目指すは忍ぶ忍者   作:pナッツ

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19:意識アップグレード

<視点:黙雷悟>

 

 

……ふと意識が戻る。昨日とはこの件は変わらず、自分の布団で目を覚ました俺は体の調子を確認する。グネグネと。

 

おかしい……八門遁甲を使った反動の筋肉痛がほとんどない。第三生門まで開放したのに。自身の回復能力をもってしてもここまでのスピードで回復するのは今までにない。

 

自身の体調を理解しきれていない俺が手をグーパーしながら調子を確かめていると、扉からを気配を感じた。

 

そちらに目線を向けると、ほんの少しだけ空いた扉の隙間からマリエさんが目だけ見せている。……昨日、ラーメン一楽から戻った後こってりと説教をくらって、疲れから説教中に寝落ちしたんだな、俺。一楽ではカカシさんと軽く自己紹介を交わしたんだったか。社交辞令を絵にしたかのような自己紹介だった。

 

「……朝ご飯は作ってあるから食べなさい……それからガイ君は今日私がじっくりと怒りに行くから、会いにいかないように……」

 

口調はいつものマリエさんだが、トーンが低い。かなり怒ってるな……ははは。そのままキイッとマリエさんは扉を閉めてその場から離れていった。

 

俺は普段着に着替え(包帯やガーゼなどはマリエさんが寝ている間に換えてくれたようだ、感謝)食堂に向かう。

 

道中すれ違うマリエさん達影分身は露骨に俺に対する態度がプリプリして怒っている様子だ。心配をかけて申し訳ない。

 

食堂で朝食を済ませた俺は今日の予定を確認する。アカデミーは明後日まで休みだ。まあ、授業内容はそこまで難しくないし予めテンテンから聞いて予習しているから問題ない。

 

だから今日は……サスケに会いに行こう。

 

 

 

 

~~~~~~~~~~~~

<視点:三人称>

 

うちは虐殺の件から、うちはの土地は全て立ち入り禁止状態になっている。そのためうちはサスケも現在、住居を里内の住宅地に部屋を借りて住んでいる。

 

虐殺の夜からそう日が経っていないため、サスケは精神的に参っている状態だと悟は考えている。

 

悟は影分身を利用し、サスケの現在位置や様子、処遇などの情報を集めていく。

 

「うちはの生き残り?ああそれなら……」

 

「うちはの財産は全部実質その子の物になったらしいよ?おこぼれもらえないかしら」

 

「最近部屋から物音がして迷惑でしかたない……」

 

などなど。

 

悟は情報を集めていくうちに、里内の「うちは」に対するスタンスを改めて感じ嫌気がさす。

 

(サスケはまだ6歳の子どもだというのに、こいつら……陰湿だな)

 

無論全員がそうであるわけではなく、中には心配して様子を見てくれている人もいる。しかしサスケはモノや人に当たり散らしているため、そういった繋がりも切れかけている。

 

悟はますます心配になり、急いでサスケのもとへと向かった。こうなると分かっていたがどうすることも出来なかった自分に悔しさを覚えながら。

 

~~~~~~~~~~~~~

<視点:うちはサスケ>

 

……ひたすら闇の中をもがく自分がいる。知り合いだった人たちの死体が目に焼き付いて離れない。

 

父さんと母さんも……。全部全部全部!!兄さんが!!……イタチが全てを壊した!!

 

イタチの言葉、「憎しみを抱け」と言われ!弱いと言われ!

 

イライラを抑えられず、涙を流しながら辺りの物をぶん投げ、壁や床をなぐり続ける。

 

「あああああああああああああああああああ!!!」

 

そうやって俺が暴れているとチャイムが鳴る。

 

耳障りだ!!どうせ何も知らない他人が、うるさいだとか言いに来たんだろう……。

 

手に壊れた椅子の棒状の破片を手に持ち、玄関の扉まで行く。うざいうざいうざい!!

 

扉を乱暴に開け、相手に棒を振りぬく。相手は自分と背丈が同じくらいだったらしく顔面で俺の攻撃を受けた。相手が付けていたお面が地面に落ちる。

 

「……」「……な!?」

 

俺の攻撃で額から血を流したのは悟だった。驚いた俺は棒を落とす。俺は……なんてことを……。ほんの少しだけ俺は冷静さを取り戻す。

 

「……とりあえず、生きていてくれてよかった。悪いけどお邪魔するよ」

 

そう言って何事もなかったかのようにお面を被り悟は部屋の中に入ってくる。

 

何を考えているのかわからない悟に俺は怒鳴る。

 

「急にきておま、お前!何なんだ!いったい!!」

 

「ただの友達……それだけだよ」

 

そう極めて冷静に言う悟に対して俺は逆に感情を逆立たせる。

 

「何が友達だ!うぜえんだよ!」と言い放ち俺は殴りかかる。悟の実力は知っている、だから俺の攻撃をさばくと思っていた。けれど

 

一切避ける素振りを見せず、防ぐ構えもせず、俺の拳を悟は無防備に受けた。のけぞった悟はそのまま、俺の方を向いたままだ。

 

「なんで!なんで避けない!」俺が吠えても悟は答えてくれない。自分の感情が段々と制御できなくなる。

 

「くそ!!くそおおおお!」そのまま俺は悟を押し倒し馬乗りになって殴り続ける。悟のお面はぐちゃぐちゃになり、それを邪魔に思い俺はお面をはぎ取る。

 

……悟の緑色の目は俺の目をじっと見たままだった。俺には悟が何を考えているのかわからない。わからないわからない……。

 

けれど体はイライラの発散先を悟に向ける。自分の考えていることがさっぱりわからなくなる。

 

俺は叫びながらひたすら悟を殴り続けた。……友達を。

 

イタチの言う通り、憎しみに捕らわれた俺の暴力に悟は俺の目を見たままそれを受け入れ続けた。

 

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

気が付くと俺はベッドで寝ていた。焦って回りを見渡すと、俺の荒らした跡がある程度綺麗にされている。

 

するといい匂いがキッチンから漂ってくる。

 

不思議に思い俺がベッドから起き上がろうと手をつくと手に痛みが走る。

 

……手を見ると包帯がまかれていた。痛みの原因は……。そう思い、幾分か冷静になっている俺は自分のしでかしたことに気が付く。

 

焦って俺はキッチンへと向かう。

 

後ろで縛った白髪の髪を揺らしながら鼻歌まじりで悟がみそ汁を作っていた。

 

意味が分からず、俺はぼーぜんとその様子を見ることしかできなかった。……何を考えているんだ悟は……。

 

 

悟がこちらに気が付き振り向く。手当てをしたみたいだが悟の顔には傷やアザが大量についている。

 

自分のしでかしたことの大きさに言葉が詰まる。

「あっ……さ、悟……ごめ」

 

「起きたか……、ある程度片づけしておいたし、少し遅めの昼ご飯だ。……ろくに何も食べてなかっただろ?」

 

そういうと悟は配膳をし始める。俺がしどろもどろになっていると無理やり椅子に座らされ、食事を目の前に並べられる。

 

「さあ、召し上がれ」悟は優しく俺に言う。

 

意味が……わからない……

 

「いみが……わか、わからない……うっグスッ……」

 

目の前にはおかかのおむすびにトマトが入ったみそ汁。それとたくあん。いい匂いにつられて俺の腹がなる。

 

「ほらほら、泣いていないで冷めないうちに食べて……。あっよく噛んで食べろよ?胃が驚くから」

 

「うっ、うん、ごべん……ごめんなさい。ごめんなさい……」俺は泣きながら、謝りながらおむすびに手を伸ばす。

 

酷く久しぶりに「生」を感じた。イタチが、兄さんが言っていた憎しみとは別の何かを……。

 

 

 

 

数日ぶりにまともな食事を食べて、俺は落ち着きを取り戻していた。……痛みが消えたわけではないが。

 

「どうだ?ある程度は落ち着いたか?」

 

悟は食器を下げながら、俺に問いかける。

 

「あ、ああ。ごめん。悟、オレ……」

 

俺がした暴力に対して謝ろうとすると、傷に手を当てながら「ああ、別にこれは気にしなくていいよ。……サスケの痛みに比べたら何万倍もマシだ」と悟は悲しいそうにいう。

 

「なんで、悟がそんなに辛そうにするんだよ……」

 

俺の言葉に悟は「ごめん。サスケの痛みは理解できない……してあげられないんだ。だからそれが悲しくてね……それに残される側の気持ちは俺にはわからないんだ。残してきた側だから……」と答える。後半は良く聞き取れなかった……。

 

「だから少しでも、サスケの痛みをやわらげてあげたいんだ」悟は真剣に言う。

 

「ごめん……」俺はただ謝ることしかできない。次第に涙が溢れてきて、感情が制御できなくなる。心がいたい……。

 

そんな俺を悟は抱きしめ「辛いな……。苦しいな……。怖かっただろうな……。今は我慢しなくていいから……」頭を撫でてくれて、優しくオレを受け止めてくれた。

 

 

 

 

 

 

ひたすら泣いて、泣きまくってしばらくして……。

 

「……」恥ずかしさから俺はそっと悟から離れる。どれぐらい泣いていたのか……日が少し傾いている。

 

「どうだ?スッキリした?」悟は笑顔で俺の顔を覗き込む。

 

「ッつ!ああ、大丈夫、もう大丈夫だ!」冷静さを取り戻した俺は悟から距離を取る。

 

「そうか、良かった」そういうと悟は立ち上がって部屋の片づけをし始めた。

 

「色々と荒れてるな。とりあえず、住む場所は綺麗にしておこうか」そういうと悟は俺にも片付けの指示を出し始める。

 

……調子が狂うが、何もしていないともっと調子が狂いそうだ。俺は悟の指示に従って自分で荒らした部屋の片づけを始めた。

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~

<視点:黙雷悟>

 

サスケが片づけを終え、ある程度落ち着きを取り戻した後俺は話題を振った。

 

「あの夜……俺はイタチさんと会ったんだ」そういうとサスケは目を見開く。

 

「どうにか抵抗は試みたんだけど、全く敵わなかった……。だけど俺は生きている」

 

俺の言葉にサスケは黙って耳を傾けている。

 

「サスケは……どうだった?」

 

俺が知りたいのは原作からの乖離した部分だ。俺の足掻きが世界にどれ程の影響を与えているのかの確認でもある。

 

 

「俺は……俺は悟と別れた後、色んな家を見て回ったんだ……。だけどどこに行っても皆、みんな死んでて……ッ!爆発音がして、父さんと母さんが心配になって急いで家に向かったんだ……」

 

「……そうか」俺は相槌をする。サスケは今とても辛い過去を話している。冷静さを失わないように、安心できるように細かい配慮は忘れない。

 

「そしたら、父さんも母さんも……二人して部屋で正座してじっとしてた……。俺が部屋に入ると、二人して俺を抱きしめて、それで、それで……」

 

サスケの呼吸が早くなり、涙がこぼれる。これ以上はサスケが辛いだろう。俺は「辛いなら無理しないで」とやめさせようとするが、サスケは手で俺を制止して話し続ける。

 

「父さんは、俺を誇りに思ってるって言って、言ってくれて、母さんは、大好きだって……そしたら俺に隠れろって……」サスケは必死に言葉を繋ぐ。

 

「……少しして兄さんが、部屋の窓から入ってきてそれで……」そこでサスケはハッとした表情を浮かべる。

 

「……泣いていた……」多分記憶を思い出す過程で衝撃で忘れていたことを思い出したのだろう。呟きながら自分の記憶を整理し始めるサスケ。

 

 

「そうだ、兄さん、泣いていて、父さんも母さんも受け入れるような顔でそれで……ッヅ!!」サスケが頭を押さえる。

 

「大丈夫か!?」俺はそばにより体を支える。

 

「兄さんは、本当は……本当は……!!」

 

過呼吸になり始めたサスケをなだめる。

 

「ふう、ふう、分からないけど、だけど兄さんは、腕試しで皆を殺したって言ってたけど違うかも……しれない……」

 

「違うかも?」

 

 

「兄さんは、泣いていたんだ……ずっと……だから」

 

 

この時俺はサスケの目が一瞬だけ朱く光るのを見た。

 

「何かが可笑しいんだ。理由はわからないけど、兄さんが自分を憎むように言ったのも全部、全部……」

 

「本心じゃない……?」

 

「分からないけど、もしかしたらそうかもしれない……」

 

しばらくの沈黙が流れる。サスケは自分の考えをまとめているようだ。

 

 

「……俺はどうすれば……いい」泣きそうにサスケが言う。

 

自分が見た惨状や経験、兄への信頼感、両親の死、それらがサスケに強く重くのしかかっているようだ。混乱するのも仕方ない……。だから

 

「どうすればいいか、何て俺にも、多分他の誰にも分らないと思う。だからこそ……知る必要があると思うんだ。真実を」

 

「真……実……?」

 

「人に与えられた情報だけでなく、自分で見て聞いたことを大事にするんだ。そしてわからないことがあるなら……」

 

「確かめに行く……そうだ理由を、『敵になったならその理由を』確かめるんだ……!」

 

サスケは立ち上がり、拳を握る。

 

「俺は、兄さんが、イタチがあの時どう思っていたのか……どうしてあんな事をしたのか、本当の理由を知りたい!!いや、知らなければいけない!!!」

 

サスケは覚悟を決めたようだ。

 

「そのために……強くなる……誰よりもイタチよりも……!」

 

そういうとサスケはふらっと倒れこむ。俺はそれを咄嗟に受け止める。気を失ったようだ。

 

(流石に疲労が限界か……)

 

俺はサスケを抱えてベッドに寝かせる。

 

かなり、サスケの心象が原作とは違うものになっていると感じた。この先がどうなるかわからない。だけど

 

「少しでも、辛い現実は変えていけるだろうか……」サスケの寝顔を見ながら俺はそう呟く。

 

 

 

俺も強くならないければならない。そう決意を抱き、俺はサスケの部屋を後にした。

 

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

 

 

施設に帰ると影分身の数人のマリエさんに囲まれた。

 

「どうしたの!?その怪我!」「大丈夫!?大丈夫!?」「なんでこう、すぐにボロボロになるんだ、貴様は!」「もう、もう、私わからないわ~~~」

 

同時に心配され、顔をこねくり回され、叱られた。一人は泣いている。

 

 

「……あっちょっ!!服めくらないでマリエさん!ああああ……」

 

マリエさんの波に呑まれながら、俺の悲鳴は夜に消えていく。

 

 

 

この後めちゃくちゃ手当と説教を受けた。

 

 

 

 

 

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