目指すは忍ぶ忍者   作:pナッツ

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39:己の道

<黙雷悟>

 

 0と1の差は大きい。それは誰もが知る真理だと僕は思う。こんな僕でも1を得たことで出来ることは多くなり、役に立つことが出来るようになった。……随分と時間が経っていたけれど。

 

 僕の場合はそう、いつも1が欲しい時には全ては手遅れな状態だった。何度も何度も届かぬその1。()はそんな1を早くも得ようとしている。

 

 ……煽った手前、彼には心労をかけていることは何となく理解できる。心の内を完全に覗くことは出来なくても、同じ精神世界を共有する者同士だ。

 

 だからといって僕は手段を選ばない。例えどんな手段を使おうとも、「運命をネジ曲げる」 それが僕の忍道でありここにいる意味、やるべきことであると、そう思っている。

 

 

 あとどれだけ、僕はこの世界にいられるのだろうか。

 

~~~~~~

<黙雷悟>

 

 

 運命というのは決まっている。なんて言葉はよく言われていて、多くの人が何となくで理解していることだ。基本的に未来なんてものは誰にもわからないからしょうがない。……心配性な俺は運命という言葉を前世では妄信していたかもしれない。「そういう運命だったから仕方ない」っと。

 

 ならもしも、未来を知っている人間が事象を変えたら? そのことも運命(・・)の範疇になるのか?

 

 ……俺はそうは思わない。つまり今世の俺からしたら運命というものは歩いてきた「道」を示す言葉に過ぎないのだ。

 

 それに俺が知っている運命という奴はあまりに不確かなようで。男が女だったり、悪い奴が多かったりで混乱させられる困ったものだ。

 

 そんな決まっていたはずの運命をより良いものにしたいと、するべきだと俺は使命感を持っていた。他人よりも優れた能力を授かり、恵まれた環境で、親同然の人に見守られて。

 

 そのことが悪いとは思わない。でもどこかで俺はやらされている(・・・・・・・)という感覚があったのだろう。それこそそういう「運命」なんだとその感覚に名前をつけて。

 

 だからこそ白の言うことは俺の柔い使命感を打ち砕いた。再不斬のためを思い、ひたすら道具であろうとする。強制されたわけでもない。いや強制なんてされていないからこそ彼……じゃないな。彼女は強いんだ。

 

 したいことをする。物事を良くするために俺は「結果」だけを追い求めていたのかもしれない。未来を知る俺がやるべきことだと。だからこそ「殺人」という障害を前に怯んでしまった。自分というものが希薄だったからか、「過程」を疎かにしていたからだろう。

 

 

 ……もう俺の答えは、出た。           

 

 

 

 そうだ、俺の……俺の忍道は……。

 

 

 

~~~~~~

<三人称>

 

「クククッ、カカシィ! もっと俺を楽しませてくれよォ! 借りは楽しく返したいんでなあ。 心配しなくてもあのスカしたガキと金髪小僧は白がすぐにでも殺す。お前はその術が使えない(・・・・・・・)ガキと一緒に俺が殺してやる。せいぜいあの世で己の力のなさと無力なガキどもを恨むんだな」

 

 再不斬は自身の優勢にひどく機嫌を良くしている。手ごまの白も優位なのも一因なのだろう。タズナとサクラと悟、カカシには守るものが多すぎた。それがカカシに手傷を負わせる要因となっている。

 

「助けたいと思う感情がお前の頭に血を昇らせたようだなァ」

 

 再不斬の指摘にカカシは無言で睨みつけることしかできない。霧隠の術で再不斬の動きを正確にとらえることが出来ないでいるからだ。

 

 大橋を覆う霧の中、カカシ班と再不斬たちの戦いはカカシ班の劣勢で事が進んでいた。その状況にカカシは心の中で弱音を吐く。

 

(クソッ……思っていたより再不斬の動きが良い。少し前まで仮死状態だったとは到底思えないな……。悟もまだ術が使えない状態で援護は期待できない)

 

 黙雷悟は開戦時に、前回と同じように術を行使しようとしたが何も起きず、再不斬の水分身は成長したサスケが一掃していた。

 

 しかしそんな劣勢であろうとそれでもカカシは次の手を出そうとする。コピーではない己自身の術を。

 

 だがその瞬間、辺り一帯を禍々しいチャクラが覆う。それを再不斬は不審に思い、カカシはナルトの九尾の封印が解けかけていることを危惧する。

 

 タズナの前でサクラと並び立ち鉄棒を一つ構えた悟は警戒度を高める。

 

(そろそろか……)

 

 悟はチャクラを練る。静かに、誰にも悟られないように。

 

 一方でカカシの血の匂いを頼りに「土遁・追牙の術」が再不斬を拘束する。

 

「ガトーのような害虫にお前が与したのも、全ては霧隠への報復のためか……。自里へのクーデターの件といいお前は危険すぎる。お前の野望は多くの人を犠牲にする。そういうのは忍びのすることじゃあないんだよ」

 

「知るかそんなこと、俺は俺の理想のために闘ってきた。そしてそれは! これからも変わらん!!!」

 

 再不斬の叫びにカカシは冷徹に言い放つ。

 

「お前の未来は死だ……!」

 

 カカシは手に纏わせた雷のチャクラを昂らせる。そして

 

「雷切!!」

 

 再不斬に止めの一撃を放とうとする。しかしその瞬間、カカシの写輪眼が、再不斬の後方に人影を見せる。再不斬が弱り、霧が薄くなったことも要因だろうか。その人影はナルト達と変わらない歳の見た目で目の下に特徴的な紫の忍び化粧をしていた。

 

 その姿を視認したカカシは大きく動揺する。その姿はまさしく「のはらリン」であったからだ。かつてカカシがその手で命を終わらせた仲間の姿が確かにカカシの視界に映った。しかしそれでもカカシは動きを止めず、再不斬へと突っ込む。

 

「……笛の音?」

 

 一瞬少し離れた位置でタズナを護衛するサクラがそう呟いた瞬間。

 

 

 

 

 

 

 

 

 カカシの雷切が白を貫いた。再不斬との間に割って入った白は、雷切を喰らいながらもカカシの腕を掴み、動きを拘束する。

 

「ゴフッ……ざ、再不斬……さん……」

 

 血を吐きながらも、白は再不斬を守れたことを安堵する。

 

「俺様の未来が死だと……はずれだなカカシ。クク……見事だ……白」

 

 カカシは手に伝わる感覚を認知する。

 

(! もう……この子は死んでいる……)

 

 白がカカシの口寄せの巻物を千本で貫いていたおかげで、再不斬を拘束する忍犬による土遁・追牙の術が解かれる。そして

 

「まったく俺はよくよくいい拾い物をしたもんだ。最後の最後でこんな好機を与えてくれるとは!!」

 

(この子ごと俺を斬るつもりか!!)

 

 再不斬の大振りな一太刀がカカシを襲う。しかしカカシは白を抱え後方に飛びのくことが出来たことでそれを回避をする。

 

「クク……白が死んで動けたか」

 

 その様子を見ていたナルトの怒りが周囲を覆いそうになるが

 

「ナルト……お前はそこで見てるんだ……。こいつは俺の戦いだ!」

 

 カカシは白の目を閉じ、ナルトを諫める。そして再び再不斬と接近戦を開始する。すでに霧は晴れていた。

 

 そしてナルトに気がついたサクラがナルトに声をかける。

 

「ナルト! 無事だったのね! あれ……サスケ君は?」

 

「っ! ……」

 

 ナルトの反応にサクラは不安を煽られる。

 

「嬢ちゃん、ワシも行こう。そうすれば先生の言いつけを破ったことにはならんじゃろ」

 

「……うん」

 

 サクラはタズナと共に離れた位置にいるサスケの元へと向かう。サスケを失ったと思う悔しさと無力さに唇をかみしめるナルトはふと気がつく。

 

「あれ……悟はどこ行ってんだ……?」

 

 

 

 

 

 

 

 

~~~~~~~

<黙雷悟>

 

 

 カカシさんと再不斬の戦いは一方的だった。

 

「どうしてだ……なぜ……ついていけない……クソォ!!」

 

「今のお前では俺には勝てないよ……お前は自分の変化に気づいていない。これでさよならだ鬼人よ!」

 

 カカシさんの狙いすましたクナイによる一撃を再不斬は辛うじて反撃をしてそらすが腕を負傷し、両腕が使い物にならなくなる。

 

 そしてその瞬間追い詰められた再不斬を笑う存在が姿を現す。……霧が晴れた時点で俺にはチャクラ感知で奴ら(・・・)の存在は筒抜けだったが、随分と多いな。それに一部は忍びだろうかチャクラが他のごろつき共よりも大きい。

 

「おーおーハデにやられてェ……がっかりだよ、再不斬」

 

 

 此度の黒幕、ガトーがふてぶしく姿を現す。大勢の部下を従えているためか、一切の緊張も感じられない立ち姿は憎らしい。

 

 その姿を確認した再不斬は傷に苦しみながらも、疑問を口にする。

 

「ガトー……どうしてお前がここに……それに何だその部下共は……」

 

 その疑問を嘲笑うかのようにガトーが答える。

 

 初めから再不斬もろとも、橋に関わる関係者を皆殺しにつもりであったこと。抜け忍を裏切ろうが世間体に傷はつかない。そして金もかからないと。

 

「誤算といえばそうだな、再不斬。お前がただのかわいい小鬼ちゃんだったことだ。霧隠の鬼人が聞いてあきれる」

 

 木ノ葉の忍びが未だに健在なのを言いたいのだろうが……カカシさんをここまで追いつめているのだ。ガトーはどうやら商才はあるようだが、人を見る目はないようだな。

 

 一連の出来事を理解した再不斬は

 

「カカシ……すまないな、戦いはここまでだ」

 

 カカシ班との停戦を呼びかけ

 

「ああ……」

 

 カカシさんもそれを承諾する。既に再不斬と敵対する理由はないからな。

 

「そういえばこのガキ、こいつには借りがあったな。私の腕を折ってくれたがねぇ……ちぃ……死んじゃってるよコイツ。女だから利用価値はいくらでもあったのにねェ……」

 

 ガトーは白に近づき、その顔を蹴り侮辱する。

 

 ナルトがその行動に激高するが、カカシさんがそれを落ち着かせる。それでもナルトはその怒りを再不斬へとぶつける。

 

「お前も何とか言えよ!! 仲間だったんだろ!!!」

 

「黙れ小僧、白はもう……死んだ」

 

 再不斬は非情にそう告げる。それでも納得しないナルトは再不斬へ言寄る。

 

 

「あいつは……白は!! お前のことがホントに好きだったんだぞ! それなのにそんなっ! お前のために命を捨てたあいつをそんな非情に、なんとも思わねのかよォ!? お前みたいに強くなったらホントにそうなっちまのかよォ!? 自分の夢も見れねーで……道具として死ぬなんて……そんなの……」

 

 

「……小僧」

 

 

 再不斬の声色が変わる。

 

「それ以上は……何も……言うな」

 

 鬼人は涙を流していた。

 

「白は……優しすぎた。俺だけじゃなくお前らのことも闘いながら思っていたと、俺にはわかる……。最後に……お前らとやれて良かった。忍びも人間だ、感情のない道具にはなりえない……。小僧お前の言う通りだった……」

 

 鬼人も人だった。改めてそれを確認した俺は安堵する。俺の覚悟が間違っていなかったと。

 

「小僧クナイを貸せ!」

 

「え……あ、うん」

 

 ナルトが再不斬へとクナイを投げ渡すが。

 

 

 

 

 幻術を解きながら(・・・・・・・・)それを俺が奪い取る。

 

 

 

「な!? 悟、いつのまに!」

 

 

 ナルトが驚愕する。まあ、俺の姿を認知出来ていなかったから、虚空から急に姿を現してクナイをキャッチしたように見えただろうからな。

 

「仮面の……てめえどういうつもりだ!」

 

 再不斬が抗議をしてくるが、俺は片手に抱えた白(・・・・・・)を地面に降ろしながら答える。

 

「どう……というとそうだな。己の定めた忍道を貫くつもりだ」

 

 俺は静かにそう答えガトーらに振り返り、目線を向ける。

 

 殺気(・・)を感じたガトーはすぐに部下たちの中へと逃げていく。

 

 一連の流れから白を見たカカシさんは驚きを露にする。

 

「悟……その子……生きているのか!?」

 

 その言葉に再不斬とナルトが急いで白の元へ駆け寄る。そう……白は死んでいない。

 

「ええ……魔幻・草笛の音……この幻術で、音を聞いた者にある認知を刷り込ませたんです。『白は致命傷を負って即死』したと」

 

「何……?」  

 

 再不斬が何のためだと表情で語ってくる。俺は先頭に立ちガトーたちを威圧しながらその疑問の表情に答える。

 

「実際はカカシさんにも幻術をかけて、少し雷切の当たる位置を下げさせて致命傷を避けた。そしてカカシさんが白を降ろした後 幻術で姿を消した俺が白を回収して橋の隅で姿を消しながら医療忍術と道具を使って一命取りとめていたってわけです。因みにガトーが蹴った白は幻術だから安心して。橋の下にガトーらがいるのはわかってから一緒に幻術にはめておいて良かった。見てて胸糞悪かったけど」

 

「ちげえ! 俺はそれをした理由が!」

「只、俺がそうしたい(・・・・・)と思ったから、それだけだ。つまりはそうだな……」

 

 

 強く、そう答える。

 

 

 

 

 

 

 

『君は……一体何を……』

 

 一連の流れを見ていた、精神世界のもう一人の俺が困惑している。

 

(お前の予想通りにならなくて不満か?)

 

 困惑するもう一人の俺に語りかける。

 

『……彼らは木ノ葉の敵だったんだ! それをっ……! 君は自分のやるべきことをわかって……』

 

(悪いけど、俺は俺の忍道を貫かせてもらう。お前も言っていただろう? 俺はお前だけどお前じゃないって。お前の定めたやるべきことなんて俺の行動基準にはならないんだよ)

 

『何を言って!?』

 

(困惑して質問する立場が変わったなwww まあ、つまりはそう俺の忍道は……)

 

 意識を現実へと戻す。

 

 

 

 

 

「俺の忍道『やりたいことをやる』……それに従ったまでだ」

 

「……ふざけているな……」

 

 再不斬が呆れて笑っている。

 

 

 諦めねえど根性なんて、良い信念は俺にはない。ただ俺は運命という言葉に縛られずに生きていく。やりたいことをやりたいようにやる。

 

 つまりはエゴイストだ。他人なんて知ったことじゃない。木ノ葉の里の下忍として働きすぎて、価値観が木ノ葉に染まっていたが……もう吹っ切れた。ただ気に入った奴が傷つくのは嫌だから助ける。それだけだ。正義でも何でもない。俺だけの行動基準。

 

 そもそも、世界を良くするということに、それを確認する基準なんてないんだ。ヒザシさんが死なずに済んだことを誰も運命が変わったからだとは認識していない。どこまでいっても俺の自己満足に過ぎないのだ。

 

 俺は俺を満足させる……。そのために俺の感情を最優先させる。満足する過程を踏んで、自己満足するための結果を勝ち取って見せる。そのためなら。

 

 

「俺はもう、容赦はしない。今ならガトー以外殺さずに返してやろう。だが、お前らの集団の一人でも俺たちに敵意を向けた瞬間。……皆殺しだ」

 

『再不斬たちは助けるけど、ガトーたちは殺す? 君は一体どれだけ身勝手な』

 

(少し黙っててくれ)

 

 再度語りかけてくるもう一人の俺を無理やり封じ込める。  

 

 

 さて。忠告はした。まあ、この忠告も、『忠告をした』という事実で少しでも殺人による罪の意識を逸らす意味しかないのだが。だってほら

 

 

「ガキが一人で何ほざいてやがる!」「調子に乗るなよ! この数相手に何ができる!」 「こっちにはまだ抜け忍がいるんだ。てめえら傷だらけの状態で勝ち目なんてねえんだよ!」

 

 

 ガトーたちは誰も引く気はない。敵意むき出しだ。

 

「さてと、カカシさん達は下がっていてください。俺一人で片付けます」

 

 カカシさんが異議を唱えようとするが、無視して前に一歩踏み出す。

 

 

 

 もう後戻りはできない。

 

 

 

 ナルトから奪い取ったクナイを八門を解放し投擲する。

 

 

「ひいっ!」「ぎゃあっ!」

 

 

 高速で飛翔するクナイが、幾人かの顔面を貫く。あっけなく人を殺した感覚に胃が燃えるような感覚がして、平衡感覚が狂いそうになるが正気を保つ。

 

「野郎、やりやがったなあ!」「皆殺しだぁ!」

 

 ごろつき共が攻撃をしようと一斉に踏み込んで来るがもう、遅い。

 

 八門第六・景門まで開放した俺は思いっきり大橋を殴りぬく。霧に紛れて影分身が土遁を使い橋を脆くしておいたのでガトーらがいる位置の橋は崩れ、雇われの抜け忍以外は海面に落ちていく。これでも幾人かは瓦礫に押しつぶされて死ぬだろう。

 

「俺たちの超努力の結晶が……っ!」

 

 後方でタズナさんが大きく壊れた橋を嘆くが、謝罪は後だ。橋に飛び残った忍びは4人。どれも中忍クラスではあるだろうが……。

 

 彼らが術の印を結ぶ隙をつき、仮面を上げ口を出した俺は『水の針』を射出して忍びらの手を負傷させる。

 

 

「痛!」「クソっ一体なんだ!」

 

 水遁に分類される「天泣」は印を必要としない。純粋なチャクラコントロールのみによる術だ。印を必要としないので、攻撃スピードで先手を取れる。そして

 

 八門を閉じ、雷遁チャクラモードを使い天泣で怯んだ忍び一人に接近し

 

「終わりだ」

 

 鉄棒を振るい首を砕く。……感情がささくれ立つ。命を奪うたびに背中に重いものが載るような気がしてならないが、これも俺がやりたいと思ったことだ。吐き気は我慢する。

 

 俺の実力に気づき残り三人の忍びが逃げ出そうとするが

 

「雷遁・雷鼠走(らいちゅうばし)りの術!」

 

 俺が発動した雷遁の雷で出来た数十匹の鼠で逃げ先を塞ぐ。

 

「ひぃいい!」

 

 一人に鼠を集中して纏わせ黒焦げにする。それに焦ったもう一人を土遁・岩状手腕で頭を砕く。

 

 残った一人の忍びも数匹の雷鼠に当たり痺れている。

 

「あああああ、たったすけてっ……!」

 

「……」

 

 命乞いをして仰向けに倒れている忍びの目を見て俺は

 

 思いっきり鉄棒を心臓へと貫通させ、雷遁チャクラを流して絶命させる。

 

「……残りは……」

 

 そう呟いた俺は崩れた橋から、海面を見下ろす。そこでは橋に来るために寄せ付けていた大型のボートに這い上がるごろつき共がいた。

 

「……火遁・炎弾」

 

 炎弾を数発放ち船を吹き飛ばす。橋の崩壊で巻き込まれずに運よく生き延びた海面の奴らには一人に一匹雷鼠をプレゼントして麻痺させ沈め、文字通り海のモクズにする。

 

 さてと

 

 橋の下の海面に降り立ち、生き残った最後の男を一人抱え上げ橋の上へと連れていく。

 

 無造作に男を投げ捨てると、完全に怯えている男、ガトーは命乞い始める。

 

「ひぃぃぃぃぃいいい。 た、たすけ……金ならいくらでも……!」

 

「お金は間に合っているんで。身の丈以上の金はいらないんですよ、あんたと違って俺は」

 

 優しい声色で申し出を断る。そしてガトーの骨折している腕を踏み抜く。ぐしゃりと音がなり、ガトーが悲鳴を上げる。

 

「そういえば、あなたに反抗した男の人がいたの覚えていますか?」

 

「あがっ……? な、なにをぉ?!」

 

 八門で強化した体を使い、足でガトーの肩を抑え、腕を引き抜く(・・・・・・)

 

「……っっっっ!」

 

 もう、言葉は引き出せないだろう。残ったガトーのもう一つの腕を風遁のチャクラを纏わせた鉄棒で砕き切る。

 

 恐怖に引きつったガトーの胸倉をつかみ引きずり、橋の端へと向かい外側へと突き出す。

 

「英雄の話を聞いた時、俺はお前をこうして両腕を失くして殺したいと思ったんだ。……誰だってそうだ。偽善に駆られて頭で猟奇的な発想をすることもある。だけど実際には行動はしないだろうけどな。俺もその時は実際にやるとは思っていなかったんだが……そうだなやってみるととても、とても楽しいよ」

 

 もうガトーはほとんど意識を手放している。語りかけるのも俺の自己満足だろう。

 

「だけど同時に想像以上に苦しくて、虚無だ。もうトラウマになりそうなぐらい心がぐちゃぐちゃだよ。さてと……さよならだ」

 

 ガトーを海に落とす。両腕がないあの状態では確実に死ぬだろう。

 

 

 これで、これで俺のやりたいことは終わった。だけど……

 

 

  

 

 

 

 

 

 

 

 仮面の下の涙がべたついて気持ち悪い。

 

 




『もう一人の僕の思考がぶっ飛んでて怖い』
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