目指すは忍ぶ忍者   作:pナッツ

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波の国編
35:波が運ぶは人か感情か~その1~


<三人称>

 

 三代目火影猿飛ヒルゼンは任務受付場で第7班、その中でも頻繁にうずまきナルトと揉めていた。内容はナルトが任務内容に対して文句を言い、よりランクの高い任務がいいと我がままを言っているという最近よく見かけるものであったが……

 

「分かった、お前がそこまで言うなら……ある人物の護衛任務、Cランク任務をやってもらう」

 

 今日は珍しく三代目が折れる。彼自身、遠巻きにだがナルトの成長を見てきている。Cランクを任せても恐らく乗り切れるとふんだのであろう。果てはその成長を期待してのものか。

 

(しかし、それでも……不安だのう……)

 

 はたけカカシがいるにしても、やはりあの(・・)ナルト。三代目は初の里外での任務を心配に思い、もう一つの保険をかけることにした。

 

 任務の内容には文句を言わず素直に素早く解決するが、ひたすら数を要求してくるある下忍にもこの任務を受けさせるため遣いの者に、手でジェスチャーを送る。

 

(あやつの場合、里外に長期の任務で出した方がよい気がするな……)

 

 今朝も一番に受付場に「何か任務は、依頼はないのか」と聞きに来た下忍は今日も休みを言い渡され自宅の施設で拗ねている。そんな彼に連絡用の鳥が送られた。

 

~~~~~~

 

 木ノ葉名物の「あ・ん」と書かれた大門のまえで、はしゃぐうずまきナルト。そんな子供なナルトに護衛対象であり、依頼主でもある橋作りの名人『タズナ』が不満の声を漏らす。

 

「本当にこんなガキで大丈夫なのかよォ!」

 

「ハハハ……上忍の私もついてますのでそう心配はないですよ……それに」

 

 心配いらないとタズナに言い聞かせるはたけカカシ。彼は里の中に目線を送り追加で言う。

 

「彼も着いてきますので」

 

 その目線を不思議に思い、タズナがカカシの目線を追う様に目を向けると遠くの屋根から雷のようなものが、こちらに飛んでくるのが見える。その雷はガキ発言を受けて抗議しているナルトの傍に降り立ち、衝撃波でナルトを転ばせる。そして腕を払い纏う電気を晴らす。

 

 その仮面をつけて黒いパーカーを着た人物は四角いリュックを背負い、その傍らに彼の唯一の武器を一本ずつさしていた。

 

「お待たせ致しました。第零班の黙雷悟です」

 

 その人物はいでだちから予想されるよりも随分と可愛らしい声で自己紹介をする。タズナはカカシの発言から恐らく男だと思われる仮面の人物を疑いの目で見る。

 

(木ノ葉の忍びは超色物バカリじゃのう……)

 

 そして彼らは木ノ葉から出発する。今は豊かさを失い、英雄を待つ波の国へと……。

 

 

 

 一方施設「青い鳥」では

 

「ちょっと!? ウルシ君! 悟ちゃんが急いで出ていったと思ったら連絡板に『任務により長期外出』ってあったのだけれど!? どういうこと!?」

 

「どうもこうも、書かれている通りだろう。里外に任務で……」

 

「ああああ~~。心配、心配だわ~! 大丈夫かしら悟ちゃん……。着いていった方が……!」

 

「いやいや、流石にそれはやめてやれよマリエ……。保護者なら手土産の一つや二つでも期待してどっしり待ってるもんだぜ?」

 

 マリエがすごい騒いでいた。

 

~~~~~~

 

 波の国への道中、隊の先頭でサクラが波の国についてカカシからレクチャーを受け、真ん中でナルトが自分を認めさせてやるとタズナに絡んでいる中、後方にいるサスケと悟は雑談をしていた。

 

「プスーッ、サスケは最近プスーッ調子どう? プスーッ!」

 

「お前……草笛吹いてんのか? 下手過ぎんだろ……」

 

 会話しながら仮面の下に手を突っ込み草笛を吹く練習をする悟をジト目で見るサスケ。

 

(こんなんでも俺よりは実力が上なのを認めざるを得ないのがムカつくな……)

 

 タズナもナルトをバカにしながら不安そうに、後方の悟をチラチラみる。

 

「調子と言われてもな……手を使わない木登りも問題なく出来るようになってきたし。ひたすら術を磨いている。お前の方はどうだ悟」

 

「草笛、草笛、チャクラ糸、草笛、草笛、掌仙術、草笛、雷遁関係の術……やることいっぱいだな」

 

 指で数えながら、こりゃあ大変だと言わんばかりにオーバーなリアクションを取る悟。

 

「ほとんど草笛じゃねえか……どれだけ苦手なんだよ」

 

 そう呆れているサスケが足元の水溜りに目線を一瞬送る。そんな彼の仕草を気にも留めず、悟は愚痴漏らす。

 

「だって草笛が鳴らへんもん……自分は器用な方だと思ってたんだけどなあ」

 

 そうして呑気な雰囲気で歩く隊。傍から見たらまるで遠足かなにかだと思われても不思議ではない。

 

「避けろサクラっ!!」

 

 カカシがそう叫ぶまでは。

 

 カカシが叫びながら、サクラを後ろに突き飛ばす。それを受け止めたタズナとナルトはカカシがバラバラ(・・・・)に寸断されるのを目撃し言葉を失う。

 

「まずは……一匹目」

 

 互いの鉄で出来た右手と左手の爪をノコギリ状の鎖でつないだ、忍び二名が不敵に笑う。カカシをその鎖で巻き付け互いに引き合い細切れにして満足しているのであろう。

 

「そ、そんなぁ……カカシ先生!!」

 

 サクラが悲痛に叫ぶと、二人の忍びは姿を揺らめかせ瞬時にナルトの背後へと回る。

 

「二匹目!」

 

 ナルトにその双爪が襲い掛かる。がしかし

 

「甘い!」

 

 跳躍したサスケが手裏剣を投げ、忍び達の鎖を木に押さえつける。さらにクナイで鎖を押さえつけ忍びの動きを封じる。

 

「行け悟!」

 

「了解!」

 

 動きが止まり、鎖を外そうとした忍び達の顔面に衝撃が走り吹き飛ぶ。サスケの言葉を受け黙雷悟がリュックに差した二本の鉄棒を両手に持ち、忍び達の頭を打ったのだ。

 

 しかし、鎖を籠手から外した忍びは二手に分かれる。片方はタズナに。もう片方はナルトへと。

 

 ナルトはクナイを持ち応戦するも、忍びの殺気に気圧され動きが鈍り左手を傷つけられる。

 

「ッおじさんさがってェ!!」

 

 タズナに向かう忍びにサクラが立ちふさがる。しかし足が震えている様子にサスケが気づきさらにその間に割って入る。

 

「三匹目はお前だあ!」

 

 忍びはサスケへと攻撃のターゲットを変える。それをサスケは忍びの振るう爪をしっかりと見据え、カウンターで籠手の部分を蹴り上げる。

 

「なっ!?」

 

「遅せえよ」

 

 そのまま無防備な状態の忍びを蹴り飛ばしナルトに襲い掛かる片方の忍びにぶつける。

 

「はい、雷遁・地走り」

 

 纏まった忍び達に向け、悟が雷遁を行使し昏倒させる。

 

 一連の流れを終えて、地面に手をつくナルトの右手を引っ張りサスケが立たせる。

 

「よォ……ケガはねーかよビビり君」

 

 その言葉をうけナルトが青筋を浮かべ左手に力を籠める……が

 

「ケンカは後にしておけよ、ナルト。動き回るとこいつらの爪の毒がまわるぞ」

 

 そう言いながら、カカシが姿を現す。

 

「っ! カカシ先生! 変わり身で無事だったんですね!」

 

 サクラが嬉しそうに言い安心する。

 

「まあね、ちょっとこいつらの目的を知りたくて観察してたのよ。助けに入らなくてごめんね」

 

 まあ、と言葉を区切りカカシが続ける。

 

「ナイスだったサスケ、悟。サクラも悪くない動きだったぞ。ナルトは……もう少し動けると思ったんだけどな」

 

 カカシが一連の総評を述べる。そして

「タズナさん、話があります」

 

 カカシが、彼ら2人の忍びが霧隠れの中忍クラスであること。そして彼らのターゲットがタズナであることを指摘する。

 

 「こいつらの狙いを知るために、あえて手を出しませんでしたが……」

 

 依頼内容はギャングや盗賊などおおよそチャクラを戦術的に使用出来ないものからの護衛である。忍びからの襲撃の可能性など聞かされていないとカカシは言い、このままでは任務外として任務を破棄すると述べる。

 

「そうよ、この任務私たちには早いわ……やめましょ! それにナルトの怪我から毒血も抜かないと……」

 

 そのサクラの提案にうーーん、と唸って考えるカカシ。チラッとナルトの方を見て……。

 

「こりゃ、荷が重いかな」

 

 そういって撤収の合図をした瞬間。ナルトが自らの左手をクナイで貫く。派手に毒血を抜くナルトに一同が動揺する。唯一悟だけは仮面の下を苦笑いにしてその様子を眺めている。

 

 サクラの「何やってんのよ!」の声にナルトが答える。

 

「任務続行だってばよ! オレがこのクナイでオッサンを守る!!」

 

 ナルトの覚悟の宣言。それを受け、カカシは面白いと表情を変える。そして……

 

「そのままだと出血多量で死ぬぞ、未来の火影様」

 

 悟がナルトに指摘する。するとナルトは慌てふためくが悟が近づいてナルトの手の治療を始める。

 

「いやーーー! こんなんで死ねるかってばよ! 悟助けてぇ!」

 

「動くな動くな……あっごめんミスった」

 

 悟が使う掌仙術がナルトの傷口を活性化させ、傷をさらに広げる。

 

「いやぁーーーーー!! 悟何すんだぁ! 痛えよ!」

 

 おかしいなあ、と首を捻る悟は治療を続行する。その様子に心配になったサスケとサクラが横から口を挟む。

 

「悟、チャクラの調節が間違ってるんじゃないのか?」

 

「私の見立てだと、医療忍術ってもう少し傷口から離れた所から細胞を活性化させるんじゃないかしら」

 

 横からの指摘に悟が調節するもうまくいかない様子だ。

 

「あー、面倒になって来た。多分もう大丈夫だから後は適当に包帯でも巻けばいいんじゃないかな、ナルト」

 

「オイぃ! もっとオレの心配してくれってばよぉ! なんか適当だぞ!」

 

「「「自傷だからな(よ)」」」

 

「……仲間が冷たいってばよ」

 

 ナルトが涙目になって悟に包帯を巻かれている様子を眺めるカカシ。

 

「まあ、任務を続けること自体は問題なくなったかもしれないけど、タズナさん。……本当のことを教えてください」

 

 カカシの言葉を受けタズナは観念したように重い口を開く。

 

「先生さんの言う通りだ。こいつらの狙いは間違いなくわしだ。……実はわしは超恐ろしい男に命を狙われている」

 

 カカシは目を細め先を促す。

 

「……誰です?」

 

「ガトーという海運会社の大富豪だ、あんたらも名前くらいは聞いたことがあるだろう……」

 

 そしてタズナは事情を話し始める。

 

 一年ほど前からガトーに目をつけられた小国の波の国はあっという間に、ガトーによって交通・運搬を牛耳られてしまった。財力と暴力に物を言わせたガトーの支配を崩す術は、島国である波の国から橋を外にかけることであった。しかし……。

 

「だから、橋を作るオジサンが邪魔になって……怖い話ね」

 

 サクラが感想を述べる。つまりは先の忍び達もガトーの手下であったのだ。

 

「しかし、わかりませんね。ガトーが相手となれば忍びが出てくることになることも明白のはず。なぜ、それらの情報を隠して依頼をされたのですか?」

 

 カカシは疑問点を述べ、タズナは目線を下げてそれに答える。

 

「波の国は超貧しい国だ。前にも増してな……。高額なBランク以上の依頼は出せないのだ」

 

 第7班の面々は気の毒そうな顔をする。しかし悟だけ、あまり真剣に話を聞いていないような様子である。そしてタズナは空元気のように顔を明るくして

 

「まあ……依頼外としてお前らが任務をやめれば、ワシは確実に殺されるじゃろう……。だがお前らが気にすることはない!! ワシが死んでも10歳になる孫が一日中泣き、娘が木ノ葉の忍びを一生恨んで寂しく生きていくだけじゃ!」

 

 豪快に言って見せる。続けて、お前らのせいではないとワザとらしく言い放つ。カカシはその様子に折れて

 

「まっ!……仕方ないですね。国に帰る間だけでも「ちょっと待った」

 

 タズナの護衛を続けようと提案するのを悟が止める。タズナはカカシの提案に一瞬(勝った……!)と思いを走らせるが、悟は仮面の奥から冷たい目をタズナに覗かせながら声色を低くして言う。

 

「……僕らのことはどうでもいいと?」

 

「……どういうことじゃ?」

 

「先の忍びの奇襲もそうだけど、本来なら中忍相手に下忍の僕たちは敵わない。偶々優秀なサスケくんやカカシさんがいたからどうにかなった。……もし別の班だったら? 盗賊や強盗程度なら上忍が入らない隊でも任務を受けます。その時奇襲を受けて死ぬのは貴方だけではないんですよ?」

 

 悟の調子が変なことにサスケは気づいたが、その放つプレッシャーに気圧される。

 

(悟、様子が……?)

 

「だが……」

 

 タズナの言い分を押しのけ悟は言葉を繋げる。

 

「そうしたら木ノ葉は今後、波の国から依頼を受けないでしょうね? 依頼内容を偽り、自里の忍びを危険にさらしたのですから。……もしそうなってたら、貴方は自らの手で波の国の未来を閉ざしてしまってたんですよ? 貴方のかってな判断で」

 

 タズナは悟の放つ雰囲気の冷たさに息を呑む。

 

「……努々忘れないように。僕たちも()であり、繋がりのある存在であると。貴方にお孫さんや娘さんがいるようにね……」

 

 そう言って、悟は目線をタズナからそらす。その言葉を受けタズナは、顔を俯かせて少し黙り込む。そして

 

「……お前さんの言う通りかもしれん。ワシは波の国さえ助かればと思っておった。お前さん達さえ来てくれれば何となると思い、真実を隠して依頼をだしたが……。超すまんかった! だがお願いだ、金は直ぐには用意できんが、必ず用意する。だから頼む。橋の完成までどうか力を超貸してはくれんか?!」

 

 恥を捨て土下座をして、カカシたちに頼み込む。その様子にカカシ班は顔を向き合わせうなずき合う。ナルトがタズナに近づき肩を叩く。

 

「任せろ、おっちゃん! 俺たちがちゃんとおっちゃんとその橋を守って見せるってばよ!」

 

「ふん、お前が決めるなウスラトンカチ。だが、俺も別に今更里に戻る気もない」

 

「サスケ君がやるなら私もっ! 波の国の力にもなってあげたいし」

 

 三人組は任務続行の意思を見せる。

 

「……超ありがとう、お前さん達……」

 

「まあ、オレも元々任務続行するつもりだったんだけど……悟は? 里に戻るか?」

 

 カカシがそう悟に声をかけると、悟は少し反応を示さずにボーっとしていたが

 

「……俺も良いですよ。タズナさんには俺たちのことを軽んじて欲しくなかっただけなので。少しキツい言い方すみません、タズナさん」

 

 そう返事を返す。タズナは悟にもすまんかったと伝え、一同はようやく波の国へと歩みを進め始めた。 

 

 

~~~~~~

 

 波の国へ渡る小船の上。タズナの知り合いの協力の元、海上を移動しているナルト達。その中で悟だけは会話の輪には入らず黙りこくっていた。

 

(一瞬だが……意識を……? どういうつもりなんだ、もう一人の俺(・・・・・・)は……)

 

 語りかけても返事のない精神世界にいるであろうもう一人の自分に思いをはせていた。

 

 

 

 

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