<視点:黙雷悟>
ふと意識が戻る。今度は体が動くようで身動ぎしながら目を開けると見知った天井が視界に入る。
「ここは……俺の部屋……いてッ!」
布団から体を起こそうとすると、鈍い痛みが入って俺の寝ぼけていた頭が覚醒する。痛みには強いと思っていたけど、この酷い筋肉痛のような痛みは格別につらい……。
全身が鉛のように重い。窓の外は明るい、どれだけの時間自分が眠っていたかはわからないが、体中が包帯まみれであり処置もされていてこの痛みだということは。
「八門遁甲の
やはり、八門遁甲の扱いは慎重にならざるをえない。……今回はかなり、想定外のことが起きたせいでもあるが―主にラスボス級の敵とのエンカウントという―
自分の体の調子を確かめるよう、グネグネ体を動かしていると扉を開けて入ってくるマリエさんと目が合う。
……流石に気まずい。一応生きて帰ってこれたが、死ぬタイミングはいくらでもあった。ただ運が良かっただけだ。
するとマリエさんが立ち眩みを起こしたかのようにふらっと壁にもたれかかる。俺は咄嗟にマリエさんを支えようと動くが
「マリエさん!ッぐお!」立ち上がった瞬間、筋肉痛と体が覚醒していないせいで頭から地面にこける。
意識を失う前に感知していたガイさんと同じような体勢だ……。
「ちょっ、悟ちゃん!大丈夫!?」
マリエさんは頭を押さえながらもこちらの心配をしてくれている。
「マ、マリエさんこそ、大丈夫ですか?」と顔面を床に埋めながら俺もマリエさんの心配をする。
「私は大丈夫。ちょっと安心して気が抜けただけよ。まったく心配かけるんだから……」
微笑を浮かべながらマリエさん俺に近づいてく俺の体を布団に戻してくれた。
「……何だか恥ずかしですね」なんて俺が言うと「悟ちゃんが悪いのよ~、みんなに心配かけた分羞恥ぐらい感じてね~」と若干怒気をはらませた笑顔で微笑んでくれる。
俺はぐうの音もでないので大人しく看病を受け、少し落ち着いてから聞きたいことをマリエさんに尋ねる。
まず現在はあの夜から3日後の昼だということ。俺はマリエさんとガイさんの計らいであの夜あそこには「いなかった」ことにされていることが分かった。
そしてうちはの被害状況も……。
「生き残ったのはサスケだけ……ですか……」落ち込んだ俺は布団を握る。
結局俺はあの夜の大局に影響を及ぼすことができなかった。悔しさがあふれ出る。もっと力があれば……!オビトに出会おうが誰に会おうが寄せ付けないような力を!
するとマリエさんがパンッと俺の両頬を挟み込むように叩く。
「悟ちゃん、私の目を見て」 「……はい」
「勝ち負けの条件について覚えてる?今回悟ちゃんは自分の思った通りに行かなかったかもしれない。だけどね?それで大切なことを見失ってはいけないわ。手段と目的、しっかりと見据えるのよ」
「……はい」
力が足りない。それは事実だ。だからってそれが全てではない。心は折れても目的を違えては駄目だ!
「マリエさんありがとうございます。俺はもっと強くなります。ちゃんと目標をみすえて!」
俺の言葉にマリエさんは満足そうにして立ち上がる。そして
「そうね。がんばってね。……それで今回悟ちゃんが無事に帰ってきてくれて私は、うれしいんだけど……」
と歯切れ悪く言う。
俺が疑問符を浮かべているとマリエさんが言葉を繋げる。
「ガイ君が、その、カンカンに怒ってて……悟ちゃんが目を覚ましたら真っ先に俺を呼べって……」
「あ~~~。……なるほど~」
理由を察して俺は申し訳ない気持ちでいっぱいになる。いつかはこうなると分かっていたけど、思っていたより早い……!
取りあえず「ご飯いただいてもいいですか?」
腹ごしらえだ……。
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マリエさんの作る昼食で気力と体力を回復させ、普段ガイさんに稽古をつけてもらっていた演習場へと向かう。
ガイさんとはそこで落ち合う予定だ。
実際に会って言われる内容は予想済みである。十中八九、八門遁甲についてだ。
俺はガイさんの言いつけをほとんど破ってる。それに今回、俺は第三生門まで開けてほぼ自爆したようなものだ。
全身包帯まみれで普段着を身にまとい、ボロボロになっている狐のお面をつけて俺は唸りながら演習場で待っていた。
そして気が付く。その気づきに従いその場から跳躍。
俺がいた地面が割れる。
俺は辛いが第一開門を開けて、すでにその場から離れていた。
割れた地面と土埃の中から、ガイさんが姿を現す。
何時ぞやのやり取りを思い出す。
「ふむ、なるべく気配を消して攻撃したのだがよくぞ気が付いた」
ガイさんはいつもより低いトーンで俺に語りかける。
「気が付かなかったら俺、死んでますよ?」と俺が返すと
「気が付いてはいたのだ……」とガイさんはぽつりと言う。
(この人は一人で話を進めるから時々何を言いたいのわからない時があるなあ)と俺が思っていると
「君が俺の課した制約を無視して修行をしていることだ」と本題をぶつけられる。
こればっかりは俺が悪い。だけど……
「俺は謝りません」とハッキリと告げる。
この返しに流石のガイさんも眉毛を吊り上げ驚いている。
「……いや、謝らないというよりかは悪いと思ってないの方が正しいかな?実際ガイさんには申し訳ない思いがこれでもかとあるので……そこはしっかりと謝らないと……」
と訂正するとガイさんはわっはっはと笑い「落ち着きたまえ。ゆっくりでいい、君の意見を聞かせてくれ」と俺に考える時間をくれる。
「確かにガイさんの言い分、というよりやり方は間違っていないと思います。だけど、俺にはどうしても早くに力が必要だったので……。これからも考え方を改める気はありません」
ガイさんの修行が優しいとかそういうわけではない。ただガイさんは優しいのだ。俺の体調を考え、修行の内容も考えられている。けれど
「悟少年、そんなにも俺たち大人が頼りないか?」ガイさん少し悲しそうに言う。
「違います!実際今でも俺はマリエさんやガイさんに頼りっぱなしで、だけどそのことに感謝しています。前みたいに一人で生きていこうなんてことももう思っていません!」
「……ならどうして」
「俺の生き方……忍道っていうやつです。少しでもいい未来のために、俺に出来ることがあればやらなくちゃいけない。いややりたいんです。出来る可能性があるのに、それを諦めるなんて今の俺にはできない」
俺の覚悟がガイさんに届くかはわからないが、噓偽りなく本心を語った。
「自分の道を信じられる男になったな。数年前の君とはえらい違いだ。だがしかし、決まりは決まり。俺の言いつけを破った君には罰を与える」
「破門だ」
ガイさんはそう俺に告げた。ガイさん的には今の俺の状態がベストに近い。八門遁甲での自爆の可能性が低く、第三生門も会得しきっていない。この状態での放置が俺の安全性を考慮したうえで良いのだろう。
覚悟してはいたがやっぱり辛いなあ。自業自得だが。
「そして……」ガイさん言葉を繋げる。
「これからは俺のライバルだ!!!!」ガイさんが八門遁甲第三生門まで開け覇気を轟かせる。
「上下関係も、弟子でも師匠でもない!ただ純粋に力を高めあうパートナーとして君を認めよう!!こおおおおい!悟!」
はははっ……相変わらずの熱血漢だ……。俺は呆れるポーズを取るも、既にこの人の熱血がうつってしまっているようだ。
「……八門遁甲第一開門、開!!」
俺はガイさんに飛び蹴りを繰り出す。当然のように受け止められ反撃の拳が飛んでくるが、それを予め避ける態勢を取っていたことで受け流す。
距離が離れたときに俺はガイさんに問う。
「いいんですか?俺の安全とか考えて八門遁甲をセーブさせようとしていたん……でしょ!!」手ごろな石を投擲しながら。
「ふん!!確かにそうだが、君の成長ぶりをみて確信したよ。抑えるより、共に高めあった方が君のためになるとな!」石を裏拳で砕きながらガイさんは答える。
ガイさんも俺もどちらも本調子ではない。だけどこの組手は本気でやらねば意味がない。ガイさんの覚悟に答えるために!!
「第二休門……第三生門!開!!」俺は無理やり第三生門まで開放する。ガイさんが少し俺を止めるような動作をするが、途中で止め見守ってくれている。
「はああああ!どっっっせい!!」俺の咆哮に合わせ、チャクラが体を駆け巡り、第三生門の特徴である全身が紅潮する現象が起きる。
「ふっ……ふふ、どうですか!これが俺の覚悟です!!」
「ふあはははははっ!いいだろう来い!全力だあああああ!」
常人の域を超えた組手は数時間にわたり繰り広げられた。
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<視点:はたけカカシ>
数日前、暗部所属のオレの動向を気にして仲間たちが、オレを正規部隊に移動するように出した嘆願書が通った。
オレは、死に急ぐように任務を遂行していたがそれを仲間たちは良しとしなかった。嬉しくもあるが、こんなオレがそんな心配を受ける権利がないと本心では思っていた。
とりあえず移動期間として、しばらくの休日を過ごしていたオレの自宅にある女性が訪れる。
「やーやー、これはこれは。オレを正規部隊に引き戻した一人のマリエじゃなーい。どしたの?」俺はおどけながら彼女に声をかける。
元同僚として彼女に思うところはあるが、そのことを話すわけではなかった。
「カカシ君にお願いがあってきたの……」彼女は俺にあるお願いをしにきた。
同じ願いをガイにもしていたようで、現場で合流したが……。彼女の判断は正しかったようだ。言いたかないが、『アレ』はガイとのタッグじゃないと骨が折れる。
そしてぶっ倒れているガイらを抱えて帰るのはとてもしんどかった……。写輪眼を使った後でもあり、スタミナが足りない。
まあ、そんなかんやであの夜から3日後の今日はそのマリエと外に出かけている。
「ごめんね~カカシ君。アカデミーまで付き合ってもらって」
「まあ、大丈夫ですよ。俺も担当上忍なるとかでちょいと用がありましたし。誰かさんたちのおかげで暗部から移動になっちゃったしね」
皮肉の感情をこめて俺がそういうと、彼女はとても申し訳なさそうに、たははと笑って誤魔化した。
マリエは彼女が保護している黙雷悟の復帰の連絡をアカデミーにしてきたようだ。彼女は彼女で大変そうだ。
「今日はカカシ君にこの前のお礼として一日付き合ってあげる約束だしね。どこ行きましょうか~?」
彼女はのほほんと言う。まあ、今日はそういう約束で昼過ぎにこうやって合流したわけで。
「そうだな。新しく出来た定食屋が美味しいらしくて、アスマとかがめちゃくちゃ進めてきてたんで。そこ、奢ってください」
俺の提案に彼女は任せてっと胸を張り答える。「ついでに組手やろうか」と付け足した俺の言葉に彼女は表情は変えずに「えっ!?」と驚く。
「別に組手くらいはできるでしょ?体を動かさないとね。元とはいえマリエも忍者だしね」俺がにこにこしながら言うと彼女は露骨にテンションを下げて
「……はい」と返事をして定食屋に歩みをすすめる。
……意地悪なことは理解しているが、先日のことを思えばこれくらいの意地悪は許してほしい。俺はそう思いながらマリエの後を追う。
定食屋での食事はとても満足したものだった。いい味付けをした味噌汁がグッドだ。
最近はこういった食事もあまりとってなかったしな。食事中のマリエとの会話はあまり弾まなかった。
一応黙雷悟の話題になると「可愛い可愛い」と口が早くなるが、すぐに組手のことを思いだしてテンションを下げている。
そして彼女のおごりで定食屋を後にしたあと、誰かが先に使用許可を取っていたようで演習場は空いてなかった。
仕方ないので空く時間までその間を日常品の買い出しに使い適当にぶらぶらしたあと演習場に向かった。
……まあ、演習場についたらおバカさんたちが2名ほど術の反動でカエルのように地面に突っ伏していたけど。
「……何やってんの。ガイ」俺が呆れ「……お前たち……怪我明けになにしてるんだ……」一緒にマリエが昔の口調で呆れている。
「「青春を……」」二人してバカな回答をする。ガイは言わずもがな。この悟って子もバカなタイプか。
結局この日は熱血バカ二人を抱え、4人でラーメン一楽に寄って帰った。当然マリエの奢りだ。
帰り道、月を見上げて俺は新たな熱血バカの心配をした。
「ガイはともかく、悟はマリエからの説教が待ってそうだな」