目指すは忍ぶ忍者   作:pナッツ

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35:血の繋がった者たち

 日が昇る頃、穢土転生された三代目雷影・先代エー、二代目水影・鬼灯幻月、四代目風影・羅砂、二代目土影・無らが進行する砂漠地帯。

 

 彼らは言葉を交えていた。

 

「ゆっくりと後退して様子見をしていたようだが……どうやら腹を決めたようだな」

 

 感知タイプの無は連合軍の動きを把握し、交戦の兆しを感じ取っていた。

 

 そんな無の言葉に幻月はめんどくさそうに口を開く。

 

「はぁーあっ! 他里の連中ならともかくよ、自里の忍びと戦わされるのは忍びないな。 この穢土転生とかいう術の使用者は大蛇丸とか言う若造だったか? 後で覚えて置きやがれよォ!」

 

「……お前とは気が合わなかったがそれだけは同感だ」

 

「てめぇいちいち、グチグチ余計なこと言わねぇと気がすまねぇのかよ。 てめぇに同感なんてされたくないね、ミイラ野郎っ!!」

 

「……お前こそこう、いちいち突っかかってくるのが煩わしい……」

 

「ああっ!? 何か言ったかァ!!??」

 

 無と幻月の仲はかなり悪いのか、軽い言い合いに発展し始める。 そんな2人にお構いなく、先代エーは口を開く。

 

「しかし、そう悲観することだけでもないだろう。 里の子どもたちも成長し、先代であるワシらを越えてくれるはずだ」

 

 その先代エーの言葉に、羅砂は

 

「…………ならいいがな……」

 

 自身の里の事を思い、重い口を開き呟く。

 

 その直後

 

 

 

「まずは……三人か」

 

 

 

 無の呟きと共に、砂漠を網羅するように砂の大波が先代の影たちを飲み込もうと襲い掛かる。

 

 しかし羅砂が一歩前に出て地面に手を着くと、地中から砂金が集まり砂の大波とぶつかり合う。 砂金と砂の波が混ざり合うことでその動きが鈍り、落ち着きを見せると先代影らの前に三つの人影が宙に現れた。

 

「今のは守鶴ではなく……お前の術だったか、我愛羅」

 

 羅砂のその呟きに、姿を現した我愛羅は砂で影たちを狙いつつも

 

「父さま……」

 

 そう小さく呟く。

 

「かぁー、親子の再会とは泣ける……ってぇ訳もあまりねぇかな、あんま知らねぇ奴らの事だし」

 

「いちいち喚くな……」

 

 幻月と無も我愛羅の砂から逃げようと飛び退くが……

 

「っ!」

 

 無は独特の気配を感じ取り、幻月を蹴り飛ばすと印を結び術を構える。

 

「どあぁっは!? 何すんだァ!?」

 

 

「塵遁──」

 

 

 

「「「原界剥離の術」」」

 

 

 次の瞬間、甲高い音を響かせた三つの不協和音が重なり合い……

 

 

 戦場に一瞬にして大穴を開けた。

 

 白いレーザー光線のような術の余波により幻月は片足を消し飛ばされながらも、その眼に広がる光景に小さな唸り声を上げた。

 

「こりゃあ生き返ってみるのも案外悪かねぇなぁ……まさかこうして塵遁の使い手を一気に

 

 

 

 3()()見ることが出来るんならなぁ……」

 

 幻月のその呟きに応えるように、半身を消し飛ばされた無が呟く。

 

「その様子随分と長生きしたな、オオノキ……そしてそっちの小娘は……新たな継承者か?」

 

「無さま……流石は先代の塵遁使いの力は伊達じゃないんじゃぜ……こちらも()()()()()()()()()、感謝するぞ」

 

 三代目土影・両天秤のオオノキはその先代の実力に息を呑む……が

 

「まさか、私もこうしてアナタと肩を並べる日が来るとは思ってもいなかったわ……それも先代相手に……ね」

 

 栗色の長い髪をなびかせたくノ一は余裕を見せながら、宙に浮かぶ。

 

「新たな土影かぁ姉ちゃん? 随分と若くて別嬪じゃねぇか!」

 

 幻月のその問いかけにそのくノ一は

 

「……五月蠅いのがいるな、私は只の木ノ葉の孤児院の院長だ。 土影などには微塵も興味はない」

 

 バッサリとそう言いのけた。

 

「……ひゅー、気が強いのも俺は嫌いじゃないぜ?」

 

 くノ一の口調の変わりように幻月が感想を述べる。 その一方でオオノキは彼女の発言に遺憾を表すも……

 

「亡よ、土影などと──」

 

「亡じゃない、マリエっ……()()()()()だ。 っいい加減覚えたらどうだ、石頭のオオノキ……次間違えたら、貴様を先に塵遁でかき消すぞ?」

 

 口調の変わったくノ一、マリエの凄みにオオノキは汗を垂らして若干の距離を取る。

 

「す、すまんじゃぜ……」

 

 その様子を見ていた無は

 

「くくく、なるほど……どうやら時代は随分と様変わりしたようだな」

 

 と何故か妙に嬉しそうな口調で呟いた。

 

 

 

~~~~~~

 

 

 一方各地での戦いは白ゼツによる成り代わりの術で混乱を極めていた。 しかし原作とは違い、九喇嘛の力を借りた黙雷悟が僅かながらにその戦略と規模を潰していくことで被害は抑えられていく。

 

 そして今まさに始まった先代の影たちと連合軍の戦いも、蒼鳥マリエという存在が加わっていることで直ぐに決着が着こうとしていた……

 

 そんな様子にカブトは苛立ち、爪をかじりながら呟く。

 

「木ノ葉の白い牙で黙雷悟を落とせなかったのに加え……各地の戦場にうずまきナルトが現れ始めている……このままでは……クソッこうなったら」

 

 カブトは大きなため息をつきながらも、自身のチャクラを練り上げ……

 

 

 

 

 

 

「おいっ! せっかくこっちの弱点教えてやってんのに何チンタラしてやがる!?」

 

 戦場で多くの負傷した忍びの集団の中心で幻月が呆れたようにそう叫ぶ。

 

 彼の口寄せした大蛤による蜃気楼が、幻術を見せ連合軍を翻弄していた。

 

「ったく……アチラさんはもう終わりそうだってのによォ……まあっ俺が強すぎるってのも原因かっ!」

 

 ふざけたようにそう呟く幻月の視線の先では、既に羅砂と無の封印が完了しようとしていた。

 

 父として、我愛羅の成長を目の当たりにした羅砂は後悔を口にする。

 

「我愛羅……結局、加瑠羅が正しかったな。 お前はとっくに風影としても……人としても俺を越えていた……これも全て加瑠羅が残した愛の……力か」

 

 少し前まで後世が上手く成長しているなど思っても見なかった羅砂は、自分が消えた世界で上手く生きている我愛羅の姿を見て己の過去の行いを恥じる。

 

 そんな羅砂に我愛羅は

 

「……父さま。 母さまが残したモノだけで俺や、俺たち姉弟は今を生きているわけじゃない。 貴方が厳しくしたことで得た力が今まさに俺たちを前へと導いてくれている……父さまは少し……そう、厳しすぎただけだ」

 

 目に僅かな涙を浮かべ、慣れない微笑みで砂の封印をされゆく羅砂へと語りかけた。

 

「……守鶴よ……こんな俺の言葉など聞きたくはないだろうが、頼みがある」

 

 戦闘の最中守鶴の存在を僅かに感じていた羅砂は、我愛羅の中の守鶴へと言葉を投げかけた。

 

 すると我愛羅の肩に、砂が集まりミニサイズの守鶴が姿を現す。

 

「んだよ……オレりゃぁ……アンタの事はすこぶる嫌いなんだが──」

 

 ぶっきらぼうにそっぽを向く守鶴に羅砂は

 

 

 

「どうか息子たちを見守ってくれ」

 

 

 

 一度も、誰にも見せたことのない微笑みを見せ頭を下げた。

 

 ……そして羅砂の封印が完了する。

 

 僅かに生じた静寂、静かに砂で自身を覆い隠し手涙を零す我愛羅に守鶴は軽くその手で我愛羅の頭を叩くと

 

「……てめぇと同じでとんだ下手な笑顔だったな、ありゃぁ……流石お前の……親だけはあるな、我愛羅」

 

 軽くからかう様に静かにそう語りかける。

 

「……ああ、俺たちの父さまだ。 最後にはちゃんと……薬をくれた」

 

 守鶴の励ますかのような行動に、我愛羅はすぐさま涙を拭い砂を操り宙を翔ける。

 

 風影として今は守るべきものがある……我愛羅は己を鼓舞し未だ暴れる三代目雷影の元へと向かった。

 

 

 一方で封印が完了しようとしている無に、マリエが語りかける。

 

「……貴方が残した塵遁は、私にとって大きな禍根でした。 けれど、ええ……今ではその存在のおかげで多くの出会いがあったことも理解しています。 ……感謝します、先代様」

 

 戦闘の余波で、腰に違和感を感じているオオノキが少し離れた場所で腰を下ろしてそんなマリエの様子を眺めている。

 

 かつて塵遁の血を継承した無の血縁の者が廻りまわって、本人と相対している。

 

 オオノキは……かつてのマリエに課していた自分の行いを胸中で悔いていた。

 

「感謝などされるいわれはない。 そも、俺は岩隠れの為に己を()にして塵遁を得たのだ。 塵遁をオオノキへ継承させる時も、それなりに苦労があったのを……今では継承者が木ノ葉のベストを身につけているとはな」

 

 無の呆れたと言った物言いに、オオノキは

 

「……無さまの行いは巡り、岩隠れのみならず忍界をも救う……その一手になるのです。 誇ってくだされ……」

 

 しみじみとそう語った。 いがみ合っていた忍び里同士が一丸となるその様。 和解が完全にされていなくとも、オオノキとマリエが共に戦うことは大きな意味を持っていた。

 

「オオノキ、お前が……頑固一徹なお前が、そこまで言うか。 いや、只の頑固爺にはならなかったと喜ぶべきところでもあるか。 ……ククク、まさか俺の方が考えに柔軟さが足りんとは……幻月にあの世で何を言われるかわかったものではないな」

 

 自嘲気味た笑いとともに無はマリエに最後の言葉を残す。

 

「……俺の血を受け継いだ者たちよ……己を失くすなよ」

 

 その言葉を最後に、封印が完了した無は全身を包帯に包まれる。 無からの言葉にマリエは

 

「ええ、もう……()くしはしない……」

 

 そう呟いて、オオノキに振り返る。

 

「さっさと次の相手に向かうぞ、オオノキ。 それとも、もうギブアップか……?」

 

 煽るようなマリエの言葉に

 

「年寄りに鞭打ちよる……だが、改めて己を拾うまでは……ゆっくりはしておけんのォ!!」

 

 オオノキは気合を入れ、宙へと舞う。 そんなオオノキの様子に小さく笑みを浮かべたマリエは同じく軽重岩の術で浮かび上がり……

 

 

 幻月の脇に、1つの棺桶が口寄せされている光景を目にした。

 

 

「あれは…………っ!!??」

 

 次の瞬間、マリエは己の感知能力によってその棺桶から途轍もないチャクラを感じ取り……

 

 危機を叫ぼうとする。

 

 しかし

 

 

 

「火遁・業火滅却」

 

 

 

 棺桶からあふれんばかりの火炎が幻月を取り囲んでいた忍び達を消し炭にせんと渦巻いた。

 

 あまりにも一瞬の出来事に、多くの忍びが火の海に飲まれようとしたその時

 

 

 

「水遁……大爆水衝波ァっ!!」

 

 

 

 さらにその棺桶の上空から、一体の地域を覆いつくすほどの水の塊が降り注ぎ

 

 火遁とぶつかり合うことで、多量の蒸気を発生させその余波で周囲を吹き飛ばした。

 

 

 

 マリエやオオノキ、忍び連合の忍びらがその蒸気で吹き飛ばされ火遁による致命傷を避けた次の瞬間

 

 蒸気の中心に2つの人影を見た。

 

「……穢土転生体とは……アイツ、事をうまく進められていないな?」

 

 1人の影がそう呟くと、幻月を通したカブトの声が響く。

 

「少々訳ありですが、貴方の力をお借りしたい」

 

「貴様が俺を呼び出した術者か……穢土転生体を通して物を語るとは陰険な……何者だ?」

 

「僕はカブトと言います。 貴方の言う()()()の協力者だとでも思っていただいて結構です。 いま、僕たちの相手は各里の忍びの連合です……」

 

「……なるほど、まあ最終的に計画が完遂されればそれで良い。 それにどうやらこの戦場……俺の火遁を単身で打ち消せる水遁使いがいるとは、余興として少しは楽しめそうだな」

 

 水蒸気の先、その光景が風と共に晴れその人物は姿を現した。

 

「どれ、久方ぶりの穢土とやらだ。 俺を楽しませてくれるか?」

 

 紅い甲冑に身を包んだその穢土転生体の忍びに、何が起きたのかとか体を起こしたオオノキがその名を呼んだ。

 

 

 

「うちは……マダラっ……!?」

 

 

 

 その一言で場が騒然とし、うちはマダラはオオノキへと目線を向ける。

 

「……見覚えのある顔があるが、随分と老けたなオオノキ。 時間の流れとは無情だな……俺の身体は随分と弄られ死んだ当時とは様変わりしているが……さて一先ず俺の相手をするのは……()()()だな?」

 

 マダラの言葉と共に、宙から1人の忍びが砂漠の地面へと降り立ち砂煙を巻き起こす。

 

「お前は……っ!」

 

 幻月を通したカブトの驚くその言葉と共に、さらにその忍びの周りに2人の人影が降り立つ。

 

「さっきので俺たちが遅れた分は巻き返せたかな……?」

 

「てめぇはアタシたちを運んだだけだろうが……」

 

「俺の力じゃ、二人を運ぶのも滅茶苦茶キツいんだよ……既に満身創痍だっ!」

 

「誇らしげにいうことか、それ?」

 

 漫才のようなやり取りをする2人に初めに着地した人影がツッコミを入れる。

 

「ある意味での私の初陣なんですが……もう少し静かにしていただけませんかねぇ……」

 

 

 羽を持つ男と、尻尾を持つ女、そして

 

 

 上半身裸の巨体で黒い仮面を着けた男の三人組がマダラの前に現れた。

 

「……見世物で見る分には面白そうな奴らだな」

 

 そう軽く笑いながら三人を嘲笑するマダラ。 そして幻月越しのカブトは

 

「……()()()とはねぇ……死んだとも思ったが、こうも短期間ですんなり寝返るとはプライドがないのかな君は?」

 

 少しイラついているのか煽るようなその口調は三人組の内、大柄な男へと向けられていた。

 

 その言葉を受け男は答える。

 

「はて? 人違いでは。 私はただ、この先の興味深い未来を見るために闘う一介の忍びです。 以後お見知り置きを」

 

 妙な丁寧なその言葉使い、しかしその男の上半身に見える皮膚は青白く特徴的で黒い仮面を着けていようと彼を知る者であれば何者であるかは一目瞭然であった。

 

「ふざけた真似を……っ!」

 

 カブトが怒りをあらわにするも、マダラはその男を指さして言葉を投げかける。

 

「先ほどの水遁は貴様のものか? ……俺の知る限りで、あれほどの水遁を扱えるものは1人しか知らん。 誇れ、そして……その力で俺を楽しませてみろ」

 

 その言葉に、黒い仮面の男は

 

「おほめにあずかり光栄です……しかし、やれやれ()()()()()()第一戦が穢土転生されたあの……いえ、本物のうちはマダラとは……これこそ予想も出来ない未来ですねぇ」

 

 呆れたといった様子で脇にいる羽の生えた男に目を向ける。

 

「さて……アガリさん、アカネさん……私を生かしたこと後悔させないでくださいよォ」

 

「善処するっ!」

 

「……たく、この祭りアタシたちも参加させてもらうぞ!!」

 

 駆ける三人とその後に次ぐ連合軍と共に、うちはマダラとの戦いが繰り広げられようとしていた…… 

 

 

 

~~~~~~

 

 

 連合軍本部にいる綱手と、四代目雷影エーは事態の急変を聞き焦りを露わにしていた。

 

 突如現れた()()()()()()()()()。 その存在の危険性は見逃せるものではない。

 

「遅れてきた暗隠れのが、馬鹿な断わりを入れて戦場に向かった途端にこれだ……うちはマダラ、面の男はその名を借りて脅威を煽っていたのか」

 

 綱手がマダラの出現に、面の男の意図を探ろうと考えるも

 

「綱手様、余り考えるのは貴方の性に合わないでしょう」

 

「ああ、指揮は俺たちが分割して行う。 貴方は──」

 

 車椅子に乗った猿飛アスマと、それを押す猿飛キョウマが彼女に声をかける。

 

 その2人の言葉を受け、綱手は一瞬考えるように瞳を閉じ…… 

 

「ああ、こうなれば私が行くっ!!」

 

 覚悟を決めた瞳を開けそう宣言した。

 

 そんな綱手に奈良シカクが問う。

 

「しかしここから戦場に向かうのには時間がかかる……ゲンマの小隊を呼び飛雷神で──」

 

 しかしその問いに、問答無用とばかりに綱手は雷影の側近のマブイに声をかける。

 

「その必要はない。 マブイと言ったな、天送の術とやらで私を戦場に送れ」

 

 綱手のその提案にマブイは天送の術の危険性を伝えようとするが

 

「マブイ……天送の術の術を用意しろ、俺と火影、二人分だ!」

 

 エーがそう言うことでマブイは自分の意見を飲み込み素早く天送の術の用意を始める。

 

 綱手とエーが部屋を出たのちに、シカクはアスマへと語りかける。

 

「となるとだ、ゲンマらの飛雷神の術は水影を送るのに使うとしようか」

 

「そうなるな……たく、俺も足が動けば戦場に駆けつけるってのに……」

 

 アスマの無力から来る無念に、キョウマは

 

「アスマ、俺たちは俺たちの出来ることがあるだろう……俺の仮面も、よりふさわしい奴に渡ったんだ。 今の俺たちも何かできるはずだ」

 

 そう言って、励ますように笑顔をアスマへと見せた。

 

「ああ……」

 

 小さく返事をしたアスマは、山中いのいちを通して伝えられる戦況に耳を傾けるのであった。

 

 

 

~~~~~~

 

 

 

 狂熱、発散……とばかりに第四部隊が戦う砂漠地帯は荒れ果てていた。

 

 マダラの強さは文字通り次元を超えている。

 

 その場に居合わせた猛者たちの奮闘も軽く蹴散らすマダラの一途種一投足はまさに戦神と呼ぶに相応しいものであった。

 

 我愛羅の砂や、黒仮面の男の水遁が辛うじてマダラの火遁を抑え被害を最小限に収めではいるが、体術や写輪眼による幻術によるかく乱は部隊をじわじわと追いつめていく。

 

 そして

 

「「塵遁・限界剥離の術っ!!」」

 

 蒼鳥マリエとオオノキの隙をついた塵遁がマダラを捉えるも…… 

 

 

 

 

「数は多いが……まるで及ばんな……かつての奴1人に」

 

 

 

 

 塵遁の光は、マダラへと吸収され何事もなかったかのようにマダラはその場で仁王立ちを決めていた。

 

「な、何が……!?」

 

 驚きを露わにしたマリエ。 そのマダラの両眼は薄い紫色をした波紋の模様を表しており…… 

 

「輪廻眼だとっ!?」

 

 オオノキは更なる驚愕を顔に浮かべる。 伝説の最も崇高にして最強の瞳術、それをあのうちはマダラが携えたことで戦場に暗い影が落ち始める。

 

 ふつりと諦めの言葉が聞こえ始める中…… 

 

 

 

「まだだっ!! まだ負けてはおらんっ諦めるなァ!!!!」

 

 

 オオノキはその言葉と共に、マダラへと拳岩の術で殴りかかる。

 

 小さくため息をついたマダラは

 

「両天秤の小僧が……年を取って諦めは悪くなったようだな」

 

 その岩の拳を、青いオーラで受け止めた。

 

「須佐能乎かっ!?」

 

「まるで腰の入っていない老人の戯れだな」

 

 オオノキをあざ笑うマダラだが

 

「腰はこれからいれるんじゃぜっ!!」

 

 オオノキが土遁・加重岩の術を発動させることで腕だけの須佐能乎に僅かにヒビが入る。

 

「ほう、やるようにはなったが……俺より年下の年寄りが無理をするな」

 

 しかしマダラはそういって、小さく鼻で笑うと

 

 

 

 さらなる須佐能乎の片腕に握らせた刀をオオノキへと突き出した。

 

 

「っオオノキっ!!!」

 

 マリエがその攻撃に気がつき、駆けつけようとするもその一突きはその場の誰の介入よりも早くオオノキの腹部を

 

 

 

 

 

──穿たなかった。

 

 

 

 

 

 途方もないような戦力。 そんなマダラの須佐能乎に匹敵する存在が、オオノキを刺殺さんとするそれを強烈に吹き飛ばし地面を転がす。

 

 それでもマダラは容易に態勢を立て直し余裕を感じさせるが、しかしここに来て初めてその表情を崩した。

 

「やはり来たか……っ!」

 

 その光景を見た幻月を通したカブトの言葉を肯定するように…… 

 

 

 マダラのものと瓜二つの須佐能乎がその手にオオノキを抱え、佇んでいた。

 

 

 その姿にマダラが顔を歪ませる。

 

「俺と同じ……須佐能乎だと……?」

 

 そのマダラの視線の先の須佐能乎は姿を消し、オオノキを柔らかな砂へと降ろしたその人物は、マリエや我愛羅、アガリ達をその朱い目で見渡すと……最後にマダラを鋭く睨みつける。

 

 

()()()は……アンタを確実に消すために……力をつけてきたんだ……」

 

「っ……」

 

 その鬼気迫る気迫に、マリエが言葉を失くす。

 

 その人物が……本当に成すべきことを目の当たりにしているのだと、直感しマリエは……思わずそっと手を伸ばした。

 

「マリエさん」

 

 そしてその人物はマリエの手を取り、安心させるように……優しい声色で語りかける。

 

「……マリエさん、貴方に俺の木分身の欠片を託します。 それがあれば、貴方の感知能力と合わせて……穢土転生を行っている源流、カブトの位置を特定できるはずです。 多分穢土転生されたイタチさんがどうにかしてくれるかもしれないですけど、何が起きるか分からないので保険で貴方にも向かって欲しいんです」

 

「で、でも……っ!」

 

「大丈夫……あれは、()()()が責任を持って葬って見せます。 お願いです」

 

 真摯なその言葉の意味、手の平に木の種のような物を握らされたことに気がついたマリエはその人物の覚悟を受け止め……

 

 小さな涙を一粒、地面へと零した。

 

「…………()()()、貴方が正しいと思うことを……貫きなさいっ!!」

 

 そう言い残したマリエは、その場を離れ飛び去る。

 

「という訳だ。 ここから先は俺が……僕が、お相手しよう……うちはマダラ」

 

 振り返りながらそう語りかける悟に、マダラは怪訝な表情を浮かべたまま顎に手を当てて何かを考える素振りを見せていた。

 

 そして

 

「黙雷悟、お前は僕の計画を──」

 

 幻月越しのカブトが悟に攻撃を仕掛けようと水鉄砲の術を構えるが

 

 

 

「そうはさせねぇってばよっ!!」

 

 

 

 不意打ちで螺旋丸を叩きつけられたことで、幻月の身体が半分以上塵となる。

 

 九喇嘛モードで現れたうずまきナルトに悟が気がつくと

 

「ナルト、悪いけど残りの先代雷影と他の戦場の白ゼツは任せた」

 

 そう声をかける。

 

「指図すんじゃねぇってば、悟っ!! でも……分かったってばよ。 今、九喇嘛のチャクラを借りてるからこそなんとなくわかんだ。 そこのマダラとお前のチャクラの因縁を……おめぇが集中できるように、しかたねぇからバックアップしてやるってばよっ!」

 

 サムズアップするナルトに、悟も小さく微笑みサムズアップを返す。

 

 その瞬間から、各地の戦場に居た悟の分身体たちは消え去り代わりとばかりにナルトの影分身が戦場を駆け巡り始める。

 

 何も気にすることが無くなったとばかりに、悟は深呼吸をする。

 

 周囲の連合軍らも、悟とマダラを置いて先代雷影と戦うようにと距離を取り始める。

 

 ナルトがオオノキを抱えその場から去り、二人きりになることでマダラが印を結ぶ。

 

「っ!」

 

 術が来ると身構えた悟だが、マダラが発動した木遁は

 

 

 

 塵となっている幻月の身体を覆い、封印を為した。

 

 

 

「……どういうつもりだ」

 

 悟の問いにマダラは

 

「小うるさい奴の口は黙らせたままにしておくに限る……特に今の俺の興味は、九尾の人柱力でもなく……連合軍でもない……

 

 貴様だ、小僧」

 

 マダラからのプレッシャーに……悟は怯むことなく、構える。

 

「興味なんてどうでもいい、アンタは未来で厄災を為す存在だ……今こそ、完全にっ!! 俺たちの手で消し去るっ!」

 

 悟が跳躍し、繰り出した拳をマダラは同じように駆け出し拳をぶつけることで相殺する。

 

 競り合う拳の先で、写輪眼が交わった。

 

「小僧、貴様は何者だ? 俺自身と柱間のチャクラを貴様から感じるが……しかし、それも既に混じり合ったように感じる。 それに……」

 

「僕が何者かだって? アンタが一番よく知っているんじゃないのか? 僕が何者かはアンタから教えられたんだからっ!!」

 

 徒手空拳のせめぎ合いは、高レベルの攻防を繰り広げるも互に序の口と言わんばかりに言葉を交わし続ける。

 

「……俺が……だと? ふん、面白いことを言う小僧だ。 ならば言ってみるがいい、貴様が何者であるかを」

 

 互いの蹴りの衝撃で距離が離れ、マダラからの要請に悟は大きく息を吸い……

 

「ならば、僕が何者であるかを教えてやるっ!! 僕は……

 

 

 

──アンタの息子だっ!!!」

 

 

 

 己の知る事実をマダラへと叩きつけた。

 

 その言葉にマダラは……

 

 

 

 

「心辺りがない」

 

 

 

 

 そう小さく呟いた。

 

「……は?」

 

 思わぬ返答に悟は気の抜けた言葉を発した。

 

 そんな悟の態度にマダラは

 

「子を為した覚えがないと言ったのだ。 俺の息子だと? ……ありえん。 もし俺に子がいたとしても、それが柱間のチャクラをも持つなど……」

 

 再度、悟を認知しない主旨を伝えブツブツと自身の心辺りを思い出す素振りを見せる。

 

 なおもその最中も牽制の意味で互いに火遁や体術を繰り出すもほぼ同レベルのそれは互いに相殺しあっていた。

 

「……っ男なら、そういう行為の1つや2つやったことがあるはずだろ!?」

 

 悟からのその言葉にマダラは首を傾げ

 

「ない。 そもそも俺は子種を残すことに興味などなかったのだからな」

 

「一夜の間違いとか……っ!!」

 

「くどい、一度もないと言っているだろう……だが」

 

 ふと、マダラが写輪眼を万華鏡写輪眼へと変えたことで悟も呼応するように己のそれを変化させる。

 

 すると

 

「やはりな、貴様は俺の息子ではない」

 

 納得し確信を得たような態度と共に、マダラは青いオーラを迸らせ須佐能乎を発現させ始める。 それに合わせ、悟も須佐能乎を形成していく。

 

「その眼が貴様が俺の息子ではないことの、何よりの証拠だ!」

 

 形成した瓜二つの須佐能乎が刀で切り結び、動きの硬直に合わせマダラは悟へとそう告げた。

 

 そんな言葉に悟は納得が行かずに聞き返す。

 

「この万華鏡も、須佐能乎もっ! アンタと同じものだっ!! 忌まわしくも、僕はアンタの血を引いて──」

 

 しかしその言葉の最中、黙雷悟の中で雷にはある考えが浮かんでおり表立って戦っている黙の言葉に疑問を呈する。

 

(昔から……いや、始めて黙が須佐能乎を使ったあの木ノ葉崩しの頃から……違和感は感じていた。 そうだ、この身体はマダラと同じ写輪眼と須佐能乎を使える……でもそれは……)

 

 そんな雷の疑問と同じく、マダラも悟の大太刀による斬撃をはじき返しながらそんな黙の主張に言葉を投げつける。

 

「確かに、貴様は俺の血を引いている……いや、()()()()()()()なのだろうな。 ……もし俺の血を引いていると主張するならなぜ──」

 

 マダラの告げる言葉と共に、雷は自分が気づかないように……いや言葉として明確にしてこなかったその事実に目を向ける……

 

 

 

「貴様は俺と同じ眼を持っている?」

 

 

 

 マダラのその言葉と、須佐能乎による斬撃は黙を大きく仰け反らせ動きを硬直させる。

 

「は……? 同じ眼なのは……っ!」

 

 反論しようとする黙の言葉にマダラは言葉を畳みかける。

 

「血を引いているから同じ眼を持つだと? そんなことがあり得ないことは、少し考えれば……いやそうでなくとも気づくことなど容易い」

 

 

 マダラは瞳を閉じ、その己の万華鏡写輪眼への思いを巡らせ再度瞳を開けた。

 

 

「この万華鏡は……イズナの……弟の眼を得たことで永遠のものとなっている。 ……この世に2つも存在しえないのだ」

 

 マダラは須佐能乎の中から悟へと指を指し示す。

 

「もう一度問おう、何故お前は……俺の『永遠の万華鏡写輪眼』と同じ眼を持っている……?」

 

 その指摘に……黙は唾を飲み込む。

 

 

 父と子の繋がりがあれば、同じ写輪眼が継承されるのか? それは否である。

 

 そうであるならうちはフガクの息子である、サスケもイタチも同じ能力を有していただろう。 しかし実際には彼らの生きざまを写すように、能力も須佐能乎もその力は様々である。

 

 マダラの写輪眼も、弟であるイズナの眼を移植した物であり……遺伝するものでは到底ありえない。

 

 しかし黙雷悟の有するそれは、マダラと瓜二つの須佐能乎を宿し……紋様も全く同じものであった。

 

(……本来万華鏡写輪眼の固有能力でなくとも……須佐能乎を扱うことで瞳力は消費され、身体に多大な負担を強いる。 なのに俺たち……いや黙は、その力を当然の様に使いこなしていた。 須佐能乎自体、確かにチャクラの消費は激しいが……視力に影響が無いのは同じ体を共有している俺が一番よく分かっている……)

 

 雷は、マダラの指摘によって己が抱えていた言葉に言い表せてこなかった違和感に納得を得ていた。 

 

 ……『黙雷悟』は、まともな存在ではないという事実を。

 

 当然、マダラの指摘により黙もその不自然な事実に気がつき……汗を垂らす。

 

 そんな事実に動きを止めた悟に、マダラは言葉を続ける。

 

「貴様自身の存在があり得ない者であることは、理解できたか? 永遠であるそれは互いの紋様が、型を織り成す……唯一無二のものだ。 ……さて、では一体貴様は何者なのだろうな?」

 

 疑問を投げかけるとともに、マダラの須佐能乎による一太刀が悟を狙う。

 

 しかし

 

 

 

 

「だから、どうした」

 

 

 

 一気に膨れ上がったチャクラと共に、悟の纏っていた須佐能乎は大きく形を変えマダラの太刀を掴み止める。

 

 完成体・須佐能乎へと変貌した悟の須佐能乎は、その太刀を握り砕き蹴りによってマダラの須佐能乎を吹き飛ばす。

 

「っ……フ……っ!」

 

 大きく仰け反りながらも、僅かに口元に笑みを浮かべたマダラも悟に合わせるように須佐能乎の姿形を変貌させていく。

 

「……今更、僕が何者であるかなんて大したことじゃないんだ。 確かに……かつて聞かされた話との齟齬に、疑問が……ないわけじゃない。 だが……取返しの付かない罪を犯した先である今、そんな自分のルーツが何かなんて些細なことで僕は止まらないっ!」

 

「……中々に面白い、良い狂った瞳をしているな」

 

 完成体となり、戦場にそびえたつ瓜二つの須佐能乎は互いに太刀を二刀手に携え構える。

 

「今、大切なことは……己が思う正しいことを為すこと。 ()()の目的は……ただ貴様をこの世から消し去ることだ、うちはマダラ」

 

「己と同じ須佐能乎と戦うなど到底叶うべくもないことだ……どこまで俺を楽しませることが出来るか見ものだな」

 

 瞬間、互いに連続した太刀筋を残し無数の斬撃を繰り出し始めた。

 

 互いに一太刀一太刀が山をも寸断する威力を持ったそれはぶつかり合うことで轟音と衝撃を戦場へと迸らせる。

 

 けたたましい衝撃音とともに、マダラは印を結びチャクラをため込む。

 

「火遁・豪火球っ!!」

 

 剣戟の最中、須佐能乎の口元から大火球が繰り出され悟を襲う。 しかし

 

「雷遁・雷鼠走り(らいちゅうばしり)の術っ!!」

 

 その火球を太刀で縦に切り裂いた直後、悟は術を放つ。 無数の鼠を模した雷撃がレーザーのように軌跡を残して須佐能乎の頭部にいるマダラを狙う。

 

「その程度の攻撃…………ふん、なるほどっ」

 

 須佐能乎の障壁を貫通しえないその術にマダラはすかさずに悟の意図を悟り、手をかざして眼を閉じる。

 

 瞬間鼠の雷撃が閃光の如く弾け眩い光を放ち、辺りを照らした。

 

 その隙を穿つように、悟は飛びかかり須佐能乎の持つ二刀を振りかざす。

 

 しかし、マダラはそれを視認せずともギリギリで横に躱すと鋭い切り返しを放つ。

 

「っ!!」

 

 しかし咄嗟に振り下ろした太刀を振り上げガードすることで、悟は大きく地面を削り仰け反りながらもダメージを抑える。

 

 閃光が消え去った後に、再度須佐能乎による剣戟が始まる。

 

 一連の動きを踏まえ、マダラは悟の分析をする。

 

(……チャクラも術の精度も、並の忍びのそれを外れてはいる。 少なくとも俺の息子を自称する程度の価値はあるのだろう。 柱間の力も持つのも頷ける馬力を持ち、少なくとも穢土転生された今の俺よりも単純な力では上だな。 そして──)

 

 唐突に悟が須佐能乎の太刀を投擲し、それを弾いたマダラの隙を狙うように飛び膝蹴りを繰り出す。

 

 マダラをその蹴りを躱すと、数発拳を叩きつけてこようとする悟からの攻撃を躱すべく須佐能乎の羽で宙へと距離を取る。

 

(時折見せる奇策のような動きとチャクラの色の僅かな変化。 切り替わるかのように動きを変える様はまるで体に別の魂がいるようにも感じられる……いや、奴の口ぶりからするとそれもあり得ない話でもなかろう。 奴の存在自体が現実離れしている以上、考慮するのもあながち間違いではないな)

 

 そんなマダラを、同じく太刀を形成しつつ飛翔して追いかける悟。 悟たちもまた、マダラに対しての分析を話し合う。

 

(流石うちはマダラ、今まで単純なレベル差的な速さや力押しでどうにか出来てた相手とは格が違うな)

 

(……実際、奴の強さはその力や忍術が全てじゃない。 先のはたけサクモとの戦いでも感じたように、確実に僕たちを越える強者……それ故の経験を裏打ちする研ぎ澄まされた戦闘技術を有している。 幸いなのは、サクモさんとは違い僕らを置き去りにする速さのような、飛び抜けた一点の能力がないことだ。 素直な力比べでなら僕たちに分がある)

 

(逆に言えば、戦いってのは素直な力比べじゃないから楽には勝てないってことだな……まともに戦えばな)

 

 悟が印を結び、木分身を須佐能乎の肩に五体分出現させそれぞれに術を放たせる。

 

「五遁・大連弾の術っ!」

 

 優に地形を変えうるその忍術の矛先に立っているマダラはその攻撃を避ける動作なく直線で悟へと飛び接近。

 

 当然の如く大爆発を起こすかに見えた悟の大連弾の術はそんなマダラの須佐能乎に触れると、何事もなかったかのように消え去りマダラの一太刀が悟を吹き飛ばす。

 

「っ!? クソ、輪廻眼の餓鬼道かっ!!」

 

 術をかき消したかのように見えたそれは、今マダラの変化させた輪廻眼の力の一端である餓鬼道・封術吸印であった。

 

 吹き飛ばされながらも空中で須佐能乎の態勢を立て直し、小さく舌打ちをした悟は

 

「ほらな、素直に力比べをさせてくれない……」

 

 落胆の色を見せながらも追撃に切りかかってくるマダラの須佐能乎の斬撃を太刀で受け止める。

 

 衝撃音を響かせ拮抗する両者。

 

「どうした? この程度か?」

 

 マダラの煽るかのような言葉に悟は

 

「そんなわけあるかよっ!!」

 

 そう言い返して、大きく息を吸う。

 

 瞬間、拮抗したように見えていた太刀での押し合いが一瞬で悟の優勢へと傾きマダラを地面へと向け吹き飛ばす。

 

 落下し地面へと叩きつけられたマダラの須佐能乎が地震を起こし、砂ぼこりを大量に巻き上げた。

 

 そして追撃とばかりに蹴りを見舞いしようとする悟だが、マダラの須佐能乎が咄嗟に転がりその一撃は地面を大きくえぐるだけで終わる。

 

 急激の力の増大、態勢を立て直しながらマダラは己の眼を持ってその正体を確認する。

 

「……仙術チャクラを須佐能乎に加えたか……いや、であればここまでの力を発揮するほどでもないはず……」

 

 須佐能乎の頭部にいる悟の眼の縁には仙人の証である隈取りがあり、そして……青い須佐能乎のオーラよりも更に蒼い雷のようなオーラを身に纏っていた。

 

「本気とならば、この(すべ)しかないっ……仙人モードと、八門遁甲第七・驚門、からの雷神モードの合わせ技っ!! ……正真正銘全力も全力だっ!!!!」

 

 太刀を捨て、背負ってた羽も形を変え付け根からチャクラが噴き出すように姿を変えた悟の須佐能乎は全身に碧い雷光を纏っている。 そんな悟の須佐能乎にマダラが牽制の意味を込めた八坂ノ勾玉を放つ。

 

 がしかし、その瞬間悟の須佐能乎はその巨躯が出していいスピードを越え、ボクシングのダッキングのようなステップで一気にマダラの須佐能乎の懐に飛び込むと、強烈な右フックで相手の脇腹を穿って……いた。

 

「っツォ!?」

 

 思わぬ一撃に呻き、その威力によろめこうとしたマダラの須佐能乎に対して、それを許さないかのように更なる左の拳によるフックが須佐能乎の頭部を穿ちその立ち位置をずらさせない。

 

 その連撃の隙間に反撃を試み振り上げられた太刀を持つ持ち手を目にも止まらぬ正拳突きが穿ち、砕く。

 

 反撃も許さない圧倒的な力と速さ、策を弄させない単純なパワーを押し付け始めた悟はその須佐能乎の拳による連打を繰り返す。

 

 一撃一撃が地面を揺らし、いつの間にか先代エーを封印したナルトやアガリ、我愛羅やオオノキらはその凄まじい光景に息を呑む。

 

 一撃入れるごとに須佐能乎にヒビを入れ、一撃入れるごとに地震のような地響きと衝撃が走る。

 

 圧倒的なその光景、その終着点を示すように一瞬大きくしゃがみ込んだ悟の須佐能乎は地面に足を沈ませ上半身を大きく捻り渾身のアッパーを放つ。

 

 その立ち昇る拳撃はマダラの須佐能乎の腹を穿ち、そのまま上半身を砕き昇りながら頭部に位置するマダラ本体をその拳の先に捉える。

 

 そして

 

 大きく振り上げられた拳はマダラの身体を損壊させ空へと打ち上げた。

 

「勝った……っ!」

 

 戦場の中にいる誰かのそんな呟き。 その言葉に呼応するように、封印するべく悟の須佐能乎の手の先から木遁が伸び落下を始めたマダラの身体を包み込む。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 その瞬間、悟の須佐能乎はその姿形を一瞬にして消した。

 

「!?」

 

 勝ちを目の前にした瞬間のその光景に、周囲が驚きを露わにする。

 

 消えた須佐能乎から、力なく落下を始める悟。

 

 何が起きたのかも分からないながらも、咄嗟に我愛羅が操った砂に飛び乗ったナルトが悟の元へと急ぐ。

 

「どうなってんだっ!? 何で急に悟は……っ!」

 

 混乱するナルトの呟き、しかしそんな彼の中にいる九喇嘛は一連の事態の全貌を朧気ながらに把握していた。

 

(当然と言えば、当然だろう……あそこまで人知を超えた動きをして当人が平気なはずがねぇ……だとしても、少し様子が変だとは思うが……)

 

 九喇嘛の疑問を肯定するように、落下する悟を受け止めたナルトの目にはただ気を失っているだけの悟の姿が映っていた。

 

「っ何で急に……!? 身体のどっかが傷ついてるわけでもねぇのに……?」

 

 そんなナルトの考えを遮るように、頭部と上半身の左側だけ残ったマダラは落下しつつも僅かに発現させた骨格だけの須佐能乎の片手から八坂ノ勾玉を放ちナルトを狙う。

 

「っ!」

 

 

 直撃するかに見えた八坂ノ勾玉だが、

 

 

 高速で飛来する物体がそれとぶつかり相殺する。

 

 

 その相殺された衝撃で僅かにナルトが乗る砂が揺れるも、すぐさま我愛羅によってナルトと悟は地面へと降ろされる。

 

 そんなナルトの傍らに、八坂ノ勾玉と相殺した物体……というよりも人物が降り立つ。

 

「状況が随分とわからんが……敵はマダラ、それだけは確かだな小僧」

 

「雷影のオッちゃん!?」

 

 バチバチとオーラを迸らせる雷影エーはほぼ同時に地面に落ち、それでも須佐能乎によって途轍もない威圧感を放つマダラを睨みつける。

 

 そんな雷影に並び立つように……綱手も姿を現し、ナルトの前に立つ。

 

「婆ちゃんっ!! 悟の様子が……っ!!」

 

「ああ、随分とマダラを追い詰めたていたようだが……視た感じ様子が可笑しい、原因は分からないが……急激にチャクラが消耗していっているようだ」

 

 綱手の速やかな診断に困惑するナルト、しかし悠長にさせないようにマダラが放つ勾玉の連撃を砂のガードが凌ぐ。

 

「マダラは大きくダメージを受け、再生にも時間を要するようだ。 今、攻めずに勝利はないだろう」

 

 我愛羅もまた、ナルトの前に発つとオオノキもその直ぐそばに砂で運ばれていた。

 

「会談の時と言い、全く予想の出来んガキじゃてぇ……だがその働きを無にはできんっ!」

 

 そして、最後に水影・照美メイが戦場へと降り立つ。

 

「少し遅れたようですが……何ですかこの戦場の有様、人知を超えた化け物でも暴れまわらない限りこうはならないでしょう……?」

 

 メイが周囲を見渡せば、地形がぐちゃぐちゃになった戦場が目に入る。 しかし

 

「水影、今はそれよりも目の前のマダラが優先だっ……五影がこうして肩を並べたのだ、過去の遺恨を消し去るには絶好の機会だろう」

 

 綱手はメイにそう語りかけ、五影全員が牽制をし続けているマダラへと目線を向ける。

 

 ナルトに背を向けた我愛羅は

 

「悟は後方支援の部隊に任せて引かせろ、ナルト」

 

 そう冷静に支持を出す。 その言葉に動揺を見せていたナルトも小さく頷き、影分身に気を失った悟を任せ前を向く。

 

 

「後は任せてくれ……悟、無事でいてくれってばよ」

 

 

 小さくそう呟いたナルトは五影に並び立つと……満身創痍になっているマダラに向け、一斉に攻勢に出るのであった。

 

 

 

 

 

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