<黙雷悟>
俺たちはさっそく二手に分かれて、里中を捜索した。しかし里は広い。比喩でもなんでもなく。俺と行動を共にするシノと市街地の方へ向かうが
「正直、俺のチャクラ感知だと限界があるなあ。良く知らない対象をこの広大な里の中から見つけ出すのは骨が折れそうだ……」
そういう俺の愚痴にシノが
「確かに、こういう対象が限定される捜索においては、においの元がわからないキバや悟のタイプでは少々相性が悪いと言わざるを得ない。俺の虫による探索も相手が忍猫では警戒される可能性が高いと考えられる。その点で言えばもっとも見つけられる可能性があるのは対象物を
と分析を交えながら答える。実際その分析は間違ってはおらず、紅さんが定めた集合時間まで俺とシノは忍猫の足取りを何一つ見つけることが出来なかった。
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昼の集合場所に指定された飲食店の中で昼食を取る俺たち。
「くっそ! 全然見つけらんねぇぜっ。ッたくよ~本当に里にいるのかよ紅先生」
キバが文句を言いながら、紅さんに問いかけている。普段来ない店だけど、紅さんが俺たちが初任務だからと奢ってくれるそうだ。そんな定食の中で遠慮をせずに一番高いものを頼んだキバが上手くいかずに不貞腐れている。
「そうね、確かな情報筋からの話だから里にいること自体は疑いようがないけど……。午後からはチームを入れ替えて見ましょうか」
今回の任務は実は里から出ている。つまり、最悪失敗しても里の信頼が落ちるとかの問題はないのだ。だからこそ、俺たち新人にこの依頼が回ってきたようなもんなのだが……失敗前提なのは少しむかつくな。鶏肉の炭火焼きに塩を付けたものを咀嚼しながら何か方法はないかと考える。するとシノが口を開く。
「提案だが……何か忍猫をおびき寄せる方法も探した方がいいかもしれない。なぜなら俺たちが感知に優れているといえど今回の任務においては相手の特徴が分かり切っていないこともある。だからこそ相手から出向かせることも一考の余地があると考えられる」
シノが茶をすすりながらする提案に俺は関心を示す。
「なるほど……おびき寄せる方法ね。猫だからマタタビとか?」
俺の提案にヒナタが少し唸り答える。
「でも普通のマタタビだと普通の猫ちゃんが寄ってきちゃうだけかも……」
全員でう~んと唸り考えながら昼食を取る。忍猫ねえ……。
「紅さん」
「どうかしたの悟?」
「思ったんですけどこういう任務に就くときに、他の忍びから情報を得るのって問題ないですよね?」
「そうね。本来任務は内容が極秘だったりするから情報を漏らすようなことはご法度だけど……。今回の場合はよほどのことがない限り問題は起きないと思うわ」
なるほど……。取りあえず紅さんに許可を取り、食事を食べ終えた俺は席を立ち影分身を発動する。その影分身には
「仮面を着けたまま、いつの間に食事を……」
ボソッとシノが呟く。まあ、顔を見せるのは純粋に嫌だしな。この食事テクも段々とこなれてきたおかげで、ほとんど顔を見られずに問題なく食事を終えられるようになってきたもんだ。
「それじゃあ、午後はキバ……は赤丸が嫌がるから俺はヒナタと里を回ります。あとは影分身の情報が入ったら一度集まりたいので、市街地の中央通りに2時間後くらいに集まってもらっていいですか?」
紅さんに確認を取る。問題ないわと返事が来たので食事を終えた俺とヒナタは先に飲食店を出た。
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里を跳び回りながらヒナタと雑談をする。勿論感知は続けているが。
「そういえばヒナタ。この腰布だけど……。代金は払った方が良いよな? 多分ナツさんがお金を出してくれたと思うけど」
俺の腰ではためく腰布に目線を向ける。流石に何もしていないのにタダで物をもらうのは気が引ける。するとヒナタが白眼を発動させた顔を少ししかめながら答える。
「悟君、それはハナビから悟君への贈り物なの。あまりそういうのでお金について言うのは無神経だと思う……よ」
ちょっと怒ったのかヒナタにしては強めの語気で注意される。……まあ、確かにそうだけど。
「ごめん……でも何もしてないのにこんな良いものただで貰うのはそれはそれで気が引けるというか……」
俺の言葉を聞きヒナタが足を止めジト目で見てくる。
「……え?」
俺が困惑しているとヒナタがため息をつく。ヒナタのこんな姿初めてみた。 ……俺が悪いのか、悪いんだろうなあ。
「悟君は何て言うのかな……。もう少し相手の気持ちを考えたりとか自分のしてることを客観的に見ることをした方が良いと思う……」
「えーと……了解」
ヒナタからのお説教を受け少し反省する。意味までちゃんと理解はしていないが……。テンテンにも似たようなことを言われたことがあるような。
なんてやり取りをしていると、突然頭の中に情報が流れてくる。影分身が自分で術を解いたようだ。
「なるほど。ヒナタ、悪いけど忍猫について情報が入った。試したいことがあるから、先に中央通りで紅さん達と合流して待っててくれ」
そう言いながら、俺は逃げるようにその場を後にする。
「はあ……頑張って、ハナビ。婚約しちゃった私が言えたことじゃないかもしれないけど……」
~~~~~~
<黙雷悟の影分身>
【少し前】
俺は飲食店から出て任務受付場に向かう。
「すみません。ちょっといいですか?」
任務受付場の係の人に声をかける。相手が良いよと了承したので話を続ける。
「第7班が……カカシ班が今何の依頼を受けてどこにいるか知りたくて……」
~~~~~~
里の中心から外れた農地。その一画。
「はあ~~~~あぁ~~。もっと忍者っぽい任務がしたいってばよ……」
ナルトが畑の作物を引き抜きながら文句を言っている姿を見つける。サクラやサスケもいるようだが……。
「カカシさんはここでサボってて良いんですか?」
少し離れた家屋で依頼人が出してくれたであろう茶を横に置きながらニコニコとイチャイチャパラダイスを呼んでいるカカシさんに声をかける。
「うん? おお悟じゃない。どしたの、こんな場所で今日は確か紅のとこと任務でしょ?」
「いやあそうですけど。サスケにちょっと用があって」
「ああそう?それならちょっとこっちの任務手伝ってよ零班君。もう少しあいつらもやる気出してくれたらいいけどねえ~」
……一番ダラダラしてるあんたが言うことかよって突っ込みそうになるけど、めんどくさいので生返事を返し畑に向かう。
「サスケ、ちょっといいか?」
「悟か、どうした」
つまらなそうにしていたサスケの土のついた表情が少し明るくなる。中々の重労働のようだ。
「今里に来ている忍猫を捜索してるんだが、その見つけ方というか会い方というか……まあそれについて、サスケなら何か知っていると思って聞きに来たんだ」
「忍猫か……。どうして俺が忍猫について知っていると……いやそうか、昔居住区に来ていたから知ってんのか」
勝手に納得してくれたサスケが口を開こうとして止める。そうして少し考えた後……
「いいだろう。教えてやっても良いが、俺たちの任務、少し手伝ってけ」
取引だ、と悪そうな笑顔でサスケが答える。手伝え、という言葉を聞きサクラの表情が期待に満ちたものになる。そんなに畑作業が嫌か。
「……はあ。OK。手伝うから忍猫の見つけ方教えてくれよ?」
まあ、土遁で掘り起こしても良いが……。取りあえずナルトに近づき声をかける。
「……何で影分身しないんだ?」
「影分身たちも畑作業が嫌だつってちょっとしたら怠け始めんだってばよ……。俺も嫌だからテンション上がんねえ……」
なるほどね、本体がやりたがらないことは分身も嫌がるもんだ、ならしょうがないと印を結ぶ。
「土遁・開土昇掘」
地面に手をつき、術を発動させる。畑の作物を集めている位置のすぐ近くに小山を出現させる。雑に収穫できる根野菜を土遁で地中に引き込みかき混ぜ、小山の方へ地中の土ごと流す。
「よっと」
チャクラを込めることで、小山の頂点の穴から作物をポンッと吐き出させる。それを五分ほど続け……。術を終えると根野菜の区画の収穫を全て終える。
「すご~い! 土遁って地味だと思ってたけど便利ねえ」
サクラが感心して声を上げる。地味て……。まあ、いいか。再度手をつき術で荒れた畑を元の形に戻してサスケに方を向く。
「よし、これで良いだろ?」
「ふん、良いだろう教えてやるぜ。忍猫の見つけ方……というより呼び方だな。やり方は簡単だ。マタタビを手に持ち」
「手に持ち?」
「チャクラを流す」
「チャクラを流す……それだけ?」
「ああ、忍猫が認めた一族のチャクラや気に入るチャクラを持ったものを感じ取ると姿を現すんだ」
はえ~なるほど~。思ったより簡単そうな内容で良かった。
「ならサスケが呼んでくれよ。うちはサスケなら問題ないだろ? 俺は影分身だけど本体がこれと同じマタタビを持ってるし」
そういって俺のポーチからマタタビの小枝を出し手に持って見せるが
「言っておくがそんな安物の、質の悪いマタタビじゃあいつらは応答しない、機嫌を損ねるだけだ。それに俺はまだ任務があるんでな。あとは自分たちでやれ」
冷たく言い放ちサスケはトマトのなる畑のほうに移動する。……ケチめ。しょうがない、確かに忍猫捜索は俺たちの任務だ。そう思いナルトとサクラに別れの挨拶をしてから自分の影分身の術を解除した。
~~~~~~
<黙雷悟>
影分身の情報を整理し、紅班に伝えた後手ごろな空き地に移動する。
「一応今手に入るであろう高級なマタタビの枝を調達したけど、本当にその方法で大丈夫かしら?」
紅さんが疑問を持って俺に問いかける。
「確かに、特定の一族か忍猫に気に入られるかどうかがカギみたいなんで呼べないかもしれないですが……最悪カカシ班のうちはサスケにやらせれば確実だと思うのでとりあえず俺たちだけでもやってみましょう」
そういって紅さんの懐から出たお金で買った高級マタタビをヒナタに手渡す。まず伝統的な日向一族からだ。……俺は
ヒナタがマタタビにチャクラを流し込む……がしかし
「……何も起きないね」
「どれ、ヒナタ俺に貸せ! 猫なんて一発で呼んでやるぜ!」
キバがヒナタから奪い取るようにマタタビを手に持ちチャクラを流すが
「……駄目みたいだな。キバは犬塚家の者だ。猫とは相性が悪いと考えられる。その点俺なら……」
そういうシノが試してみたが相変わらず何も起きない。
「動物ってダニとか嫌いそうだから、シノの虫も……ごめんて! そう落ち込むなよ……」
俺の茶々に暗い雰囲気をシノが出す。最後は
「隊長の私ね。3人に比べればうちはそこまで伝統的な家系という訳ではないから難しいかしら……」
紅さんがチャクラを流すが
「駄目みたいですね。一応最後は俺か。孤児だから血的な意味では一番雑多としてそうだし……やっぱりサスケに頼むしか……」
そして俺がマタタビにチャクラを流して数十秒。やはりだめかとマタタビを紅さんに渡そうとすると、ボフンと煙が立ち込め何者かが慌てて早口で喋りながら姿を現す。
「これはこれはっ! 遅れて申し訳ございませんニャッ! まさかあの、うちは…………ニャ?」
「「「「「…………」」」」」
ッ来た! 現れた少し老けた黒い忍猫は俺たちの顔を見渡すと一目散に逃げようとする。
「ッみんな! 確保よ! 一度見失ったらチャンスはもうないわ!」
紅さんの指示で俺たちは一斉に忍猫に飛びかかるが隙間から逃げられる。……やっとこさ見つけたんだ! 逃がしてたまるか!
キバとシノ、ヒナタがもみくちゃになっている間に八門を第二休門まで開放して、屋根に逃げた忍猫を追う。
(ッ早い! 黙雷悟の身体能力は平均より下だと情報ではあったけど、恐らくブラフなのね)
俺を品定めするような紅さんの視線には気がつかず、一人忍猫を追う。
「待ってくれ! こっちは別に貴方に危害を加える気はない!」
そういうが忍猫の速さはかなりのものだ。どんどんと距離を離される。……仕方ないこうなったら。一度八門を閉じる。
「ハッ……ハッ……諦めたかニャ……? はあ、とんでもない質のチャクラの持ち主ニャ。勘違いしたけどあれは……」
後方を確認しながら、そう呟く忍猫。その頭上を……
「追いついたぞ!」
雷遁のチャクラを纏った俺が飛び越し、忍猫の前に躍り出る。
「ニャニャっ! 何という速さにゃ!」
それでもうまいぐあいに脇に避けられ、忍猫は縦横無尽に家屋をすり抜けてゆく。
この
まだ直線移動しかできないこのモードでは忍猫に近づけても、捕らえるまではいかないのだ。なので
再度高速で移動する忍猫に走り近づき、隣接するように雷の軌跡を残しながらジグザクに並走する。
「どうやら速さだけみたいだニャ! ワシを捕らえるには柔軟性が足りないニャ!」
家屋の並びが道路で途切れる。しかし忍猫は大きくジャンプし、遠くの道路を挟んだ反対側の屋根まで飛び移ろうとする。ねらい目はここだ! 俺は忍猫に続き大きくジャンプし、空中で捕えようとする。
「ふん、甘い甘い!」
手が届きそうになる一瞬。忍猫は風遁を使ったようで、空中で加速する。あと少しで手が触れそうなところで逃がしてしまい、雷遁チャクラモードを解除していた俺は道路に落下する。
「ぐえっ……。ックソ!」
「ニャハハハハ! 小僧! 詰めが甘いニャ! それじゃあワシは……ニャニャ!?」
屋根から悔しそうにする俺を見降ろし、去ろうとする忍猫が宙に浮く。その忍猫の背中には
俺は忍猫を空中でチャクラ糸で雁字搦めにしキャッチしたのだ。
「ニャンと貴様傀儡使いだったのかニャ?!」
「いや、俺はチャクラコントロールが上手い方なんでね。チャクラ糸だけ、使えるようにしてただけさ。傀儡のほうはさっぱりだ、傀儡を操る才能は微塵もないらしい。だけど……」
こうして役立つこともある。俺は捕獲した忍猫を紅班が待っているであろう空き地まで連行した。
~~~~~~
「ちぃっ! やるじゃねえか」
忍猫を連れてきた俺にキバが声をかけてくる。手元の忍猫は抵抗せずにぐったりとしている。……年でスタミナが無くて疲れたか?
「お前たちワシを捕まえてどうするつもりニャ……。ワシは食っても美味しくないニャ……」
観念した忍猫を俺が地面に置き、紅さんに説得を任せる。大人同士の交渉が始まったようだ。俺たちは少し離れた場所でその様子を観察する。
「流石悟君だね!」
「ふむ。あの身のこなしの忍猫を捕まえるとはやはり、お前は大した奴だ悟。実際、俺もアカデミーの時の組手の時点でお前が」
「おい、悟!」
シノの言葉を遮り、キバが俺に近づいてくる。
「お前、さっきの屋根にとび乗るときなんか変じゃなかったかっ? 赤丸がその時のお前が気味が悪いってさらに怯えてたぞ」
キバの言葉に俺はどう答えるか迷う。八門についてだと思うが、一応秘密にしたいし……。
「いやあ、特に何かしたわけじゃあ……。チャクラコントロールによる基本的な身体強化だよ」
そうはぐらかすが、キバは納得していない様子だ。そんなやりとりをしていると紅さんが声をかけてくる。
「皆、交渉は無事終わったわ。一定のマタタビを用意したら、それに応じた物資を提供してくれるそうよ。悟、もう拘束を解いても大丈夫よ」
そう言われ俺は忍猫の拘束を解く。酷い目にあったニャ、と体を前足で叩きながら整える。
「手荒にしてすみませんでした。俺たちも一応任務だったので……」
俺が謝罪を忍猫にすると
「まあ、しょうがないニャ。それなら驚いて逃げたワシにも一応責任があるようだしニャ。…………なるほど、ふむ」
そういって前足を顎に当て何か考える様子でこちらを観察してくる。妙に人間臭い仕草だ。
「仮面のお前、ちょっとこっちに来いニャ。少し話がある」
そういって俺を空き地の隅っこに誘導する。紅さんに目線を向けると言葉をかけられる。
「後はこちらで、任務報告は済ませておくわ。時間も余ったしあとで演習場で修行をするけど貴方も来るかしら?」
それに俺は是非とも! と答え、忍猫の元にいく。何の用だろうか?
「お前さん名は何という?」
「黙雷悟……と言います。」
「黙雷……聞いたことない性じゃのう。ふむ……ふむ……」
忍猫は品定めをするように俺の周りを歩く。
「お主、自身の生まれは如何なものか知っておるかニャ?」
「いえ、俺は赤子の時に施設に拾われた身なので、両親とかは知らないんです。あのそれが何か……?」
「まあ、詳しくは断定できんが、お主、まともじゃないニャ。言うなら生物的に不自然な存在ニャ」
生物的に? その言葉を言われた瞬間、なぜか背中に嫌な汗が流れる。
「あの犬っころも。いや自然界の生物がお主のことを警戒するのも無理がないのかもしれないニャ」
「それは……どういう……」
「お主の体には高度な封印術が施されているニャ。恐らくうちは一族由来のもの。素人どころか、人間では知覚することすらできん代物じゃ」
俺は唾を飲む。この体は一体……どんな秘密を抱えているんだ?
「その封印術はお主をまともな人間に見せるようにしておるが、動物達の目は誤魔化せないようじゃニャ。お主があの禁術、八門遁甲を使うたびにお主の
「ない……です」
「そうかニャ。ワシを捕まえた褒美にちょっと気になったから教えておいてやったニャ。まあ、気にしても仕方あるまい。それじゃあの」
言いたいことを言うだけ言って忍猫は姿を消した。封印術? うちは由来と言ってたけど、居住区に行ってた時にそんなことされた覚えはないし……。いったい誰が?
少し不安に思うが、忍猫の言う通り今は気にしても仕方ないのかもしれない。俺は気持ちを切り替え、任務の報酬金を貰うため任務受付場に向かった。
「うちはのチャクラに……千手……普通じゃありえん組み合わせニャ……それにワシも勘違いしたがあの