた小柄の男性は同じ檻の中から返事をした。

 

「い、います……これは……貴方の仕業なんですか!?」

 

 その男性の問いに悟は興味なさげに

 

「この2日間、ちゃんと職員の人たちから食事は提供されてた?」

 

 質問に答える気を見せずに質問で返す。

 

 そのあまりの存在感にその男性は恐れ慄き

 

「さ、されて……ました……ッ」

 

 聞かれたことを大人しく口に出した。 その返事に悟は

 

「写輪眼でのルーチン管理は出来てたか……どれぐらいかかるか分からなかったけど、試しておいて良かったかな」

 

 そう呟いたとたんに柏手の構えをする。

 

 途端に巨大な木の枝、木の根はうねり動き建物内の牢の檻を次々と破壊していく。

 

「!?!?」

 

 何事かと実験体たちが驚くと悟は声を張り上げ建物内に響かせる。

 

「私はサトリ、お前達に選択肢をやる。 私はここに……このアジトに拠点として人が住める環境を整える気になった。 それでここに居る奴ら全員を助けてやってもいいと考えたんだけど……中には人殺しも厭わないクズやら悪党も居ることだろうし、選別することにした」

 

 そうして悟は重吾を指さし叫ぶ。

 

「戦いが出来ないのに呪印を刻まれた奴はこの後起こす重吾に呪印を消してもらう。 それで残った戦える奴らは全員で……私一人を殺しに来いっ!!! 全力で良いよっ!! 私を殺せばアンタらはあの天井から逃げ出して晴れて自由だ。 だけど、私が全員を屈服させた場合は……」

 

 

 ……溜を作った悟はニコニコしながら口を開いた。

 

 

「要る奴と要らない奴を選別して、要らない奴……気に入らない奴は殺す」

 

 

「「「「!!??」」」」

 

 ざわつき始めた実験体たちに悟は大きな柏手1つで黙らせ

 

 

「さて重吾を起こそうか?」

 

 

 淡々と作業を開始し始めた。

 

 

 

~~~~~~

 

 

 

 

 重吾を完全に叩きのめし、木をも操る悟の存在に実験体たちもそれぞれがその存在としての異常さを感じていた。

 

 そして

 

「これで……最後か?」

 

 そう呟いた重吾の手から離れた子どもが怯えた様子で、呪印を吸収された集団へと逃げ込む。

 

 そんな重吾に対して悟は

 

「協力ありがとう、アンタも参加して横やり入れても良いけどどうする?」

 

 にこやかにそう問う。 しかし重吾は

 

「……俺は戦いたくない……」

 

 そう言うと静かに落ちているボロ布で身体を覆い、戦わない組の中へと向かい壁の隅へと座る。

 

 

 重吾の様子を見届けた悟はわざとらしく手を広げ叫ぶ。

 

 

「よしっ!! それじゃあこれだけ残ったアンタたちが私の相手だ。 ルールは簡単っ!! 私は体術しか使わないから、アンタらは呪印でも何でも使って私を殺すっ!! OK?」

 

 

 

 

 

「OKェだぜぇっ!!!」

 

 

 悟の言葉に重ねるように、全身浅黒く変色し二本の角を生やした巨漢が返事を叫びながら悟の頭上から拳を振り下ろした。

 

 衝撃に床がひび割れ、壁までもそれが伝う。

 

 その巨漢の一撃に、実験体の1人が口を開く。

 

「牛鬼・ゼンゾウ……暴れ屋のアイツの状態2の攻撃を正面から受けて助かる奴は──」

 

 

 

 

「居ない? そういう説明って所謂フラグって言うか前振りって言うよね♪」

 

 瞬間、ゼンゾウの巨躯に衝撃が走り一瞬浮き上がると悟の回し蹴りがそのゼンゾウを牢の1つであった横穴へと叩き込む。

 

 そのまま白衣についた埃を払う仕草をした悟は呆気に取られて黙り込んだ実験体たちの意識を戻すように拍手をして注目を集める。

 

「ほら始まってるよっ!! 死ぬ気で来なっ!!!!」

 

 そう叫んだ悟の言葉を皮切りに、アジトの中は凄まじい戦場へと変わっていったのであった。

 

 

 

~~~~~~

 

 

 そして半日も過ぎない内に

 

「ハイ最後かな♪」

 

 悟の掌底で吹き飛んだ人影はしかし、床を剥がすほどの踏ん張りを見せて姿勢を持ち直す。

 

「おお、やるねぇ……っ!」

 

 想定外だと余裕そうに拍手する悟にその攻撃を受けた人物、赤い髪にイルカのような尻尾が生えた呪印の形態変化を見せている女性は口から血を垂らしながら感情を荒立たせて叫ぶ。

 

「何だっ!! 何なんだてめぇはっ!!?? どうしてアタシの攻撃が……通用しねぇっ!!」

 

「単調だからかな~♪」

 

「っ死ねぇっ!!!!!」

 

 その女性の渾身の尾による一撃は悟の掌で払いのけるような動きでいなされ、何もない地面を叩きつける。

 

「っ……!!」

 

「結構もった方だけど、残念っこれでお終いっ!」

 

 隙の出来たそのわき腹に回し蹴りを繰り出した悟の一撃にその女性は吐しゃ物をまき散らしながら、壁に向かって吹き飛んでいった。

 

「ふう……良い感じに仙人モードの動きにもなれてきたかな……♪」

 

 そう呟いた悟は辺りを見回し、戦意が残っている者がいないことを確認すると再度手を叩いて音を鳴らして叫ぶ。

 

「どうやら、勝負は私の勝ちみたいなので~選別を始めようかな~?」

 

 そう意気揚々と叫んだ悟は、手始めとばかりに最後に吹き飛ばした女性に向かって歩みを進める。

 

 そして意識を失っているその女性の赤い髪を引っ張り、目立つところに向け投げ飛ばすと

 

「こういう反抗的な奴は、後で輪を乱すから殺すかな~?」

 

 そう、まるで玩具を選ぶ子供のような様子で次々と意識を無くした者や、辛うじて意識を保っている者らをフロアの中央に集める。

 

「いやだ……やめぇ……やめてくれぇ…………っ!」

 

「ほうら♪」

 

 懇願する者もお構いなく投げ飛ばした悟は、わざとらしく驚いた振りをして声を大にする。

 

「あれれ~~~!!?? 戦いを挑んできた奴全員真ん中に集めちゃった~~~♪ ……それじゃあ」

 

 そういって笑顔の悟は

 

 

 

 

「お前らもそこに行け」

 

 

 

 

 待機していた呪印を抜かれた者たちにも()()に集まるように顎だけで指示を出す。

 

 自分たちは助かると思っていたそのもの達も、一瞬にして恐怖が走り泣きわめくもの達で溢れた。

 

 しかし

 

「早く」

 

 淡々とそう告げた悟の迫力に押され、その者たちもフロアの中央へと集まる。 その中に重吾も混ざっていたが

 

 諦めたかのような、望んでいるかのような表情を浮かべるのみで黙っていた。

 

 

 全員を一か所に集めた悟が印を結ぶと、その集団を囲う檻の様に辺りに蔓延っていた木の枝や根が動く。

 

 そして形成された鳥かごのような木の檻の中に向け、悟が笑顔を振りまく。

 

「そうだ、良い事思いついたっ!! 全員皆殺しでも良いんだけど……チャンスをあげようっ!!」

 

 悟の実力、その格の違いに暴力的で粗暴だと言われていたゼンゾウすらも虚ろな表情を浮かべ、悟を刺激しないよう小さくすすり泣く音だけが響いていたその空間に緊張が走る。

 

「この中から1人っ!! 1人だけ私の前まで来て、立ち向かってこい、勝負をしよう!  そしてその勝負の勝ち負けにかかわらず全員解放してあげるっ!!」

 

「!!!」

 

 その悟の言葉に一瞬集団が沸き上がるも、即座に放たれた悟の圧で全員が口を閉じる。

 

「だけど条件がある。 その1人は私の本気を持って殺す、そして今からアンタたちには目を開けることと喋ることを禁じる」

 

 そう述べた悟はパンッと手を叩き「ハイ、眼を閉じて喋らない」と言う。 そして即座に従う実験体たち。

 

「ハイ、それじゃあ後五分後に誰かその1()()になる奴が名乗り出なかったら皆殺しね♪」

 

 余りにも短いタイムリミットに集団に緊張が走ると、悟は女声のまま声を低くして

 

「私は本気だ。 次に私に立ち向かってくるものは殺す……その代わりに他の奴らは生かしてやろう……」

 

 そう述べて、適度な瓦礫に腰かけそして

 

「はいそれじゃあ、よーいドンっ!!」

 

 声の調子を明るくして時間を計り始めた

 

 

 

 瞬間

 

 

「俺が相手だっ!!!!!」

 

 一秒も満たない内に声が上がる。

 

「へぇー……」

 

 その声に悟は、興味ありげに立ち上がりその声の主に目を向ける。

 

「ああ、お前か……最初に私に重吾の場所を教えてくれて……さっきまでの戦いに呪印を消していなかったのにも関わらず参加しなかった、お前ね」

 

 悟は木の檻に近づいてその声をあげた男性に質問をする。

 

「何? アンタ見た感じ戦闘出来なさそうなのに名乗り出るなんて……それに私が手を出していないのに既に傷だらけ、ここの連中にやられてたんでしょそれ? そんな奴らの為に、命を賭ける……いや投げ捨てるって言うの?」

 

 試すかのような悟の問い賭けにその男は瞳を開けて、震える声を制そうとしながらも視線は悟の眼を見ていた。

 

「お、俺は……つ、強くはないし落ちこぼれだ……だけど、アンタみたいな奴に皆を殺させるわけにはいかないっ!!」

 

「へぇ~~? …………じゃあ、こうしよう。 お前が気に入らない奴を選べ、お前にその傷をつけてきた連中を差し出したらお前を助け──」

 

 

 

「俺は誰も差し出さないっ!!!!!」

 

「っ!?」

 

 その男の叫びに、悟は驚く。

 

「確かに俺が弱くて、小さいからって理由で暇つぶしに俺をのけ者にしたり無意味に痛めつけてきた奴らはここに居る……ッ! だけどそんな奴らだってこんな理不尽に殺されていいはずがないんだ……俺を嬲ったのだって一時の気の迷いかも知れないっ!!」

 

「そんな馬鹿なこと……」

 

「だとしても……俺はこんな理不尽を見過ごせない……っ!」

 

 泣きながらそう叫ぶその男に悟は面白いものを見る目になる。 すると

 

 

「待て……()()()っ……っ!」

 

 

 その男の名を呼ぶ女性の声が響く。

 

「発言は許可していないんだけど──」

 

「そいつを痛めつけてたのは私だっ!! 私を殺せっ!!!」

 

 その女性は先ほど最後まで悟に抗って見せていた赤髪の女性であった。

 

()()()さん……っ!? 違うこの人じゃ──」

 

「少し黙ってて」

 

 アカネと呼ばれた女性の発言を遮ろうとしたそのアガリと言う男性は、悟の操る細い木に口を塞がれてしまう。

 

 そしてアカネに対して悟は目線を向けると顎で指し示し発言を促す。

 

「……っそこのアガリっていう名前のナヨナヨした男を痛めつけてたのはアタシだっ!! このストレスのたまる実験施設で、少しでも娯楽を見出そうとして弱い奴を嬲っていたっ!!」

 

「……まあ、アンタが重吾の次に強かったからねぇ……ここで退屈凌ぎに王様気分にでもなってたんだ」

 

「っそうだ! 私は重吾よりも……強いつもりでいた。 だからこそ、ここの奴らの上に立ち大蛇丸にも認められて外に出られると思ってたんだ……だけど」

 

 アカネは悔しそうに瞳に涙を溜め震える。

 

「……うちはサスケとか言う奴が、その可能性を消した。 結局……音の五人衆にも加われず……アタシの強さは……誰にも認められなかった。 だからこそ弱いくせにヘラヘラとしているアガリが気に入らなかったんだ……っ!!」

 

 無言で話を聞く悟に、アカネはそのまま思いの内を語る。

 

「アタシは強い……そのはずなのに……いきなり来たお前に手も足も出ず……さっきまで情けなく他の誰かが犠牲になればいいと、震えて目を閉じてたっ!! だけど、アガリだけには……っ!! アタシが弱いと軽んじてきた奴に助けられるのだけは、アタシの魂が許さねぇ!!!」

 

 そう叫んだアカネに悟は

 

「そう……魂ねぇ……」

 

 そう呟き、アガリに目を向けその顔を覆っていた木の拘束を取る。

 

「さて、アガリとやら。 お前はこのアカネとか言う奴を犠牲に──」

 

「しませんっ!!」

 

「そう……返答早」

 

 アガリとアカネの意志を確認した悟は

 

 

 

 

「ごーかっく♡」

 

 

 

 

 そうキャピッとした声を出してピースをして見せた。

 

「な!?」

 

 驚きを口にしたアカネに悟は手で拍手を鳴らしつつ語り始める。

 

「いや~~場合によっては本当に殺すつもりだったけど、最初に言った通りここを人を住める環境にしたいんだよねぇ? だからこそアンタらを試してたんだけど……良いんじゃない? 本当ーに最低限だけど、嫌いじゃないよ」

 

 そう言って悟の顔に浮かんでいた隈取りは消え、辺りに蔓延っていた木も縮小していき木の檻も消え去る。

 

「さて、やることは多いけど……まずルールを決めようっ!!」

 

 そう言って悟は語り続けた。

 

「1つ!! 道徳に反する行いは駄目絶対!! 私を怒らせたら即死刑っ!!

 

 2つ!! これから皆は同じ場所に住まう家族だ、なので呪印を使っての戦闘は禁止っ!!

 

 3つ!! 働けぇっ!! ……取りあえずは以上っ!!」

 

 そう言って悟は天井から見せる月を指さし宣言する。

 

「私はサトリっ!! 以後よろしくっ!!!!」

 

 呆気に取られてる元実験体たちに対して高笑いをする悟の声が建物に木霊した。

 

 

 

~~~~~~~

 

 

「とまあ、こんな感じで雷は集落のはじめを形作って──」

 

「いくら何でもやりすぎじゃないっ!? 悟さんが本当にそんなことを!?」

 

「まあ、彼なりに人命を無駄にしたくないからこそ自分の圧倒的な力を見せつけて最初の内は荒くれ者たちを制御していたみたいだよ。 重吾との戦いで覚醒させた千手の力による木遁で適当にすみやすい家屋を提供し、近くの集落に労働力として向かわせ対価を稼ぐ。 施設の整備や、畑の作成など労働を提供することで次第に元実験体たちも大人しくなり、さらに呪印を手放す選択をする者も増えた。 落ち着いた環境と認め合える仲間の存在により彼らは実験体から人に戻り……いっぱしの生活を手にしたという訳さ」

 

 めでたしめでたしと手を叩く黙はハナビの呆気に取られている表情に笑みを浮かべると

 

「そしてこれからはその集落の発展に合わせて雷は各地を巡ることとなった」

 

「……各地をっ?」

 

「そう……と言うのも最終的に尾獣と呼ばれる存在の力が今後必要になると考えた雷は各地を巡り、一尾・守鶴の様にその分体を取り込もうとしたのさ。 まあでも人柱力を見つけること自体大変だったし、暁の目に留まるための宣伝活動もしていたから、色々と大変だった……いや僕は少ししか働いてないからこういうのはおこがましいかな」

 

 そう言って黙は精神世界の草原の木の下で今までイメージ映像を見せていた板のような物を消し去ると指を鳴らす。

 

 すると

 

 小さな獣たちがハナビを取り囲むように姿を現し名を名乗る。

 

「私は二尾・又旅(またたび)

 

「僕は三尾・磯撫(いそぶ)……」

 

「俺ァ四尾……孫悟空で良い」

 

「私は五尾・穆王(こくおう)

 

「俺やよォ六尾の犀犬(さいけん)ってんだァ」

 

「俺は重明(ちょうめい)……七尾だ」

 

 急に現れたぬいぐるみサイズの尾獣たちの存在にハナビは驚き、そして

 

「……可愛いっ!!」

 

 目を輝かせる。

 

「……君も雷と同じ反応すると思ってたよ」

 

 と黙がため息をつくと

 

「いや、犀犬だけはそうでもなかったっけな……彼もその時は僕を叩き起こして人柱力のウタカタと話をさせられたっけ……」

 

 そう思い出すように呟く。 そんな黙の言葉に犀犬は

 

「俺……尾獣としてでなくって、見た目で怖がられるのは慣れてなくってなぁ……///」

 

 何故か妙に照れた様子で頭を前足のような部位で掻いて見せていた。

 

「そこで照れる君には僕も少しは愛らしさを感じるよ」

 

 黙の言葉に犀犬が照れたように赤くなって顔をフリフリと振るう。

 

 そんな光景に呆けてたハナビだがふと冷静になった彼女は、又旅を膝に乗せながらも黙に質問をする。

 

「しかし、これほどまでの尾獣さんたちを集めるなんて相当大変だったんじゃ……」

 

 その質問に黙は

 

「(尾獣さん?)……そうでもなかったよ。 人柱力の場所の特定だけは大変だったけど、この身体は()()()()の力も秘めている様だしね。 あとは人柱力たちに暁に警戒をするよう忠告する裏で尾獣たちに分体だけ来てもらうよう説得しただけさ」

 

 さらっと返答する。

 

「り、六道仙人っ……!? 真面目な話ですか!!??」

 

 驚くハナビだが孫悟空がため息をつきながら答える。

 

「マジな話だぜ嬢ちゃん。 こいつの身体からは六道仙人の爺さんの気配を感じる。 じゃなきゃさっきの話でも守鶴の野郎が付いてくることもなかっただろうよ」

 

 そんな孫悟空の言葉に磯撫が

 

「僕は独りだったから本体ごと来ても良かったんだけど……断られちゃった……」

 

 と拗ねた様子を見せた。

 

 黙は

 

「幾ら何でも君たちの本体を受け入れる容量は無いはずだからね……」

 

 と勘弁してほしそうにそう言う。

 

「賑やかなものですね」

 

 ハナビはワイワイと賑わいを見せている光景に微笑むと黙は

 

「普段はもう少し奥の精神世界で過ごしてもらっているから雷との会話とかは彼が意識して呼び出さないと出来ないんだけどね……けど普段僕のいるところに住人が増えて僕は落ち着いて眠れないのが悩みかな」

 

 と羽ばたいたり、脚を鳴らす重明・穆王に目を向けると二匹ともバツが悪そうに眼を逸らした。

 

「さて……話が逸れてたけどここからは雷が暁に入るころ……ヒザシさんの眼を手に入れるところから話をしよう。 そしてその後に、君にどうしても協力して欲しいことを頼むつもりだ」

 

「協力……?」

 

 不敵な笑みを浮かべた黙は(2章第一話)からの悟の体験をハナビへと伝えるのであった。

 

 

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