<黙雷悟>
サスケと連携して放った滅風焔の術は、広範囲を火の海にしその炎が場に滞留し続け完全にカカシさんの逃げ場を奪う。
「……流石にやりすぎたか?」
火の海を前にして、サスケが若干不安そうに呟く。だが
「そう易々とやられてくれるわけないと思うけどね。忘れそうになるけど鈴を取るのが最終目標だし」
俺はそうサスケの呟きに返事をする。警戒は怠らない。
すると俺のすぐ近くの地面からナルトを抱えた、俺の影分身が顔を出す。
「ギリギリセーフ……なんとかナルt「うえっぷ! 口に土が入っちまったぺっぺっ!!」……回収できた」
ナルトにセリフを妨害され影分身がテンションを下げる。そんな様子を見ながら、俺にとってはまだまだ大技の風遁・大突破を使って少し乱れている己のチャクラを落ち着かせ、感知を始める。……影分身を使いながらの大技はチャクラ消費が半端ない。
動きながらや、チャクラが乱れている状態では旨く感知できないのが俺の感知能力の弱点だが、少し落ち着いて……
「ハイ、油断大敵」
「!!っぬおおおおぉ……」
不意に聞こえるカカシさんの声に気を反らされた瞬間、俺の体が地面に埋まる。しまった……!
「心中斬首っと。これで厄介な悟は抑えた……」
俺を地面に埋めたカカシさんが、地面から姿を現す。俺の残した土遁の穴は使わずに自前の土遁の穴を掘ってきたようだ。俺の方で来たら、影分身が感知して『土遁・開土昇掘』で地面を掘り返して地中から上空に打ち上げる算段だったが、さけられてしまったようだ。
サスケは距離を離したか。
だがしかし、カカシさんの声が聞こえた時点で俺本体は土遁の術を発動しておいた。カウンターを狙う!
そうして俺は埋められた状態から、カカシさんの足を掴み
「心中斬首返し!!」
土遁を発動させ……
「はい、残念♪」
俺が足を掴むカカシさんが、雷のチャクラへと体を変換する。これは?!
「まさか雷遁・影分身のjっあばばばばばばばばばばb」
土遁の性質変化を行っていたせいで、雷遁の攻撃がさらに威力を増して俺の体を駆け巡り地面に下半身を埋めたまま俺は気絶する。ついでに影分身も追撃しようとしていてくらってしまって消えている。
ち、ちくしょう……
………………
…………
……
~~~~~~
<はたけカカシ>
悟をキツメに気絶させてから、30分ほど時間が経った。雷遁影分身はチャクラを結構使うからな……大人気ないが少し本気を出してしまった。
ここまで見て確かに、4人のチームワークは演習の合格に値するものだった。それは認めよう。
しかし、それはあくまで零班の悟が居ることでの能力にしかすぎない。
何時でもいるわけじゃない悟に頼り切ったチームワークじゃ何時かボロが出ると、踏んでいた……が。
「中々案外、7班だけでもやるもんだね~。先生として少しわくわくするよ。ただ……鈴にはかすりもしていないけどな」
そうして俺は目の前の3人を挑発する。
幻術から復帰したサクラが戦線に戻ってきたがそれでもやはりアカデミー卒業したての子どもたち。
俺に手も足も出ない展開に諦めると思ってたけど、3人の目の闘志は衰えていない。
「俺には野望がある! こんなところで諦められるか!」
サスケがそう吠えながらクナイを俺に投げつけ接近してくる。同時に
「俺にも火影になるっていう夢があるんだ! サスケェお前にばっか良いカッコさせねーぞぉ!」
ナルトが後に続く。
俺がクナイを弾き、サスケと取っ組み合う間にナルトが腰の鈴を狙ってくる。
「甘い!」
俺は打撃の合間に猫騙しでサスケを怯ませ、突っ込むナルトにぶつかるように蹴り飛ばす。
「ぐっ!」「いてぇ!!」
しかしボロボロになりながらも再び二人は俺に向かってくる。まあ、狙いはわかっている。
二人で俺の足止めをしている間に気絶している悟をサクラが復帰させるんだろうと。
ちらっと悟を見れば、サクラが介抱しているのが視界の端に移る。ちょっと邪魔するかな♪
そうして俺はナルトとサスケの攻撃の合間に跳躍し、そのままサクラの傍に着地する。
「ばあ!!」そういってサクラを脅かすと面白いぐらいに後ずさる。そのまま崩れた態勢でクナイを投擲してくるが甘い甘い。
投擲されたクナイをキャッチしそのまま投げ返す。何とか避けたようだがサクラの体勢が崩れている、このまま追撃して……
しかし俺の足が地面に固定され動きが封じられる。おっと……
「カカシさん、油断しすぎです……!」
上半身だけ地面から出した悟が、俺の足を岩状に変化させた手でつかみ、そのまま岩と同化させ地面と接着させている。既に意識が戻ってたか。
「サクラの作戦ですよ。カカシさんの油断を誘う……ね」
雷遁の効果でまだしびれている様子だが、中々どうしてマリエの十八番を使う悟の術は俺の足をしっかり固定して離さない。
なるほど、介抱する間に悟に作戦を伝えて、隙をわざと見せ妨害してきた俺を捕らえるのが本命ね。
遠巻きで7班が集結するのが見える。
「へっへ~ん! 悟ってばカカシ先生離すなよ! いざ尋常に、勝負!!!」
ナルトが先行して俺めがけて駆け寄る。
「ちっ! あのウスラトンカチ!」
それを追いかけるようにサスケが走る。
「私もやらなきゃ! いっくわよ~!!」
そうして3人が一斉に飛び蹴りを放ってくる。せめて腕でガードをっ!
しかし、悟の術による岩が腕まで拘束していて腕があがらない。しまった!
「ぐはあっ!」
もろに3人の飛び蹴りを受け、岩の拘束が砕けながら俺は吹っ飛ばされる。
流石にクラっときて隙を晒す俺にナルトが拳を振り下ろし、流れで蹴り上げてくる。
そのナルトを踏み台にサスケが俺に蹴りを入れさらに空中に打ち上げられる。
そのまま、ナルトが跳躍し空中にいるサスケと共にかかと落としを放つ。
ドゴンと音を鳴らして地面に叩きつけられる。途中ガードもしたし、受け身も取れたが少し痛いな……。
2人が地面に降り立つ前に俺が反撃をしようとするが
「しゃーんなろー!!」
遠巻きでサクラが仕掛けを発動させ、地面に隠されていた縄が現れ迫りくる。
着地後すぐに離脱したサスケと違い、ナルトはかかと落としを決めた余韻に浸っていたためそのまま俺と共に縄で
「ぐえっ! ってなんじゃあこりゃあ!」
ナルトが叫ぶ。耳元でうるさいなあ。
「よし、ナイスだサクラ。これで鈴を……!」
サスケが俺に近寄る。いい連携だったな……だが……残念だけど。
ジリリリリリリリリリっと時計のアラームが鳴る。
時間制限を忘れていたのか、その音が示す意味にしばらく気がつかずに3人は硬直している。……さてと。
縄抜けの術で、ナルトのみ縄の拘束に残し、時計の音を止める。
「はーい。試験終了~」
俺の声を聞き、始めて自分たちが鈴を取れなかったことに、その意味に気がつき始め顔を青くする3人。
悟は……モゾモゾと地面から這い出ている最中か。あまり焦ってる様子も見られないし、こいつは
~~~~~~
場を改め、3本の丸太が並ぶ前に4人を横一列にならばせる。
「さてと今回の演習。鈴取り合戦の結果だが……おや~誰も鈴を取れていないようじゃな~い」
ニヤニヤとワザとらしく結果発表をする俺にサスケが睨みを効かせる。サクラも露骨に落ち込んでいる。
だがナルトは……
「……諦めねぇぞ……」
そう呟いて、震えている。
「下忍にとか、忍びとか俺には関係ねえってばよ! そんなんに成れなくったって! 俺は火影にぃ!」
「みんなごーかっく♡」
ナルトの決意表明を邪魔するようにそう4人に告げる。
「「「なッ……」」」
第7班の面々は目をぱちくりとさせている。悟は……特に表情はわからないが、安心しているようすだ。
「最初はお前らのこと、忍者をなめてる只のガキだと思ってたが、これがなかなかどうして、いい動きをするじゃない」
俺がニコニコしながら拍手を続けるとサクラが我慢ならずに質問を飛ばしてくる。
「ど、どういうことですか!? 私たち誰も鈴を取れてないのに……」
「ああ、鈴が取れるかどうかはブラフ。実際の合否は別の要素で判断していた。そうだな……サクラ、お前は試験が始まる前に異議を唱えようとしていたな?」
「ええ、私たちは4人しかいなくてそれで鈴が二つしかないのに……これじゃあ、仲間割れに……」
「そうだ、この試験、仲間割れを
「チームワーク……」
「自分の利害に関係なく、チームワークを優先できるものを選抜する意図があった。それなのにお前らときたら、予想以上に良いチームワークを見せくれてたからな。途中から試験だったのを忘れて俺が楽しんでいた。いやマジで」
ハハハハハとわらう俺にサスケとサクラは理解が進み安堵の笑みを浮かべている。ナルトはいまいちわかっていないようだが。
「悟が何か仕組んでいたにせよ。お前たち自身が感じたはずだ。この演習でチームワークの大切さをな」
ここまで言ってもナルトはピンと来ていないようだ。ふう、やれやれ。
ナルトの後ろに回り込み、クナイを首に添える。
「サクラ!! サスケと悟どちらかを道ずれにしろ! さもないとナルトが死ぬぞ!!」
なーんて演技をしてみる。ナルトがぎゃあぎゃあ騒ぐが、縄で縛られたままなので抵抗は出来まい。
サクラはかなり戸惑っている様子だが、サスケも悟も落ち着いている。流石に演技臭いか?
「とまあ、こういう状況になったときに、チームワークがなければ真っ先にナルト。お前が見捨てられるってことよ」
パッと両手を上にあげてナルトを解放する。
「任務ってのは命がけの仕事ばかりだ。これを見ろ」
そう言って俺は慰霊碑の前に移動する。
慰霊碑に手を置き、深呼吸して俺は話を続ける。
「この石に刻まれている名は全て、里で英雄として呼ばれている忍者たちのものだ。……がただの英雄じゃない」
英雄と聞き少し元気を取り戻したナルトだが、何かを察して押し黙る。
「これは慰霊碑、刻まれた名は殉職者。既に死んでいる英雄たちだ」
心臓を掴まれる感覚がする……。
「この中には仲間のチームワークが無いがために死んでいった……そんな奴もいる」
今は自分を戒める時間じゃない。そう思いぐっと昔を振り返るのを堪える。
「お前らが初めてだった。今までの素直に俺の言うこと
4人は真剣な眼差しで俺の話を聞いてくれている。オビト……この子たちはお前の意思を引き継げるかもしれない。そう思うとこの言葉にも熱が入る。
「……けどな!! 仲間を大切にしない奴はそれ以上のクズだ!」
それぞれ、グッと気を引き締めるような表情で俺の言葉を、オビトの言葉を聞いてくれている。
ああ、なんだか。俺まで気が引き締まる。
「よォーしィ! これにて演習は終了! 全員合格ってことで、第7班は明日より任務開始! 零班の悟は別個で指示があるから、このまま任務受付場に向かえ!」
グッドポーズでそう告げると、ナルトが嬉しそうに叫び始める。
「やったああああああああ!! オレってば! 忍者! 忍者!! 忍者ぁ~!!!」
思っていたよりも、良い結果で終わった演習に俺も満足して帰り支度を始める。
「よし帰るぞ~」
俺の号令にサクラとサスケが付いてくる。
「って! 縄ほどけェーー! どーせこんなオチだと思ったってばよォ!」
後ろで騒ぐナルトに呆れる俺と、サクラ、サスケ。
するとナルトにチョップを入れ悟がナルトに縄抜けの術を教える。……アカデミーでならうはずなんだけどなあ……。
~~~~~~
<黙雷悟>
第7班ことカカシ班が演習場からいなくなり、俺一人になったところで任務受付場に向かおうとしたとき、声をかけられる。
「やあ、悟。演習お疲れ」
「……カカシさん? ああ、影分身ですか」
先ほど姿を消したカカシさんが再度俺の前に現れた。
まあ、多分彼の用事は見当がつくが……
「悟がどうやってあいつらに、チームワークを仕込んだのか気になってね~」
そういうカカシさんに、俺は地面に腰を下ろして休息したまま説明を始める。
「別に単純ですよ。ナルトにはこの前の事件。封印の書の事件で、俺やイルカ先生が居なかった場合を想像してもらっただけです。あとはサスケですけど……。まあ、現状カカシ先生がサスケの完全上位互換だってことを反論されるたびに一個一個丁寧に解説したまでです」
木に足だけ昇る術だったり、印のスピードだったり。カカシさんに出来てサスケに出来ないことはまだまだ多い。
「それに戦い始めれば力の差が歴然として、手を取り合うしかないと伝えていたからサクラも鈴による仲間割れの可能性を一端無視して協力してくれました。捕らぬ狸の皮算用って言葉を教えておいたことも効果的だったかもしれないですね」
ハハハと笑う俺に、カカシさんはなるほどねっと言って納得してくれた様子。
「それじゃあ、俺はこれで……」
そう言って立ち上がりこの場を後にしようとすると
「少し待て悟。お前自身がチームワークを重視した理由。それも聞きたい。あとなぜ八門遁甲を使わなかった」
やれやれといった感じに俺は軽く話す。
「別に大した理由はないですよ。八門遁甲はリスクがでかい。それに俺は今のところ八門に頼らないと器用貧乏なので、ナルトのスタミナ。サスケの火遁の威力。サクラの機転の良さが必要だっただけですあとはまあ……そうですね。命の恩人であるカカシさん相手に良い所を見せたかった、それだけです」
そう言い残し、俺は演習場を後にした。これでカカシさんも満足してくれただろうか。後方で影分身が解除された音が聞こえる。
その後零班としての今後の活動内容を任務受付場の係の人に話を聞いた。
随時他の班同様に簡単なDランクの任務から受けられるようになるようだ。そして必要がある際は、連絡用の鳥の遣いで俺に他の班との連携の指示が出される。
そんな感じの説明を受け、明日紅班であるヒナタ、キバ、シノと合同で任務を受けることが決まり、この日の業務連絡は終了した。
~~~~~
午後の4時ぐらいに解放され、俺は衣装屋へと向かう。
いい加減あの腰布を買っておきたいと思い、店の前まで来ると俺は愕然とする。
「売り……切れ……?!」
そん……な、だって昨日確認したときにはまだ1つはあったのに……。
店先でうなだれている俺の肩を誰かが叩く。振り返るとそこには
「悟様、このような場でどうかされましたか?」
日向ナツさんがいた。手には紙袋を持っておりここの衣装屋で何か買い物を済ませていたようだ。
「いや、ちょっと欲しかったベージュの腰布が売り切れてしまってて……」
そう言ってその商品があった場所を指さすと、ナツさん少し戸惑った表情をする。
「ああ、ええとその商品でしたら……そのすみません。ハナビ様がどうしても欲しいとおっしゃっていたので、稽古で外に出れないハナビ様の代わりに私めがたった今、買わせていただきました……」
ちょっと気まずい空気が流れる。
「ああ、なるほど、大丈夫ですよ! そう大丈夫です。別に俺は額あてをつける装飾品が欲しかっただけなんで。えっと……それじゃあ、ハナビによろしく言っておいてください」
そういって俺は逃げるようにその場をあとにした。5歳年下の子が欲しがってるものを俺が譲ってもらう訳にはいかない。そういう空気になるのも嫌なのでさっさと切り上げたのだ。
「は、はい。悟様もお達者で……」
そういうナツさんの言葉を背に施設へと帰っていった。
~~~~~~
施設の前まで来ると、珍しく
「悟か! どうだった演習は? ってお前なら合格は当たり前か!」
「おかえりなさい、ウルシさん。任務帰りですか?」
彼は木ノ葉の下忍、あのマリエさんがいた孤児院の仲間の一人のウルシさん。
アカデミー経由ではなく、一般公募から下忍になった人だ。
彼は下忍としての収入のほとんどをこの施設「蒼い鳥」に収めて、職員としても働いている。
言ってしまえば、末端の忍びの一人。だが俺たち施設にお世話になっている人間にとってはヒーローみたいな人だ。
「おう、今日も色々と雑用を受けてきたぜ。悟も今度から俺と同じ下忍だろ? カー―ッ! あんなちっこかった奴がここまでくるとはなあ!」
バシバシと俺の背を叩くウルシさんに、苦笑を混ぜながら返事をする。
「まだまだ。俺はひよっこですよ。だからこそ経験を積んでより強くなりたいんです」
そう言いながら施設の玄関で二人してサンダルをぬいでいると、ウルシさんが俺に問いかけてくる。
「悟はどうするつもりだ? 下忍として収入が入るなら、無理してこの施設にいる必要はねえぞ? いっそのこと一人暮らしだって……」
「いえ。施設を出ていく気はありません。俺もこの施設のために働きます。それこそウルシさんの背を見てたんです。そういうふうに考えるのも可笑しくないですよね?」
そう言うとウルシさんは照れて鼻の下を指でこする。
「そうかぁ……でもまあ、無理はするなよ? 特にお前は就寝時間の9時以降でも当たり前のように外出して修行とかしてるからな。大きくなったからとやかく言わないが、マリエもお前のことを心配しているからな。……さっさと仲直りしろよ?」
そう言ってウルシさんは、彼の自室へと向かっていった。
俺もその後自室に向かう途中、マリエさんとすれ違いただいまと声をかけるが
「おかえりなさい。下忍になれて……良かったわね」
とまだまだ無愛想な感じで返事を返される。
流石にそろそろ機嫌を直してもらわないとなあ。一週間は立ってないとはいえ気まずい雰囲気が長い事続くのは嫌だ。
そう思いながらこの日は夕飯の支度や洗濯ものを取り入れ、風呂に入って一日を終えた。
ちょっと疲れたなあ。明日からは任務がある。
前世ではコンビニのアルバイトしかやったことないけど大丈夫かな? なんて。
そう心配に思いながらも、珍しく俺は9時に寝る施設のルールを守って眠りについた。