目指すは忍ぶ忍者   作:pナッツ

118 / 121
あと少し


37:『正体』

 

 ずっと気にはしていた。

 

 俺……いや、黙雷悟。 そうこの忍界における黙雷悟とは一体何者なのかを。

 

 この世界に転生もとい魂だけ転移してきてから十数年余り、俺はずっと原作のNARUTOの知識を頼りにしてきた。

 

 だが、直ぐに俺は理解した。 この世界はNARUTOの世界にあってそうでない、所謂平行世界・パラレルワールド見たいなものであると。

 

 俺の知識と、体験してきた今までの出来事の相違は恐らく……『黙雷悟』という存在が居ることで起きている。

 

 俺自身、様々なことを見過ごせずに介入してきたこともこの世界が平行世界である理由の一つだとは思うが……

 

 その前提として……黙が居なければ始まらない、そう黙が居なければ俺がこの世界に来ることはなかった。

 

 なら……『黙雷悟』とは一体何者なんだ?

 

 何故うちはマダラと千手柱間の力を引き継いでいる? 彼らの子孫だとすると、そんな血を引く存在が野放しにされあまつさえ交わることなど到底あり得ない。

 

 そして分からないのはうちは由来とされる封印術が身体に仕込まれている理由……八門を使うごとに……俺の……いや『黙雷悟』の本質が漏れ出しその封印術が劣化していくと、かつて忍猫に言われたことがある。

 

 さらに……うちはマダラの存在。

 

 俺が知る原作知識の最後、ナルトとサスケが戦ったあの終末の谷での戦いの先の未来の出来事。

 

 かつて一度だけ夢で見た黙の記憶……それを六道仙人と真実の滝で会ったことで俺はその内容を思い出していた。

 

 その中で、今回の戦争で死んだはずのうちはマダラは大人になった黙を襲いその血を啜っていた。

 

 そして……『完全に……柱間と一つに』と言った。

 

 ……

 

 きっと俺がもつ疑問を……2()()にぶつければ……きっと…… 

 

 

 

~~~~~~

 

 

 

「気になることが多いのねェ、貴方」

 

 己の思考に気を取られていた小さな悟に大蛇丸が声をかける。

 

 サスケと悟の一行はとある目的の為に、木ノ葉隠れの里へと向かっていた。

 

 そんな中大蛇丸の肩に乗る悟は不意に大蛇丸から声をかけられたことで、少し焦りつつも

 

「そりゃな……俺の本体が気絶している間も、戦争は続いている。 下手したら、動きたいタイミングで動けないかもしれないと思うと──」

 

 そう大蛇丸に返答をする。 しかし大蛇丸は見透かしたかのような瞳で悟を見つめ

 

「今の貴方が、私相手に嘘をつけるとでも思ったのかしらァ? 木分身体である貴方を少しでも長く動かすためにチャクラを提供している私なら、貴方の感情の起伏も読み取れるのよ」

 

「っ……」

 

 悟に対して嘘をつくなと脅すように語りかける。 その大蛇丸からの追及に観念した悟は仕方なしに彼?からの質問に答える。

 

 

 

 

 

 

「……()()()()とアンタが揃ったら、聞きたいことがある」

 

 

 

 

 

~~~~~~

 

  

 

 戦争は続き、十尾の復活は間違いなく果たされてしまうだろう。 そう理解しつつも悟は己が動けないことに、もどかしさを感じているのは本当の事である。

 

 しかし

 

 彼は忍界の、仲間の事を信じている。

 

 本来ならば死の運命にある者たちも……もしも自分が()()()()()介入しなくてもきっと生き延びてくれると信じている。

 

 だからこそ

 

 彼が今もっとも心配していることは……

 

 相棒の真実についてであった。

 

 

 

~~~~~~

 

 

 木ノ葉の里に近づくと、一行は不意にとてつもないチャクラを感じ取った。

 

「……ナルトか」

 

 ()()()()()()()()()()と一度戦ったサスケには感じたそのチャクラに覚えがあった。

 

 そして

 

「これが十尾のチャクラか」

 

 それと同時に高まる禍々しいチャクラを悟は感じていた。

 

 尾獣たちに連なる圧倒的なチャクラ……戦地から遠く離れたこの地でも感じられるその二つのチャクラはぶつかり合っていた。

 

「……時間が惜しい、急いでくれ」

 

「人使いが荒いわねぇ……」

 

 一刻を争うと思い急かす悟に大蛇丸はしょうがないと言った態度でその申し出を受け、里の外れにあるとある建物へと駆けだした。

 

 

 

 

 

(人使いが荒いなんてよくアンタが言えるなっ!!)

 

 そんな水月の心中のツッコミは言葉にされることはなかった。

 

 

~~~~~~

 

 

 その後うずまき一族の能面堂、そこにある死神の面を携え一行はかつてのうちは居住区にある南加ノ神社へと向かう。

 

 道中、サスケは里の電柱に昇り夜の木ノ葉の里を一望する。

 

 ペインの襲撃で壊滅し、そして復興を果たした木ノ葉の里。 今から向かう元うちはの居住区を始め未だに手がついていない場所もあるが、概ね外見を取り繕うことを終えた里にサスケは

 

「ここも……ずいぶんと変わったな」

 

 そう、呟いた。

 

 そんなサスケの行動に疑問を呈する水月だが

 

「感傷に浸り過去をなぞることで己の決意を再確認する時間が必要なのよ……」

 

 過去に同じことを木ノ葉崩しの前にした大蛇丸はサスケの行動に共感を示した。

 

 そんな彼の肩で、悟は……決意を固めていた。 

 

 真実を知る決意を。

 

 

~~~~~

 

 

 かつてうちはの南加ノ神社が在った場所まで来ると、一度だけサスケと悟の視線が自然に合う。

 

 子供のころ、無邪気に……共に手裏剣の的当てなどをしていた場所の面影など感じられないほど瓦礫に埋もれたうちはの居住区。

 

 それぞれが互いに思うところがあるのか、合った視線が一秒近く続き不意にサスケが視線を切ることで互いは過去の感傷に浸ることをやめた。

 

(俺も……サスケも大きくなったもんだな……俺は今小さいんだが)

 

 南加ノ神社跡地の瓦礫をどかすことでうちは一族の集会所となっていた地下へと繋がる封印石が表れた。

 

 サスケが印を結ぶことでその封印石が退き、地下への階段を一行は進む。

 

 そして地下のうちはの石碑が置かれた空間まで来ると、大蛇丸は義気の準備を始める。

 

 すると

 

「今……思えば、あの時一族はお前を余所者扱いする必要なんてなかったわけだ。 結果的にな」

 

 サスケが不意に、大蛇丸の肩から重吾の掌に移動した悟へと目を向けずに語りかける。

 

 その言葉に悟は少し悩んだ後に

 

 

「そうでもないかもな」

 

 

 なんともないようなふうにそう返事をし、サスケらは大蛇丸の様子を見守る姿勢になった。

 

 

 

 石碑脇の燭台に火を灯し、大蛇丸が死神の面を被る。

 

 そうすると屍鬼封尽の死神が大蛇丸に憑依し彼にのみその姿が視認できるようになる。

 

 悟たちからは何も見えていないが、不意に大蛇丸の腹が裂けそして彼から忍びとしての気配を感じ取った。

 

(『大蛇丸』という存在に忍びとしての能力が戻った……)

 

 悟はその後の流れをうちはの石碑の上に移動して見守る。

 

 屍鬼封尽の死神との取引の代償に肉体が死にかけている大蛇丸は重吾にサスケの監視で付着していたゼツを複数引きずり出させる。

 

 そして……

 

 

 そのゼツらを生贄に、穢土転生の術が行使された。

 

 

 目の前で苦しむ四人のゼツに塵芥が集まり始める。

 

 

 肉体の限界が来ている大蛇丸は拘束していた残りのゼツの身体を乗っ取り、一息ついて呟く。

 

「さぁ……来るわよ、全てを知る者たちが」

 

 

 

 

 そして並びたるは四人の忍び。

 

 忍界最強と謳われた火の国木ノ葉隠れの里の歴代の長

 

 

「先代の火影たちが」

 

 

 四代目・波風ミナト

 

 三代目・猿飛ヒルゼン

 

 二代目・千手扉間

 

 そして

 

 

「なるほど、こうして比べることが出来れば似たチャクラをしているとはっきりとわかるのねェ」

 

 

 初代・千手柱間

 

 

 大蛇丸の言葉通り、この場に居るものは悟と柱間のチャクラが似ていることに気づく。

 

 そして

 

「また大蛇丸とかいう忍びの仕業か……!」

 

 魂が定着し、意識を露わにした扉間が苛立ちを露わにしながら呟く。

 

「うぬ、どういうことだ?」

 

 柱間がその言葉に説明を求めるとヒルゼンが代わりにそれに答える。

 

「我々の魂を封印していた屍鬼封尽の術を解いたのでしょう……そしてその後穢土転生を……しかしこの場に……

 

 

 お主も居ようとはな、悟」

 

 うちはの石碑の上に立つ、小さな悟にヒルゼンは何とも言えない目線を送る。

 

「お久しぶりです、三代目……」

 

 小さな悟が頭を下げる。 その姿はオリジナルと同じく小さくなれど暁の衣を羽織っている姿であるため、自分が死んでから紆余曲折があったことはヒルゼンには容易に知りえることが出来た。

 

 そんな2人をよそに柱間は四代目を名乗るミナトに興味を持ち、幾つかの質問を浴びせる。

 

 そして

 

「して五代目火影は誰ぞ!?」

 

 四代目が死んでいて木ノ葉が存続しているのであれば必然、五代目の存在が気になるというもの。

 

「お孫様の綱手姫ですよ」

 

 

 

 

「ぉぉッ………………綱か……今里は大丈夫ぞ?」

 

 

 

 

 大蛇丸からのその情報に柱間は里を憂う。

 

「意外でしょうけど、立派に火影を務めていると俺は思いますよ……柱間様」

 

「おお、お主小さいが木分身か……俺と同じ木遁使いがいるとは、未来とは実に読めぬものだな!」

 

 悟が綱手のフォローを入れることで柱間と扉間、ミナトの視線が悟へと向く。

 

 一際扉間からの鋭い視線に悟は彼の心中の予想がついているのか、特に気にせずに話を進める。

 

 再度穢土転生されたことを扉間が文句を言うが大蛇丸に扉間が後の世に残した影響を指摘され

 

「扉間よ……だからあの時俺が言ったように……」

 

 兄である柱間から苦言を呈される。

 

「っ兄者は黙っていろ。 ワシはこの蛇みたいな若僧と話を──」

 

「しかしだの……」

 

 

黙れ

 

 

 しかし扉間はその苦言を一蹴、兄への容赦のない一喝で無理矢理黙らせる。

 

((忍びの神、貫禄ねぇ……))

 

 そんな黙らされ落ち込む柱間に水月と悟が同じ感想を抱く。

 

 そうこうしていると話題はサスケの話へと移った。

 

 

 サスケはまず、ヒルゼンにイタチの真実の確認をする。

 

 当時のヒルゼンの思いと共にそのことを真実であると認めたヒルゼン。

 

 ヒルゼンの語った内容にサスケは……顔を僅かに曇らせ

 

「そうか……」

 

 その一言だけ呟いた。

 

(サスケなりに三代目を尊敬している部分はあったはずだ。 しかしある意味でその尊敬を本人に否定される形になった……そういう意味で忍びと言うのは裏の裏を読むのが必要だと改めて思い知らされるな。 誰しも優しい一面だけが全てじゃない……)

 

 悟はサスケの心情に共感を示す。 しかし

 

「うちはの呪われた運命という奴よ。 今や壊滅状態だとはな……クーデターまで企てるに至ったか」

 

 話を聞いていた扉間が無神経なことを言い、サスケと悟の僅かな敵意を受ける。

 

「そういうふうに……うちはを追いこんだのはアナタの作った警務部隊が端を発しているとも言えるのだけど……無責任なものね」

 

「……何だと?」

 

 その二人の苛立ちを察したのか大蛇丸が扉間の政策の落とし穴を指摘し批判を始める。

 

 その内容に柱間が扉間に「うちはをないがしろにするなと言ったはずだ」と問い詰めるも

 

「兄者も知っているだろう……奴ら……うちはは

 

 

 

──悪に憑かれた一族であると」

 

 扉間はそう言い、第二のマダラが出ないためには仕方がなかったと弁明をする。

 

 うちは一族を知り尽くしているような言動の扉間にサスケが問う。

 

「うちは一族とはなんだ?」と。

 

 

 

 

 愛が深い故、その暴走を抑えるために術の強さに固執した一族。

 

 扉間はうちはをそう言い表した。

 

 “心を写す瞳”写輪眼は愛の喪失……己の失意にもがくそんなうちは一族に現れる、ある種の病である。

 

「ワシはそんなうちはの力を里の為に貢献できるよう形を整え導いたつもりだ……だが、里の為に自滅の道を自ら歩んだのであればそれも仕方のないこと。 ある意味では木ノ葉の里の役に立ったということだ」

 

 愛深き一族、そう言いつつも扉間のその情を切り捨てた物言いに柱間が苦言を呈する。

 

「扉間そういう言い方はよさぬか! 話を聞いているのは純粋なうちはの子どもだ!」

 

 しかし扉間はそんな柱間の言葉に揺らぐことなく自分を貫き通す。

 

「大事なのは里だ、里が要よ。 兄者もそれは分かっていよう」

 

 そんな言葉に、サスケが万華鏡写輪眼に変化した目で2人を睨みつけ告げる。

 

「悪いが……既に純粋ではない。 俺は知りたいだけだ、過去と……そこからなる現在(いま)の真実を。 二代目火影、アンタは里が要と言ったな? なら里とはなんだ? そしてその里を作る……忍びとは何なんだ?」

 

 サスケのその言葉に扉間は自分の考えを話そうとする、しかし

 

「里……忍びとはなんぞ? ……か、中々に難しいな」

 

 柱間が間に割って入り扉間の口を塞ぐ。

 

「兄者、奴は俺に──」

 

 

 

 

扉間

 

 ほんの少しだけ呟いた柱間のその一言はその場にいる全員を戦慄させる。

 

 

 

 どれぐらいの思いと意思を乗せた言葉か推し量れないものの、少なくともその言葉と共に漏れた僅かな柱間のチャクラが集会所の壁にヒビを入れ周囲の忍びはその力の片鱗を感じた。

 

 恐らく扉間のサスケに対するあまりに不遜な態度に、温厚な彼も少しイラついたのだろう。 柱間の威嚇で扉間が黙ると、ニコッと笑顔を作り

 

「弟が何度もすまない、こ奴も悪い奴ではないのだが如何せん人の身になるのが苦手なものでな。 許してやってくれ」

 

 その謝罪は一見うちはサスケに向けられたものであったが……その実、サスケの背後の石碑に立つ悟に向けてのものである。

 

 里が要と扉が言った際に、ダンゾウの所業と物言いを想起した悟から漏れ出た僅かな、けれど濃い殺気に気がついた柱間が気を利かせて場を仕切り直したのであった。

 

 柱間の凄みでパラパラと瓦礫が空間に堕ちる音が聞こえる中、話を戻した柱間は

 

「里について話してやってもいいが、ちと長くなるぞ」

 

 とサスケに話しかける。

 

 すると

 

「出来れば早急にこの子の聞きたいことを話してあげてください……あまり時間がないものですから」

 

 大蛇丸がそう柱間に進言し、印を結ぶと穢土転生体である火影たちを縛る枷を僅かに外し彼らの感知能力を元に戻す。

 

 そうすれば、火影たちはうちはマダラや十尾の存在を感知し忍界の危機を察知した。

 

 そんな火影たちに大蛇丸が戦争の説明をする中、重吾が小声で悟に話しかける。

 

「大丈夫か? その木分身体の維持もそう長くは出来ないのだろう?」

 

「重吾……ああ、そうだ。 本体が気絶している以上、制御が段々と疎かになっていくんだよ……チャクラを供給されても術が……身体が先に朽ちてしまう」

 

 若干辛そうにしている悟を重吾が手に乗せる。

 

 するとその様子に気がついた大蛇丸は

 

「……戦争に行きたいのであれば、話を進めるために分担をお願いします。 柱間様はサスケ君に話を聞かせてあげてください……そして

 

 

 扉間様は私と共に、この木分身体の黙雷悟の質問に答えてあげましょう」

 

 そう言い場を仕切る。 その言葉の意味を理解できないヒルゼンが大蛇丸に意図を問おうとするが

 

「問答するのも面倒です、先生。 サスケ君は外で一対一で話を聞いてきなさい」

 

 大蛇丸は彼を無視し、サスケにそう言うと柱間は大蛇丸の言葉に従いサスケをつれて地上への階段を昇っていった。

 

 そして……

 

「大蛇丸……あんた」

 

「勘違いしないで欲しいのだけど、私は貴方が抱いている疑問とやらに興味があるだけよ。 ほら、場は作ったからサッサと聞きなさい」

 

 悟の為に場を整えた大蛇丸に、悟は軽く頭を下げ……その口を開く。

 

 

「二代目火影、千手扉間…………俺は……いやこの身体の本体はうちはマダラと柱間様の力を……血を受け継いでいる。 アンタなら多分、その意味を理解できるはずだ」

 

 

 悟のその言葉に、扉間は眉間に皺を寄せ……唸る。

 

「薄々……まさかとは思っていたが……その様だな。 木分身体でありながら、マダラのチャクラを僅かに感じる……それも兄者のチャクラと溶けあい変容しているのか俺が知るそれとは随分と様変わりしているが。 お前が言うその意味……それはつまり──

 

 

 

 

 

 お前が人の子ではないという事実だな?」

 

 

 

 

 扉間のその言葉に、場に居たヒルゼンは顔を歪ませる。

 

「悟が人の子ではないとはどういう意味ですか!? 二代目様っ!」

 

 悟を可愛がっていたヒルゼンが動揺する様に、大蛇丸は納得したようにうなずく。

 

「なるほど……そう言うことねェ……二代目の研究を幾つか知る私なら幾らか推察して理解できることだけど、つまりはそう」

 

 大蛇丸の言葉に被せるように悟は口を開く。

 

 

()()()()……マダラと柱間の遺伝子を使い人の手によって造られた命、それが『黙雷悟』ってことですよ。 三代目……俺には()()()()()で血の繋がった人間はいないってことです」

 

 

 僅かに悲しそうにそういう悟の言葉に、ヒルゼンは言葉を失う。

 

「意図しなければ……あり得ないんだ。 俺は日向の婚約のアレこれを経験しているから、今の忍界で一族の血の存続について忍びがどれほど敏感なのか実感している。 だからこそ、自然にマダラと柱間様の血が混じるようなことは100年余りでは殆どあり得ないと思ってる。 となれば、考えられるのは……人工的に遺伝子を混ぜられる、人の手によるクローンだけだ」

 

 そこまで悟が言えば、周囲の忍びは先の話を推察できる。 しかし扉間は

 

「だが……それは有り得ん。 確かに俺は……かつて兄者とマダラの力を持つ存在を造ろうとしたこともあるのは事実だ」

 

 己の所業を認めつつも、悟の言葉を否定する。

 

「しかし、俺のその研究は失敗に終わり……故に研究に関する情報は完全に葬り去ったのだ。 ()()()……倫理の観点からも許されるものではないことを兄者に……本気で叱られたことを覚えているからこそ、それは間違いない」

 

 扉間のその言葉に大蛇丸が興味を示す。

 

「貴方ほどの忍びが、失敗だけで終わるとは珍しいんじゃないんですか……? 何か理由でも?」

 

 実験から何かしらの利点や発展を得ているのではと大蛇丸が問うと扉間は渋々応える。

 

「大蛇丸、貴様は兄者の細胞を扱っている様だからわかるだろうが……それは生半可なものではない。 ただでさえ命を人工的に造る人造人間の実験は成果も上がらず、不安定なものであった……その上兄者とマダラの細胞を使えば、人造人間を作るために用いた『胚』がその力に耐えきれずに自壊してしまうのだ……」

 

 扉間のその言葉は説得力のあるものであった。 生きた人間でさえ、柱間細胞は適合しなければ毒となり体を蝕む……ダンゾウやヤマトと共にあったかつての大蛇丸の実験体の様に。 そんな力を存在が不安定な人造人間に初めから与えれば……どうなるか自明の理であり、その上にマダラのものも足せば実現がより不可能になることは当たり前のことであった。

 

「俺がかつて造った人造人間の元となる『胚』も所詮人の細胞から培養したもの。 赤子以下の存在に力を植え付けるのなど土台無理なことだったのだ……そんないたずらに命を持て遊ぶ所業、幾ら千手とうちはを統治できる存在による平和を願えど、やるべきではなかったと……俺は後悔し完全に研究を消し去った」

 

 己の行いに後悔を感じているのか、珍しい弱気な顔を一瞬見せた扉間は悟へと目を向ける。

 

「だからこそ、俺は貴様の存在がわからん。 何故貴様は一つの命として形を成しているのか……」

 

 扉間からのその言葉に悟は

 

「俺なりに答えを知っているわけではないんですが……1つ気になるワードがあります」

 

 そう言って、人差し指を立てそのワードを口にする。

 

 

 

 

「扉間様……そして大蛇丸、どちらか『シン』……という存在か、団体……又は名を知りませんか?」

 

 

 

 

 そんな悟の言葉に、扉間は思い当たる節がないのか小さく唸るが大蛇丸はハッとしたかのような表情を浮かべる。

 

 大蛇丸の反応に、重吾の手に乗る悟の目線は彼へと向けられる。

 

「貴方……その名をどこで?」

 

 大蛇丸からの問いに悟は

 

「詳しく話すと長くなるんだけど、ざっくり言えば俺は『黙雷悟』本人じゃない。 元は異世界の人間で、この身体の本体には元々の『黙雷悟』の魂が別にいるんだ」

 

 己の身の上を語り始める。 初めから突拍子のない内容ではあるが扉間とミナトだけは思い当たる節があるのか

 

「異世界からの存在か……楼蘭の地で確かその様な報告があったな……」

 

 と呟く扉間にミナトが

 

「俺は楼蘭に一度三代目の命で任務に赴きましたが……当時の記憶に抜け落ちている点があるんです。 その後二代目様のまとめた調査報告書で時空間の歪と異世界との繋がりが龍脈によって引き起こされているとあったので……俺の記憶の抜けもその影響かと思っていました。 つまり彼……悟君の言うこともないことではないのでしょう」

 

 己の体験を話し、その知識から悟の身の上の話をないことではないと素直に聞き入る。

 

「その俺とは別の魂の『悟』……俺は黙って読んでるけども、そいつも実は未来から来てて……一度だけそいつの記憶を夢として見た時、『シン』と言う名の外見がそっくりな大人数の子どもたちを見たんだ」

 

 そこまで話した悟は、大蛇丸に再度目線を向けた。

 

「その『シン』たちは……黙だけを『父さん』と呼び……恐らく万華鏡写輪眼を使って戦っていた。 もしかして、そのシンたちもクローンで、黙雷悟はその『先駆け』的な存在じゃないのかと思ってる。 だから彼らは黙を父さんと呼んでいた……なあ、大蛇丸……『シン』とは一体何なんだ?」

 

 悟からのその問いに大蛇丸は合点のいった様子で口を開いた。

 

「なるほどねェ……ええ、私は『シン』を知っているわ……彼は私の実験体の1人であり協力者……特異的な体質を持っていた」

 

 大蛇丸は目線を扉間に向ける。

 

「シンは移植された組織に拒絶反応を全く示さないという特異体質の持ち主なのよ……当然私はその力に目をつけ……彼と共に研究をしたわァ……

 

 

──偶然にも扉間様と同じ、クローンの研究を」

 

 その言葉に、ヒルゼンは顔を歪ませる。 二代目も教え子も、人の道を外れるような研究をしていたという事実はヒルゼンには酷な物であり……それは彼がサスケに味合わせた感覚でもあった。

 

「シンの体細胞組織を使えば、実現できるかもしれないわねェ……千手柱間とうちはマダラの遺伝子を持ったクローンも……それでも拒絶反応がないだけで強大な力に不完全な体が耐えられるとは思わないけど」

 

 大蛇丸は『黙雷悟』の存在の可能性を認めつつも、最後の一押しが必要であると分かっていた。

 

 遺伝子を引き継いだ子どもではなく、そのまま本人の力を発現させるということは負担が想像を絶するものである。

 

 マダラと柱間が研ぎ澄ませた力の結晶を果たして、クローンの赤子が耐えられるであろうか?

 

 その問いへの答えは

 

「うちは一族由来の封印術……それが俺に刻まれていると、かつて忍猫に言われたことがある。 それが俺が今ここに居られる理由って……ことか」

 

 既に悟の中にあった。

 

 

 マダラと柱間の強大な力を持たせたクローンを生成するために、拒絶反応を起こさない『シン』の細胞を使い……己を自壊させるほどのその力をうちはの封印術で抑え込む。

 

 

 こうして忍界の『黙雷悟』は生まれたのだろう。

 

「だが、それほどの事を一体……誰がやったのだというのだ」

 

 扉間は自身が抱いた疑問を口にする。

 

「さあ……それは俺にも。 一番怪しいと思ってたマダラも俺のことを知らない様子でしたし……なんとも言えないです」

 

 先に穢土転生されたマダラと戦った時のリアクションからすれば、マダラ本人によって悟が生み出されたとも考えにくく……もう一人の遺伝子の持ち主、柱間も本人が人造人間という存在に否定的であったことを考慮すれば関与は考えられないであろう。

 

──誰が『黙雷悟』を生み出したのか?

 

 そんな疑問が残りつつも、大蛇丸は口を挟むようにして話題を切り替える。

 

「けれど、貴方……随分とその体で無茶をしているじゃない。 それも2人の力も存分に引き出して……その封印術とやらが貴方の存在を保つためのものであるなら、今の貴方の状態はかなり危険なものであると、自覚しているのかしら?」

 

 大蛇丸からのその指摘は当然のものであった。 現状悟は本来黙が30代の大人になるまでわずかしか引き出せなかったその忍びとしての力を八門遁甲を使い、封印術を綻ばせて無理やり引き出している状態と言ってもいい。 となれば当然……

 

「魂だけじゃなく、身体の寿命も……思っていたよりも残り僅かなんだろうな」

 

 そう呟いた悟の言葉通りであった。

 

 現に悟の本体は、仙法と万華鏡写輪眼を使い八門遁甲第七門まで開放した後で気を失っている。

 

 もはや、封印術もその効果をほとんど為してはおらず悟の身体はマダラと柱間の力に耐えかねている状態なのであろう。

 

「悟よ……お主はそこまでして……今何をしようとしておるのだ?」

 

 自分の掌を見つめる悟に、心配そうにヒルゼンが問う。 その問いに悟は……

 

 

「……うちはマダラを討つ……そのつもりでした。 未来では何故かこの戦争で敗れたはずのマダラが復活し、世界を破滅へと追いやっていた。 だからこの戦争で完全にマダラを消し去るなりすれば、世界の危機を回避できると思っていた。 けれど、このままじゃあ──」

 

 

 自身の目的を口にした。 しかし、本来の歴史であればマダラはこの戦争で確実に死んでおり……復活するなど到底考えられないものである。 出来ることと言えばマダラを封印してそれをずっと見張るなどだが……もはやそれも悟には厳しいことであった。

 

 

 項垂れる悟。 薄々感付いていた黙雷悟の正体と……そこから予想される自分たちの寿命。 その情報の衝撃に落ち込む悟であったが……

 

 

 

「なら、何もしなければいいじゃない」

 

 

 

 大蛇丸のその言葉に悟は顔を挙げた。

 

「大人しくしていれば、これ以上貴方の寿命が悪戯に減ることもないわ。 この戦争からはここで手を引いて、その未来の惨劇とやらに備えればいい……そうじゃない?」

 

 大蛇丸はさも答えは決まっているとばかりに、簡単にそう言いのける。 

 

「駄目だ、この先……俺は何が起きるかを知っているっ! それを放っておくことなんて──」

 

 

 

「ならば、我々を頼ってくれ……悟」

 

 

 

 悟の言葉を遮るようにヒルゼンは強くそう訴えかける。

 

「お主はまだ生きているのだ。 誰も……お主の仲間も、マリエも……お主の死を望んではおらぬだろう」

 

 ヒルゼンのその言葉に、ミナトが反応を示した。

 

「マリエ……!? 三代目、マリエは今──」

 

「蒼鳥マリエならば、今まさに戦地で戦っているわよ……はたけカカシやマイト・ガイと共に」

 

 ミナトの言葉に大蛇丸が返答をする。

 

「マリエは悟の存在を糧にあの状態から気を吹き替えしたのだ……ミナト、お前が死んだ後でな」

 

 ヒルゼンはマリエの事をミナトに伝える。 心を壊し……それでも九尾から里を守るため、あのナルトが生まれた日に岩状鎧武を振り絞ったマリエのその後を。

 

 その内容にミナトは

 

「……ならなおさら、君を無茶させて死なせる訳には行かないってことだね悟君。 君はマリエを救い……それはきっと彼女以外にもカカシやガイの救いにもなったはずだ」

 

 そう言いつつ、重吾の掌に乗る小さな悟の頭に人差し指を乗せて撫でる。

 

「話が突拍子しなさ過ぎて半分以上わかんなかったけど……要は今回の戦争で勝って、この先またしつこく復活するマダラも返り討ちにすればいいってことでしょ? 単純じゃないか」

 

 水月はそういいつつ重吾と肩を組む。

 

「……ああ、悟。 話は単純だ……誰も世界の命運をお前1人に背負わせはしない。 もちろん俺もだ」

 

 重吾はそう言って優しい目で悟を見下ろす。

 

「……皆」

 

 『自分がどうにかしなければ』そんな思いに駆られていた悟に差す、1つの答え。

 

 

──今は味方に託して逃げてもいい

 

 

 そんな彼にはなかった選択肢、可能性は……とても眩く感じられた。

 

「知っている情報を渡して、貴方は大人しくしていなさい」

 

 大蛇丸からすらもそう言われ悟は小さくため息をついて、降参したように両手を挙げた。

 

 

 

 

 

「分かったよ……俺の知ることを教えるから……皆を……世界を救ってくれ」

 

 頑固な気持ちを解きほぐされた悟は……己の知るこの先の展開を喋った。

 

 

 

 きっとその情報が……少しでも誰かの命を救うと信じて。

 

 もし自分が目を覚ましても、寿命を削らないように逃げ出すことも考慮して……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そして

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『黙雷悟』は(無限月読)へと堕ちた。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。