目指すは忍ぶ忍者   作:pナッツ

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時間がかかりました、申し訳ないです。


36:波が運ぶは人か感情か~その2~

〈黙雷悟〉

 

 波の国のマングローブの陸地に小舟が隣接し、俺たちは地に足を着ける。

 

 航路の途中波の国を繋ぐための大橋を見かけ、ナルトが騒いでいた。確かに壮大な大橋を見たときには俺も少し感嘆の声を上げた。

 

 少し湿地帯を歩くと突然ナルトが叫び、茂みに手裏剣を投擲する。

 

「そこかァーー!!」

 

 ナルトの奇行に俺を除く全員が驚く。俺も事前に知ってなければ驚いてたと思うほどに唐突だった。

 

 そのナルトの奇行を合図に俺はチャクラ感知を行う。

 

 ……

 

 やっぱり、いるな。転生特典の原作知識を活用した先読みで刺客の存在を見つける。

 

 まだ騒いでいるナルト達の中、白いウサギを見つけたカカシさんと目が合う。

 

 その瞬間、殺気を感じた俺とカカシさんが同時に叫ぶ。

 

「「伏せろ!!」」

 

 飲み込みの早いサクラがぼけっとしているナルトを押し倒し、俺もタズナさんを伏せさせる。サスケとカカシさんは問題なく伏せ、不意打ちを避ける。……頭の上をでっかい包丁が掠れて飛んで行った、肝が冷えるなあ。

 

 頭部を掠めた刃物が木の幹に刺さるとその包丁の上に、忍びが姿を現す。……木の幹に刺さるってことは、今のは挨拶替わりか、怖。

 

 「へーこりゃあ……霧隠の抜け忍桃地再不斬くんじゃないですか」

 

 カカシさんが先頭に出ながら、挨拶をかます。ナルトの先走りを防ぐ意図もあるんだろう。

 

 「お前ら、下がってろ。こいつはさっきの2人とは桁が違う。……俺もこのままじゃあ、ちとキツいか……」

 

  そういうとカカシさんは左眼を隠す額当てに手を触れる。

 

「写輪眼のカカシと見受ける。そのジジイ、渡してもらおう」

 

「悪いがそうはいかない。卍の陣でタズナさんを守れ! ……悟は俺のサポートだ、だが前には出るなよ」

 

「っ了解です!」

 

 ナルト達がタズナさんを守るように囲むのを確認し、俺も印を結んで術を発動する準備をする。

 

「……千以上の術をコピーした男、コピー忍者のカカシ。クク、早速それを拝めるとは俺も運が良い」

 

 カカシさんが写輪眼を表に出す。サスケが少し動揺しているが事情を知らないから仕方ない。その様子に満足そうに笑う再不斬は腰を屈め、移動の姿勢を取る。

 

「さてと、お話はここまでだ。俺はそこのじじいを殺らなきゃならねェ……っとその前にカカシ! お前が先か」

 

 そういうや否や、巨大な包丁を抜きその勢いのまま再不斬は近くの池の上に移動する。そして大きくチャクラを練りこんでいるのが俺にはわかった。

 

「水遁・霧隠れの術……」

 

 術が発動し、一瞬で再不斬の姿と気配を捉えられなくなる。チャクラの混ざった霧は俺の感知方法と相性が悪いな……。

 

 静けさの後、霧に交じり再不斬による殺気が周囲を覆う。……俺も何時ぞやの夜、オビトと遭遇していなかったら耐えられないぐらいの殺気だ。現にサスケですら、冷汗を流している。そのサスケの様子にカカシさんがにこっと表情を作り語りかける。

 

「サスケ、安心しろ。お前たちは俺が死んでも守ってやる……。 俺の仲間は絶対殺させやしなーいよ!」

 

 その言葉を合図に俺は術を発動し……あれ?

 

「それはどうかな……? もう、終わりだ」

 

 再不斬の声が響き、卍の陣の中央に再不斬が現れる。俺は術の発動が上手くいかないことに焦る。再度印を結ぶが術は発動しない。一体どうなってる……!?

 

 その瞬間にカカシさんが再不斬の懐に瞬身の術で移動し切りつける。そのまま、水分身での化かし合いが始まる。術が駄目ならと八門を解放しようとするが……これもダメ。

 

 攻防の末、カカシさんが蹴り飛ばされ池に落とされる。そして

 

「水牢の術……さてと……やっかいなカカシは抑えた。カカシ、お前との決着は後だ。まずはアイツらを片付けさせてもらおうか」

 

 カカシさんを水牢で捕えた再不斬は水分身を三体けしかけてくる。俺とナルト、サスケで対応しタズナさんはサクラに任せる。

 

「クククッ……てめェーらみたいなガキがいっちょ前に額当てなんかして忍び気取りか。いいか? 忍びとは死線をくぐりぬけて来た者のこと。つまり……俺様の手配書にのる程度になって初めて、忍者と言える」

 

 ッ! 術が使えない上に八門もダメとなると分が悪すぎる。俺は水分身の首切り包丁相手に鉄棒二刀流で相手をするも、攻めきれず膠着状態になってしまう。サスケも殺気にあてられ動きが鈍い。

 

「お前らみたいなのは忍者とは言わねえェ……ただのガキだ」

 

「ぐあっ!!」

 

 ナルトが背後に回られ、蹴り飛ばされる。額当てが落ち、ナルトの顔に恐怖が浮かぶ。しかし

 

「っ痛!? …………っうおおおおおおお!」

 

 左手の痛みを思い出し、ナルトが落ちた額当てを踏みつける再不斬の水分身へと駆ける。仕方ないっ!

 

「どっせい!」

 

 掛け声で首切り包丁を押し返し、鉄棒を一本ナルトの向かう先の再不斬へと投げつける。

 

「ちぃ……」

 

 鉄棒が弾かれるが、その隙にナルトが殴り抜け、分身を只の水へと返す。それに気を取られた俺の相手の散漫なひと振りを柔拳で受け流しながら懐に入り、掌底を食らわせる。

 

 そのまま空いた片方の腕で鉄棒をサスケのいる方向へ投げる。一連の流れでサスケも相手の隙を作れていたので俺の鉄棒が相手にヒットして、全ての水分身を葬る。

 

「おいマユ無し、俺たちのことをその手配書とやらにのせとけ! そして一番でかくこう書いとけ! いずれ木ノ葉隠れの火影になる男……木ノ葉流忍者! うずまきナルトってな!!」

 

 取り返した額当てを付けなおしナルトが見得を切る。少しサクラが見惚れている様だ。どちらかと言えば見直したといった方がいいか。

 

「悟、サスケェ! 作戦があるってばよ、ちょっち耳貸せ」

 

 仕方ない……精神的に成長したナルトとサスケと共に、池上の再不斬に警戒しながら作戦を練る。

 

「あのナルトが作戦か、仕方ねえ」

 

「あっ俺今術使えないみたい」

 

 俺の申告にマジかと目を合わせるナルトとサスケ。すまんね……。

 

「なら、こういう感じに……」

 

 ナルトの提案に耳を貸していると、もう一体の水分身が姿を現す。

 

「三人とも! 次が来たわ!」

 

 サクラの忠告を受け、体制を整える俺たち。

 

「さーて暴れるぜェ……」

 

 鼻息荒いナルトと、冷静さを取り戻したサスケ。頼もしいな。ただ、そんな俺たちの気持ちとは裏腹にカカシさんは俺たちに逃げるように叫ぶ。

 

「お前ら何やっている! 逃げろ、俺たちの任務はタズナさんを守ることだ!!」

 

 その言葉を受けタズナさんが答える。

 

「先生さんよ……。ここで逃げ切ってもあんたが居なきゃ、どの道皆殺しだ……。なら、ワシは小僧たちに懸ける! 超すまんかったな、お前らこんなことに巻き込んじちまって。ワシは今更超命が惜しいとはいわん。だから……思う存分に闘ってくれ」

 

「フン……という訳だ」

 

「覚悟はいいなァ……サスケ、悟!」

 

「俺は出来てる……多分」

 

 サスケとナルト、俺のセリフに水分身の再不斬が不敵に笑う。

 

「クック……お前らと俺の違いを教えてやるよ」

 

 そうして再不斬は自身の過去を話す。霧隠の里の卒業試験、生徒同士での殺し合い。100人を超える受験者全員を殺し、手を血に染めた鬼人の逸話。……再不斬は楽しかったと歪んだ笑顔を見せるが……果たして本当にそうなのか? 『助け合い、夢を語り合い競い合った仲間』との殺し合いと説明する再不斬に違和感を覚える。

 

 その話に気を取られ、水分身が目の前に現れるが両手に再度持ち直した鉄棒でカウンターを仕掛ける。その隙にナルトが多重影分身を使い周囲を囲む。

 

「ほー影分身か、それもかなりの数だな……」

 

 大勢のナルトと共に俺も切りこむが、首切り包丁を振るう水分身に近づくことができない。それでも俺は接近を試み、首切り包丁を鉄棒で受け止めるが。

 

「っ! お……もい」

 

「一撃が軽いなあ」

 

 八門を解放できない俺はあっさりと再不斬に力負けをする。そのまま鉄棒の一本を叩っ切られる。半分になってしまった鉄棒を投げつけ、空いた手で煙球を一つ使う。

 

「俺相手に煙球とは考えが足りないな」

 

 そういうと水分身の気配が消えるが問題ない。この時点で完全にサスケがノーマークになった!

 

「風魔手裏剣・影風車!!」

 

 サスケが投擲した巨大な手裏剣が水牢を維持する池上の再不斬本体を狙う。

 

「本体狙いか……甘い!」

 

 手裏剣の中央の持ち手を狙いすましてキャッチした再不斬だが、驚愕し小さく跳躍する。影手裏剣の術を見抜いて、後続の風魔手裏剣を躱したようだが。

 

 躱された風魔手裏剣が再不斬の後方でボフンと煙を上げ、ナルトへと姿を変える。そのナルトは体勢が崩れながらもクナイを投擲し、跳躍して足が池につく前の再不斬を捉える。

 

 そして……

 

「カカシ先生ェ!」

 

 サクラが声を上げる。

 

 水牢の術が解け、手に持った風魔手裏剣でナルトを狙う再不斬の攻撃を受け止めるカカシさん。

 

「ナルト、作戦見事だ。成長したな。……さて生徒たちが気張ってくれたんだ。俺も今度こそ本気でいかせて貰う!!」

 

 ……ここからは一方的だった。カカシさんが完全に再不斬の動きを見切り、相手が使う術を相手より早く使う早業で動揺を誘っていく。段々と言動まで先読みされ始めた再不斬が水遁・大瀑布の術を使おうとするが……完全に先出ししたカカシさんの同術で吹き飛ばされ木の幹に叩きつけられる。

 

 そのまま複数のクナイを体に当てられ、再不斬は完全に隙を晒し……

 

「……ナゼだ!? お前には未来が見えるのか……!?」

 

「ああ、お前は死ぬ」

 

 カカシさんが止めをさそうとするその瞬間。千本が再不斬の首を穿つ。……来たか。

 

「フフっ……本当だ死んじゃった♡」

 

 霧隠の追い忍の仮面を着けた少年(・・)が姿を現す。

 

 地面に倒れ伏した再不斬の首に手を当て生死を確認するカカシさん。

 

 追い忍と会話をするカカシ班を尻目に俺はこっそりと拾ったクナイを持つ手に力を籠める。

 

 

 …………ここで、ここで再不斬に止めを……本当の意味で息の根を止めればもうこの任務での不安要素はなくなる。そうすればあの『白』も怒りで突っ込んでくるだろう。そうなれば数で有利な俺たちが勝つ……。

 

 

 

 

 

『へえ、迷っているんだね』

 

 気がつくと自分の精神世界に来ていた。目の前には俺がいる(・・・・)

 

「……さっきは勝手に人の体を動かして今度は何のようだ」

 

 俺は警戒しながら問いかける。

 

『別にさっきのはタズナさんの漫画での(・・・・)あの「勝った」って思う場面が僕は気に食わないから顔出しさせてもらっただけだよ。一応体を動かせるかのテストもかねてだけど。あと言うなら僕たち(・・・・)の体だ。自分のモノだけみたいに言わないで欲しいな』

 

「……なら今度は何の用だ!」

 

『そう怒らないでよ。君は未来を知っている。僕も君を通して未来の出来事を知れる。だから、ここで再不斬と白を殺せば良いって思ってることもわかるんだ。そうすればナルト君達に対する危機……リスクを避けることが出来る。でも……君……』

 

 一拍おいて目の前の俺は口を開く。

 

『まだ人を殺す覚悟がないんでしょ?』

 

 っ!

 

『君が元居た世界じゃ、人を殺すこと自体珍しいことだよね? まあ、別の国ならその限りじゃないみたいだけど。君は敵の命を取る覚悟がない。ミズキの事件の時でも、最高で重症で済ませてたからね。だから……』

 

 こいつは一体何を……。

 

『僕が変わりに殺してあげるよ。僕の方が慣れてるから(・・・・・・)

 

 真剣な目をして目の前の俺がそう提案を出してくる。

 

「何言って……!?」

 

 慣れてる? こいつは、俺じゃないのか? 所謂陰の……真実の滝で……現れるような人格の一部なんじゃ……。

 

『そうであって、そうではないよ。陰と陽、どちらかと言えば僕は陰だろうけど僕は僕だ。君であって君じゃない。だけど僕は君で……ややこしいね』

 

「お前は一体……」

 

『そろそろ僕が表に出られる時間が無くなりそうだ。大丈夫、君は僕だ。慣れるまでは変わりに僕がやってあげるよ……』

 

 頭が追い付かない。でも……でも……。

 

 目の前の俺は、俺の胸に手を触れようとする。このまま任せれば、全てうまく……。

 

 

 

 パシンッ

 

 

 俺は腕を弾く。

 

 

『どういうつもりだい?』

 

「再不斬たちは……殺さない、殺させない」

 

『そう? 君の言うより良い未来のために? だけど忍びである以上殺さなければ殺される運命……』

 

「確かにそうだ! だけど俺が、俺が迷っているのは再不斬たちにも……心がある。そんな相手を」

 

『そういうのを覚悟がないって僕は言っているんだ。どんな相手にも繋がりがある。殺すことはそれを断つこと。この先相手にするどんな敵にも事情はあるよ? 君はいちいち気にして、同情して? それでどうするの?』

 

 苛立ちを見せるもう一人の俺。その問いに俺は答えることが出来ない。するともう1人の俺はため息をつく。

 

『時間切れだよ……。君も気付いていると思うけど、この世界は完全には君の知る原作とやらと同じじゃない。……このままだと大切なモノを亡くすことになる。次の機会までに覚悟を決めることだね。あくまでヤルのは僕だから、君が苦しむ必要はないよ。僕にまかせる覚悟さえしてくれればいいんだ』

 

 そう言うともう1人の俺は姿を消し、意識が現実へと戻る。

 

 気がつけば白も再不斬と共に姿を消したあとだった。

 

「大丈夫だったか悟? 不甲斐ない先生ですまなかった……ってぼーとしてたみたいだし、術も使えてなかったけどホント、大丈夫?」

 

 心配そうにするカカシさんに声を掛けられた俺は生返事をすることしかできなかった。

 

「大丈夫……です。ちょっと覚悟が足りなかったみたいで」

 

 

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