<黙雷悟>
荒廃…………。
崩壊した木ノ葉の里……辺りを見渡しても、動く命はない。僕の体も左半身がすでに無く、身体の感覚ももう消えている。
それでも、消えない笑顔の「太陽」が、赤い目の「月」が僕を生かす。そして……繋ぐ。これでいったい何度目だろうか……。
恐らく……次が最後の……最後のチャンスだ。
もう、時間が残されていない僕では……この
ならば……。
お願いです、□□□□様。希望を連れてきて欲しいんです……。
…………
………
……
…
~~~~~~
<黙雷悟>
目が覚めると、昨日早めに寝たおかげか朝日はまだ昇っておらず、木ノ葉の里には静けさが漂っていた。
変な夢を見たような気がするが、頭がボーとしていていまいち実感がない。
ふと、顔に手をあてがうと涙を流していたようだ。
「……?」
とりあえず、身支度を整えよう。今日から木ノ葉の里の下忍としての生活が始まる。
今日は紅班と合同で任務にあたる。集合場所も指定されている。……今の時間は指定された時よりずいぶん早いが、まあやることもないし早めに行くかな。
黒いインナー(右袖がミズキに燃やされたので、そろえて左右の肩から先は切り落とした)、黒いパーカーに灰色のズボン。いつもの仮面に、竹で出来た軽い手甲脚甲をつける。
両腕ともに肩から指先まで、包帯を巻く。『蓮華』も一応出来るのでそれ用の包帯だが、多分使うことはないだろう。
後は鉄棒二本を背負い、額あてをポーチに入れ、施設の玄関でサンダルを履く。
すると、寝起きのウルシさんが声をかけてくる。
「ふあ~あ……悟もう出かけるのか? 随分と早いなあ……」
任務明けで疲れている様子だ。ウルシさんの目がショボショボしているし髪もぼさぼさだし。
「はい、目が覚めちゃって……少し早いですが、軽く体を動かしながら任務の集合場所に向かいます」
そうしてサンダルをトントンとつま先までしっかりと履き、玄関に手をかける。
「気いつけろよ? 下忍になりたてとはいえ、任務は任務だ。しっかりと頑張ってこい!」
「はい、行ってきます!」
そうして俺は跳躍してその場を後にした。
玄関に残ったウルシさんが後ろの廊下の曲がり角に向けて言葉を向ける。
「……マリエ、お前も見送りたいなら素直に顔出せよ。ったく、心配だからってそうずっといじけてっと悟の奴、直ぐに成長して独り立ちしちまうぞ?」
「……わかってる。わかってるけど~……もお~ウルシ君意地悪言わないで~」
そうやっていじけているマリエさんに俺は気がつかなかった。
~~~~~~
集合場所に行く前に、アカデミー前の電柱の上に着地する。ルート的には遠回りだがいい準備運動にはなるだろうと。
そうして恐らくもうほとんど訪れることのないかつての学び舎に、懐かしみをこめた視線を送っていると何かざわつく感覚が頭を走る。
「……?……っ!?」
すると目が物理的に熱く感じ、咄嗟に目をつぶる。この感覚……何時か、マリエさんとお風呂に入った時にも感じたような……?
熱の高まりが少し安定したので、目を開けると、アカデミーの前にカカシさんがいるのが目に入る。
(こんな時間にカカシさんがアカデミーに……?)
そう不思議に思い、声かけようとしたとき、カカシさんと目が合う。
「!?」
目が合い、瞬きをした瞬間。カカシさんは姿を消していた……。
それに……カカシさんにそっくりだけど、どこか違ったような……。マスクを着けていないようにも見えたし。
奇妙な現象だったと思えば、いつの間にか目の熱も引いていた。
そんな変な現象も、あまり気にしすぎてもしょうがない。
俺は気持ちを切り替えて集合場所へと向かうことにした。
忍界は不思議なことばかり起こるから、気が気でない……。
昨日の演習の疲れでも残ってたかな?
~~~~~~
集合場所には二時間ほど早くついてしまった。
指定された場所は林の中。少し開けた場所である。
……本当にやることがない。演習場でもないため、術の練習をするわけにも行かないしなあ……。
そう思い、俺は地べたに座禅を組み座り込む。
やることもないので適当に周囲の感知でもしてみるかと思い立って実行する。
こうして、落ち着いていると感知できる範囲はかなりの距離になる。感覚的に言えば自然を感じている? みたいな気分になって距離が伸びるのだ。
鳥やリスといった小動物の気配も良く分かり、こうしてじっとしていると動物たちが俺の周りに集まってくる。
まあ、集まるだけで、近づいてはこないのだが……。
そんなこんなで一時間ほど時間が経つと、遠くの方で気配を感じる。
「このチャクラは……ヒナタか?」
そう思いながら、ヒナタが来るまで瞑想を続ける。
少ししてヒナタがこちらに気がつき声をかけてくる。
「あっ! 悟君おはよう。 随分と早いね」
「まあ、ヒナタも早い方だとは思うけど……? ん、どうした? その紙袋」
目を開けヒナタの姿を確認すると、ヒナタが紙袋を持っていることに気がつく。
「ああ、これはね。今日悟君と一緒に任務をするってハナビに話したら、悟君に渡してほしいって昨日の夜に頼まれたの」
はい、といいヒナタがにこやかに紙袋を手渡してくれる。俺は立ち上がり、その紙袋を受け取り中を確認する。すると
「これは……腰布……。これって確か昨日ナツさんがハナビが欲しいっていってて買ってた奴じゃ……?」
不思議に思いながらも手に取り広げてみる。無地で落ち着いた色合いの腰布でまさに俺が欲しがっていたものと同じものだ。
俺のつぶやきにヒナタは何かに気がついたのかハッとするが、少し笑顔になり
「せっかくだから悟君。付けて見て? 感想をハナビに教えてあげたいの」
と俺に言ってくる。まあ、元々欲しかったものだからいいんだけど、お金とかどうしよう、ナツさんに返した方がいいかな。あとでヒナタにでも預けるかな。
そう思いながら、腰布を巻く。
う~んいい感じだ。
ズボンに折りいれた腰布にポーチから出した額あてを着ける。位置は腰の右側。やっと木ノ葉の忍びらしい出で立ちになり、満足する俺を見てヒナタも嬉しそうにしている。
「どう? 似合う?」
「うん、似合ってるよ!」
どや顔しても仮面で見えてないだろうけど、恰好を整えるのは気分が良い。
ヒナタとハナビに感謝をしつつ、世間話を続けていると、また俺の感知に気配が引っかかる。
「うん? 誰か来たな……」
「悟君って感知も出来るんだったね。 多分シノ君だと思うけど……どうかな……白眼ッ!」
ヒナタも白眼で確認をする。
顔が少し明るくなった。シノだったんだろう。
俺の感知は、姿を直接見るわけじゃないから相手が誰かはチャクラの質を覚えていないと特定ができない。
少ししてシノが姿を現す。
「……おはよう」
相変わらずテンションが低い声だな。
「おはよう、シノ君」
「おはよう、えーと一応確認するけど、シノは俺のこと……わかる?」
シノに俺が誰かの確認を取る。アカデミーでは目立たないようにしていたし、今後仲が特別良くなかった人には確認を取っておこうと思う。
「…………ッ一度組手をしたことがあるだろう。俺はその時に随分とお前、悟に欠点を指摘されたおかげで体術が平均的な評価をもらえるまでに成長できた。こちらとしては印象深い出来事だったが、お前にとってはそこまで俺のことを気に留めるほd
「ごめんて! 大丈夫大丈夫油女シノだろ? 俺も覚えてるからそんな落ち込むなって、な? 一応の確認だって!」
暗いトーンで早口で語り始めようとしたシノに制止を入れる。
「……そうか、なら問題ない」
俺と同じく素顔を隠しているタイプだけど、シノって感情が読みやすいな……。
なんてやり取りをしているうちに、またもチャクラを感知する。スピードが速いので、感知してから姿を確認するまで5秒ともかからなかった。
スタッと黒髪で美しい女性が姿を現す。……正直好mゲフンゲフンッ。
「あなたたち、随分と早いのね。まだ集合時間まで30分はあるわよ?」
夕日紅。ヒナタ、シノ、キバの3人紅班の担当上忍だ。
紅さんはヒナタとシノと挨拶をすませると俺に話題をふる。
「あなたが零班の黙雷悟君ね。私は夕日紅。この子達の担当上忍……キバはまだ来てないみたいだけど、私たちが早すぎるだけだから気にしないであげて」
丁寧に挨拶をしてくれたのでこちらも、丁寧に所属と名前を言い返す。
すると紅さんが俺に任務内容の確認を行うために少し近づいてくる。あっいい匂い。
「今日の任務の内容は、里への物資提供依頼を忍猫に取り次ぐこと。そのために、まず第一目標が今木ノ葉隠れの里に訪れているとされている忍猫を見つけ出すことね。そのために様々な感知タイプが今回の任務にあたることになっているわ」
ヒナタの白眼、シノの寄壊蟲、キバと赤丸の嗅覚そして
(俺のチャクラの感知か。忍者登録書の内容にチャクラの感知ができると書いていたから抜擢されたのだろう)
俺の実力はなるべく隠していく方針なのは今も変わらず。少なくとも八門が使えること、五大性質を使えることは秘密だ。
メインの術は土と雷と申告しているし。
そう思いながら、紅さんの話を聞いていると一瞬紅さんが印を組むのを視認する。……?
……何も起きないが?
それでも紅さんは何事もなかったかのように、ブリーフィングを進める。
何なんだ。と思っているとどたどたと集合時間5分前にキバと赤丸が現れる。
「おーっと。あぶねーあぶねー!赤丸の散歩してたら、遅れそうになっちまったぜ」
まあ、集合時間には間に合っているので誰も文句は言わないだろう。
そうしてキバが班員と挨拶を済ませると、紅さんが俺の隣に立ち、俺の肩に手を置き俺の紹介をし始める。
……なんか手つきがサスサスしていて、ソワソワする。えっなんでこんな変な手つきで触ってくるの?
「――――というわけで今回は零班の悟とも協力して、忍猫の捜索にあたるわ」
という訳で、俺たち同士で方針を決めるわけだけど……
「うううううううぅぅぅぅぅ!!」
……めっちゃくちゃ赤丸に警戒されて唸られている。何でぇ……。
「アカデミーのころから、赤丸はお前のことが何だか嫌いだって言ってたぜ。俺は別にお前みたいな目立たない奴は印象に残ってなかったけどな」
なんて言われて少し落ち込む。この世界に転生してきてから妙に動物たちに避けられている感じがするんだよなあ。犬には吠えられるし、噛みつかれそうになるし。
現に赤丸を撫でようと、下から顎に向けて手をゆぅっくり近づけようとするが、噛むぞと言わんばかりに歯茎をむき出しにする。……これはいかんやつやな。大人しく手を引っ込める。
すると唐突にピーっと笛の音が鳴る。びっくりして、振り返ると紅さんが草笛を吹いているのが目に入るが……何してんだこの人?
目が合うと紅さんは少し目を見開く。
「紅さんって、不思議系な感じ? 急に草笛なんて吹いて……」
コソッとヒナタに小声で聞くと
「笛? 紅先生なら、そこで任務の資料見てるよ? 私にはそんな音聞こえないけど……」
と心配されながら返事を返される。ヒナタは誰もいない位置を指さしている。残りの男子二人も少し心配そうに、憐むようにこちらを見る。
何なんだ、まじで。
とっ思っていると紅さんが柏手をして注目を集める。
「そろそろ行動開始時刻ね。取りあえず午前中は各自の能力を駆使して探索して頂戴。そうね……正午に南区の和食堂で昼食を取りながら集めた情報を一度まとめましょう。これで良いかしら?」
紅さんが確認を取ると、ヒナタは自身なさげだが返事を返し、シノはコクリとうなずく。
キバは猫は嫌いだから匂いは直ぐにわかると豪語し気合いを入れている。
俺は先ほどからの紅さんの動きに困惑しているが取りあえず、問題ないですと答える。
そうして一度全員解散し、各自で忍猫の捜索に向かった。
さてと、どうやって見つけようか……。
~~~~~~
<夕日紅>
嗅覚、視覚、触覚、聴覚。それらに訴えかけてみたけれど。
警戒していないから、挨拶代わりに幻術を披露してあげようとしてみたのに……黙雷悟……。
彼、もしかして幻術にかからないのかしら?
……流石に火影の推薦で選ばれた零班だけあるわね。