目指すは忍ぶ忍者   作:pナッツ

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34:突起戦力

 はるか上空、地平線が丸みを帯びて見える高度で黙雷悟は宙に胡坐をかいて瞑想をしていた。

 

 規則正しく聞こえる呼吸音と、ブレることのないその姿勢は仙人としての『動くな』の極致に立ち自然エネルギーを体内へと取り込むのに完璧な物であった。

 

「……」

 

 ふと悟は目を開くと眼下に広がる雲の隙間から見える大地を見下ろす。

 

「感知で感じられるチャクラが慌ただしくなってきたな……雲にある忍び連合軍本拠地とオビトのアジトは、陸地を通ると音隠れ湯隠れ霜隠れで繋がっている……既に避難勧告も出ているから忍び以外の気配は他国に散っている……そろそろか」

 

 胡坐を解いた悟は噛みしめるように拳を握り、息を吐く。

 

 転生……いや、この世界に悟が来てから15年余りの時間が経ち、そしてその集大成ともいえる事変が今まさに始まろうとしていた。

 

(緊張……しているのかい?)

 

 胸中の黙の語りかけに悟は、小さく頷く。

 

「……俺は、俺たちは強い。 それでも、この先の戦いで全ての人間を守れる訳じゃない……全力を尽くしても多分、零れ落としてしまう命がある……そう思うと流石に怖いかな」

 

(雷……)

 

「だけど……例えそうだとしても、俺には信じられる仲間たちがいるっ! ……正直、俺自身は世間から見れば超の付く犯罪者だから向こうがどう思ってるかは定かじゃないけどな ……俺1人じゃ無理なことでも皆が居れば救える命は、さらに増える……だからあとは……只俺の出来る……したいことを成すだけだ」

 

(……そうだね、今まさに忍界はターニングポイントに立たされている。 本来介入するはずのない黙雷悟(僕ら)、そして()()()()()()()()()()()()……皆がより良い未来の為に動くんだ、相手が何者であろうと世界は必ずよりいい方向に進むはずさ)

 

「……ああ……」

 

 黙の言葉に悟は噛みしめるように深呼吸を行う。 

 

 そして

 

 

 

「行くぞっ!!!」

 

 

 

 その掛け声と共に、矢の如く黙雷悟は地上へ目掛け加速していった。

 

 

~~~~~~

 

 

 第四次忍界大戦……その火ぶたは切って落とされた。

 

 雷の国、雲隠れから連合軍の大連隊が一斉に駆け出し空から見れば人の波が蠢きそれぞれが統率の取れた動きで規則正しく進行していく。

 

 第五部隊まであるその巨大な集団は、それぞれのルートを通り目標である仮面の男のアジトへと向かう。

 

 そしてその動きを察知しているかの如く、遠方の土地からもいくつかの集団が大連隊を向かい打つべく大地を駆ける。

 

「思ったよりもこちらの駒の質が悪い……この戦争、かなりの不利を強いられるかもねぇ」

 

 暁のアジトから歩み出ながらそう呟くカブト。 紅い外套に身を包み、後方で支援の白蛇を揺らす彼に紫の衣と白い紋様の仮面を着けたトビが声をかける。

 

「本来の目的である八尾と九尾を引きずり出す戦力など、始めからゼツと俺だけで十分だったのだ。 所詮はこの戦争も俺の計画の一部に過ぎない、最終的に月の眼計画さえ完遂されれば戦争の結果などはどうでもいい」

 

「そうは言ってもねぇ……まぁ……やる以上は僕も全力を出そうかな。 ……このなりふり構っていられない状況のおかげか、思わぬ()()もあったし……ね」

 

 そう不敵に笑みを浮かべたカブトに、左目の輪廻眼をチラリと向けたトビは興味の無いような目線で今後の動きの説明に入ったのであった。

 

 

~~~~~~

 

 

 暫くすれば、大地に爆発音が響く。 連合軍の奇襲部隊とカブトの率いる穢土転生体の忍びらとの接敵により戦闘が始まったのだ。

 

 そんな彼らの交戦の最中、その下地中深くを謎の大群が行進していることを忍び連合軍が突き止める。

 

 そして黄ツチ率いる第2部隊はその大群を地中から堀起こすために、印を構える。

 

「「土遁・開土昇掘っ!!」」

 

 優秀な土遁使いである黄ツチと黒ツチによる合同忍術は大地に巨大な山を形成し、その山の噴火口ともいえる位置からおびただしい数の白ゼツを空へと打ち上げた。

 

 かつて悟が同様の術で畑から農作物を掘り起こしたのとは規模の違う量のゼツが噴き出る。

 

 その光景に好機とばかりにかかった掛け声と共に、連合軍の忍びらが攻撃を加えようとした

 

 

 その瞬間

 

 

「GYAAAAAAAAAAA!!!」

 

 

 まるで怪獣の咆哮なような音と共に、上空の雲をかき分けるよう巨大な岩の巨人が地面目掛け落下をし姿を現す。

 

「「「「!?!?!?!?」」」」

 

 忍びらがその存在に驚き、動きを止めた瞬間

 

「木遁・木龍咆哮砲ォっ!!」

 

 岩の巨人の両腕に備え付けられた木の龍の口から圧縮されたチャクラの砲弾がそれぞれ放たれる。

 

 巨人の着地と共に術が炸裂し、吹き上がっている白ゼツの過半数が消し飛ぶ。

 

 なおも土遁で掘り起こされ続ける白ゼツ、その処理のために繰り返し放たれるチャクラの砲弾。 そんな光景に驚きで動きを止めていた忍びらが自らも攻撃に参加しようとしたとき

 

 声が響く。

 

「あ~こんにちはぁ!! 忍び連合軍の皆さまぁ!!」

 

 チャクラを使った拡声術で周囲に一部の人間が知った声が響く。

 

 その女性に聞こえる声に、部隊に居たキバやシノ、ネジやヒナタがそれぞれ思い思いの表情を浮かべた。

 

「あいつ……っ! こんな形で俺様や赤丸よりも目立ちやがってっ!!」

 

「……ここまでの術を使い、尚且つこの場面で緊張感の無い声を発する人間など俺は1人しかしらん、なぜなら──」

 

「フッ……やはり来たか」

 

「やっぱり……来てくれたんだね……っ!」

 

 岩の巨人の肩から、紅い雲の模様が入った外套をなびかせた黒髪の人物が姿を現す。

 

 

 

 

「私こそ本当の『暁』、黙雷悟だっ!! この戦争、横槍を入れさせてもらうぞォ!!」

 

 

 

 

 そう叫んだ黙雷悟のその言葉によって様々な感情が忍び連合軍を走った……

 

 

~~~~~~~

 

 

 少し離れた位置からその様子を見ていたはたけカカシはため息をつく。

 

「悟……全くアイツは本当に……何してんだかね……」

 

 呆れた様子のカカシに近寄り、声をかける人物が2人。

 

「アイツはアイツのやりてぇことをやってるだけだろうな……少なくとも俺たちの敵になるつもりはねぇみてぇだ」

 

 『忍』の額当てを着けた桃地再不斬のその言葉に

 

「やっぱり来ました彼……この戦争が終わったら色々と説教しないと行けないと思っていたので姿を現してくれて良かったです」

 

 仮面の下で顔に恐らく笑顔を張り付けた白が応える。 明らかに口調とは裏腹に怒っている様子の白の声にカカシが

 

「まあまあ、白くん……再不斬の言う通りでここは一旦あのバカに構うのは止しておこう……全く自分の立場を分かってて()()をやってるなら質が悪いね」

 

 そう言って「どうどう」と怒りを修めるようにたしなめる。

 

「……わかっていますよ、カカシさん。 彼は木ノ葉の火影候補であった志村ダンゾウ殺害の主犯……ですが今は、ええ……」

 

 そのカカシの言葉に白は分かっていると言った様子で目の前に立ちふさがり始めた穢土転生体の忍びらへと目線を向けた。

 

 そして白の言葉を引き継ぐ様に、再不斬が口を開く。

 

「同じ只の忍びだ。 馬鹿はほっといて行くぞカカシぃ、足引っ張るんじゃねぇぞ!!」

 

「……ま、その言葉、ブランク増し増しの鬼人に言われたくはないな……」

 

 写輪眼を披露したカカシの号令の下、穢土転生体の忍びらとの戦いが始まった。

 

 

~~~~~~

 

 

 黙雷悟は岩状鎧武の肩から、様々な情報を叫びまくっていた。

 

 曰く白ゼツには、見えないぐらいの胞子を相手に着けチャクラを吸い取る術があること。

 

 穢土転生体の忍びらは封印するのがベストであること……などなど。

 

 また、すぐに現れ始めた血継限界を持つ穢土転生体に向け悟は木分身の術に岩状鎧武のコントロールを任せ相対する。

 

「アレは名前は忘れたけど爆遁使いに、灼遁使いか……被害が広がる前に処理させてもらうぞっ!!」

 

 原作通り現れた2人の血継限界を持つ忍びのガリとパクラを前にして悟は印を結ぶ。

 

「木遁・木龍の術」

 

 二匹の木龍でその2人の相手をとる悟だが、周囲の光景に小さく舌打ちをする。

 

(知らない穢土転生の忍びが結構いるな……原作に映らなかった奴らか、増えている奴らなのか判断できないが早い所封印していかないと被害が広がる)

 

 そうして片手間でガリとパクラを木龍の口で捕まえ、そのまま木遁で封印を済ませるとどこからか口寄せの音が鳴り響く。

 

 ボボンと音が鳴れば、現れた幾つもの棺桶から新たな穢土転生体が姿を現す。

 

 その姿は……

 

「チィッ……面倒な見たことある奴らばかりだな……全く」

 

 再不斬が呆れそう呟くのも頷ける、霧隠れ忍び刀七人衆の前任者たちであった。

 

 その中で呼び出されたうちの1人・鬼灯満月は巻物を広げ、各々の得物である双刀ヒラメカレイを除いた名刀六つを口寄せし自身は

 

 その中から『断頭・首切り包丁』を担いだ。

 

「おい、鬼灯の小僧……人の刀を担いでんじゃねぇぞ」

 

「……」

 

 自身のかつての得物を持つ鬼灯満月の様子に再不斬が苦情を言うも、感情を抑制された穢土転生体の満月は無言で首切り包丁を構える。

 

 かなりの手練れの登場に戦場の空気に緊張が走り始めた時

 

 

 

「氷遁・一角白鯨っ!!」

 

 

 

 忍び刀たちを押し潰すが如く、巨大な氷の白鯨が地面を揺らした。

 

 突然のその奇襲は、人工尾獣・雪羅の力を解放し髪を白く変化させた白の仕業であり

 

「再不斬さん、こいつらに問答は通じませんよっ!!」

 

 そういうと追い打ちを掛けようと印を結び始める。

 

「お前の嫁さん、容赦ないな……まっ今はそれが正しいんだが、普段のお前の気苦労を察せられるよ」

 

「……余計なこと言うなカカシ」

 

 容赦のないその光景にふと気が緩んだカカシと再不斬。

 

 

 しかし

 

 

 その刹那、その場で唯一はたけカカシと感知能力に突出した黙雷悟のみが

 

 

 言い知れぬ不安感に襲われ、悪寒を感じる。

 

 

 

(っ!?)(この気配は……っ!?)

 

 

 

 

 そして次の瞬間、巨大な氷の白鯨が無数に裂け中から高速で飛ぶ斬撃が周囲を襲った。

 

「ッ……回避だァ!!」

 

 カカシのその叫びと同時に辺りを風の刃が蹂躙した。

 

 

 

 

 木々は豆腐の様に裂かれ、一部の忍びは手や足を切断され呻く。 中には体を両断された者もおりその斬撃の恐ろしさが一瞬で知らしめられた。

 

 

 

 

 白鯨の破片が放つ白い霧の中から、一人の忍びがゆっくりと歩み姿を現す。

 

 その忍びの人影を確認した白が、術を使い攻撃を繰り出そうとした瞬間

 

 彼女の認識の及ばない速度でその眼前にクナイが二本既に放たれていた。

 

 秒にも満たない瞬間に、クナイが白の顔面を穿つその刹那

 

──キンッ

 

 甲高い音を響かせその二本のクナイは白の皮膚に触れる寸前ギリギリで弾かれる。

 

 

 唯一この場で、その高速の攻撃に対応できる動体視力を持つのは…… 

 

 

 黙雷悟とはたけカカシのみであった。

 

 

 白の前に立ち並んだ二人は写輪眼を見開き、その相手を睨みつける。

 

 その間にやっと自分が攻撃に会いそれを2人に守られたことを認識した白は警戒の色を強め2人に問いかける。

 

「今……一体何が……ッ!? 相手は──」

 

 その白の言葉に有無を言わさず、カカシは周囲に叫ぶ。

 

「再不斬、白っ!! 部隊と忍び刀の連中の相手は任せたぞ……っ」

 

 そのカカシの言葉に再不斬が反応を示す。

 

 

「カカシ、何言って──

 

 

 次の瞬間にはカカシと悟はその場から高速で消え去り、その苛烈な攻撃を行う忍びを引き連れその場から遠く離れていた。

 

 カカシと悟が全力で雷遁チャクラを活性化させたその動きを辛うじて認識できた再不斬は小さく舌打ちをし

 

「たくっ……しょうがねぇな……白っ!!」

 

 白へと声をかけると、白鯨の攻撃で塵と成っていた忍び刀衆にむけ駆けだす。

 

「謎の人物の相手はあの2人じゃないと無理ってことですね……ならば彼らに負担をかけないよう、こちらを早々に片付けなければっ!」

 

 白も再不斬の言葉を理解し、内なる力をさらに開放して駆けだすのであった…… 

 

 

~~~~~~

 

 

 木々や岩など何の障害もないように切り裂く斬撃がカカシと悟を追い、2人は写輪眼による見切りと雷遁チャクラによる高速移動で辛うじてそれらを躱しつつ戦場を離れる。

 

 相手があえて二人を狙うのは、二人を独りで抑えることが出来ると加味しての行動なのだろう。 部隊長のカカシと、明らかに突起戦力となる悟。 そんな2人に防戦を強いるその忍びはふたりでも捉えることが出来ないほどの高速で移動し翻弄する。

 

「……明らかに頭一つ抜けた強さの忍び……カカシさん、相手が見えてますかっ?!」

 

 跳ぶ斬撃の猛襲に生傷を作りながらも、悟がカカシへと問いかけるとカカシは

 

「……俺もハッキリと見えてはいないが……相手に心辺りは……ある」

 

 そう言い顔を曇らせた。

 

 そのカカシの様子に悟が疑問を浮かべるも、相手の攻撃が止むことはない。 鋭い斬撃に時折混ざる鋭いクナイの投擲、悟をもってしてもそのシンプルな攻撃はひとつひとつが命取りとなるほどの脅威を孕んでいた。

 

 その対処に苦労する悟は、明らかに原作にはいなかったであろう相手の存在を確かめるために、全力で挑むために手を合わせる。

 

 瞬間、仙人モードとなり千手柱間のような隈取りを宿した悟は手ごろな石を手に持ち高速で移動する敵に目掛け全力で投擲する。

 

「せいっ!!!!」

 

 その投擲は敵の次の着地予定の木を粉々に弾け飛ばし、相手に地面への着地を余儀なくさせた。

 

(石で木を吹き飛ばすとは……悟も大概想定外の強さだが、しかし──)

 

 カカシは着地し動きを止めた忍びの姿を目にして、汗を垂らす。

 

 その姿に顔を若干引きつらせ、眼を細める。 認めたくはない、そんなはずはない、そう思う心の葛藤にしかし忍びとしての理性がその敵の存在を確かに認めている。

 

(穢土転生……死者を使役する術であるなら……当然、居る可能性も……っ)

 

 辛い辛い過去を思い出すかのように、苦虫を嚙み潰したような表情になるカカシ。 悟はその相手の特徴を見極める。

 

 

 木ノ葉のベストと、少し特徴的な白と赤の模様が入った袖。 カカシと似た体格のその人物は、奇しくもカカシと同じ頭髪の色をしていた。

 

 

「……まさか……そんなっ」

 

 

 カカシのその呟きに、悟もその姿を見たことで相手が誰なのかはっきりと認識する。

 

 

「ああ、なるほど……このアホみたいな強さにも納得が行きましたよ……」

 

 悟もその人物の強さに、ある種の諦めを抱く。

 

 何故ならその人物を評する言葉を悟は知っているからだ。

 

()()()()()()()()()……か……少し相対してそれが嘘じゃないと分かるぐらいに納得だ、ホントとんでもない人物呼び覚ましてくれたなカブトめェ……っ」

 

 ゆらりとクナイを構えるその相手にカカシは喉の奥から言葉を絞り出した。

 

 

 

 

 

「父さん…………っ」

 

 

 

 

 

~~~~~~~

 

 

 

 戦場の様子を駒で把握しているカブトは穢土転生体らを操りながら一人ほくそ笑んでいた。

 

(質の良い穢土転生体の数があまり揃わなかったが……まあ、おかげで僕ががむしゃらに動いた分の見返りもあった……まさか)

 

 カブトは一つの駒を示す碁石に視線を落として笑みを浮かべる。

 

(木ノ葉の白い牙、()()()()()()を穢土転生できるとはねぇ……)

 

 カブトはサクモの制御に集中しながら相手取る悟とカカシの苦戦を感じ取りその笑みを増す。

 

(はたけカカシと、まさに規格外のイレギュラーである黙雷悟相手にここまでとは……しかし反応速度や精度が飛び抜けすぎて僕の制御ではむしろ実力を発揮できていないな……仕方ないね、ここは一度人格を戻してオートで戦わせるか……強い駒な分、僕への負担も大きい)

 

 自分の制御が帰って足かせになっているという事実にプライドを少し傷つけられたカブトは、サクモ制御をオートへと切り替える。

 

 

 その瞬間、戦地で戦っていたサクモは人格を取り戻した。

 

 

 自分の持つクナイがチャクラを纏うとそれを振るい斬撃を飛ばす。 その動きはサクモの慣れ親しんだ動きであり、それを身体が勝手に放っている相手にサクモは目を向けた。

 

 そしてすぐさま、サクモは現状を把握する。

 

「これは……二代目様の穢土転生か? そして今俺の目の前にいるのは……っ」

 

 サクモは自分の意志で辛うじて動かせる口を使いカカシへと声をかける。

 

「カカシっ! ……お前はカカシなのか!?」

 

 猛烈な攻撃の嵐の中、サクモからの問いかけにカカシは一瞬動きを鈍らせる。

 

 その隙を突くような容赦のない斬撃に、岩状手腕で攻撃を受け止めた悟はカカシにアイコンタクトを取る。

 

 まるで盾となり時間を稼ぐと言わんばかりの悟の表情。

 

 悟の意図を察したカカシはサクモの問いに応える。

 

「っ……すまん、悟。 そうだ、父さんっ!! 俺だっ!!」

 

 カカシを認識したサクモは、そのまま容赦のない攻撃を続けながらもカカシへと問いかける。

 

「何がどうなっている!? どうして俺は穢土転生されているんだ……っ?」

 

「戦争だよ、父さんっ! 敵が父さんを穢土転生して戦わせているんだっ」

 

「っ……!?」

 

 息子であるカカシからの言葉にサクモは衝撃を受ける。 自身の息子が戦争に参加し、そして父である自分と戦うことになるなど…… 

 

 

 

「そんな……俺は…………俺の行動は…………誰の為にもっ……!!」

 

 

 

 後悔に苛まれるかのようにそう呟やくサクモ。 味方である木ノ葉からの誹謗中傷で自殺した経緯を持つサクモは世の理不尽に打ちのめされる。

 

 

 しかし

 

 

「聞いてくれ、父さんっ!! 俺は父さんの事を恨んじゃいないっ!!」

 

 カカシのその叫びに、サクモは顔を挙げる。

 

「カカシ……?」

 

「父さんは何時だって誰かの為に闘ってきたっ!! そんな姿に、俺も憧れていたんだ……っ確かに父さんが自殺した時は、里も憎んだし父さんの考え方も否定していた。 だけど……仲間がそんな俺を立ち直らせてくれた、父さんを英雄だと言ってくれたんだっ!!」

 

「……っ」

 

 カカシの言葉に、サクモは衝撃を受ける。 しかしそれでもサクモの動きは感情と切り離され熾烈な攻撃は容赦なく飛んで来ていた。 会話に集中させるために盾となっている悟はその攻撃の質に汗を垂らす。

 

(穢土転生ってのは全盛期そのままの動きが出来るわけじゃないはず、なのにこのチャクラの斬撃に正確なクナイや手裏剣の投擲。 俺の全力もってしても防御に徹しないと……っ)

 

 仙人モードに写輪眼、その二つの力をもってしてもサクモの攻撃を捌くのは容易ではなかった。 その研ぎ澄まされた攻撃一つ一つがサクモの忍びとしての練度を物語っている。

 

(僕たちの力を以てしても、ここまでの苦戦を強いられるとはね雷。 単身で戦えば尾獣にすら勝てるんじゃないのかな、サクモさんは……)

 

(力というよりも、技術……研ぎ澄まされた技術が半端ない……って感じだ。 正面から戦えれば俺たちの力なら勝てるかもだが、速さで上回られている以上、そう容易にはいかないぞっ……)

 

 悟の中の黙もその出鱈目な強さに、若干慄いていた。 

 

 そんな、只のチャクラコントロールと技術による猛襲に耐える悟を気遣いカカシはサクモに言葉を投げかける。

 

「っ父さん、父さんを止めるにはどうしたらいい!? 何か弱点とかないの!?」

 

 必死に情報を手に入れようとするカカシのその言葉にサクモは、少し唸り

 

「……まだ俺は本気を出していないぞカカシ、弱気になるな」

 

 そう呟くと一旦攻撃の手が止み、サクモの気配が途切れる。

 

 サクモからの返答に悟がため息をつく。

 

「あ゛あ゛……マジヤバい……はぁ……これが本当の強者って奴ですか……カカシさんのお父様、これ、強さだけなら余裕で五影越えてません?」

 

「っ俺も父さんの本気を見たことはなかったからな……忍びとして尊敬してたが、まさかここまでの実力とは……」

 

「このままだと防戦一方ですよ、何かお父様の事で覚えていることとかないんですか?」

 

「……父さんはシンプルな戦闘スタイルで、初歩的な術ばかりを好んでいたとはチョウザさん達から聞いたことはあるが……」

 

「術とかじゃなく本人が強いタイプですね、一番どうしようもないな……こりゃ」

 

 サクモの強さに若干の絶望感を覚えた悟、その次の瞬間。

 

 何かを口寄せする音と共に、悟の眼前にクナイが飛来する。

 

 写輪眼を万華鏡へと昇華させた悟はその瞳力を持ってクナイを見切り弾く。

 

 その次の瞬間

 

 悟の眼前に白い閃光が走った。

 

「っ!?」

 

 直後鋭い金属音と共に、とてつもない衝撃が悟を襲い吹き飛ばす。

 

 吹き飛び地面を転がった悟は自分がカカシにクナイで斬撃から守られその衝撃で二人同時に吹き飛ばされたことを認識すると素早く態勢を立て直し次の攻撃に備え構える。

 

「……今の攻撃が、多分木ノ葉の白い牙の異名の由来ですか……てか、よく今の防げましたねカカシさん」

 

 悟の声掛けにカカシも態勢を立て直して攻撃を受け止め損壊したクナイを放り投げながら答える。

 

「っ昔の事を少し思い出したんだが、先生……ミナト先生が言っていた……先生は父さんから修行を受けたことがあったと……つまり」

 

「四代目火影に修行……ってことは今の攻撃の正体は……」

 

 

「「飛雷神の術……っ」」 

 

 

 二人同時にサクモの術を看破する。 悟の感知に引っかからないほどの隠遁術と飛雷神の術による奇襲。 忍びとして研ぎ澄まされたその絶技に悟は大きなため息をついた。

 

「いや……こんな人相手に良く木ノ葉の連中は誹謗中傷できましたね」

 

「逆に、それしか出来なかったんだろう。 父さんは強すぎた、だが人は1人じゃ生きられない……人間として孤立させて排除するのはある意味理には適ってる」

 

「はぁ……確かにそうですね。 まともに戦って勝てる気しないですもん」

 

 悟の愚痴と共に再度、クナイが数本投擲される。 飛来するそれらには飛雷神特有のマーカーが刻まれており

 

(クナイとの同時攻撃で防御させないつもりか)

 

 悟が攻撃の意図を汲みとると、予め印を結んでいた風遁でクナイを撃ち落す。

 

「風遁・大突破っ!!」

 

 マーカーさえ届かせなければ、飛雷神による奇襲はない。 そう思い込んだ悟は背後で地面が蹴られ爆ぜると音が聞こえ、度肝を抜かれた。

 

「っ!?」

 

 悟が振り向くよりも早く、音速とほぼ同速まで加速したサクモは悟に向け手に持った白いチャクラ刀を振りかぶる。

 

 しかし

 

──バチンっ!!

 

 雷の落ちるようなその音と共に、サクモは後退し再度木々の中に身を隠す。

 

 すると地面にドサッと、チャクラ刀を持ったままの手首が落ち塵となって消えていく光景が悟の眼に入る。

 

「っ……何が──」

 

 状況の理解を優先した悟は背後を守ったのはカカシであり、彼が手に持ったクナイで雷切を放ったことを認識する。

 

 サクモがクナイで悟の視線を誘導した瞬間、カカシはサクモの戦略に感づいていた。

 

 誘導した視線の反対側に飛雷神で速やかに移動し、シンプルな身体強化による跳躍で一気に近づき狩りとる。

 

 その動きを予測したカカシは、全集中力を持って雷切によるカウンターを行ったのだ。

 

 地に落ちたチャクラ刀を拾い上げたカカシは、懐かしむような眼でその刀を見る。

 

 刀身の折れたその刀を目にした悟は

 

「凄いです……よくサクモさんの攻撃にカウンターを合わせられましたね。 しかも相手の刀も折るなんて──」

 

 カカシの神業に素直に称賛の声を挙げるがカカシはそれを否定する。

 

「いや……口寄せして呼び出された()()()()()()()()()()()()()。 ……俺は父さんの攻撃の軌道を予測して雷切をほぼ置いていただけのようなもんで……たまたまそれが腕に当たっただけだよ」

 

「そのたまたまに俺は命を救われたわけですが……」

 

 謙遜するカカシに悟が謙遜するなという意図を含んだ目線を向けると、カカシは悟に視線を送り返す。

 

「だが悟、今ので父さんの攻略法は分かった。 ……協力してくれるか?」

 

「是非もなし、です」

 

 目に希望を宿したカカシと共に悟も態勢を立て直し構える。

 

 そんな光景を隠れながら見ていたサクモは胸中に浸る。

 

(……かつての二代目火影に憧れ、三代目にも指導を受けた俺は強く速かった。 かつて仲間の為にと思い行動したことが裏目になり、俺自身の首を絞めカカシを守るためだと言い聞かせ自ら首を吊ったあの瞬間を今でも鮮明に覚えている。 ……俺は、孤独だったのかもしれない。 俺自身が己の強さに奢り、他者を甘く見ていた……その傲慢さが俺を真の意味で孤独にしていた。 誰に対しても……下手に出る俺の態度は、受け取る方にしたら気味が悪かったかもしれない。 俺自身が心の底で他人に期待していなかったからこそ、本当の意味での信頼関係を築いてこなかったからこそ……俺は心が弱かったんだ。 口寄せで呼び寄せたチャクラ刀が折れていた……きっとカカシが俺に変わって振るいどこかで折ってしまっていたのだろう。 それでも……何処かで一度折れようとも……カカシは──)

 

 サクモの視線の先には、折れたチャクラ刀に雷切を流して構えるカカシが居た。

 

 そのカカシと背を合わせるように悟が螺旋丸を構えている。

 

 信頼できるもの同士のその姿にサクモは一種の嫉妬を感じる。 そして同時に誇らしさも…… 

 

「カカシ、お前には苦労を掛けただろうっ!!」

 

 サクモは穢土転生体の死角に潜もうとする意志に逆らうように声を振り絞る。

 

「っ!」

 

 悟がその声を頼りにサクモの位置を感知するがすぐさま飛雷神で場所が変わり見失う。 けれどサクモは声を振り絞り続ける。

 

「俺はかつて仲間を助けるために任務を放棄し、後ろ指を刺された。 そのことで俺はあろうことか、その仲間を助けたことを後悔してしまったっ!!」

 

 サクモのその言葉に、悟が小さく反応を示す。

 

「そして俺は……お前まで巻き込んでしまうと自分に言い訳し、自殺という逃げに走った。 俺は、本当ならそんなことをするべきではなかったのに……っ」

 

「父さん……」

 

「俺は人を信じられていなかったんだ、周りには信頼できる仲間が居たはずなのに……俺はそれが見えなくなってしまっていたっ!! ……お前を独りにする必要なんてなかったんだ」

 

 後悔するようなそのサクモの言葉、その重みをカカシと悟は感じ取る。

 

「だが、カカシ。 お前は……違うようだね。 お前はこんな恨んで当然の俺を英雄と言ってくれた……それに……信頼できる仲間がいるんだろ?」

 

「ああ、俺には……ガイやマリエや紅に……アスマ……それに最近は強面の……友達も出来たよ、父さん。 俺も父さん見たいに折れそうになったことは何度もあったけど……その度に仲間が俺を立ち直らせてくれた……っ!」

 

「その子もその1人か……?」

 

 サクモが悟を示した言葉にカカシは

 

「悟は……手のかかる甥っ子みたいな奴さ」

 

 そう言って小さく笑う。

 

「甥っ子ねぇ……ハハ」

 

 悟も微妙な表情を浮かべ、乾いたように笑う。 すると

 

「悟君」

 

 サクモが悟へと声をかけた。 そして

 

「君とは始めて会った気がしないな……その特別な力と言い、きっと君は何か特別な使命を持っているんだろう……そんな君におこがましいがお願いがある」

 

「……」

 

 サクモは息を吸い、懇願する。

 

 

 

「ついでで構わない、カカシの事を……これからもどうか……よろしく頼む」

 

 

 

 きっとそれはサクモがかつて出来なかったこと。 自分がどうしようもなく手段の絶たれた時にするべきだったこと。

 

 誰かに頼る。 あのどうしようもない時でも、誰かいたはずだ。 薬師ノノウでもマイト・ダイでも、きっと誰か……いたはずだなのだ。

 

 けれど、サクモは……周りが見えなくなっていた。

 

 

 

 

 

 

「任せてください」

 

 

 

 

 悟のそのハッキリとした返事にサクモは

 

「ありがとう」

 

 そう言い残し……駆けだした。

 

 超高速かつ飛雷神による瞬間移動によってサクモの位置は特定することすら困難だ。

 

 だからこそカカシと悟が取るべき手段は限られていた……それは

 

「「万華鏡写輪眼っ!!」」

 

 瞳力の底上げ、極まった動体視力によるカウンター。

 

 周囲からランダムに飛んでくるクナイ。 飛雷神で近寄られる可能性を潰すために悟は手に形成した螺旋丸に風遁の性質変化を加え掲げる。

 

「風遁・螺旋丸っ!」

 

 その螺旋丸が巻き起こす風は投擲されたクナイを逸らし弾く。

 

 そして次の瞬間、息子であるカカシだからこそ必ずサクモが攻撃を仕掛けてくるという確信を持って対処をする。

 

 弾かれ地面に落ちたクナイの内、カカシと悟の死角にサクモは飛雷神で飛び、そのまま両手に持ったクナイで二人同時に切りかかる

 

 しかし

 

──ガっ!!

 

 サクモの動きは制限され、その動きを鈍らせた。

 

 サクモは自身の四肢が拘束された事実に驚き目線を右腕に送る。

 

 その視線の先には腕に噛みついた忍犬・パックンがおり…… 

 

「旦那、坊ちゃんはよくやってるぞ……安心して去れ」

 

「……そのようだね、パックン」

 

 笑顔で小さく言葉を交わした瞬間、雷光が煌めいた。

 

 

 

 

 

 

 

──チチチチチチチッ…… 

 

 

 

 

 

 

 胸を貫かれ、四肢を忍犬らに噛みつかれ動きを封じられたサクモはカカシに抱き着くような形でよりかかる。

 

 カカシはサクモを貫いた腕に持っていた折れたチャクラ刀を取り落とすと、それでも震える手を激励するかのように拳を強く握り絞める。

 

「父さん……」

 

「……カカ……シ、お前は……俺と違って……強い……な」

 

「……そんなことないよ……俺は今も多くの人に支えられている……そのうちの1人は……間違いなく父さんだよ」

 

「……ハハ……嬉しいな……もしもあの時の俺がお前だったら……いや……よそう……カカシ、しっかりな」

 

「ああ……父さんもね、母さんによろしく言っといてよ」

 

「……っふふ、ああ……最後にお前とこうして……話せてよかった」

 

「……ッ」

 

 カカシが勢いよく拳を引き抜くと同時に、悟が発動した木遁がサクモの身体を覆っていく。

 

 忍犬らが離れ、最後に顔を覆おうとする木の隙間からサクモが満ち足りた笑顔で呟いた。

 

 

 

 

「今度は……安心して行けるな」

 

 

 

 

 

~~~~~~~

 

 

 

 サクモの封印を済ませた悟にカカシが声をかける。

 

「ありがとう悟、お前が居なければ……」

 

「今はそういうのなしに行きましょう、カカシさん。 まだ戦いは終わってませんよ」

 

 そう言いながら悟は立ち上がり、サクモを封印した木の塊に目を向ける。

 

(サクモさん自身、極まった身体能力に動体視力が着いて来ていなかった。 生身で本人の思考と工夫のない穢土転生体でなかったら勝てたか怪しいけど……予めカカシさんが忍犬たちを忍ばせた死角の地面にわざとクナイを弾き落として行動を誘導しカウンターを見舞う……上手くいって良かった……)

 

 歴戦の忍びの強さに、敬意を感じた悟は心の中で頭を下げそのまま宙に浮きあがる。

 

「後は忍び刀の連中たちが残ってますけど、どうにか出来ますよね?」

 

「悟、お前はこの後どうするんだ……?」

 

「カブトも俺が木分身を各地に飛ばしてるからこそ、サクモさんで邪魔者の俺の命を取りに来たんでしょうけど……恐らく次にヤバい穢土転生体が現れる場所を把握してるので次は俺からそこ向かいますよ」

 

「そうか……気をつけてな」

 

「カカシさんこそ……気をしっかり持ってくださいね」

 

 悟はそう言い残すと、急ぐ様に空へと飛び立っていった。

 

 そんな悟の背を見送ると、カカシは手に持った折れたチャクラ握りしめ再不斬たちの元へと駆けて行った……

 

 

 

~~~~~~

 

 

 悟は感じていた。 各地で始まった戦闘の余波を。

 

 多くの忍びが、多くの穢土転生体と戦うその光景。

 

 悟の木分身はそんな戦場に赴き、戦い続ける。

 

 例えば目を取り戻した兄弟、例えば自信を持った猪鹿蝶……

 

 大蛇丸の実験体であった者たちも今は忍界の未来の為に、『忍』を額当てをつけ戦っている……

 

 そして……

 

 

 日が沈む。

 

 

 太陽が消え、戦場に僅かな静けさが訪れる中悟と木分身達は駆けまわる。

 

 白ゼツが成り代わった者たちによって被害が出ないように、白ゼツたちを打ち砕いていく。

 

「俺一人じゃ感知できなかったかもしれないけど……こっちには頼れる仲間がいるからなっ!」

 

(……ケッ)

 

 悟の褒める言葉に、精神世界の小さな九喇嘛はそっぽ向きながらも僅かな気配を感知していた。

 

(そろそろ……ワシの本体が出てくるようだ……悟よ、もう少しの辛抱だな)

 

「……少なくとも夜通しで働くのは確定してるようなもんだな……ナルトが来ないと、ゼツたちの感知できるのは俺だけだし……」

 

(しかし、未だに忍び連中の中にはこうまでしている貴様を敵対視しているものがいるようだが……命を救われておるのに、傲慢な奴らだ)

 

「……人間なんてそんなもんさ、それに俺だって別に正義の味方じゃない……各里に迷惑をかけた事実も、誰かを殺めた事実も……消えないんだ。 俺はそれを背負っていくしかない」

 

(……)

 

 そして夜が明け暁の頃、雷影と綱手を説得し終えたうずまきナルトが戦場へと駆けつけるのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

  

 

 

 

 

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