<三人称>
上半期の総復習と題したアカデミーでの試験を終えて、帰り道サスケと悟は帰り道を共にする。
「流石サスケだなあ。クナイや手裏剣の扱いは間違いなくトップだろ!」
と悟はサスケを褒めちぎる。サスケの自尊心を向上させることが目的だが、思っていることを口に出しているだけである。
「ははは、そうかなあ」とサスケは自分の頭を撫でながら照れている。
「そうだ悟、今度試験の成績が帰ってきたら、一緒にうちでご飯食べていかないか?父さんが、たまには呼んでもいいって言ってくれたんだよ!」
とサスケは無邪気に話す。
その話を聞いた瞬間、悟は自分でもわからない違和感を覚えるがお面と、歩みを止めなかったおかげでサスケ不審には思わなかった。
「そう、それならお邪魔しようかな。ミコトさんのご飯めちゃくちゃうまいし」と返す悟。
悟は直感で思う『ああ、その日か』と。
そんな悟にサスケは話しかけ続ける。
「そういえば試験の組手の時、ナルトの奴しつこかったなあ。弱っちいのに何度も立ち上がってきて」
「ああ、ナルトは諦めないし根性あるし、タフだし。そういうやつだからなあ」
「何かと俺に対して因縁つけてくるし、何なんだあいつ」
とサスケはあきれている態度をするが少しだけ嬉しそうだ。
試験の組手の時サスケと組んだ相手はほとんどがすぐに棄権をした。
負けず嫌いのナルトはボロボロになりながらも、サスケに向かっていった。
うちは一族としてではなく、勝手だがライバルとしてしか見ていないナルトのフィルターを通さない感情はサスケにとって清々しいものに感じられるようだ。
そんなことを悟は察しながらも
「まあ、同じ負けず嫌い同士仲良くすれば良いんじゃないか?」
とはやし立てると
「はあ?あんな落ちこぼれと一緒にするな!ナルトの奴、ウスラトンカチとか言ってきたが、あいつこそウスラトンカチだ!」
と意地になってへそを曲げるサスケ。
その後もウスラトンカチが、ウスラトンカチがとぶつぶつと文句を言うサスケをからかいながら、悟は楽しく帰路についた。
それから数日後、上半期の試験の結果が返ってきた。その日アカデミーからサスケと悟は直接うちは邸へと向かっていた。
黄昏時、お互いの試験の結果を見せあいながら二人は会話を弾ませる。
「サスケ、実技は完璧トップなのに筆記酷くないか?」
「うっうるさい!そういう悟は全部中途半端じゃねえか!俺と修行してる時と比べて手え抜いてるんじゃねえか?」
見たいに和気あいあいと。
「悟、マリエさんだっけか?ちゃんと今日のことは伝えてあるか?」
「ああ大丈夫今日はサスケの家で食べてくるって伝えてあるよ」
一緒に『今日がその日かもしれない』とも。
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うちはの居住区に近づくと悟は違和感を覚える。
『俺の感知能力だと全く違和感がないのに、何というか雰囲気が変だ。』
人の気配がするのに、恐ろしいほどに静けさだけが漂う。そんな異様な雰囲気にサスケも気づいたようで、少し戸惑っている様子だ。
そしてうちはの居住区に足を踏み込むと悟が感知していたにぎやかな気配は一瞬にして消え去る。
何らかの結界忍術なのだろう。居住区の外からは人がいるように感じられたが、踏み込めば真実があらわになる。
うちはがすでに壊滅しているという真実が。
悟はあふれ出る汗を止めらずにいるが動揺はしないよう心を強く保つ。
「悟……なんか変だ……」とサスケも違和感を確信する。
するとほんのわずかだが、悟の感知に弱々しい気配が引っかかる。
と同時にサスケが「父さん、母さん!」と叫び走り出してしまう。
異常な雰囲気に冷静さを欠いたサスケは一人で家の方角へと向かう。
悟はそれを追いかけたかったが、気配が気になり、そちらを優先する。
「もしかしたら生き残りが……!」そう願いながらサスケとは別行動を取った。
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<視点:黙雷悟>
気配をたどっていくと、うちはせんべいの店へとたどり着く。それまでの道すがら、通ってきた家屋から全く気配が感じず、その中に……死体があると思うと心が折れそうになった。
けれどせめて生き残りを救いたいと、店の前まで来ると店からうちはせんべいの店主が血だらけで足を引きずりながら出てきた。
「大丈夫ですか!?」と言い俺は駆け寄る。
「……にげ、ろぉ」
瞬間、店主の胸からクナイが飛び出し、鮮血が近づいていた俺のお面に降りかかる。
俺は動きが止まり、思考も止まりそうになる。俺の感知に引っかからず、店主を貫いたクナイの持ち主は店主を横に倒し一瞥をくれる。
「これでターゲットは最後か。イタチめ、やり損ないが多いな。まあ、あれでもまだガキか……」
そう呟いたその<男>はこちらへと声をかける。
「……おかしいな。あの結界忍術には、よほど強い意志がないとうちはから気を反らすようにする効果があったのだが……貴様どうしてここにいる?」
黒い外套に面をつけた存在が俺に問う。
まさかこの人物がこの場にいるなんて……!想定外も想定外だ!!
『うちは……オビト!』
原作での記憶が不確かなせいでオビトがこの場にいたかわからないが、間違いなく会ってはいけない人物に会ってしまったと俺は動揺を隠せない。
「だんまりか……しかし俺の姿を見られたからにはガキだろうと生かしておくわけにはいかない」
そういいながらオビトは俺に手のひらを接触させようと、急接近しこちらに手を伸ばす。
俺は一瞬で八門遁甲第二・休門まで開け、開封の術で呼び出した鉄棒の一本でオビトの手を弾き、強化した身体能力で距離を取る。
「はあ……!はあ……!」肩で息をする俺。
緊張と同様、知り合いの死といった要素が俺の動きをぎこちなく縛る。それでも考えて動かなければ……死ぬ!
オビトは弾かれた手を挙げたまま「タイミングが合ったか、運がいい」と呟き、ゆっくりと手を下ろす。
俺は「あんた、何なんだ!!」と叫ぶ。
オビトはふうっとため息をつき「言うわけがないだろう。冥土の土産を添える程忍びは甘くない」と言う。
恐ろしいほどの速さの手裏剣をほぼノーモーションで投擲しながら。
八門遁甲で反応速度が上がっていてもその早すぎる手裏剣に対応しきれず、何とか鉄棒で軌道を反らすが手裏剣は俺の肩の肉を裂いた。
「ヅッう!」痛みに声が漏れるが目線はオビトから外さない。外せば死ぬ。単純にそれほどの実力差があり、さらに相手がまだまだ本気ではないという現実がある。
「ほう、今のに対応するとは見どころがあるな。ただのガキではない……。ならばこれならどうだ!!」
そう言った一瞬後に、大量の数え切れない手裏剣が俺に高速で迫る。
俺は二本目の鉄棒を呼び出し、八門遁甲を第三生門まで開ける。だがまだ生門は完璧には開けられないため反動が大きく本来の効果も得られない。
それでもこの攻撃に全力を出さなければ死ぬと俺の本能が叫び、手裏剣を弾き弾き弾きまくる。
「うああああああああぁぁぁ……!!」
死ねない、死にたくないという感情が俺の動作を促し、雪崩のような手裏剣を間一髪、致命傷にならないように弾いていく。
ガキンッという最後の手裏剣を叩き落とす音が聞こえたときには俺は全身血まみれになっていた。
以前、目線はオビトに向けてはいるが八門遁甲が閉じ生門の反動で膝をつく。肩も上がらず両手に持った鉄棒も手から離れる。
「ふふふ……面白い余興だった。ここで俺に出会わなければ、将来大物になれたかもしれなかったが、残念だったな。……死ね」
オビトは俺に近づき左手をかざす。……時空間忍術の神威だ。触れられれば異空間に飛ばされて終わりだ。
しかし俺の頭に手が触れる直前俺は印を完成させる。
「土遁!拳岩の術!!」
右手を岩に変化させ、無理やり第二休門まで開放した俺はオビトの手をすり抜け、顔面目掛けて拳を振るう。
本来、八門遁甲と忍術は相性が悪く併用できない。が、予め発動しておいた術を何とか保つことは今の俺にならできる。
合わせ技により威力を増した拳を目の前にオビトは「無駄だ」と呟く。
避けようしないオビトに俺は容赦なく拳を振るう。
ガッ!と言う手ごたえを感じた俺は思いっきり力を込めて拳を振りぬく。
「ッぶっとべええええええええ!」
オビトの顔面にヒットした拳はそのままオビトをうちはせんべい店へと吹き飛ばし叩きつける。
まさか自分が一矢報いたことに驚きつつも、俺は警戒を緩めず立ち込める煙の先を見据える……。
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<三人称>
オビトが吹き飛ばされ突っ込んだことで、うちはせんべいの店先は煙が立ち込め、悟はその先のオビトを警戒して肩で息をする。
悟は後ずさりながらこの場を立ち去ろうとするがガラッと音がすると、煙の中からオビトが姿を現す。
うちはオビトは驚愕していた。彼はカウンターが来ることも読んでおり、それに合わせて自身の術、神威によりカウンターが当たる部分の体を異空間に飛ばし、攻撃をすり抜けさせその隙をつくつもりであった。
けれど悟の拳はオビトの顔面にクリーンヒットし、大きなダメージを残す。
「貴様……何をした!」仮面の一部が割れたオビトは怒気を孕んだ言葉を投げかける。
それに対して悟は休門で上げた身体能力で落ちている手裏剣を投擲する返事を返す。
しかし、その手裏剣はオビトの体をすり抜ける。
悟自身、何かをしたわけではない。けれど、己の絶対的な術が破られたことでオビトはその理由を求める。
「火遁・豪火球!」
オビトのその術は悟を殺すのに十分すぎるほどの威力を持っていた。
その死の予感に悟は飛びのき、必死に避けるがその先にオビトは先回りして待ち構える。
後ろで家屋が吹き飛び、待ち構えるオビトに悟は捕まり首を片手で締め上げられる。
「グッ……あ……ぁ」必死に抵抗してオビトの手をつかむ悟だが、八門遁甲が解け反動により抵抗する力が入らない。
「やはり……!神威が通じない。貴様、何か特別な……」
ギリッと悟の首を締め上げる手に力が入る。
「この感覚、貴様<この世からズレて>いるのか……!?」
オビトが何かに気づいた時、オビトの腕目掛けクナイが飛来する。
それにより、オビトは悟を手放し距離を開ける。
「……何のつもりだ、イタチ」
オビトが向ける視線の先にはうちはイタチが立っていた。
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<視点:うちはイタチ>
結界が二人の侵入を告げる。一人はサスケ、もう一人は……
「黙雷……悟……か」
俺は恋人を殺した刀を振り血を飛ばす。
俺には心というものがないのか?感情がないのか?
自問自答が頭の中を巡り鳴り響く。
それでも俺は忍びとして、この里を守るためになすべきことを為す。
その思いののまま心を殺し、仲間を、大切な人を殺した。
あとは
「父さん……母さん……」
ふと言葉が漏れ涙が目に浮かぶ。忍びらしくない。
深呼吸し息を整える。
ふと悟くんの気配が乱れていることに気が付く。
「まさか、マダラと接触したのか…!」
俺はあり得る想定を組み、移動を始める。本来ならこのまま俺は両親の元へと向かいこの虐殺のピリオドを打つ。しかし、うちはと関わりのない、<里>の彼が犠牲になるのは俺には見過ごせない。
彼は……良いやつだ。
シスイとも打ち解け、サスケの友となり、俺を慕ってくれていた。
そしてうちはと差別なく関わりを持とうとしていた彼を死なせる訳には!
頭の中の俺が「散々自分の一族を殺しておいて、赤の他人一人を救おうとは矛盾しているぞ」と指摘する。
それでも俺は足を彼らへと向け走る。
サスケは……まだ家にたどり着けていないようだが……。
時間があまりない……。
すると家屋が火遁で吹き飛ぶ様子が見えた。
現場にたどり着くとマダラが血まみれの悟くんの首を締め上げてい場面に遭遇する。
俺はマダラ腕目掛けクナイを投げ、彼との距離を開けさせる。マダラとはこの虐殺の夜の協力者でもある。本気では投げていない。
「……何のつもりだ、イタチ」
マダラは割れた面の向こうの目を覗かせ、こちらを睨む。
「今夜のターゲットはうちは一族だ。関係のない里の者を巻き込むわけにはいかない!」
と語気を強めに語る。
「今更命を救うつもりか?今夜の犠牲にガキ一人増えたところで何も世界に影響はない!」
マダラは珍しく冷静さを欠いている。
「影響がないなら、殺す必要もない。俺が後始末をする。……どうしたうちはマダラが子ども相手にムキになるのか?」
ゲホゲホとせき込みのたうち回る悟くんに目を向ける。
マダラは考える素振りのあとため息をつき「……そうか」
そう呟くと彼の術により空間にひずみが生じ、そこに姿をくらませていった。
「イタチ……仕上げをしくじるなよ……」そう言葉を残して。
「……大丈夫か悟くn」そう言いかけていた俺に手裏剣が飛来する。
せき込み血を流し、目から涙をこぼしながらも悟くんは立ち上がっていた。
手裏剣をクナイで弾き、彼を見据える。
明らかに敵意が込められた視線。
やはり、彼は気づいているようだ。マダラが情報を漏らしたか。
「……黙雷悟、助けられた相手に向ける視線ではないな」
「あんたもグルなんだろ!あの仮面の奴と!!どうして俺を……助けた!」そう言いながら悟くんは涙をこぼす。
死にかけの彼は冷静さを欠いているように見える。死の恐怖から涙をこぼすのも無理はない。
「ああそうだ。」肯定する。
「黙雷悟、この惨事は全て俺が引き起こした。そういうことにしてもらおう」
そう言いながら俺は目にチャクラを込め写輪眼を発動させる。
「何となくだが……今宵、君が現れるような予感がしていた。日向の件も君は事前に知っていたかのように動いていた。」
そう、彼は<何か>を知っている。
写輪眼による幻術で、彼の記憶からマダラの存在をなかったことにし、そして
「……君の秘密を覗かせてもらおう」
彼はまっすぐ俺の写輪眼を見据えていた。
~~~~~~~~~~~
<三人称>
木が一本立った草原。
黙雷悟の精神世界にうちはイタチは立っていた。
卓越した写輪眼を持つものは相手の精神世界へと干渉する術を持つ。
イタチは十分にその資格を有し、この場に立っていた。
「なんだか……気持ちが晴れる景色だな……」そう呟いたイタチは木の根元に座り込んだ狐の面をした少年に目を向ける。
「黙雷悟……」
「イタチさん……」
互いに声をかけあう。座り込んだ悟は言葉を繋ぐ。
「これから、ご両親のもとに向かうんですね」
「……ああ」
「そこで……サスケに試練を与えるつもりですね」
「……ああ」
やはりとイタチは思う。彼は<先>を知っている。
その秘密探ろうと悟に幻術の矛先を向ける。宙現れた無数のクナイが悟を取り囲む。
「悪いが悟くん、君の記憶を見せてもら「……させない!」
イタチの幻術を悟は跳ねのけクナイが消滅する。写輪眼による幻術を破ることにイタチは驚きをあらわにする。
「させない!させない!させない!」
木の根元の悟はそう叫びつつ立ち上がる。傍から見ても様子がおかしい。
イタチは警戒を強める。
するとお面をつけた悟の背後にもう一人の悟が背中合わせで立っていた。
「僕は」「俺は」
「「これ以上貴方を傷つけさせない!ここで止まって!!」」
そう悟たちが叫ぶと精神世界が揺れる。
「オレは、止まるわけにはいかない!一族の運命を閉ざした俺は歩みを止めるわけにはいかないんだ!」そうイタチが叫ぶ。
ふと精神世界の景色が変わる。
イタチは周囲を警戒する。
「ここは、公園?のようだが……」木の葉にこのような場所はない。
イタチの目の前の砂場では女の子が一人で遊んでいた。
一目見て服装に違和感を覚える。イタチが見たこともない作りの服装である。
「なんだ……ここは……?」言い表せぬ奇妙な感覚にイタチが襲われているとふと男の声が聞こえる。
「もしもトラック突っ込んで来たら助けなきゃなwww」
「とらっく?誰だ!何を言って……」イタチは声が自分から出ていることに気づく。
自分が誰かに成り代わっている。と
そして轟音が鳴り響く。木々をなぎ倒しながら、巨大な化け物が突っ込んでくる。
イタチは本能で感じた、恐怖を。けれどイタチの体は自然と動き、砂場の少女を跳ね飛ばしそのけたたましい音を鳴り響かせる化け物の前に飛び出る。
後悔の念がイタチに注がれる。
幾つかの人々を思う思い。
体がぐちゃぐちゃになってもすぐに死ねない苦しみ。
そして、己の行いを間違っていたと感じてしまった自身への嫌悪感。
『ああ、赤の他人なんて助けなければ良かった。』
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「っあああああああああ!!!」
現実世界に意識が戻ったイタチは頭を抱えうずくまる。
体にダメージはない。しかし精神世界での体験の衝撃がイタチを苦悶させる。
誰かが感じた後悔の辛さ、痛みを受けたイタチはしばらく動けずにいた。
黙雷悟がイタチに一矢報いる作戦は彼の生前の出来事を追体験させることであった。
写輪眼の幻術に対するカウンターとして、かつて精神世界で神と呼んだ老人が悟の記憶を映像化したことを応用しようとしていた。
悟自身の狙いは映像を見せ怯ませるだけのつもりであったが、何かが干渉し、よりリアルな体験をイタチへと流した。
しばらく苦しみで動けなかったイタチだが、しばらくするとゆっくりとだが立ち上がった。
「……いか、行かなくては……父さん、母さん……」
自身の生まれ育った家へと足を向けるイタチ。残酷な運命を受け入れに行くためにフラフラとその場を後にする。
それを止めたいと願っていた悟はすでに意識がない状態で地面に血だまりを作り倒れ伏していた。
その後、うちはイタチにとっての最も長い夜は終わりを告げた。