<三人称>
黙雷悟は追手を撃退し、そのまま急いでナルトの元へと急いでいた。用心を重ね少し距離を取りすぎたことを後悔していた悟だが、次第に駆けるスピードが衰えていく。
悟の軽口を叩く回数が減り、そんな目に見える変化に万全ではないが白眼で周囲を警戒していたハナビが不信感を持つ。
「……?ねえ不審者、何だか走るの遅くなってきてッ……ちょっと大丈夫!?すごい汗!」
ハナビが白眼で悟の仮面の下を覗くと、物凄く引きつった笑顔で冷や汗を大量に流す表情が目に入る。思わず声を上げたハナビに悟は生き絶え絶えに答える。
「はあ……はあ……、ただでさえ体調が万全でないのに、八門を使いすぎたかも……ッ。全然、いやちょっと……いや結構、かなりキッツイ……」
悟はハナビを不安にさせまいと笑顔だけは保ち続けているが、元々体力が万全ではない状態で自身が開ける限界の第四傷門をいきなり解放させたりと無茶がたたっていた。
筋肉組織の断裂や、体力を上昇させていたことによる反動が悟を襲う。
本来の傷門までのデメリットを考えれば、その場から動けなくなっていてもおかしくはないが、悟は日ごろから八門になれる修行を行ってきたため何とか動くことができている。
流石にそこまでの事情を把握していないハナビでも、これ以上自分を背負うことが悟の負担になることに気づき帯を解いて背を降りる。
「……っハナビ?」
「流石にこれ以上は無茶だよ!不審者苦しそうだし……ここで待ってて!私がたすけを……」
「いや……大丈夫だ……」
悟はハナビの肩を掴み制止させる。
「確かにキツイけどまだ、俺は戦える……それに約束しただろ?何時でも、ハナビからの制裁を受けるって……。だからそのためにもハナビも俺も無事に生き抜くんだ!」
仮面の奥の緑色の目は以前闘志を抱いたまま、ハナビの白眼に色濃く情念を写す。
「おかしいよ!あなたがそこまでして私を守る理由なんて……」
ハナビは自身がこの現状、足手まといだということを気にしていた。悟からすれば白眼でのサポートを五つ下の少女にやらせている時点で面目丸つぶれの状況だが、背に腹は代えられない。お互いの安全性が最優先である。だが少なくとも安全性の天秤を自分に傾けさせるほど悟は非情にはなり切れないし、そもそも選択肢として無い。
(ハナビがあの「女の子」に見た目の年が近いから意地張って……無茶して安心させようとしているのは俺のエゴだしな……)
本心は隠したまま、ただ自分のエゴだとしても、悟は戦う道を選ぶ。今までの格上との自分の命を懸けた戦いではない。
「おかしくないさ……初めて目の前で俺以外の命がかかっているんだ。それを守り切れないくらいなら……」
『転生などしなければ良かった』
それは口には出さず「死んだほうがマシだ」と言いハナビにしか見えない笑顔を作る。
「ッ!……」
その笑顔を見たハナビは何も言うことができず
「……ちょっと立ち止まったら、楽になった。急ごう」
そういって手を引っ張る悟の後ろで白眼での警戒を再開した。
(せめて、せめて足手まといでも、出来ることはしないと……)
燃える森の中、二人は目的の場所に向け歩みを進めた。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
歩みを進めた悟たちは、戦闘が聞こえはじめる位置で一度制止した。
「まって不審……も、黙雷さん。白眼で探りを入れて見ます」
「……ありがとう」
そんなやり取りのあと、ハナビが探りを入れている間に悟は思考を巡らせる。
(思っていたより、俺が感知できるチャクラが減っている……。流石ナルトとイルカ先生か。だけどなんだろう?違和感がある……それに俺ももう戦術の引き出しが殆どないしどうするか……)
思考に集中していた悟にハナビが声をかける。
「あの二人が結構奮闘してたみたい。あの親玉っぽいミズキって人は相変わらず木の上から見下ろしているだけで、地上で4人ほどの敵相手に今戦っているようです」
「……そうか、それは良かった……?」
返事をした悟は怪訝な表情を浮かべる。
(じわじわなぶり殺しとは言っていたが、未だに木の上にいるのはおかしくないか……?)
良いことではある。しかし思っていたよりもナルトが優勢であることや、未だに本格的に戦闘に参加しないミズキに何かを見落としている感覚に陥る悟。
「……どうしましょう黙雷さん?援護に入った方が……」
ハナビは悟に指示を仰ぐ。
確かにここで悟が戦闘に加われば、不意打ちで相手の数を減らし一気に優位に立てるだろう。
だが違和感を拭い去れずにいる悟はハナビに手で制止の合図を送る。
事態を焦って行動する訳にはいかず、悟は思案を重ねる。その時ふと過去、マリエに言われた言葉を思い出し口に出す。
「……忍びの世界は単純な生き死にが勝負をわけることは……少ない……生き残っても負ける……」
ブツブツと呟く悟にハナビは焦る気持ちが強くなる。
「……黙雷さん!」
(相手の一番の目標……達成すべきこと……封印の書の回収だ。そのためにナルトやイルカ先生をなぶり殺しにする必要は……あえてはない。それをあの時わざわざアピールしたのは……?)
ふと隠れた状態で戦闘を観察できる位置にいる悟は、木の上のミズキに目線を向ける。
(焦ってない……この状況で……)
不利な状況でも、自分は加勢せずに部下たちだけで戦わせていたずらに仲間の数を減らす。そうそれはまさに
「…………時間……稼ぎ……そうか……そうだ!!!!」
声は潜めているが何かに気が付いた悟はハナビの両肩を掴み、自信の違和感の正体を解説し始める。
「わかったぞ、ハナビ!」
「うっ……いったい何のこと、ですか?」
悟は早口で自分が気がついた事実の解説を始める。
「俺は戦力的に、ナルトたちが防戦一方になっていると思っていた。だからこそ俺は早く合流するために、八門で少し無茶をしてまであの中忍を早く戦闘不能にしたんだ。それはミズキが戦闘に参加する前提の予想だ。でも実際にはあいつは戦闘に参加していない。そして現状はナルトたちが優勢だ。なぜならあのミズキが……
影分身の囮だからだ」
ハッとしてハナビがミズキを白眼で見るが、その姿に違和感はない。それも見越してか悟はさらに言葉を繋ぐ。
「おそらく念には念を、あの影分身は多くのチャクラを割かれて作られている。……そしてわざわざ部下を差し向けあんな影分身を作ってまで時間稼ぎをしている理由は……」
一息ついて悟は焦る感情を抑えながらハナビに指示を出す。
「ナルトたちの後方の藪から突き出た木の根元、そこを白眼で見てくれ。俺はそこに封印の書を隠したが……」
悟が言い終わる前にハナビが言葉で遮る
「地面が掘り返された跡がある……!」
悟は内心しまったと舌打ちをした。
悟は恐らく自分が投げつけた封印の書が悟の影分身の変化だったことがわかった時点で、ミズキは封印の書が一度悟の手に渡っていた事実に気が付いたのだろうと推察する。
そして悟が時空間忍術を使えないことを恐らくミズキはアカデミーの教師として気が付いていた。そのことで封印の書が、封入・開封の術でしまわれていないこと。近くに隠されている可能性に気が付き……
「時間稼ぎをして、巻物を見つけてこの場からすでに離脱していたのか……っクソ!」
つまり悟が相対したあの中忍も、今現在ナルトが戦っている忍び達もただの
「時間稼ぎの手段にしか過ぎないってことか……何が
やるせない気持ちが積もる悟だが、悠長に感情を揺らしているばかりではいられない。ミズキが封印の書を持ち逃げするのは現状一番あってはならないことだからだ。
どうにかして逃げたミズキに追いつき、封印の書を奪還せねばと悟は思案を続ける。その気迫の様子にハナビも息をのみ、ただ見守ることしかできない。
「どうする……移動スピードも既にボロボロの俺たちでは無傷のミズキと差がありすぎる……。あの影分身でかなりチャクラを消費しているだろうが……。どうにか、どうにかしないと……」
黙雷悟は焦っていた。だがそれ以上に現状をどうにかしようという感情が思考を巡らせる。
(手段……戦術……何か作戦が…………封印の書を……封印の書?)
そして自身の持つ「起死回生」の一手へと思考の駒を進めることができた。
~~~~~~~~~~~~~~~~
<ナルト>
どうにか、こうにか。悟が敵を誘導してくれたおかげで、こっちも戦いやすくなったってばよ。
イルカ先生も俺の影分身を囮に的確に相手に傷をつけているし、やっぱし仲間って頼りになるな!
あと一人倒せば、残るはミズキだけ!
「くらえーー!」
俺の影分身が敵の足を掴んで止めたすきに、俺が思いっきりアッパーを食らわせる!
よし……これでもうあとは
イルカ先生がミズキを睨みつけて叫ぶ
「ミズキ!残るはお前ひとりだ!」
「そうだってばよ!観念しやがれぇ!」
……こんな状況なのにミズキはずっとほくそ笑んだまま。気味が悪いってばよ。
地面に降り立ったミズキが俺を挑発するように、手招きをする。
「へっ!余裕見せてられるのも今のうちだ!影分身!」
4人分の影分身と本体の俺でいっせいに殴りかかる。
「これで……お終いだあ!!」
その瞬間……俺の視界の横から黒い影が射しかかり……
「木ノ葉旋風!」風を巻き上げるような回し蹴りが放たれる。
俺たちを薙ぎ払って吹き飛ばしたそれは……
「悟!?なんで、ナルトに攻撃を!」イルカ先生が驚いて声を張り上げる。
俺が倒れた姿勢で悟を見上げると、悟はミズキに向かって……
「ふとんが吹っ飛んだ……!」
物凄くすごんだ声で……ギャグを……ギャグ?
そのまま悟は真面目そうな雰囲気を纏いながらおやじギャグを連発する。
「お金が……なくて……おっかねえ!!」
「「「…………」」」
みんな何かの術を食らったみたいに空気が止まっているのを感じる。
10秒ぐらい時間が止まったかと思っていた瞬間ミズキが叫ぶ。
「ぐああっ何すんだ!ガキぃ!」
そちらに目を向けるとハナビって子がミズキの足にクナイを突き立てていたみたいだ。
「ちょっ……あぶねえてば……!」
そのハナビに向かってミズキが蹴りを入れようと足を振りかぶったとき、悟が飛び出し
「二度目ぇ!木ノ葉旋風!」
猛烈な回し蹴りで、ミズキを木の幹に叩きつける。
「ウグッ!つうっ……な、なんで!?」
ミズキは吹き飛ばされた後、自分の体を確認するように見回す。……なにしてんだ?
「影分身の制限の解除……封印の書に記された、二代目火影の術の一つ」
悟がミズキに近寄りながら語る。雰囲気がおっかねえてばよ。
「先ほど自分の影分身で効果を確認したが、ようするに影分身を解除できないようにすることだったみたいで……」
悟が右手をミズキに見せる。その手は血が滴っていて痛そうだ……。
「影分身がどれだけ傷つこうが、解除されない。つまりその後分身が解除された時、本体に外傷と言うフィードバックが生じるようになる」
すると悟が仮面を上げたかと思うと、ミズキが足を押さえ痛みに苦しむ声が響く。
「
そう言いながら悟は仮面を下ろし、血のにじむミズキの足を踏みつける。
「ハナビに持たせたクナイにはその制限を解除するための印を記しておいたの……さ!」
言い切ると同時に、悟はミズキの足を再度踏みつけてグシャッて音が響く。俺もイルカ先生もさっきの悟との印象の落差のせいで動けねえ……。
声にもならないと悶えているミズキに悟が手に持ったクナイを突きつけ脅迫をする。
「本体はどこだ?どこから離脱しようとしている?影分身でも逃げる算段を整えた後に術が使われているなら記憶があるはずだ。言え……さもないと」
「東だ……!東、東ぃ!そこの外れから里を、里から逃げ出そうと!」
慌ててミズキが喋りはじめる。焦って喋っているせいか呂律が回っていない状態でひたすら東と叫び続けている。
「……ふう、ハナビ、クナイを」そういって悟がハナビに手を差し出すと、クナイを受け取り
「……」無言でミズキの胸を突き刺した。するとボフンと音を立てて消える。
悟が俺たちに振り返ると、しーっと指を一本立てた後、耳に手を添えるジェスチャーをする。すると……
「ああああああああああああああああああああああ……」
遠くの東の方から叫び声が聞こえる。
「この声……悟!」
「ああ、ミズキの声だな。影分身は噓をついていなかったみたいだ。急いで追うぞ」
俺たちでミズキを追いかけようとすると、悟は一歩踏み出した途端、足を止めて片膝をついた。
「八門はここで打ち止めか……くそ!」
八門?俺には何のことか理解できないけど、苦しそうなのはわかり肩で息をする悟に駆け寄ろうとすると
「こっちにこなくていい!ナルト、お前はミズキを追ってくれ、後で必ず追いつく……行けぇ!」
悟の声に後押しをされて。俺は走る。
「ミズキ……!ぜってぇ逃がさねえってばよ!!」
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
<黙雷悟>
第一開門すら解放できない状態になったが、それでもナルト一人では何かと心配だ。最低限の体力を回復しようとその場座り込む。
するとイルカ先生が近寄り話しかけてくる。
「……そのぉ、何というか悟は強かったんだな!びっくりしたぞ」
「ええまあ、隠してたので……」
「何でわざわざ実力を隠す真似なんてしてたんだ?もっとみんなにも実力を示していれば……」
「
「……そうかもな」
「だからこそ、俺は力をひけらかさない。この力を俺の使いたいように。誰かを守るために使うために。……対等でいようとしてくれる友達のために」
暗に組織に従わないという、俺の意思表示にイルカ先生は苦笑いをする。
「そうか……そうだよな。
俺との問答に何かを噛みしめるイルカ。
「俺は今日の悟のことについて、情報を漏らすことはしない安心してくれ」
イルカの意思表示に不意を突かれた俺は仮面の下でキョトンとした表情をする。
「元々お前は卒業試験を合格しているしな。ナルトの奴はともかく、お前のことを言いふらす意味なんて俺にはない。だから……
遠慮なんかせずミズキの奴をぶっ飛ばしてきてくれ」
グッと腕を突きのばし俺の胸に触れるイルカ先生。ニコッとしている。
「……ハハっ。了解しました」
この気持ちには答えないとな。時間にして五分ほどしか休憩していないが、俺の
俺は立ち上がり「イルカ先生、そこのハナビのこと見ていてください。ヒナタの妹です。流石にそろそろ木ノ葉の忍びが来るので事情の説明をお願いします」
そういってナルトのあとを追う。
「頑張れ、悟……さて君がハナビちゃんか。ヒナタの妹ってことは日向の子かな?ヒナタは頑張り屋で……」
「普段の姉様はどんな感じですか!」
「ははは……そうだなあ。何時も真面目に……」
遠くに聞こえる声に、イルカの教育者としてのスキルを感じながら俺は走った。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
八門は流石に使えないが、ナルトのあとを追い感知しながら移動を続けると直ぐにナルトに追いついた。
「げ!本当に追いついてきた!」
「げっとはなんだ!俺はもう少し先に進んでると思ってたぞ……」
「いや~ちょっち道に迷っちゃって……てへへ」
「たくっ……こっちだ。こっちからミズキのチャクラを感じる」
そういってナルトを案内しながら、ミズキのあとを追う。しばらくすると大量の血痕の道を見つける。
「ここからミズキは負傷していたはず、それにしても諦めの悪い……。足を引きずってでも移動を続けるなんて」
そういってナルトともにミズキのチャクラを追うと、少し開けた場所。木に背中を預けたミズキを見つける。
「観念しやがれ!ミズキ」ナルトが叫ぶ。
流石にあの足の負傷ではどうにもできないと俺も安堵する。
するとミズキはぶつぶつとなにかを呟き始める。
「このまま……このまま……捕まれば……大蛇丸様に……クソっクソ!こんなガキどもにぃ!」
目を血走らせたミズキがこちらを睨みつける。……何か仕掛けてくるのか?
「負けてたまるかああああ!」
そう言うとミズキは懐から、注射器のようなものを取り出し自身の首に突き刺す。
「あいつ、何やって……!」
ナルトが警戒する。俺も身構えて様子を伺うと、ミズキが苦しみもがくように後ろの木を殴りつけると。
木がはじけ飛ぶ……。は?!
「奈良一族のぉ……特別ンあああ……試作の薬っを……おろ、オロチマルさまがが……かい、かいかいかいr」
あからさまに正気を失っているミズキが何かを喋ろうとしているが途中から意味をなさなく成り、そして
「ころろっろおろっろおおおおお!!」
消え……
「あぶねえ!悟!!!」
ナルトに突き飛ばされた俺が見た景色は、はるか後方に殴り吹き飛ばされるナルトと筋肉が異常なまでに肥大しているミズキ。負傷している足などおかまいなしに踏み込んでくる。
「っ!雷遁・地走り!」
隙を見せたミズキに雷遁を放つが、それを意に介さず殴りのモーションを見せてくる。
「くs」
ミズキの拳は俺のガードを突き抜けた。衝撃が走り吹き飛ばされる。
木の幹に叩きつけられ、肺の空気が押し出され、意識がもうろうとする……。
ナルトの声が聞こえてる……。
「だ……ぶか……さ……る!」
かすむ視界でミズキが印を結ぶのが見える。
ナルトが俺を抱え、逃げようとするがミズキの術が放たれる方がはるかに速い。
「があああああああああああ」
只の獣と化したミズキから放たれる特大の豪火球。
それが視界を埋め尽くし……。
…………
……
…
平原で俺を俺が見ている。
『君はもう、あきらめるの?』
「そんなわけ……ないだろう」
『君が
「やってみなきゃわからない」
『この力はこの先のタイミングで必要に……』
「タイミングなんて関係ない!今がなければ、未来もないんだ!!」
今を生きているんだ……俺にとって……ナルトもイルカ先生もハナビも……
マリエさん、施設のみんな……
みんな、みんな俺にとっては漫画のキャラなんかじゃない。
今この瞬間を……残酷な忍界を必死に生きているんだ!
そんな皆を少しでも幸せにするために俺は……『僕は』……
『戦えなかった』
「戦う!!!」
「だからこそ、友達を!!ナルトを守れないなんて!!!」
絶対に嫌だ。
……
…
不思議と、時の流れが遅く感じる。
目の前には豪火球に大の字で立ちふさがるナルト。
俺は立ち上がりナルトの肩を掴み後ろに引き倒す。
「悟ぅ……!!」
尻もちをつきながらナルトがスローモーションで叫ぶ。
豪火球の前に立ちふさがり、俺は八門を開放してゆく
「第一……開門」
豪火球が前方の草を灰へと変えながら迫る。
「第二……休門!」
俺は右腕を前方に伸ばす。
「第三……生門!!」
腕の先端が豪火球に呑まれ焼かれていく。
「第四……傷門!!!」
『九尾の力の一端。それをまさか……』
肘までが豪火球に呑まれ、時の流れが遅く感じる状態でも激痛が走る。
だが、問題ない……痛みなんて、今は。
一瞬で全身を朱いチャクラがめぐる。
『制御するなんて』
限界を超えろ!恐怖を持って!!勇気となせ!!今がその時だ!!!
「第五……第六……
第七・驚門……開!!!」
『やっぱり……君は
朱いチャクラを上書きするかのように、碧い汗が噴出し、蒸発。碧いオーラとして顕現する。
豪火球が肩をも飲み込もうとする、その瞬間。
全ての力を込めて――――
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
<三人称>
イルカとハナビはゆっくりだが、ナルトと悟のあとを追っていた。
その時
「パァンッ!!!」と破裂音が森に響き渡る。
イルカとハナビはその由来も知れぬ音に焦燥感を煽られ、先を急いだ。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
正気を失っているミズキの視界の炎が強大な破裂音を響かせはじけ飛ぶ。
豪火球が炸裂したと思いミズキは歪んだ笑みを見せる。
が、しかしその後訪れたあまりの衝撃波に足を負傷しているミズキは体勢を保てずに後ずさる。
陽炎が引くことで歪んだ景色のその先。
黙雷悟が片腕を突き出した状態で健在している姿を見せる。
右腕は、
仮面は衝撃波で吹き飛び、フードも外れ結んだ後ろ髪も解かれていた。
その素顔を晒した黙雷悟の緑の目は、闇夜に光を失わず真っすぐとミズキを見据えている。
その様子に獣と化したミズキが怯む。恐怖という本能を感じて。
悟は焼けた手を使い印を結ぶ。その直後右腕はダランと力が抜け垂れさがった状態になる。
「ナルトぉ!!来い!!!」
左腕を突き出した悟がナルトを呼ぶ。それに答えるかのように、悟の後方からナルトが飛び出し
「「これでお終いだあああ!」」
二人は咆哮する。
「風遁・烈風掌!」
悟は風遁でナルトを吹き飛ばし加速させ、ナルトが影分身を使い、さらに本体を投げ加速を重ねる。
そして、ナルトの頭突きがミズキの顔面へと炸裂する。
ズシンと音を響かせ大地に沈むミズキ。勢いが死なず、その後方に煙を巻き上げゴロゴロと転がるナルト。
少しの静けさのあと、ナルトは立ち上がり、悟と共にミズキに近寄る。
白目を剥いたミズキの体は、文字通り萎み、茶色く変色していた。辛うじて息をしているだろうが
「もう、再起不能だな……」
悟が呟く。
ナルトと悟は腰を沈め、お互いに地面に座る。
「やったんだな……俺たち勝ったんだな!悟!」
「ああ、そうだ。やったんだ!!」
二人は大きく息を吸い、勝利を称えるように笑いあった。
ひとしきり笑ったあと、ナルトが自身の涙を指で擦りながら悟に語りかける。
「悟ってば、そんな顔してたんだな……。思ってたよりいい顔じゃねえか!俺には劣るけどな!」
ナルトのそんな言葉に笑みを浮かべた悟は
「まあな。どこぞのバカ面の奴よりは見てくれは良いじゃないか?」
ナルトを煽る。今は仮面がなくバカにした表情が露わになっておりナルトへの効果は抜群だった。
むっきーとナルトは立ち上がり、「そういえば」と言いながら悟も立ち上がる。
そして悟は左手を持ち上げる。ナルトはそれを握手だと思い答えようと手を上げ……
「ふん!!!」
悟は左手で思いっきりナルトの頬を殴りつける。
「いってええええ!!いってえってば!!何すんだコノヤロー!!」
「いやあ、さっきお相子だって言ったけど、昨日殴られた分を思い出してやり返しておこうかなって」
「あれは悟がやれっていったんじゃねえか!てへって舌出しても誤魔化されねぇぞ!くらえ!!」
「痛ったあ!おい!俺の右腕見ろよ!こんな怪我人殴るなんて正気か!?おらあああ!」
「ウグッ!うるせえってばよ!一回は一回だ!くらええぇ!」
「何すんだ!」
「そっちこそ!!」
ドカっバキっボカっ……
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
しばらくしてイルカとハナビが追い付いたその場には
辛うじて息だけしている様子の気を失ったミズキ。そして……
「ナルト大丈夫か!?酷い怪我だぞ、どうしたその顔!?」
「大丈夫!?黙雷さ……ん?どうして仮面の下がそんなボコボコに……」
満身創痍の二人が大の字で寝ころんでいた。
「「いや……べつに」」
「なんでもない……」「なかったってばよ……」」
その後しばらくしてイルカはミズキから巻物を見つけ、開封の術を使い封印の書を取り出す。
「無事に回収できたか……良かった」
安堵の息をついたイルカは少し離れた場所で、悟の治療キットを使うハナビに治療を受けていた悟とナルトを見る。
(全く、本当大した奴らだ……。あの状況でホントにあいつらをぶっ飛ばしてしまうなんて……それにナルトの奴、分身を通り越して影分身を使えるように……よし!)
和気あいあいと喋っている彼らにイルカが近づき
「ナルト……ちょっといいか?」
「何だってばよ?イルカ先生?」
「いいから、ちょっと目を閉じててくれ、お前に渡したいもんがある!」
ハテナを浮かべたナルトは訳も分からず目を閉じる。
そして
「先生……まだあ?」「よし、目を開けていいぞ!」
ナルトが目を開け、悟の方を向くと、戦闘の余波で割れてしまった悟の手持ちの手鏡がナルトに向けられていた。
そこには……
「卒業……おめでとう!ナルト」
ちょっと長めになってしまいました。ここまで読んでいただきお疲れ様です。
今回ミズキはアニメの設定を若干引っ張って来ているので唐突感がすごいですがご了承を。
設定としては大蛇丸の元部下、大蛇丸が封印の書を狙いミズキを利用。
念のため、劇薬(使ったら再起不能)を渡していたってくらいです。
結局はミズキも捨て駒に過ぎないんですよね。