<黙雷悟>
再不斬を撃退し、追い忍である白と接触した後、俺たちは戦いの疲れを癒すためにタズナさんの家に招かれた。写輪眼を酷使しチャクラを消耗しきったカカシさんが寝ている所、素顔を確認しようとしてカカシさんのマスクを外そうとしているナルトとサクラ。案の定、再不斬が生きている可能性に気がついたカカシさんが飛び起き、ナルトとサクラは驚き後ろに倒れこむ。
再不斬が生きている一連の仮説を話したカカシさんは少し考えこみ口を開く。
「まあ……再不斬が生きているのは仮説だが、クサいとあたりをつけたのなら出遅れる前に準備をしておく……それも忍びの鉄則!」
カカシさんはそう言い、俺たち下忍組に修行を課す。その話の途中タズナさんの孫の『イナリ』がガトーに歯向かえば殺されると割り込んできた。案の定ナルトと揉めて、イナリが自室に戻ったところをナルトが追いかけていった。
「たくッ! ナルトったらあんな小さな子に怒鳴っちゃって! 器が小さいのよ」
辛辣なサクラの言葉をしり目に、サスケとカカシさんは少し黙りこくっている。
(家族を亡くした人間同士、何か共感するところでもあるのかな……俺には……わからないけど)
イナリはまだ、父が亡くなったことを俺たちに話してはいないがあの諦めの感情を吐く表情。サスケとカカシさんには思うところがあるのだろう。
「……ウスラトンカチの野郎が依頼人の家族に手を出したら事だ。少し様子を見てくる」
そういってサスケもナルトの後を追っていった。二人はイナリの様子を見て何を思うのか、少し興味があるが俺まで着いていくのは野暮だろう。
二人が戻ってくるまでの間、動けないカカシさんの外出の準備をサクラと手伝った。
「カカシさん。二人を待ってる間、さっきの再不斬との戦いで負った怪我に掌仙術かけましょうか?」
「うーんと……ハハハッ遠慮しておこうかな~」
……信頼がない。先の医療忍術・掌仙術でナルトの左手の治療が上手くできていなかったのを見ていたししょうがないか。そう思い俺は影分身3体分をチャクラを均等になるように配分して出現させる。
「どうしたのよ、悟?」
その様子にサクラが疑問符を浮かべる。
「いや、さっきの戦いで術が使えないとかいう不甲斐なさを晒したし、俺は俺で個別で修行しておこうかなって」
そういって3体の影分身に合図を送り、散開させる。
「分身に修行させるの? 変なの」
サクラの指摘にそういうやり方もあるんだよ、と軽く答える。その様子を見ていたカカシさんは小声で「なるほど……」と呟いていた。
~~~~~~
「では、これから修行を始める!」
第7班と森の中に移動し、カカシさんがそう宣言する。俺本体はこちら側の班での修行に着いてきた。分身たちはそれぞれ今の俺に技術的に出来ないことを練習させに送った。
チャクラの解説でナルトが躓き、サクラが丁寧にアカデミーで習ったことの復習を教えている。
体の細胞一つ一つから取り出す身体エネルギー。多くの修行や過酷な経験から積み上げられる精神エネルギー。この二つを練りチャクラを絞り出して術を行使する。……先の再不斬との戦闘。俺が術を行使できなかったのは精神エネルギーが不安定だったからだと推察する。
何時かは来ると思っていた、『この』問題。まさか漫画での波の国編で俺自身が直面するとは……。同行すること自体、実際驚いたものだったけど。
目の前では話が進み、カカシさんが足の裏にチャクラを集め木に吸い付かせることで木の幹を歩行している。チャクラのコントロールが上手くなれば、低燃費で術が使える。正しく言えば
少しのチャクラでも将来のサクラやまだ会ってないけど綱手のようにコントロールを極めることで、金剛力を発揮できるようになる。筋肉を鍛えるだけでなく、チャクラを駆使した方が最終的な身体能力は上になる。
と言う訳で、俺たちは木登りの行を行うのだが……。
「いや~君たち優秀だねぇ。先生として嬉しく思っちゃう♪」
元々チャクラコントロールの優秀なサクラ。俺が先んじて木登りの行を教えていたサスケ。そして当然その俺も。難なく木のてっぺんまで足だけで登りきってしまう。ただ一人を除いて。
「いってえぇぇええ!」
チャクラコントロールが不得意なナルトのみ、足を滑らせ後頭部を地面にぶつける。俺たちを見上げるナルトはかなり悔しそうだ。
「案外修行ってのも簡単なのね」
そう楽しそうに木の枝に座り呟くサクラの様子と、サスケの物足りなさそうな態度をみてカカシさんが提案する。
「そうだなあ。サクラ、サスケ。お前らは俺と別メニューだ。悟、ナルトの修行を見てやってくれ」
俺が影分身を出して修行をしているのも加味してのことだろう。
「了解しました」
俺は返事を返し、ナルトのそばへと着地する。
「さて、頑張ろうかナルト。根性の見せ所だな」
手を引きナルトを起き上がらせる。カカシさんたちは建築中の大橋に向かい残された俺とナルトで木登りの行を再開した。
「ぜってェー木登り出来るようになって、すぐ3人に追いついてやるってばよ!」
ナルトは声高く宣言した。その後ナルトの手を持ち、木の上からナルトをぶら下げひたすら木の幹に足の裏のチャクラを吸着させる修行を繰り返した。あんよが上手、あんよが上手。
俺の方がチャクラコントロールが優れていて燃費が良いはずだが、修行に着き合うだけでナルトよりも先にバテてしまった。俺が影分身を出しているにしてもここまで無駄にチャクラを使っても平気なスタミナ、チャクラお化けとはまさにこのことか……。
~~~~~~
<はたけカカシ>
さて、あっちは悟に任せて大丈夫だろう。再不斬との戦闘で悟は調子が悪かったようだけど、殺気に中てられたというよりは……戦い自体への躊躇か。彼は甘さが目立つとマリエも言っていたしな。精神的なところは他人がアドバイスしても最終的には自分でどうにかするしかない。今はあいつを信じて待つか。
「せんせー、建築途中の橋で修行なんてできるんですかぁ?」
サクラの言葉に思考を切り替える。
「修行ってのはいついかなる時でもできるもんだ。日々これ精進ってね。お前たち二人は基本的なチャクラコントロールが出来ているからその派生をやってもらおう」
作業中のタズナさんに頼み長いロープを借り、サクラとサスケの胴に結ぶ。一応警備を兼ねての修行だとはかるく伝えた。
「? 何をするつもりだ」
訝しむサスケにニコニコして俺は答える。こいつらは優秀だ。そしてナルトも直ぐに追いついてくるだろう。
「お前ら橋から飛び降りろ!」
二人に結んだのロープの先を手すりに結び、親指でクイっと橋の外側を指さす。
「ちょ!? 先生っ急に何言って……」
サクラが文句を言ってくる。まあ、まだ説明していないから、当然……って!?
サスケが俺の話を最後まで聞かずにそのまま橋の下の海面に飛び込む。
「サスケ君!!!???」
バシャンっと音をたて、結構荒れている海面に消えるサスケ。慌ててサクラがサスケを助けようと飛び込みの体勢になるが
「サスケと同じ場所に飛びこむとあぶないでしょーが」
俺がそういって、サクラを横に突き落とす。
「きゃーーーーーーっ!先生のバカーーー」
サクラが俺の悪口を言いながら、ちゃんとサスケとずれた位置に落ちる。サクラは、三代目や俺たち上忍に対する尊敬というか敬う気持ちはやっぱりなさげね……若いなあ。
「っぷはあ! サスケ君どこー?」
海面から顔を出したサクラがサスケを探す。サスケは……
「つまりはこういうことだろ、カカシ……」
海面に足を震わせながら立っていた。不安定で波に呑まれ直ぐに海に沈むが再度足を上げて立とうと試みる。さすがはうちは。それでなくともサスケの向上心は目を見張るものがある。
「そうだ。さっきの木登りの行の発展。水面歩行の行だ。サクラもサスケに続いてやってみろ。コツは木登りの時と違いチャクラを常に適量放出することだ」
サクラも修行の内容に納得が良き、水面歩行を試みる。二人ともまだまだ安定はしていないが、流石と言うか。兆しは十分に見えている様だ。
さてと……俺は二人がバテたらロープで引き上げるまでの間暇だし。イチャパラでも読んでようかな。
「……むむ。むふふ♡」
「修行とか言っていきなり橋から飛び降りたり、変な本を読んだり。忍者ってのはこう、超変わりもんしかおらんのか……」
~~~~~~
時間が経ち、昼頃。サクラはスタミナが尽きたので俺の横で倒れ伏している。流石に厳しいだろうけど、俺の期待に応えてくれるこいつらの頑張りは見ていて楽しい。サスケはまだまだ海面に立つのもやっとだが、始めた当初よりは安定してきている。
「随分とバテてまあ……そういえば嬢ちゃん、あの金髪小僧と仮面の小僧はどうした?」
タズナさんがサクラに話しかける。サクラは疲れた様子ながらもその重い体を起き上がらせ、返事を返す。
「……修行中。ナルトに悟が教えてるのよ。私とサスケ君は優秀だから、警備も兼ねてカカシ先生に修行を見てもらってるの!」
エッヘンと気分よく答えるサクラ。タズナさんが小声で「……ホントか?」と心配そうに呟いた。まあ……タズナさんの気持ちもわかる。
「まあ、よっぽど気にしなくても大丈夫ですよタズナさん。再不斬たちもそう、直ぐには来ません」
俺の言葉にそうか、と答え返事をしてタズナさんが作業に戻ろうとしたとき。ギイチという男とタズナさんがもめ始めた。
俺たちの任務は護衛だ。橋の建築云々に関しては口を挟まない。しばらくの後、タズナさんが昼休憩を作業員に告げる。
「サクラ、俺たちはタズナさんの家に厄介になっているしタズナさんの買い出しに付き添ってくれ。これも警備の一環だ」
「……はぁーい。りょーかいしました」
少しめんどくさそうにサクラはタズナさんの後を追っていった。さて、俺はサスケがバテるまで……ん?
遠くの方から気配を感じた俺は松葉杖をつき立ち上がり、橋の上から海面を見下ろす。あれは……
「悟の奴か?」
雷を纏った悟が海面を高速で駆けているのが視界に入る。音を立て海を裂くように走る悟は橋の下を通り、また遠くの方へと姿を消した。シュールだな……ありゃあ影分身にチャクラコントロールをやらせているのか。チャクラモードと水面歩行の合わせ技。下忍の域はとっくに出てるねェ……。
当然その様子を見ていたサスケはやる気を刺激され、立つのもやっとなのにも関わらず歩き出そうとして海面に沈む。
「サスケェ~。そう焦らずとも……」
「五月蠅い。あんたはやり方だけ教えてくれれば良い! あいつに追いつく……いや追い抜かすのにチンタラしてられっかよ……!」
おお、熱い熱い。いいねえ、ライバルって奴は……帰ったらガイの相手でもしてやるかなあ。
こうしてサスケがバテて海面から出てこれなくなり溺れかけるまで俺たちは建築途中の橋にとどまっていた。
~~~~~~
<春野サクラ>
あ~~~……。水面歩行の行、穏やかな水面なら出来そうな感じだけど、波のある海面だと難しすぎよしゃんなろ~。カカシ先生、木登りがあっさりクリアされて意地になってんじゃないの?
まあ、ナルトの奴は多分すぐに諦めて拗ねてタズナさんの家に戻ってるだろうし、さっさとタズナさんと買い出し終わらせたらさっさとお昼食べたいわ……。もうバテバテよ……。
私がタズナさんと町の方面まで来ると、町の異様な雰囲気に気がつく。私よりも小さな子供たちが道にうずくまって、泣いているし……。大人の人たちも何だか皆目に生気を感じない。
ドロボーと叫ぶ人や、それを気にも留めない通行人たち。木ノ葉の里とは全然違う雰囲気にこの波の国の現状が身に染みてわかってしまう。
「帰りに昼飯を材料を頼まれとったからな……」
タズナさんがそう言って八百屋に入っていく。私も着いて入るけど、八百屋なのに殆ど食品は置いてなかった。それでもタズナさんが材料を買うため食品を見ていると、ふと私のお尻付近に気配を感じる……!
「キャー! チカーン!!」
ドゴぉっ……
~~~~~~
「いやーさっきは超びっくりしたぞい」
さっきのは痴漢じゃなくて私のポーチを狙った泥棒の気配だった……。びっくりして蹴り倒しちゃったけど……
「いったいこの町どーなってんの?」
そうやって私が訝しんでいると、小ちゃい子供が私の服の裾を引っ張る。さっきのこともあって一瞬足に力をこめちゃったけど、待ち合わせの飴をあげてごまかしておいた。
その子は飴を受け取ると笑顔で走っていき、他の子供達が集まっている集団で飴を分け始める。その集まりの中には若い男性の人がいて、草笛を子供達と吹いている。……その男性だけ吹けてないから子供達にやり方を教わっているようね。草笛を吹いていた男性が子どもたちにお駄賃を渡しているのが目に映る。理由をつけてお駄賃を渡したいだけの人のようね、優しい人だ。
「ああいう、明るく振る舞える兄ちゃんみたいな奴は大抵他の国の人間だ。……ここの大人たちはみんなふ抜けになっちまった。だからこそ、あの橋を完成させ勇気を示さないかん。勇気の象徴として、この国の人々に逃げない精神を取り戻させるために……橋さえ……」
タズナさん……。私はとにかく目的とかなくて、なんとなくで忍者になったけど……サスケ君や悟、あのナルトにだって明確にやりたいことが、なりたい自分があるのよね。私もイノと……対等でいたい……。それにこの国の状態を知ってだまってることもしたくない……!
「タズナさん!」
「どうした嬢ちゃん?」
「絶対、タズナさんや橋の職人の皆さんは私たちが守って見せます!」
「ふ……超ありがてぇえなあ。よっし小僧たちも腹を空かせてるだろうし、さっさと戻るか」
「はい!」
誰かのために、なんてちょっとクサいかもしれないけど……頑張らなくちゃ……!
~~~~~~
タズナさんの家に着くと既にいい匂いが私の鼻に届く。修行で疲れてるし、お腹が刺激されるわ~、ダイエットとか言ってられないわね……。
多分タズナさんの娘のツナミさんが料理の準備を進めていると思って仕事の汚れを落とすために離れるタズナさんから昼食用の食材を受け取って台所まで足を運ぶ。
「ツナミさん、昼食の食材を……って悟? あんたなんで台所に?」
「ああ……サクラか……。いやあ、修行ついでに魚を何匹かひっ捕らえてきたから、掌仙術で鮮度を保ちつつ昼食の準備を手伝わせてもらってるんだ」
「へえ~、料理できるんだあ、意外ね」
「まあ、人並みにね」
そう思ってちらっと様子を伺うと十数匹の魚を捌いたり、フライにしたりしているようでつい私のお腹が鳴ってしまう。
「っ!」
「ははは、ちょっとまってて。 受け取った食材をみそ汁に入れて、他に炒めておかずが出来たらすぐに食べれるから」
疲れてるのか悟は少し無理した感じで笑って作業を再開した。……恥ずかしいわね、大人しく食器の準備でもして待ってよっと。
~~~~~~
その後バテバテになったナルトと、びしょ濡れで松葉つえを突くカカシ先生の背中に乗ったサスケ君が戻ってきて昼食を皆で食べ始める。 相変わらず悟は仮面を着けたまま食事をしてるし、カカシ先生も気がついたらご飯を食べ終えて手を合わせてるし……。顔隠す人って変なのしかいないのかしら。
まあ味はとてもおいしかった。ツナミさんも普段は自分一人で料理してるから、悟と一緒に作れて楽しいとも言ってたし。私は悟のことまだよく知らないけど、悪い奴ではないってことはなんとなくわかるわ。でもタズナさんに急に文句を言ったりもしてたし、よくわからないのよねぇ。
途中サスケ君とナルトがご飯を一気に口の中にかきこんで、おかわりをしようとしたときに嗚咽をして吐きそうになったりしたけど、悟が二人の口を塞いで無理やり飲み込ませてたりもしたわね。
「料理を粗末にするなんて許さんぞぉぉぉ……」
て言ってたわ。うちのお母さんみたいなこというなって思った……。涙目になりながらも二人とも頑張って飲み込んでたのは印象深かったわ。
食事も終えて悟が食器を纏めて洗い場に持って行って、食後にお茶で皆が一息ついているときに私がふと気がついたことを口にする。
「あの~なんで破れた写真なんか飾ってるんですか?」
その後のことは……正直言って私も安易に聞いたのは迂闊だったと反省したわ。
タズナさんが破れた部分に映っていたイナリ君の義理の父親、『カイザ』さんについて話してくれた。勇気があって、色々な人と助け合っていたって……イナリ君も相当慕っていたって。でもそんな人がガトーのせいで犠牲になって……。それでこの国の人々はガトーに屈するようになった。
ガトーに公開処刑されたカイザさんは、国を、皆を、その勇気で繋いでいた両腕を見せしめで切り落とされたって……。だからイナリ君は、英雄だったお父さんが殺されたショックで、あんなに諦めたようなふうに……。ふと気がつくと悟も戻ってきて柱に背を預けて腕組みをして話を聞いていた。仮面の小さいのぞき穴から見える緑の目が、何だか葛藤しているようにも……見えた気がする……かも?
するとナルトがいきなり席から立ち上がり外に出ようとしてこける。修行で疲れてて足もおぼつかないのに。
私は少しびっくりして
「何やってんのナルト……」
って言う。
カカシ先生はナルトの意図を汲んで
「修行ならもうやめとけ。チャクラの練りすぎでこれ以上動くと死ぬぞ」
って忠告する。けど
「っ証明してやる……イナリに……この俺が……この世に
そういってナルトは出ていった。……ちょっとクサい……けどカッコイイわね。悟も息を吐くとナルトに着いていったわ。サスケ君もカカシ先生を無理やり立たせて橋まで同行させようとする。なら……私も
「私もまだまだ頑張らなくちゃ! 先生早く橋まで行きましょうよ、修行つけてください!」
そういってカカシ先生の手を引っ張る。……頑張らなくちゃ!
困ったように笑うカカシ先生はそれでも、「無茶するなよ?」と言って修行につき合ってくれた。
次回キャラ設定でかなりの原作改変があります。内容が内容だけに先に謝っておきます、すみません……。