目指すは忍ぶ忍者   作:pナッツ

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なんとか生きてます


15:勝ち負けの境界

〈三人称〉

 

黙雷悟がアカデミーに入学する時期が来た。悟は一年早くアカデミーに入っていたテンテンから定期的に授業の内容や、実施訓練などの話を大まかに聞いていたため、入った当初は新鮮味をあまり感じていなかった。

 

 

『入学して一番大変だったのは……というか入学すること自体が今のところ一番緊張したなあ』と悟は振り返る。

 

アカデミーに入学する際、いわゆる入試や面接があった。悟は入試にあたる部分は問題なく突破できたが問題は面接にあった。

 

里出身のものであれば意気込みを聞かれる程度の面接である。悟は事前にテンテンから聞いていたため、余裕と高をくくっていたが問題が発生した。

 

「あなたは、里出身ではないようですが、里を愛していますか?里の平和のために尽力することができますか?」

 

このように所謂里に忠誠を誓うかどうかの内容を聞かれたのだ。

 

悟自身の本音を言えば、里自体は実際どうなろうがどうでもいい。自分が助けたい、良くしてあげたい人のために、である。

 

悟はそもそも、この里自体少し陰湿な部分があるため好きではない。

 

なので不意にこの質問を受けたとき、悟は狼狽えてしまった――さすがに面接なので普段つけている狐のお面は外している――ため、面接官が不審に思い保護者であるマリエが呼び出しを食らった。

 

前世、高校でバカをやらかして親が呼び出しを食らった申し訳なさ、不甲斐なさを反芻した悟は、待合室でマリエと少し話す内容を復習して再度面接に挑み、無事合格することができた。

 

その際、マリエの「悟ちゃんはやっぱりまだまだ子供ね~」という言葉と生暖かい視線は悟的に恥ずかしさを加速させた。

 

そんな一波乱の末、悟のアカデミー生活は始まった。

 

 

悟は入学前から知り合いだったナルトやサスケ、ヒナタとは偶にアカデミーで会話をしていたが基本的にはぼっちであった。

 

ナルトも大概風評被害で一部の生徒以外とはほとんど関わり合いを持っていなかったが、悟は見た目が悪かった。普段から狐のお面を外さない悟は普通に周囲から避けられていた。

 

それでも放課後、先の3名と遊んだり修行をしたりしていたため、孤独感は

感じてはいなかった。

 

ナルトとはかけっこや、一緒に悪戯を行うなどの子どもらしくはしゃぐことをしていた。もっとも悟にとって、ナルトの悪戯がやりすぎな内容にならないように監視するのが主な目的でああったが。

 

「それは危ない!誰かがケガするだろ!」

 

「落書きは後で落とすんだから落ちやすい水性の絵の具でやろうぜ!」

 

「物盗むのはガチでいかんわ!!バカたれ!!」

などなど。

 

「……悟ってば、うるさいってばよ……」

とナルトは悪戯をするたびに悟が介入してくるのがめんどくさいと感じ過激な悪戯を次第に控えるようになっていった。

 

サスケとは演習場を使い手裏剣術や組手、術の練習などを一緒に行っていた。

 

最初は居住区外での活動に消極的であったサスケだが次第に慣れていき、悟と一緒に切磋琢磨していた。憧れの兄を目指して。

 

「火遁?」

 

「そう火遁・豪火球の術。うちはで一人前と認めてもらうのに必要な術だ!俺もきちんと覚えたいんだけど、上手くいかなくて……。悟はコツとかなんか分かるか?」

 

「性質変化を持った術は基本的に会得難易度が高いし、豪火球は会得は難しいていうしなあ。俺が思うに、チャクラコントロールをしっかりできればサスケなら出来るようになると思うし、木登りでもする?」

 

「……?今更木登りで術ができるようになるのか?」

 

「ふっふっふっ只の木登りではない!手を使わない木登りだ!」

 

みたいなやり取りを悟とサスケはしている。

 

悟はサスケの〈負けず嫌い〉な部分を刺激しつつ、自信をつけさせるように動いていた。サスケは意外にかまってちゃんで自分に自信がない。

 

あの兄がいるのだ。自己評価が低くなりがちで、周囲の人間に自分を評価してほしいという欲求を悟は満たしてあげている。

 

そのうえで……

 

「もし兄さんが敵になったら!?そんなことあるわけないだろ!流石に悟でも怒るぞ!」

 

「例えばだよ例えば。もし超強い忍びが敵にいたらっていうシミュレーションだって」

 

「……納得できない。俺なら真っ先に敵になってる理由を兄さんに聞く!」

 

「……それもいいんじゃないかあ。相手の動機を知るのは結構大切だと思うよ」

 

と未来におきる事件の心構えをサスケにそれとなく仕込んでいく。

 

『……お互いに傷ついたりするのは見ていたくないしなあ。ほんの少しだけでも緩和してあげたいなあ』

と悟は願う。

 

意外にもヒナタとも悟は個人的に会っていた。理由は〈ヒザシさんが柔拳の型を教えてくれなくなったため〉である。そのため、悟はヒナタと演習場でひたすら組手を行っていた。

 

ヒザシ曰く「基礎は全て教えた。あとは君次第だ」のこと。

 

ヒナタとの組手は、単純な遊びとヒナタの修行のためという名目だが、悟の目的はヒナタの技術を盗むことにあった。

 

ヒナタは他人を傷つけることを躊躇しているが、柔拳自体の練度は歳の割にしっかりと進んでいる。

 

なので相手を傷つけない練習組手で、完成されたヒナタの型に触れることが悟にとって重要であった。

 

ただ、そんなに真面目に組手自体は行っておらず、大体は

 

「今日、ナルト君とアカデミーで少し会話出来て……」

 

「ふんふん」

 

「ナルト君がサスケ君に組手で勝てなくて悔しがってて……」

 

「へー」

 

「授業中にナルト君がノートに落書きしてて、先生に怒られそうになった時にね……」

 

「ナルトそんなことしてたのか……」

 

と日常会話を挟みながらの組手であった。

 

最初にあったころとは違い、随分と会話ができるようになったものだと悟は感慨深く感じる。

 

……ほとんどがナルトの話題なのはもう、しょうがないと悟は諦めていた。

 

また、会う機会は少なくはなったがテンテンとも放課後に会っていた。流石に数年前みたいな遊びをするような仲ではなくなったが、それでも忍びについて日々語り合っていた。

 

そんな日常と対になるように悟は日々、緊張感を増していった。

 

理由はうちはのクーデターについてである。

 

悟がうちはの居住区に出入りを控えるように言われてから、うちはと木の葉の一部の忍び同士でいざこざが起きるようになっていた。

 

「うちはは陰険だ」

 

   「これだから無能な木の葉の忍びは、うちはに任せればよいものを……」

 

里の影に潜む、不満や不信感は徐々に高まってきている。

 

大人でなくとも事情を間接的に知っている悟はこの雰囲気に気が付いていた。

 

また、サスケが「最近の兄さんは少し怖い・・・」と言っていたり、あのうちはシスイが行方不明になったりと明らかに事が起きようとしていることを悟は察知していた。

 

~~~~~~~~~~

<視点:マリエ>

 

悟ちゃんがアカデミーに入学して早いもので上半期が終わろうとしていた。

 

入学時の面接のことを考えると彼はまだまだ、忍びとしての振る舞いは苦手のようで少し、ある意味安心している私がいた。

 

けれど悟ちゃんの実力は間違いなく伸びてきている。嬉しくもあり、心配に思う親心……みたいなものがある。

 

それに、彼は少し特別な存在なのだと近頃思うようになってきた。

 

数年前の日向の誘拐事件のことを考える。そして今回里内でのうちはとの対立の増加。それに合わせて最近悟ちゃんはまたあの時のように悩み始めている。

 

私自身はうちはとは仲良くしていたつもりである。

 

けれどイタチ君という後輩や、ミコトさんとも最近は会えていない。

 

そして、そろそろアカデミーでの上半期の成績が返ってくる時期になり、何気なく悟ちゃんに聞いてみた。

 

「また、何か起きるのね……」と。

 

悟ちゃんはお面の奥の少しの動揺を隠せず、言葉を選んでいる。流石に私には隠し事ができないと諦めているようで説明しようとしているようだ。

 

「多分、近いうちに大きな事件が起きます」と悟ちゃん言う。

 

「細かい時期とかはわからないんですけど、俺、ただ起きるってことは分かるんです」

 

……それに自分から関わろうとしている、とは悟ちゃんは言わない。けれど私にはわかってしまう。彼は誰かが傷つくのを見過ごせない、そういう子だと。

 

「……それで今度も相手は遥か格上かしら?あの時みたいに」と私が言うと

 

悟ちゃんは苦笑いしながら「そうなんですよ、あはは……」と答える。

 

 

「勝ち負けの条件って知ってる?」と私は言葉を繋ぐ。

 

「この忍界では単純に生き死にが勝負を分けることは少ないわ。生き残っても負けるし、死んでも勝つことはある。……何が起きるか悟ちゃんは知っているなら、この条件をちゃんと考えておいて。死ぬのは……私が許さないけど。引き際をちゃんと考えておくのよ」

 

と精一杯のアドバイスを送る。

 

本音を言えば……いや私が思うことに意味はない。私は生き残って負けた人間だ。悟ちゃんには生き残って勝ってほしいだから……。

 

 

悟ちゃんは真剣に考えている。私が出来ることは支えること。

 

「これ、悟ちゃんが欲しいって言っていた棍棒。知り合いの武器職人の人に頼んで作ってもらったの、持って行って」と小さな巻物から、開封の術で金属製の黒い棍棒を二本呼び出す。

 

作りは単純、見た目は只の棒だけど、しっかりとした金属製で出来ている。

 

クナイの刃の部分をそのまま棒状に伸ばしたもの。……シンプルなつくりだけどこれが悟ちゃんの命を助けると思えば心強い。

 

「これは……いいんですか?」と遠慮がちな悟ちゃんに私は

 

「貴方のためのオーダーメイドよ。良い悪いじゃなくて貴方しか使わないわ」とクスクスと笑いながら手渡す。

 

ずっしりとした重量感におおっ……と悟ちゃんはこぼしながら軽く素振りをする。

 

満足している様子は顔を見なくてもわかる。プレゼントした甲斐があるわ。

 

「……ありがとうございます。マリエさん、俺絶対帰ってきます!」

 

とこっちを不安にさせる言葉を元気よくいう悟ちゃんにあきれながらも

 

「そうね、絶対に帰ってきてね。そしたら私うれしいわ」と返す

 

悟ちゃんなりに決心がついたようで良かった……。

 

こうしてこの日は終わりを告げた。

 

 

 

 

 

 

 

 

「あの……マリエさん?」

「……どうかしたの?」

「封入の術とか開封の術をまだ使えないんで、持ち運びが……」

 

「あ~……」

 

 

とりあえず、その日は会得が簡単な開封の術を悟ちゃんに教え込んだ。

 

私が封入の術を使い必要な時に悟ちゃんが開封の術で取り出す。

 

この形でとりあえず落ち着き、本当に今日はお互い寝床についた。

 

……悟ちゃんに時空間忍術の適性がないことを痛感して不安を感じながら。

 

 

 

~~~~~~~~~~~~~

<視点:黙雷悟>

 

マリエさんに割と簡単と言われていた封入の術を会得できず、より簡単だと言われた開封の術の会得にかなり手こずって少し落ち込みながらも俺は布団に潜る。

 

 

夜、施設の寝床で、俺は近いうちに絶対起きるであろう、うちは虐殺について考えていた。

 

ピンポイントでいつ起きるか、正確な日時はわからないが多分、サスケと一緒に行動していれば関わるチャンスが来るはずだ。

 

そして関わるときの明確な目標も立てておく。うちはの人間を一人でも救いたい。

 

だけど、サスケと一緒に行動する以上、タイミング的にことが終わった後かもしれない。

だからその時は、せめてサスケがイタチさんを憎むようなことがないように足掻こう。

 

そのためにイタチさんと相対する覚悟をする。

 

実力は遥かに上だが、ただ一つだけイタチさんを怯ませることができる作戦がある。それで多少でもダメージが入れば、サスケとイタチさんとの邂逅に原作にはないズレが起きるはずだ。

 

不確かだけど、今の俺に出来ることはそれぐらいだ。

 

そんな自分の非力さを呪いながら俺は眠りにつく。

 

 

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