目指すは忍ぶ忍者   作:pナッツ

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次回以降、更新が遅れます、すみません。


第四次忍界大戦~黙雷悟最後の戦い~
33:戦火の灯火、宿りし日


 真実の滝の中から飛び出してきた奇妙な姿をした鬼鮫の姿に悟が怯むと同時に、その背後から声が聞こえる。

 

「あれは……珍虫っ!?」

 

「ガイさん、アンタ滝の前にも黙雷悟が居ること忘れないでくださいよっ!?」

 

「暁が二人も島の中に……っ!」

 

 

 マイト・ガイ、サングラスが特徴の山城アオバ、雲隠れの忍びであるモトイらの驚愕する言葉と共に悟は現在の状況を把握する。

 

(ってことは、今滝の奥でナルトとキラービーが人柱力としての修行をしている場面……っとなると……)

 

 悟は雷遁チャクラモードを瞬時に発動し、跳躍する。

 

「っガイさん、攻撃が来るぞ……っ!」

 

 アオバのその叫びに呼応するようにガイも跳躍。

 

「飛雷脚っ!!」「木ノ葉壊岩升ゥ!!」

 

 悟の蹴りとガイの強力な肘鉄が

 

 

 鬼鮫を同時に穿った。

 

 

「グフォッ!?」

 

 

 息の合った同時攻撃に鬼鮫が吹き飛び、滝の流れる脇の崖に叩きつけられ……そのまま悟はガイに対しても攻撃をしかけ、徒手空拳での攻防が始まる。

 

「何だ、黙雷悟と鬼鮫は暁の仲間じゃないのか……?!」

 

 アオバとモトイが困惑する中、互いに攻撃を躱し逸らしながらガイと悟は言葉を交わす。

 

「悟よォ、随分と強くデカくなったなっ!! ……どうして俺を攻撃するんだァ!?」

 

「ガイさん、鬼鮫は俺の仲間じゃないけど……貴方たちに委ねると碌なことにならなそうなんで、俺が預からせて貰いますっ!!」

 

 悟は僅かな隙に雷遁地走りを使い、ガイをけん制する。 ガイもそれを予期して滝の前の水面から飛びあがると同時に、滝の中からキラービーが姿を現した。

 

「鮫は逃がしては駄目ェ、そいつはスパイの暁、逃がせば情報が漏れて赤恥!!」

 

 独特な喋り方をするビーの登場、そんな彼と悟の視線が合った瞬間。

 

 大刀・鮫肌と融合していた鬼鮫はその融合が解かれ、やせ細った姿になって滝つぼの中に逃げ込み身を潜める。

 

 鮫肌も姿を現したビーの存在を確認すると、懐いた犬の様にビーへと飛びかかり彼にかじりついた。

 

「ハハハ……コラコラ! じゃれかたが乱暴♪ 好かれるのは俺の人望♪」

 

「……ギギギ」

 

「ビー気づけ!! チャクラを取られてるぞっ!!」

 

 そんなビーにかじりついた鮫肌を経由し、水中からチャクラを吸い取る鬼鮫。 そのことを指摘するモトイらが鬼鮫に攻勢を仕掛けるも……

 

「水遁・水牢の術っ!!」

 

 悟が発動した術が、ガイ、モトイ、アオバを捕え足止めをする。

 

「ごごっがごぼっ!!(なんのつもりだ悟っ!!)」

 

 水牢の中から問いかけるガイに悟は申し訳なさそうに僅かに頭を下げる。 そんな隙を光明と、力を取り戻した鬼鮫がその場から逃げ出すと悟もそれを追うべく駆けだそうとする。

 

 すると、鬼鮫にチャクラを吸い取られたビーがヘロヘロになりながらも悟を呼び止める。

 

「お前の相棒、聞いたぜ要望……俺の相棒、貸したぜ少々……相棒の横暴、止めたようで殊ッ勝ォ……ゥィ……」

 

 倒れ伏しながら、人差し指と小指を建てたビーんpその言葉の意味を悟が理解し目を丸くすると……

 

「ありがとう、アンタの協力感謝上等……っ!」

 

 拳を突き出してそう言い残し、鬼鮫の後を追った。

 

 

 

~~~~~~

 

 

 

 大亀でなっている島から、海面へと飛び出し口寄せ鮫を呼び出した鬼鮫。

 

 鮫に巻物を託そうとしたその瞬間。

 

「剛乱脚!!」

 

 空中から飛び出た悟の蹴りから繰り出される衝撃波が鮫を穿ち、その姿を消させる。

 

「チィッ……邪魔をしないで頂きたいっ! その衣、同じ暁でしょうっ!?」

 

「いいや、違うねっ! 俺とマダラとでは……望む未来が違うっ!!」

 

 鬼鮫を逃がさないために、同じく水面に降り立った悟は鬼鮫と向き合う。

 

「全く……天音さん……いや、黙雷悟とかいう宿屋であったあの時のガキですねアナタぁ。 ……つくづく私の邪魔をしますねぇ!」

 

「はん? 俺は俺のしたいことをしているだけ、その道の上にアンタが偶々いるからちょっかい出してるだっけェ」

 

「あの八尾にしょうもない影響受けたようですねェ……その首、あの時の食料の借りとして噛み千切ってあげましょオォ!!」

 

 若干苛立ちを露わにしている鬼鮫は素早く印を結び、海面を唸らせる。

 

「水遁・大千食鮫ォ!!」

 

 海に溢れんばかりある水を水遁で模った、巨大な鮫を数え切れない鮫をけしかける鬼鮫。

 

「おおっと食べ物の恨みは怖いな……だがアンタの倒し方、俺はそれを実践できるんだぜっ!!」

 

 悟は気合を入れ、腰を落とす。

 

「八門遁甲、第七驚門……開っ!!」

 

(あの珍獣と同じ八門を……っここまで扱えるとは……っ!)

 

 鮫の大津波越しに、悟の膨れ上がるチャクラを感じ取った鬼鮫。

 

「かつてとは比べるまでもない実力ですねぇ……ならば、こちらも出し惜しみはなしでいきましょうォ!!」

 

 

 

「水遁・大鮫弾の術っ!!!」

 

 

 

 鬼鮫の怒涛の水遁の連撃。 しかし

 

「スゥ……全身全霊……行くぞ、昼虎ァ!!」

 

 悟が独特の構えから放たれた両手突きから、白虎を模った衝撃波が放たれる。

 

 白虎は千の鮫の津波に穴を開け、その奥から迫る大鮫弾の口へと収まり……収縮する。

 

「なっ!?」

 

 その瞬間、鬼鮫の驚愕とほぼ同時に昼虎が爆ぜ全ての水遁の鮫を巻き込む大爆発を見せる。

 

「チャクラを術ごと飲み込むはずの大鮫弾ごと押し負けるとは……!? まさか今のは──」

 

「只の正拳突きの衝撃波だよっ!!」

 

「っ!?」

 

 海面が爆ぜたことで上がった水しぶきの中を、軽重岩の術で飛び抜け鬼鮫へと接近する。

 

「貴様ァ!!」

 

 飛び込んできた悟めがけ、鬼鮫が拳を放った瞬間。

 

 

 

 悟の身体が大爆発を起こして、再度海面を爆破する。

 

 

 

 爆発に吹き飛ばされ海面を跳ねた鬼鮫は大亀の島へと叩きつけられた。

 

(今のは……イタチさんの分身大爆破の術っ!?)

 

 あまりの衝撃に、上半身の衣を吹き飛ばされ、意識も飛ばしかける鬼鮫。 しかし彼のタフネスがそのダメージに耐えきり、すぐさまその場から離れようとした瞬間。

 

「なっ……!?」

 

 影分身を囮に海中にもぐって居た悟が飛びだし、海面から急上昇。 鬼鮫の身体を大亀の側面の崖に擦り付けながら遥か雲の上へと飛び去る。

 

 

「~~~~っ!!」

 

 

 上空まで鬼鮫を連れ去った悟は彼を一度蹴り上げ宙に舞わし、そのままチャクラを封じる木遁で縛り上げ軽重岩の術で宙に浮かせる。

 

 追撃が来るか、そのまま天から地へと叩き落とされるか、そうふんでいた鬼鮫は拘束されたことに驚き言及する。

 

「っ……なるほど、伊達で暁に入ったわけではないようですねぇ……前から強いとは思ってはいましたが……しかしわざわざ拘束するとは、私の情報でも抜き取るつもりですかぁ……?」

 

「……」

 

 ボロボロで息の上がった鬼鮫の問いかけに悟は無言で彼の身体を直接触れないように、縛った木遁にチャクラ糸をくっつけると彼を牽引して飛び始める。

 

「っ……口を拘束しないのは甘いですねぇ……いざとなれば舌を噛み切ってでも私は覚悟を遂行しますよォ」

 

 無視された鬼鮫のその言葉に悟は一旦移動を止め、鬼鮫の正面へと移動する。

 

「鬼鮫先輩、1つ聞きたいんですけど」

 

「そんな子供じみた聞き方で誰が情報を吐くと思いますか? 交渉の仕方を勉強なさった方が良いのでは?」

 

「貴方は何のために闘ってるんですか?」

 

 鬼鮫の皮肉を無視した悟のその問いかけに、鬼鮫は呆気に取られ口を開ける。

 

「何の……って言う訳ないでしょう」

 

「そういう任務的な事じゃないですよほら、色々あるでしょう? 例えば角都先輩なら金のため、デイダラ先輩なら芸術のため、飛段先輩なら宗教のため……皆俺が殺してしまいましたけど……貴方にもそういうのがあるでしょう?」

 

 若干表情を暗くした悟のその問いかけに……鬼鮫は無言のまま、僅かに瞳を揺らす。 なおも無言の鬼鮫に悟は言葉を続けた。

 

「……イタチさんは弟のサスケのためにその命をかけた……そして俺は、俺の好きな人たちに世界を託せるように……戦っている。 貴方はどうなんです」

 

 試すかのような瞳をする悟の真っ直ぐな問いかけ。 自身の全てを把握されているかのようなその緑色の瞳に、妙な嫌悪感を覚えた鬼鮫は視線をそらす。

 

「何を馬鹿な……言ってしまえば、それこそ情報が──」

 

「無限月読が本当に救いになるとでも思っているんですか?」

 

「っ!?」

 

「言っときますけど、マダラの無限月読はまやかしだ。 奴を信じてもあるのは……裏切られる事実だけ、貴方も結局はマダラの使い捨ての駒だ」

 

「……っ」

 

 悟からのその情報に鬼鮫は若干表情が崩れた。

 

(多分、そうだとは思ったけど……鬼鮫も結局あいつらにとっては使い捨ての駒扱いだ。 最低限の情報共有もなしに、牛鬼を狩らせようとしたり敵の懐に潜入させ……情報を集めさせる。 忍びらしいけど酷いもんだな……)

 

「さらに追加。 無限月読で理想の世界に行けるって言うのも殆ど嘘だ」

 

「……それは貴方がついた嘘でしょう、貴方が全貌を知るはずが……」

 

「嘘かどうか……視てみるか?」

 

「何を──っ!?」

 

 悟はその両眼を変化させる。 その眼光はクルクルと渦巻くように回転し瞳が赤く……三巴の紋様を模り、さらに変化を見せる。

 

 ……親しい者の死を経験するという()()()の開眼条件……それを()は、元の世界への帰還を諦めたこと=元の世界における自身の死を持って満たしていた。

 

 万華鏡写輪眼の瞳力は写輪眼を遥かにしのぎ、例え固有瞳術である「月詠」や「別天神」でなくともその幻術の精度を高いものへと昇華する。

 

 それが例え、相当の手練れである干柿鬼鮫であっても直視すれば逃れられるものではなく……

 

 鬼鮫は悟の幻術へと堕ちるのであった。

 

 

 

~~~~~~

 

 

 

 数十分後、ゆっくりと眼を覚ました鬼鮫に悟は問いかける。

 

「ほら、どうでした? 前に言いましたよね、俺は未来を知る人間だと」

 

「…………にわかに信じられません……今のは貴方の妄想だっ!」

 

「まあ、信じるかどうか貴方に託しますよ」

 

「貴方は、一体私に何を求めているんですか……?」

 

「……イタチさんと共に居た貴方は、()()()()()()()()じゃないはずです。 少なくとも命についてその重みを知っている。 だからこそ、過去、同じ忍び同士……仲間を斬ることを是とした霧隠れのやり方に苦悩しこの世界を偽物だと思った……そうでしょう?」

 

「……何故そのことを……それは貴方の言う未来ではなく過去の出来事のはずですが……」

 

「貴方が、マダラのやり方で貴方の本当に望む世界になると心の底で思っているわけではないと俺は思っている」

 

「……っ」

 

 そこまで言うと、高速で飛行していた悟は斜め下に向け進路を向け高度を下げていく。

 

「……俺は信頼もなしに利用したり、されるっていう関係が好きじゃない。 人は自由を謳歌するべきだ……貴方に俺の味方になれとは言わないし強制もしない……ただ」

 

 雲を抜け陸地が見え始めたところで悟は飛びながら体の向きを鬼鮫に向ける。

 

 

「可能性を提示するだけだ」

 

 

 その瞬間、悟は鬼鮫を拘束していた木に繋げていたチャクラ糸を切る。

 

「なぁ!?」

 

「アディオス、鬼鮫先輩っ!! 俺はまた生きて再会できることを望んでますよ~~~~……」

 

 鬼鮫を切り離した悟はそのまま再度雲の上まで高度を上げ飛び去って行く。

 

「ぬおおおおおおォ……っ!!!」

 

 スピードのついた状態で投げ出された鬼鮫はそのまま陸地にぶつかり跳ね、拘束されている木によってまるで樽を転がした様に地面を勢い良く転がる。

 

「~~~~っ!!」

 

 衝撃と回転に耐えながら、周囲の景色を何とか観察する鬼鮫は……

 

 自分が舗装された道を転がり、今まさに開けられた大門をくぐったことを認識したその直後木遁で作られた頑強な拘束は砕け散り鬼鮫は地面へと放り出された。

 

「ヅッ……わ、私でなければ……余裕で死んでましたよぉ……っ」

 

 持ち前の頑強さで一命を取り留めた鬼鮫はうつ伏せの状態から何とか体を起こし周囲の様子を確認する。

 

(ここは……まるで集落のようですが……しかし人の気配が少ないようですねぇ)

 

 立ち並ぶ木製の家屋には人の気配もあるが、その人数は多くはなく……お世辞にも発展しているとは言い難い場所であった。

 

 後方に位置する大門はまるで木ノ葉の物のようにも見え、ちぐはぐなその場所と悟の狙いに対しての推察を続ける鬼鮫。

 

 その時……

 

 一軒の家屋の玄関が開き中から、一人の少女が姿を現す。

 

「……大きな音……皆もう帰ってきたの?」

 

 茶髪のその少女の姿を目にした鬼鮫は

 

(私は世界の敵でお尋ね者……なりふり構ってはいられません。 申し訳ないですが彼女を人質に安全の確保を……)

 

 その少女の身柄を確保しようと体を起き上がらせ、飛びかかろうとしたその時

 

(この娘……目が見えて──)

 

 鬼鮫のその思考を邪魔するように、少女の前に人影が降り立つことで鬼鮫は動きを制止する。

 

 風をなびかせ、大きな羽を生やし額の右側に角のような物を生やしたその人影は少女の前に立つと鬼鮫に向かい戦闘態勢を取る。

 

「結界に触れ里への侵入を感知して来てみれば……お前は暁の……干柿鬼鮫だな?」

 

「っおやおや……何ですかその装束とその姿……()()()()()()()()()()()()が……似合わない五影のような笠と羽織を着ていらっしゃる」

 

「似合わないのは自覚している……っ! それにお前も見た目は大概だろう……ってそんなことよりも何の目的でここに来た!」

 

「さあ……私もそれを知りたいところですよぉ……全く」

 

 鬼鮫はため息をつきながら予想外の展開の多さに辟易する。

 

(しかし、よく見ればあの化け物……大蛇丸の所の実験体、呪印を受けた者の容姿に似ているようなぁ……まあ、それもこれも……こいつに全て吐かせれば片が付きますねぇ!!)

 

 鬼鮫はゆらりとした動作から、急に動きを速めその少女の前に立った人物へと接近する。

 

「っ!?」

 

「貴方大層な格好の割に反応速度が遅すぎますよォ!!!」

 

 鬼鮫の動きに対処できていないその人物の動揺を見透かし、鬼鮫は彼の首元を掴むように手を伸ばす。

 

 しかし

 

「どらぁっせぇえええええっ!!!!」

 

 豪快な掛け声と共に、横からの何者かの奇襲の飛び蹴りが鬼鮫の横腹を捉えて吹き飛ばす。

 

「ッグウっ!? 次から次へとォ……!!」

 

 呻き吹き飛ばされながらも、驚異的な体幹で足を地面へと設置させた鬼鮫はその奇襲者の脚を掴み、蝙蝠男へ目掛け投げつける。

 

「ちょっ!? キョウコ下がって……アカネは俺が受け止め──ブベラっ!?!?!」

 

 キョウコと呼ばれた少女を下がらせ、投げ飛ばされた赤い髪のアカネと呼ばれた人物を受け止めようとする蝙蝠男は……

 

 その勢いに負け、共に地面を転がってしまった。

 

「……いささか膂力も弱すぎませんかねぇ……呪印の力を使ってそれなんですか?」

 

 若干呆れた様子の鬼鮫。 

 

「邪魔だぁアガリぃ!!! アタシ一人でなら受け身取れたわボケぇ!!」

 

 そんな鬼鮫をよそに、もみくちゃになり自身の下敷きになった蝙蝠男をアガリと呼んだアカネは、彼の頭をはたいた後勢いよく態勢を立て直す。

 

「ッ痛いっ! 叩くことないだろ、アカネ!!」

 

「馬鹿が、お前1人で出て来ても戦いになるわけないだろうが……こういうのはアタシに任せとけ」

 

 そう言って一歩前に出た赤髪のアカネに鬼鮫が興味を示す。

 

「お嬢さんは結構なチャクラ量をお持ちで……そちらの蝙蝠男よりかは歯ごたえがありそうですね」

 

「ハン、そりゃ当たり前だこいつはこの里で最弱だからなぁ!! わかったら雑魚はさっさと非戦闘員の避難誘導しとけやカスゥ!!」

 

「口が悪いし酷いぞアカネ……っ取りあえずはこの場を頼んだ。 皆の誘導は任せろっ」

 

 アガリがショックを受けつつも、キョウコを抱えるとそのままふらふらと飛びあがりその場を離れていく。

 

「あの様子、少女一人も抱えてまともに飛べないとは……そこの〈暗〉の額当てをしたお嬢さん、もしかしてアレがここの里の長ですか? にわかに信じられませんねぇ」

 

 小馬鹿にしたような鬼鮫の発言に、アカネはコメカミをピクッと動かす。

 

「あぁん……? 確かに……アイツは雑魚だし、弱ぇえし、非力で、馬鹿だが……

 

 

 ここの長、暗影(くらかげ)なのは認めてんだよ。

 

 

 部外者が知った口聞くなカスが」

 

「口の悪い娘だ……それならそんな里長に代わって……躾をしてあげましょうかねぇ!!」

 

 

 

 

~~~~~~

 

 

 

(何やらかしてんのさ、雷……)

 

「おっ! 起きたか黙」

 

 空を飛び続けている悟に、精神世界から黙の声が聞こえ返事をした。 未だ若干泣きながら鼻をすする黙の息遣いも聞こえた気がしつつもスピードを緩めることなく飛ぶ悟はそのまま黙との会話を進める。

 

(……鬼鮫を暗隠れに落として……彼ら、殺されてしまうよ?)

 

「そんなことはねぇよ。 アガリとアカネが居ることは感知してたからな……他の皆は戦争の準備か何かで居なかったようだけど」

 

(君が体力を削ったとしても、鬼鮫の力ならアカネからチャクラを奪って回復してしまう……そうなれば──)

 

「そうならない。 アイツらを舐めるなよ、黙」

 

 彼ら暗隠れを誇るように、信頼を寄せている悟の言葉に黙は黙り込む。

 

(……そう言えば、君は僕を恨んでないとは言ったが元の世界に戻らなかった理由は聞いてなかったね……どうしてなんだい?)

 

 話題を変えようと、黙が後ろめたそうに悟へそう問いかけた。 身勝手な理由で殺されたにも関わらず、その相手を恨んでいないと言い未だに世界に関わり続けようとしている。 そんな悟の……雷の真意を黙は知りたかった。

 

 悟はその問いに小さく笑い

 

 

 

「黙は頼りないからなぁ」

 

 

 

 ニコッと笑顔を作って答えを返した。

 

(なっ……!?)

 

「全く……今まで1人でやって来て、散々駄目だったくせに何でまた1人になろうとするのか俺にはわからんよ……」

 

 悟は高速で飛行しつつも、呆れたように肩をすくめる。

 

(っ……今までの世界に比べて、この身体は力を解放できているっ! その力さえあれば、僕一人でも──)

 

「無理だね」

 

(っ!)

 

「……お前ひとりの魂じゃ、最後まで持たないだろ」

 

(……戦争には介入せず……大人しく時を待ち、やがて来るマダラだけを返り討ちにするだけで良かった……)

 

「俺はそれじゃあ納得できない。 戦争には介入するし出来る限り、一人でも誰かを助けたい」

 

(……そんな知りもしない誰かの為に、この世界に残ったとでも言うのか!? 既に犯罪者である僕らが助けたところで感謝などされすはずもない……っ!)

 

「オイオイ……長年連れ添ってきたのに俺のことわかってないのか?」

 

(……ッ…………ああ、そうか……君の()()……全く……本当に……君は馬鹿だな……)

 

 呆れたように言葉を呟く黙に、雷は満足したようにスピードを速める。

 

「逆に言えば、俺一人じゃ助けられる命も限られる。 俺たちは同じ体を共有する運命共同体だ、だから……頼りにしてるぜ

 

 

──相棒」

 

(……っ)

 

 黙はその悟からの言葉に戸惑う。 以前も彼が言った同じ()()という声掛けに……黙は答えなかった。 彼に対する後ろめたさ、その罪の重さ。 それらが雷と黙の繋がりを隔てていた。

 

 しかし

 

(……そうだね、君だけでも……思い付きで行動するから危なっかしくて頼りない)

 

「何ぃ!?」

 

(だから、この命燃え尽きるまで……それまでは……君と一緒に君の望む未来を目指そうか……

 

 

──相棒……」

 

「っ……ああっ!」

 

 黙の心にもう……隔たりはない。 彼から人生を奪った負い目が消えることはない黙だが……雷の本当に望むことを手助けしたいと湧き出る気持ちに、偽りはなかった。

 

 ……この日、黙雷悟は本当の意味で一心同体となった。

 

 

 

 

 

 

 

~~~~~~

 

  

 一方で鬼鮫とアカネの戦闘は苛烈さを極めていた。

 

「貴方、忍術もなしに良くここまで私に着いてきますねぇ……しかし忍術を使わない忍びにこうも出くわすとは、私も何かしら呪われているのでしょうか……」

 

「チィ……クソつえぇ……サトリ以外にもこんな奴がいんのか……っ」

 

 鬼鮫の水遁と体術による攻撃は辛うじてアカネに致命打を当てていなくとも、少しずつその体力を削っていく。

 

「先ほどまでの勢いはどうしました? そろそろ限界ですか?」

 

 鬼鮫の煽りにアカネのこめかみが大きく動く。

 

「ハッ! アタシは負けねぇ!! あのバカアホマヌケ陰険クソオカマ野郎以外に負ける気は微塵もねぇんだよォっ!!」

 

 アカネの叫びとともに、周囲にから大気が渦巻くようにアカネへと収束し始める。

 

「この……気配……まさk──」

 

 言葉を言い切る前に鬼鮫は、突然の衝撃で吹き飛び家屋に突っ込む。

 

 桁違いのスピードの打撃、その拳を放ったのは……

 

「オイオイ、限界か? アタシの拳が強すぎて悪かったなぁ!!」

 

 長い紅い髪が硬く、魚の尾ひれのような形状へと変化。 仙骨の辺りからも尾びれを生やした全身の皮膚が硬く浅黒く変化したアカネであった。

 

「てめぇは敵だ、遠慮なくこの力使わせてもらうぜっ!!」

 

「……全く……貴方も呪印持ちとは……しかし強さは先ほどの蝙蝠男とは段違いですねぇ」

 

 呆れた鬼鮫の言動に返すように、強烈なかかと落としをするアカネ。 鬼鮫が家屋から素早く飛び出ると、かかと落としの衝撃で家屋の壁と床が吹き飛ぶ。

 

「おやおや、貴方たちの里でしょう……自ら壊してどうするんですか」

 

「後で直しゃあいいんだよ、こんなもんっ!! てめぇをぶっ倒す方が優先だっ!!」

 

 テンションの上がったアカネはそのまま真っすぐ右の拳を鬼鮫目掛け繰り出す。

 

 鬼鮫はその拳を左手で掴むように受け止める。

 

「なに?!」

 

「膂力は私も自信ががありましてねぇ……そして」

 

 鬼鮫はその触れている部分から、アカネのチャクラを奪い取る。

 

「っ力が抜け……っ!?」

 

「私に勝るとも劣らない……良いチャクラをお持ち

 

 

 グホォァ!?」

 

 

 しかしアカネは、鬼鮫に対して頭突きをかまして仰け反らせる。

 

 

「っ!?」

 

「アタシを捕まえたとでも思ったかァ!? アタシがお前を捕まえたんだよォっ!!」

 

 いつの間にアカネの右手と鬼鮫の左手が、癒着し離れなくなっているため仰け反った鬼鮫は倒れることが出来ずにアカネの左手でのラッシュを受ける。

 

「っ貴方、さてはバカですねぇ!? チャクラを吸われながらその相手と手をくっつけるなどとっ!!」

 

「馬鹿じゃねぇよっ!! 先にてめぇをブチ倒せばアタシの勝ちだからなァっ!!」

 

「その考えをバカだと言っているんですよォ!!」

 

 距離を取ることが出来なくなった2人はお互いゼロ距離での殴り合いを始める。

 

 踏ん張る両足は上げれば相手に持ちあげられるため蹴りが出せない。 そのため互いに空いた手での顔面を狙ったノーガードの殴り合いは鮮血で染まっていく。

 

「だはははははっ!! オラァ!! オラァ!!」

 

「っフンっ!!」

 

 互いに鼻から血を流し、唇が切れそこからも血が流れ落ちる。 辺りが2人の血で染まり始めた時

 

「っウグッ……!?」

 

 鬼鮫が放ったボディブローがアカネの動きを止め、そのまま

 

「相手が悪かったですねぇ!! 私!! 相手で!! なければぁ!! 死なずに済んだものをっ!!!」

 

 鬼鮫は容赦なくアカネの腹と顔面を交互に、一方的に殴りつける。

 

 鬼鮫はそのまま数十の打撃を浴びせ、自らの拳の皮膚が剥がれ落ちる頃にはアカネは身体をグッタリとさせ膝を突き項垂れていた。

 

「ハァ……ハァ……妙に上手くチャクラが吸えないせいで……少々手こずりましたが……これで私の勝ちです」

 

 垂らした頭部から血をダラダラと地面に吸わせるアカネ。 その様子に鬼鮫が勝ちを確信するも

 

(……まだ息がありますねぇ……何というタフネス……)

 

 アカネが生きていることに驚く。

 

 悟にやられた際に上半身の衣類事、忍具などを吹き飛ばされた鬼鮫は手っ取り早くアカネを殺すために刃物を用意できないことにため息をつきつつも

 

「言動と態度さえなければ、とてもきれいな顔でしたのに見る影もないでしょうねぇ……さて今殺してあげましょう」

 

 そう言った鬼鮫が膝を突いているアカネの首に手を当てがい首を絞める。

 

 その瞬間

 

 顔を挙げたアカネの表情に鬼鮫が驚愕した。

 

 アカネは中指を立て、ボコボコに歪んだ顔でニヤリと笑っていたのだ。

 

「っ!?」

 

 その瞬間、互いの手を癒着していた皮膚のような組織がボロボロと崩れ不意に鬼鮫の頭が揺れたように意識が薄れる。

 

 その隙にアカネが勢いよく体を翻し、尾と髪で強烈な打撃を繰り出した。

 

 鬼鮫は咄嗟にガードを試みるも、拳よりも数段威力の強いその打撃にガードした腕の骨を折られながら吹き飛ぶ。

 

 吹き飛ばした鬼鮫を尻目にフラフラと立ち上がったアカネは口から血を吐き捨てた。

 

「あ゛~~……痛てぇ……クソが滅茶苦茶殴りやがって……オラ、()()()()()()引きつけておいたぞカスっ!!」

 

 アカネのその言葉に返事をするように、彼女の直ぐそばにアガリが降り立つ。

 

「ありがとう、アカネ」

 

 アガリの感謝の言葉に、へッと突っぱねるような態度を取るアカネ。 アガリが自らの体組織を溶け込ませるようにアカネに吸収させその傷を回復させ始めると鬼鮫が起き上がる。

 

「……ッ()()ですか……小賢しい真似を……」

 

 鬼鮫のその指摘はアガリに対してであった。 アガリが呪印状態2の時、彼は蝙蝠を模したように音波を放てる。 その音波で僅かだが鬼鮫の頭を揺らし怯ませることで、アカネに反撃のチャンスを作ったのだ。

 

「ここからは俺も参戦する…っ!」

 

 真剣な表情のアガリ、しかし

 

「……面倒な奴が増えたな」

 

 ボソッとアカネがそっぽを向いてそう呟いた。

 

「き、聞こえてるぞアカネっ! 味方が来て面倒ってなんだ!? それに俺の聴覚が良いことは知ってるだろ!?」

 

「あ゛~、そうだったかァ? アタシはサシで戦いたかったんだけどなぁ……精々役に立てよ、根暗野郎」

 

 耳を掻きながらとぼけるアカネにアガリが問い詰める。 そんな隙に

 

「水遁・水鮫弾の術っ!」

 

 鬼鮫が鮫型の水弾を飛ばす。 アカネは横に、アガリは上空へ避け2人がいた場所が抉れる。

 

「アイツ……腕が折れたはずだが……っ」

 

 アガリは忍術が飛んできたことに驚きを露わにした。

 

 術を放った鬼鮫は既に腕が折れている様子もなく、平然と次の水鮫弾を放つ。

 

「そこのお嬢さんから頂いたチャクラを回復に使わせていただきました……雑魚が一人増えたところで、戦局はそうは変わりませんよォ!」

 

 水鮫弾は地上にいるアカネをしつこくれ狙い、行動を制限させる。 鬼鮫がアカネしか狙わないため、再度アガリが音波を放ち鬼鮫の感覚を鈍らせようとする……が

 

「なっ……効いてないのか!?」

 

 鬼鮫は平然と術を放ちアカネを追い詰める。

 

「少しだけクラっとしますが、来ると分かっていればこの程度の攻撃……二日酔いの方が手ごわく感じる程ですよォ」

 

 その鬼鮫の言葉通り、彼の動きに鈍った様子はなく所謂我慢できる程度の些細な影響しかないことがうかがえる。

 

「ぜんっぜん役に立たねぇじゃねぇかっ!! カスっ!!」

 

 複数の鮫型の水弾に追い回されるアカネは罵倒をアガリに飛ばす。

 

「雑魚は放っておいて、先にあちらのお嬢さんを──なっ!?」

 

 アカネの処理を優先した鬼鮫だが、不意に激しい振動が体を襲い膝を突く。

 

(頭が割れるような……音波!? しかしあの男にそれほどの力があるようには……っ!)

 

 その鬼鮫が晒した隙につけいるように迫りくる複数の水鮫弾を尻尾で薙ぎ払ったアカネが駆けだす。

 

「よくやったァ、ボケナスっ!!」 

 

 アカネの彼女なりの激励の言葉にアガリが微妙な顔をしつつも

 

「アカネ、行けェ!」

 

 攻撃の指示を出しつつ、音波を放つ。

 

「っ!?」

 

 アガリの音波攻撃が、更に激しさをましたことで鬼鮫の視界が揺らぐとその視界に紅い姿の人影が写る。

 

「さっきのお返しだぁっ!! 鮫野郎ォ!!」

 

 粗暴に振り抜かれる拳。 顔面にそれを受けた鬼鮫は大きく仰け反り後方に倒れ伏す

 

 その前に踏ん張りを効かせ、片足を軸に回り蹴りをアカネに見舞う。

 

「うげぇっ!?」

 

 カウンターに吹き飛んだアカネが崩れた家屋の瓦礫に突っ込むと鬼鮫はアガリに向け術を放つ。

 

「水遁・矢武鮫っ!!」

 

 印を結び、鬼鮫が片腕を豪快に振るうと掌から湧き出た水分が弾丸の様に加速してアガリを襲う。

 

「っ!!」

 

 上空に居るアガリに対してのその水の弾丸は、彼の羽を穿ち飛行能力を奪う。

 

 避けようとしたアガリだが羽が破れたことで地面へと墜落。 その隙を突かれて鬼鮫に首を絞められつつ馬乗りにされる。

 

「ガぁっ……」

 

「先ほどの強烈な音波……彼女が罵倒と共に放ったチャクラの波を貴方が中継して指向性を持たせ増幅させたわけですねぇ? 侮りましたよ貴方を……良い演技だったと褒めてあげます……」

 

 戦いに対する経験が鬼鮫は豊富であり、その経験からアガリの攻撃の秘密はすぐさま看破された。

 

 アカネを行動不能にすればアガリの攻撃も弱体化してしまうのだ。

 

「貴方は蝙蝠、彼女はさしずめイルカですか? 大蛇丸は人を動物にするのが好きだったんですかねぇ……かく言う私も鮫に似ていると言われますがぁ──」

 

 鬼鮫が余裕を見せた瞬間、家屋を吹き飛ばすほどの踏切を見せるアカネ。

 

 しかし

 

「甘いっ!!」

 

 鬼鮫がアガリの首を絞め挙げたまま持ち上げ、アカネの突進に対してカウンターの裏拳を放つ。

 

 咄嗟にガードを試みたアカネだが、自身の突っ込む勢いが足された攻撃の威力に腕を弾かれ大きく仰け反る。

 

 その隙にアガリが抵抗して首を絞める腕を叩くのも気にせず鬼鮫はアガリを地面に叩きつけ足で踏み、印を結ぶ。

 

「水遁・大爆水衝波ァ!!」

 

 術の発動と共に鬼鮫を中心に水があふれ出し、巨大な水球を形成する。

 

 水の流れで、鬼鮫と距離の離れたアカネはアガリが一際濃いチャクラで形成された水で覆われていることに気がつく。

 

「彼に貴方の音波が届かないよう、この水球の中でもより堅牢な水牢を用意しましたよ……さぁイルカのお嬢さん、長を助け出せますかねぇ?」

 

 試すかのような鬼鮫の挑発にアカネは……

 

「そいつの助けなんかなくたって勝てらァ!!」

 

 髪と尾びれを使い、高速で水球内を泳ぎ鬼鮫へと接近する。

 

 しかし

 

「水遁・千食鮫っ!!」

 

 鬼鮫が数え切れないほどのチャクラで形成した鮫を解き放つ。 地上とは違い、水中でのその弾速は速くアカネを執拗に追い回す。

 

「流石イルカ、良く逃げますねぇ……しかし時間を掛ければこの男がおぼれ死にますよォ!」

 

 鬼鮫のその言葉に添うように、苦しそうにもがくアガリ。 胸を押さえつけられたまま水球内の水牢に閉じ込められたことで息は殆どないも同然であった。

 

「チィっ!! うっとおしいっ!!」

 

 鮫を撒こうとするアカネだが、チャクラを鬼鮫に吸われアガリからの治療も充分ではなかったためその動きが段々と鈍り始める。

 

(黙雷悟……奴がどんなつもりでここに落としたのか定かではありませんが……恐らく彼のご期待には応えられそうにないですねぇ)

 

 不敵な笑みを浮かべる鬼鮫。 その瞬間、鮫の一匹がアカネの脚を捕えて噛みつく。

 

「アグッ!?」

 

 動きが止まったアカネに次々と鮫が群がる。 その様子を眺めていた鬼鮫は

 

「さて……後はどうにかしてアジトに戻りますか……」

 

 そう呟いた。

 

 瞬間

 

「どっせぇえいやぁああっ!!」

 

 無数の鮫に群がられてたアカネを中心に、超音波が発生し鮫たちをまとめて薙ぎ払い消滅させる。

 

「何!?」

 

 その光景に驚きを露わにする鬼鮫。 

 

 腕や足などの肉が一部削がれたアカネはそのまま血を流しつつも好機到来と鬼鮫に向かって突進する。

 

「己を餌に攻撃を集めさせてまとめて対処するとは驚きですが、学びませんねぇ貴方もっ!! 単純な力比べでは私には敵いませんよォ!!」

 

 突っ込んでくるアカネに向かい打つように鬼鮫は印を結ぶ。

 

「水遁・水鮫刃」

 

 己の右腕に、鮫状のチャクラを纏い構える鬼鮫。

 

オラぁアアアアア!!!」

 

 アカネはそんな鬼鮫に向かい、右手を振りかぶる。

 

「貴方の腕ごと、噛み千切ってあげましょォ!!」

 

 鬼鮫とアカネが同時に拳を突き出す。

 

 鬼鮫の腕に纏った鮫状のチャクラがアカネの拳を噛み砕こうとする。

 

 

 が

 

 

──パンッ

 

 

「なにっ!?」

 

 鬼鮫の右腕が一部破裂しその腕に纏ったチャクラが吹き飛ぶ。

 

 そして

 

「私たちの勝ちだァ!! 鮫野郎ォォォォオオっ!!

 

 アカネの渾身の拳が鬼鮫の頬を捕える。

 

 メリメリと音を水中に響かせ、擦りつけるように振るわれる拳。

 

 そして再度

 

 

──パンッ!!

 

 

 破裂音が響き、アカネのまるで何かが爆発したような威力の拳に吹き飛ばされ鬼鮫は水球から飛び出る。

 

 水球から飛び出た勢いのまま地面を数度跳ね、暗隠れの高層の建物の軒先にぶつかり大きく瓦を弾け飛ばした。

 

 鬼鮫にダメージが入ったことで、水球と水牢は解除され多大な水が里に流れ出る。

 

 水牢から解放され水に濡れた地面を転がったアガリは大きくせき込みながらもフラフラと立ち上がる。

 

「ガハッ……死ぬかと思った……」

 

 立ち上がったアガリに対してアカネが近寄り背を叩く。

 

「チッ!!」

 

 舌打ちしながら叩いたその威力にアガリが飛びあがるも

 

「あの鮫まだ息してんぞっ!! チンタラしてねぇで止めを刺しに行くぞ」

 

 ボロボロになったアカネは足を引きずりながら鬼鮫の元へと歩く。

 

 そんなアカネにアガリが追い付き、肩をかして軒先から剥がれ落ちた鬼鮫の元へと向かう。

 

 2人が鬼鮫の元へと着くと仰向けで地面に倒れた状態の鬼鮫は身体を動かす様子もなく静かにしていた。

 

 近くに2人が来ると、鬼鮫は小さく笑い始める。

 

「……クックック……まさか……日に二度もこの私が負けることになるとは……屈辱ですねぇ」

 

「……二度……?」

 

 殆ど力が残されていない鬼鮫のか細いその呟きにアガリが問い返した。

 

「黙雷悟……貴方たちの仲間でしょう?」

 

「黙雷悟……誰だそれ?」

 

「……」

 

 その鬼鮫の口から名前が出たことで、アカネは疑問符を浮かべアガリは黙り込む。

 

「最後の攻防……あの破裂は貴方の細胞の仕業ですねぇ……見事でしたよ……」

 

 鬼鮫はアガリに視線を向け彼を称えた。

 

「遠隔でも貴方の細胞は音波を受け増幅させることが出来る……彼女を回復させた時と私に首を絞められた時、互いに細胞を仕込んでいたんですね?」

 

「……ああ、呪印状態2の俺たちは呪印の力を感知することが出来る。 アカネも俺の意図に気づいてくれると踏んでいた」

 

 鬼鮫の言葉に肯定を示したアガリ。 しかし

 

「……てめぇの思い通りになるのは面白くねぇな……っ」

 

 ゲンナリしたアカネが不貞腐れたように呟いた。

 

「勝てたからいいだろう!?」

 

「ハァ……」

 

「あからさまなため息は止めろ!!」

 

 アガリとアカネが騒ぎ始めると、鬼鮫はじれったいとばかりに

 

「コントはそこまでで、サッサと止めを刺すなりしてくれませんかねぇ?」

 

 割り込んで話しかける。

 

 その言葉にアカネが

 

「……そうだな、コイツ暁とかいう今度の戦争の敵だろ? サッサとやっちまおうぜ」

 

 アガリのポーチからクナイを取り出そうとする。

 

 しかし

 

 そのアカネの腕をアガリが掴み、取り出すのをやめさせると彼はそのまましゃがみ込んで鬼鮫へと問いかける。

 

「干柿鬼鮫……お前に聞きたいことがある」

 

「何ですか……情報ならそう簡単に──」

 

 

 

「お前は何で戦っている?」

 

 

 

「っ!? ……またそれですかっ?! 貴方たちは一体私に何を求めているんですか?!」

 

 アガリのその問いかけは悟がしたものと同一のものであった。 その執拗にかけられる問いに鬼鮫は大声で言い返す。

 

「私がどんな理由で戦おうと勝手でしょうっ! いちいち癇に障るっ!!」

 

「……干柿鬼鮫、お前は何を望んでいる?」

 

「っ……貴方も分からず屋ですねぇ!!」

 

「始め、お前の侵入を結界が感知して赴いた時……お前がキョウコを人質に取ろうとしていたのを見た……だが」

 

 アガリは真っすぐ鬼鮫の目を見る。

 

「戦ったから分かるがその時の動きはお前にしてはかなり遅かった……俺が間に割り込めるほどに。 ……キョウコを見て、人質に取ることを僅かに躊躇したんじゃないのか?」

 

「っ……何を」

 

「忍びとして優秀なお前が、人質を取ることに乗り気じゃない……本当に今のお前は、納得して闘っているのか?」

 

「……」

 

 鬼鮫はアガリの見透かしたような言動に黙り込む。

 

(確かに『なりふり構ってはいられない』……『申し訳ない』……そんなことを思う必要などなかった……そんなこと思う必要もなくサッサと動けばよかった……)

 

 鬼鮫は自分が盲目の少女を人質とする手段を躊躇したことを認める。

 

 なぜ自分はあの時、躊躇したのか? 鬼鮫は自問自答を始めようとするが

 

「命を奪うことに抵抗があるんだろ?」

 

 アガリがすぐさまその答えを突きつける。

 

「はぁ? こんな奴がそんな軟弱なわけないだろ?」

 

 アカネの口出しにアガリが答える。

 

「干柿鬼鮫、お前はとても強い。 だからこそ納得できないことだろうとこなせてしまうんだろう。 ……俺は血霧の里でのお前の話を知っている、かつて仲間殺しの任についていたことを」

 

「……私も有名人ですねぇ」

 

「同じ出身だからな。 命を奪うことに抵抗がある自分を偽ってまで、必要に迫られて仲間を殺し続け……そして今もお前は自分を偽っている。 お前は本当は何を望んで戦ってきたんだ?」

 

「…………」

 

 アガリのその問いかけに沈黙した鬼鮫は

 

 

 

「……わかりません……」

 

 

 

 か細くそう呟く。

 

「何で……私は闘ってきたのでしょうか……? 偽りを演じる苦しみから解放してやると言われ……マダラさんに着いていきましたが、結局は暁でも私は自分を偽り続けてきた。 私は今も昔も変わらずにいる。 ……月の眼計画は全ての人間に幻術をかけ、世界を1つにする……しかしその計画の為に死んだ人間はもはや夢を見ない。 私は……一体……」

 

 鬼鮫の自問自答。 本当に……自分が何を望んでいるのかわからない鬼鮫は記憶を振り返りぼそぼそと呟き続ける。

 

 仲間殺しの任で、殺した女性の顔がチラつく。 笑顔で自分に話しかけてくれていた彼女を、鬼鮫は殺した。

 

 そんなことを……したくないと思っていたのに……己を偽って。

 

「マダラの計画それこそ、偽りじゃないのか? 幻術だということはマダラの意志1つで全てがひっくり返るんだ。 そして幻術である以上……その先はない。 今考えられる限りの幸せを夢見たとしても、未知なる未来はないんだ。 人は思わぬ出会いで、成長する……その機会が奪われるのは駄目だ」

 

 アガリは鬼鮫に語りかける。

 

「俺は思いがけない出会いを経て今ここに居る。 鬼鮫、お前にもそう言う人間がいたはずだ……そんな出会いを失くすマダラの計画が本当に正しいと言えるのか?!」

 

(出会い……ですか……)

 

 鬼鮫は……1人の男の事を思い出す。

 

 自分と同じ境遇のその男がかつて鬼鮫に言っていた『霧の中を迷い、自分で行き先も決められないごろつき』という言葉を。

 

「……なるほど、()()は良く私のことを見ていたんですねぇ」

 

「あん?」

 

 誰かに向けたその言葉、アカネが不審そうにするがお構いなく鬼鮫は言葉を続ける。

 

「アガリとか言いましたか、貴方……私にもいましたよ、思いがけない相手……私に殺されることなく、自身の思いを貫き通して死んだ……仲間が」

 

 クククと笑う鬼鮫に、アガリは

 

 

 

「なら次は俺たちの仲間にならないか?」

 

 

 

 そう言葉を投げかける。

 

 アカネと鬼鮫がポカンとするが

 

「つまり暁を裏切り、暁と戦えってことですか? そんなの──」

 

 鬼鮫はその考えを否定しようとする。 しかし

 

「いや、別に戦わなくてもいい。 うちの里に来ないか?」

 

 アガリはその否定を跳ねのけ鬼鮫を誘う。

 

「……私を仲間にしておいて戦わなくてもいいですって?」

 

「無理に戦う必要はない、別に命の奪い合いがこの世界の全てじゃないからな。 畑仕事でも建設作業でも、お前の力は役に立つだろうし……あと」

 

「……あと?」

 

「魚料理とか作れるならなお嬉しい。 実は仲間たちが肉ばかり好む上に調理する者も魚が嫌いで草食だから食が偏ってるんだ……俺は本当は魚介系が好きなんだけど」

 

 アガリのその言葉に鬼鮫は気の抜けた表情を作る。

 

「……私はあまり自炊してこなかったので……料理はからっきしですよ……」

 

「そ、そうか……」

 

「ですが……そうですねぇ

 

 

 

『──干柿さん、こっちへ来て一緒に食事しませんか?』

 

 

 

 時間を頂けるのであれば……料理を覚えてみるの悪くはないと思いましたよ」

 

「つまり……そうか!! ぜひ頼む!!」

 

 鬼鮫の返事にアガリは笑顔を作る。

 

「まさか……霧隠れの怪人の異名を持つ私に炊事を求めるものがいるとは……思いがけないこともありますねぇ」

 

「……鬼鮫、俺とアンタは同じ霧隠れの出身だ、だが同じくその故郷を捨てている。 それでも今、生きているんだ。 

 

 生きる理由なんて、戦い以外にも他に幾らでもある。 一緒に生きていこう」

 

 アガリはそう言うと、鬼鮫の身体を支えて立ち上がらせようとする。

 

 そんな2人を面白くないと言った様子で見ていたアカネに鬼鮫が

 

「しかしお嬢さん……アカネさんと言いましたか? 貴方はこんな甘い考えに賛同するんですか?」

 

 そう問いかける。 アカネは

 

「はぁ……言っただろ? そいつはクソチビバカマヌケクソ貧弱弱虫メソメソチビ野郎だが……長だとは認めているってな、長がそう判断したなら……アタシは口を挟まねぇよ」

 

 そう言ってアガリの反対側から、鬼鮫を支える。

 

「……なるほど、アカネさん、私も貴方の言い分を理解できましたよ」

 

「ちょっとぉ!? 滅茶苦茶な悪口の方を理解したように聞こえるんだが!?」

 

「事実だろ」

 

「うっぐぉ……そ、そう言えばアカネ! お前サトリ様の事もさっき酷い言い様をして──」

 

「ケッこの地獄耳が……騒いでないで、非戦闘員の奴らをサッサと里に呼び戻せよ。 ……全くこの調子じゃ忍び連合軍に召集されてんのに、アタシたちだけ遅れていくことになるなぁ」

 

 呆れた様子のアカネの指摘に、アガリが図星を突かれたように項垂れる。

 

「笠も羽織も戦闘でボロボロだぜ? 只でさえ、それが見つからねぇから仲間だけ先に向かわしてお前と側近のアタシが里に残ってたのによォ? どうすんだ」

 

「………………連合軍に推薦してくださった火影様に遅れると連絡を入れます…………ゴメンナサイ」

 

「……貴方たちも面白いものですねぇ」

 

 干柿鬼鮫は自分を挟んだ2人の言い合いを楽しんで聞く。

 

 自分へと差し出されたその手を掴んだことを後悔しないように

 

 過去に差し伸べられた手を振り払った後悔を忘れないように

 

 自分を理解してくれていた二人一組を組んだ彼に胸を張っていられるように

 

(思いがけない出会い……ですか、なるほど()()が無くなるとはなんとも惜しい……)

 

「フフフ……」

 

 干柿鬼鮫は自身の乾ききっていた願望を少しずつ満たしていこうと思うのであった。

 

 

 

~~~~~~

 

 

 

「ああ分かった……暗隠れの長は遅れるか、彼らの忍びはこちらに着いているから大きな問題ないだろう」

 

 忍び連合軍の円卓で綱手は受け取った連絡に了解を示す。

 

「そんな得体の知れない里にも召集をかけるとはな……」

 

 雷影エーのその不満そうな言葉に

 

「彼らはほぼ元大蛇丸の実験体たちで構成されている里だ。 崩壊した木ノ葉にも復興支援を行い、こうして世界の為に闘う意志を示してくれている。 共に戦うのにそれ以上の理由などいらん」

 

 綱手はキッパリとそう言い返し、話し合いを進める。

 

「他にも雪隠れの忍びも、支援物資を届けてくれるそうだ……戦力として直接力になれずとも今、マダラを相手に皆が、世界が力を合わせようとしている。

 

 

 この戦い勝つぞ……!」

 

 綱手のその気合の入れた言葉に、五影たちとその場に居合わせた者たちが戦いの決意を固めるのあった。

 

 

 

 

 

 

 

 

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